四が二つもなんて、不吉な…………
てなわけで、どうぞ
【さあ、次の試合だ。熱い闘いを見せてくれ!】
二本脚で歩く鳥の魔物がやって来た。
後ろに、丸い輪の武器をもっていわ
「見覚えは?」
レイアは、恐る恐る聞く。
「ないね。まあ、倒す事には代わりはないけど」
おどけながら、ホームズは返す。
レイアは、ホッと胸を撫で下ろす。
そんな会話をしていると、魔物が空中からの連続蹴りをホームズに放つ。
しかし、
「おれに、蹴りを入れようなんて、いい度胸じゃないか」
片足を左手で掴んでいた。
ミラは、その様子を見て頬を引きつらせる。
「アレは……」
「なんか思い出すな……」
アルヴィンも遠くを見つめている。
そんな二人のつぶやきなどホームズの耳には届かない。
歯を食いしばり、脚を強く踏み込む。
「どっせいや───────!」
そして、魔物を片手で振り回す。
振り回された魔物は、他の魔物達を巻き込んでいく。
巻き込まれた魔物達は、再び立ち上がろうとする。
しかし、その一瞬、輪っか状の武器を持った、女性が無防備になる。
「任せなさい!」
「グゲェ!」
ローズは、ホームズの頭を踏み台にして、飛び上がる。
ホームズが、潰れたカエルの様な鳴き声を上げるが知ったことではない。
そして、縦回転をする。
「烈空斬!」
その女性は、思わず武器で防ぐ。
ローズは、烈空斬で、ダメージを与える事を早々に諦めると、着地する。
相手はそれを待っていた様だ。
そのまま、ローズに襲いかかる。
ローズは、それを冷静に観察すると、刀をそれぞれの輪っかの中心に通し、引っ掛ける。
そして、腕を横いっぱいに広げる。
輪っかの女性も同じ様に腕を横に広げる羽目になる。
そんな、ローズに魔物達が襲いかかろうとする。
しかし、
「「六散華!」」
レイアとジュードの
相手の動きを封じ込める事に成功したローズは、おもむろに口を開く。
「裂け裂け切り裂け出て来い刃……」
ローズと女性の間に風が渦を巻く。
「ウインドカッター!」
鋭い風の刃が、敵に襲いかかる。
相手はガード出来ず、モロにそれを食らう。
大きく後ろに仰け反ると、相手はそのまま起き上がらなかった。
「………生きてる…………よね?」
「当たり前でしょ。詠唱の構えも取れてなかったのよ、私。それに、ちゃんと手加減したわよ」
ローズは、なんて事なさそうに言う。
ホームズは、恐る恐る様子を伺う。どうやら、本当に生きている様だ。
会場係に運ばれると、新たな対戦相手が現れた。
「また、鳥かい……」
「……どうも、俺達は、鳥に縁がある様だ」
ホームズは、そうこぼし、ヨルは、何かを思い出す様に呟く。
鳥の様な魔物が三頭、そして、槍を構えた、人間が一人。
しかも、今回は達の悪い事に奴らは、空を飛んでいるのだ。
【さあ、選び抜かれた戦士達よ、いざ、さらなる高みを目指せ!】
「先手必勝!レインバレット!!」
アルヴィンの銃弾が、雨の様に魔物達に降り注ぐ。
魔物達は、叫び声を上げ、高度を少し落す。
「出番だぜ、ローズ!」
「了解!いくわよ」
アルヴィンとローズは、それぞれ螺旋を描きながら宙に浮く。
地面には、円陣が浮かび上がる。
「「竜虎滅牙陣!!」
物の見事に二頭(二羽?)が食らい、倒れた。
残り一頭は、空にいる。
魔物は空から攻撃をローエンとエリーゼに仕掛ける。
術士を狙いに来ている。
「ま、に、あ、え───!」
ホームズは、空中にいた。
そして、身体を回す。
「飛燕連脚!!」
段々と上空に上がりながら、蹴りを一発、二発、と、どんどん撃ち込んでいく。
そして、最後の一発で、ホームズは、魔物を地面に叩きつける。
「ホームズ!」
『気張れー!』
ホームズは、着地をすると、エリーゼ達の声が聞こえ、ホームズとエリーゼのリリアルオーブが輝く。
「任せたまえよ」
ホームズは、ニヤリと笑い足に闘気を溜める
「「ティポ・ザ・ビースト!!」」
ホームズと、エリーゼのティポの形をかたどった闘気の
ミラとローエンは、魔物を操る人間の前に立つ。
リリアルオーブの輝きが二人を繋ぐ。
「ミラさん!いざ!」
「ああ!」
ミラは頷くとローエンと共に狙いを定める。
「「ロックヘキサ!!」」
地中から、六本の柱が出現し、槍を持った人間を襲う。
攻撃を食らった人間は、そのまま意識を手放した。
これで、ホームズ達は全ての試合が終わった。
【キタルブロック、優勝はキタル族代表だ!】
「やっと………終わった………」
ホームズは、疲れ切っている。
他のメンツも似たようなものだ。
レイアに至っては地面に寝転んでいる。
「で、何で君達は平気そうなんだい?」
ホームズは、恨めしそうに、ローエンとアルヴィンを見ている。
「鍛え方が違うのですよ」
「そうゆうこと」
アルヴィンは、自慢気にウィンクをする。
「ああ、そう……」
ホームズは、げんなりする。
「ま、取り敢えず、後は決勝を残すのみだろ。おら、立て馬鹿共、戻るぞ」
ヨルは既に次の試合の事を考えている。
皆言い返したいが、そんな気力も無い。
しかし、ティポが皆を代弁して、ヨルに噛み付く。
「どう思うよ、ローエン」
「何がです?」
「決まってるだろ、新人達の実力の事だよ」
ローエンとアルヴィンは、彼らの後ろ姿を見ながらそんな会話をする。
「はい。皆さん、充分な実力を持っています」
「特に、ホームズ?」
「………あの人をよく殺しかける所まで追い詰めましたね」
ローエンは、顎髭を触りながら言う。
どう考えても、今回の様子を見てホームズを一方的に追い詰めるなんて事は、まずあり得ない。
おまけに、ヨルと言う精霊術を無効化する奴もいる。
少なくとも怪我ぐらい負っていないとおかしい。
しかし、ローエン達と出会った時、アルヴィンたちは、武器が壊れていただけだ。怪我なんて、そんなものは何も負っていなかった。
「……ミラがいたというのもデカイが、それ以上に多分あの馬鹿、手加減してたな」
アルヴィンは、空を見上げる。
「俺らと闘った時、あいつはエリーゼから先に倒すべきだった」
何故なら精霊術がヨルには無効だからだ。
精霊術がメインのエリーゼを残しておく理由は、ない。
戦力には、確かに差があった。
しかし、そうは言ってもあそこまでボコボコになった理由は、明らかに、エリーゼから片付けなかったことだ。
「でも、あいつはそれをしなかった。奴ぐらい頭が回ればそれぐらい分かりそうなもんだが……ローエン、何か心当たりあるか?」
ローエンはまだ、顎髭を触っている。
そして、おもむろに口を開く。
「今日、エリーゼさんが両親の事をすこしだけ思い出して泣いてしまったのです」
「エリーゼが?」
「はい。その時、ホームズさんは、凄く嫌そうな顔をしました」
「単純にメソメソしてるガキがきらいなんじゃねーの?」
「恐らく、そうでしょう。彼は子供が泣いているのが我慢出来ないタイプのように思います」
「ふーん」
ローエンの考えにアルヴィンは、返す。
ローエンは、更に続ける。
「………その時、ホームズさんは、エリーゼさんにハンカチを渡して涙を拭くように言ったんです」
「優しいじゃねーか」
アルヴィンは、ふっと笑いながら、言う。
「えぇ、その少し前まで喧嘩していたとは思えないほどです」
ローエンの言葉にアルヴィンは、少し考える。
「一応、あいつは十八だろ?そのぐらい水に流して…………」
アルヴィンは、段々と声が小さくなっていった。
ホームズは、思いのほか根に持つタイプだ。
出会ったばかりに、殺されかけ、昨晩は、ピコハンで気絶させられ、聞かれたくない過去話を聞かれた。
あのホームズがそれらの出来事を水に流すとは考えにくい。
しかし、ホームズは、エリーゼにハンカチを渡し涙を拭くように進めたのだ。
「……あの人は、自分の事を話しません。この旅について行く理由も……」
ローエンの言葉にアルヴィンは、少し物思いにふける。
「両親の故郷に行きたいって言ってなかったか?」
「何故か知っていますか?」
「そう言えば……」
アルヴィンは、思わず面食らう。
「何故かは、私達には、話してくれました。両親がどんな所で育ったか、そして、見た事のない場所にも行ってみたいと……しかし、本当にそれだけでしょうか?」
「というと?」
「恐らく、ホームズさんが口にしていないだけで、まだ理由がある様な気がします」
ローエンは、まだ賑やかにジャれているホームズ達を見る。
「エリーゼさんの件も恐らく理由があるはずです」
「……ロリコンとか?」
「つまんないですよ」
ローエンに釘を刺され、アルヴィンは、肩を竦める。
彼らは、それを最後に闘技場を後にした。
◇◇◇◇
「やったー。私達勝ったんだね」レイアは、大喜びだ。
一行は、今闘技場からの階段を降りている。
「何とかって、感じだけどね」
「なっさけないなぁ、優等生は。楽勝だったろ?」
「いえいえ、なかなか厳しいものがありましたよ」
「何処かの誰かさんのせいでね」
ローズは意地悪そうにホームズを見る。
ホームズは、少したじろぎながら弁明する。
「べ、別にいいだろう。最初の試合の相手はちゃんと倒したんだから」
「やられかけた癖に……」
「いや、やられかけた訳じゃ無くて………いや、何でもないです」
ローズは、ギロリとホームズを睨んで黙らせる。
「ジュード〜、ローズが冷たい」
思わずジュードに泣きつくホームズ。
「ハハハ、反省すれば」
ジュードからも手痛い忠告が飛んで来た。
「みんな、冷たい……」
ホームズは、うな垂れる。
『そう言うわけだ〜!アルヴィン君の嘘つきー。ね、エリー』
「はい、アルヴィンは嘘つきです……」
エリーゼとティポのダブルコンボをアルヴィンは、食らう。
「お前らまで……」
アルヴィンは、拗ねるように言う。
「元気だしたまえよ」
何故か上から目線のホームズが、アルヴィンの肩にポンと手を置く。
「お前と一緒ってのものな……」
ホームズとアルヴィンは、横目で睨み合いながら喧嘩する。
「やったな。見事な闘いだったよ」
ユルゲンスは、戦いを終えた一同にそう言葉をかけた。
ホームズは、少し胸を張る。
対照的にヨルは、欠伸をしている。
「決勝は、食事休憩を挟んでから始まるわ」
ユルゲンスの隣にいるキタル族の女性が説明する。
「メシだと」
ヨルは、目を輝かせる。
「他の選手も一緒だから、落ち着かないかもしれないけど。取り敢えず、食事にしておきましょ」
ホームズとヨルはその台詞を終えると同時に駆け出す。
「どけ、クズ!」
「うるさい、君こそ、どいておくれよ!踏んじゃうじゃないか」
我先にと食堂を目指して走る。
大人気ない戦いを繰り広げながら……
ローズは、それを呆れて見ている。
「ガキ……」
「………ローズ、好きな食べ物は?」
レイアは、ホームズから視線を逸らさずにローズに尋ねる。
「ハンバーグ、餃子、ステーキ、クリーム牛丼、オレンジスープ、ミネストローネ、チキン南蛮、サンドイッチ、カツサンド、クリームシチュー、カレー、マーボーカレー、寿司、唐揚げ、後は………」
「早く行って来たら?ホームズが何かやらかすかもしれないし」
レイアに言われ、ローズは少し考える。
「それもそうね」
そう言うと、ローズも全力ダッシュをして、ホームズを追いかけた。
「随分と扱いが上手くなりましたね、レイアさん」
ローエンが、すうっとレイアの隣に立つ。
レイアは、一つため息を吐く。
「あれだけ隣でそわそわさられてれば、ね」
「………私達も行きますか」
「そうだね」
何だか、試合の時より疲れた気がする。
「確実に力がついて来ている……これなら」
「……どうしたんだろミラ?」
階段で、物思いにふけっているミラをジュードは不思議そうに見ている。
そんなジュードに気付くとミラは、再び歩き出し、食堂に向かった。
◇◇◇◇
「ホームズ、少し落ち着きなさい」
「いいだろう、別に。久々に食べるんだから、シャン・ドゥの料理」
ローズの注意も聞かず、料理が運ばれてくるのを今か今かと待っている。
ローズも楽しみではあるが、そこまで恥を捨てる程ではない。
ヨルに嫌味でも言ってもらおうと思って見るが、
「おい、俺にもよこせよ」
ヨルもそれどころではない。
ジュードは、周りをキョロキョロと落ち着き無く見ている。
「決勝相手、気になっちゃう?」
アルヴィンは、それを鋭く察知すると、ジュードに尋ねる。
「うん、それはね」
ジュードは、頷く。
そんなジュードにアルヴィンは、意地悪く尋ねる。
「ジュード君好みの、めちゃかわいい子だったらどうする?」
「なっ……!」
ジュードは、動揺して立ち上がる。
「相手がどんなだって関係ないよ、そんなの!」
アルヴィンは、期待通りの反応をしてくれたジュードを笑う。
そんな中ホームズは、考えている。
「そっかあ……おれなら、どうするかな……」
「ホームズ……ぶれないね」
真剣に考え出したホームズにレイアは、呆れている。ローズは、仏頂面になる。
「手加減してもな……報酬もらえないし……うーん」
「………ホームズがモテない理由がよくわかった」
割りと真剣に悩んでいるホームズを見て、レイアは、ため息を吐く。
そうこうしている内に、料理が運ばれてきた。
ホームズは、早く食べたそうだ。
ヨルも嬉しそうにしたが、動きを止める。
「まあまあ」
ユルゲンスが下らない会話を止める。
そして、感慨深そうに言葉を続ける。
「それにしても決勝か………まさか、ここまでこれるとはな」
「優勝するって言ったでしょ」
レイアは、胸を張るように言う。
「ははは、すまない。取り敢えず食べよう。決勝にむけて力を付けてもらわければな」
そうユルゲンスが楽しそうに言う。
そんなことを言っていると、ミラの元に最後の料理が運ばれて来た。
ミラは、運んで来た人間に首を傾げる。
「ユルゲンス大変だ!!」
皆が料理を食べようとした丁度その時、男が走って来た。
「なあに、どうしたの?」
ユルゲンスの隣にいた女性が呑気に言う。
「この前の落石、事故じゃなくて、事件だったらしい。人為的な後が見つかったて」
その言葉に、ホームズ、ミラ、ヨルは、目を険しくする。
「おい、ホームズ、料理には口をつけるな」
「食事には、手を付けるな!!」
ミラとヨルの言葉は、ほぼ同時だった。
「え……なに?」
ミラの余りに鬼気迫るものいいに、エリーゼは、驚く。
ジュード達も食事に運ぶ手を止める。
すると、周りから食器の落ちる音と、苦しそうな呻き声があちらこちらから、聞こえ出す。
先程までの和やかな食事風景が嘘のようだ。
今では、阿鼻叫喚の地獄が広がっている。
「なんなんだ………これは……」
ユルゲンスは、驚きを隠せない。
当然と言えば当然だ。
普通の人間は、この状況に驚く。
「こいつは………」
ホームズは、顔を険しくして、周りの様子を見回す。
何処を見ても胸を押さえて苦しんでいる人ばかりだ。
中にはもう、動かなくなっている人もいる。
立ち尽くしている一行をローズは、駆け抜ける。
「大丈夫ですか?!」
倒れている男に駆け寄り、しゃがみこんで様子を診る。
もちろん、大丈夫なわけがない。
しかし、ローズはこれで状態を探っているのだ。
(これは……毒?)
ローズは、ホームズに呼びかける。
「ポイズンボトルは?!」
切羽詰まった様子にホームズは、首を横に振る。
「荷物は、向こうに置いて来た。何より量が圧倒的に足りない」
ホームズは、冷静にローズに返す。
ローズは、あんまりにも冷静なので食ってかかろうとしたが、唇を噛み締めているホームズを見て頭を冷す。
「精霊術は?!」
「手遅れだな。見ろ」
ヨルは、尻尾でその男を指す。
その瞬間、ローズの腕の中から、呻き声も聞こえなくなった。
命が、今完全に終わったのだ。
「………………そんな」
いとも簡単に人の命が消える。その事実にローズは、茫然とする。
ローズは、そのまま地面にへたり込んでしまった。
ホームズは、そんなローズを無理矢理どける。
そして、死体となった人間の目に手を持っていき、開いたままになっている瞼を静かに降ろす。
先程までの苦悶に満ちた表情が少し、和らいだ。
ホームズは、両手を合わせ、目を閉じる。
その周りで、1人、また1人と倒れて行く。
ドサリと人の倒れる音でホームズは、目を開く。
その苦しそうに呻いている人と目が合う。
『最近アルクノアの動きが活発化し始めている………』
マーロウの言葉が頭に蘇る。
「やられた………」
ホームズは、悔しそうにポツリと吐いた。
夏休み………何ですよね………
今更ですが、「あの花」を借りてきて、全部見ました。
涙腺ゆるゆるです。
個人的に、エンディングを流すタイミングが卑怯だと思いました。
泣くよ!泣かない訳がないじゃん!
テイルズ全く関係ありませんね………
では、また四十五話で( ´ ▽ ` )ノ