1人と1匹   作:takoyaki

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四十六話です。




気を抜くと直ぐに終わる、



それが夏休み


てなわけで、どうぞ


腹を割いて話す

「ローズ!それにホームズもどうしたの?!」

レイアは、血だらけのローズと目を腫らしているホームズを見て声を上げる。

ジュード達も同じ様な顔をしている。

ホームズは、ローズをベッドに降ろす。

「安心しておくれ。全部ローズの血ではないから。ローズは、怪我一つ負っちゃいないよ」

「じゃあ、誰のだ?」

ミラが問う。

ジュードは、ホームズに駆け寄り、両手を出す。

「手、握って。出来るだけ強く。」

ホームズは、言われたジュードの両手を握る。

「大丈夫そうだね」

ジュードは、両手を確かめると治療を開始する。

ホームズは、ジュードに治療されながら、ミラの質問に答える。

「本来の調理人の血だよ」

ホームズの目から腫れが引いていく。

「本来、おれたちの料理を作る人は別にいたんだ。でも、毒を盛るのに、そいつらは邪魔だった」

レイアは、息を飲む。

「そんな事の為に………」

ホームズは、頷く。

「というか、ホームズ、君も重症だよ。後、何処怪我したの?」

「わき腹。刃物で刺された。一応応急手当てをしたけど」

そう言ってホームズは、赤くなっているわき腹を指す。

ジュードは、急いで治療する。

「死体はまだ、炊事場にある。早く回収してもらっておくれ」

ホームズは、ジュードの治療のおかげでだいぶ楽になってきた。

「誰に……刺された……んですか?」

エリーゼの質問にホームズは、エリーゼではなく、ミラを見る。

「物事には、順序がある。ミラ、君から、先に話しておくべき事があるだろう?」

ホームズの言葉にミラは頷く。

「そうだな」

ミラは腕を組む。

「恐らく、今回の事件の首謀者は、アルクノア」

「アルクノア?」

ジュードは、ホームズの治療を終える。

「私の命を狙い続けている連中だ」

ミラの言葉にジュードは、息を飲む。

「おれに襲いかかってきたのもそいつらだよ」

ホームズは、脇腹を指す。

「え………それじゃあ、さっきの毒は……」

ミラは頷く。

「死んだものには済まないが、十中八九、狙われたのは私だろう」

ミラの言葉にヨルは尻尾でホームズを示す。

「ここの、目を腫らしたバカもだぞ」

「もう、腫れてないよ」

「悪りぃ、目、垂れたバカだ」

「………ケンカ売ってる?」

ホームズは、ヨルをギロリと睨む。

「ホームズ?なんで?」

そんな、ホームズに構わず、ジュードが不思議そうに尋ねる。

ヨルは鼻で笑うとジュードの質問に答える。

「こいつが、幾つ奴らの拠点を潰してきたと思ってるんだ。恨まれない方がおかしい」

「……一応、弁明しておくけど、彼らがヨルに驚いて襲いかかってくるから、返り討ちにしただけだよ」

ホームズは、不満そうに口を尖らせる。

「災難だね………でも、叩き潰すのは、やり過ぎだと思うよ」

レイアは、頬を引きつらせる。

「しかし、そんな事のために……無関係の人を巻き込んでおいて……それは……」

ローエンは、驚きを隠せない。

ミラは、ローエンの言葉に頷く。

「うむ……元より何でもありの連中だったが………今回は、特に酷い」

レイアは、先程ホームズがされた質問をミラにもする。

「どうして……何故狙われてるの、ミラ?」

ミラは後ろを向いて腕を組む。

考えているのだ。

話していいものかどうかを。

しかし、共に旅をする以上避けては通れない事だ。決意をすると、ミラは話し始める。

「私がやつらの黒匣(ジン)を破壊し続けているからだ。奴らが二十年前黒匣(ジン)と共に突如出現して以来な」

「二十年前……」

ローエンは、顎髭を撫でる。

黒匣(ジン)と共にって……

それじゃあ、クルスニクの槍にも……黒匣(ジン)を使っているアレにもアルクノアが関係してるの?」

ミラはジュードの方を向き頷く。

「確証はない。が、アレの出処は、アルクノアだと考えている」

「一国の王と、アルクノア、か………胡散臭いねぇ」

ミラの言葉にホームズは、考える。

もし、それが当たっていれば根は深い問題だ。

ミラは更に言葉を続ける。

「奴らは見た目では、判断出来ない。常に町の人間に溶け込んでいる。私も黒匣(ジン)を使われた時の精霊の死を感じる事でしか、奴らへの対処が出来なかった」

黒匣(ジン)を使うと精霊が死ぬ。この事実にジュード達は驚く。

ジュードは思わず聞き返した。

「え……精霊の死って?……黒匣(ジン)を使うと精霊が死ぬの?」

ミラは肯定する。

「術を発生させる度、精霊を死に追いやる。

人間は精霊の力を借りて生き、精霊は、人間の霊力野(ゲート)から生み出されるマナで生きる」

レイアは、ホームズの方を見る。ホームズは、ひらひらと手を振っている。

黒匣(ジン)は、一見夢の様な道具だ。しかし、世の中の循環を確実に崩す。黒匣(ジン)が存在する限り、人も精霊も安心して暮らしてなどいけない」

ミラの目は、使命の炎で燃えている。

ローエンは、深く息を吐く。

「私もまだまだですね。そのような大事を全く知らなかったとは」

そんなローエンにミラは優しく言う。

「知らなくて当然だ。人間に知られぬよう、私が一人で処理してきたのだから………まあ、例外もいるが」

例外(ホームズ)は肩をすくめる。

「じゃあ、ミラは今までずっと………」

エリーゼは、ティポを強く抱き締める。

エリーゼの言葉にジュードは頷く。

「ずっと一人で戦っていたんだ……世界の、僕達の為に」

レイアは、ホームズの方を見る。

「ホームズが隠してた事ってこれ?」

「そうだよ。危ないから、関わらせない為にも黙ってたんだけどねぇ」

ヨルは、そんなホームズをまたか、という目で見る。

何せホームズの隠し事は、それだけではないのだ。

「だが、四大の力を失ったせいで、お前達人間も巻き込んでしまった、すまない」

そんなホームズに構わず、ミラは、そう締めた。

すると、扉の開く音がする。

「あ、ユルゲンスさん。どんな様子だった?」

レイアが、入ってきたユルゲンスに尋ねる。

「あの場で助かったのは、私達だけみたいだ。………大会の事はそろそろ報告が………」

ユルゲンスの言葉の途中で再び扉が開く。

今度は、少し乱暴に開いた。

「よう、無事で何よりだ」

入ってきたのは、マーロウだ。

「目腐ってるんです?」

ホームズは、肩をすくめる。

ホームズは、怪我をしているし、ローズに至っては気絶している。

マーロウは、ため息を吐く。

「人の揚げ足ばかり取りやがって………んなだから、モテねーんだよ」

「ホームズ落ち着いて!」

今にも飛びかかりそうなホームズをジュードが羽交い締めにする。

マーロウは、その様子を小馬鹿にすると、直ぐに真面目な顔になる。

「決勝は、明後日以降に持ち越しになった」

「中止じゃないんですか!?」

ジュードは、驚いてホームズの拘束を緩める。

あんな事があったと言うのに、まだ闘技大会をやると言うのだ。

ホームズも渋い顔をする。

「大会は、十年に一度。折角なのだから、やろうとさ」

マーロウは、ふぅと煙を吐く。

「禁煙」

ホームズは、不機嫌さを隠す事もなく枕を投げる。

マーロウは、軽々と片手で掴む。

「貴様ともあろうものが、それを止められなかったのか?」

ヨルがホームズを代弁する様に言う。

「『こんな卑劣な手段に屈してはならない。我々の誇りにかけて必ずやり遂げるべき』だとさ」

もっともなお題目の前には、なす術もない。

「ついでにいうとだ、俺は今回の大会運営から外された」

「外された?」

ホームズは、不思議そうに尋ねる。

「『中止を訴えるとは!お前には誇りはないと見えるな』って」

マーロウは、忌々しそうに言う。

「無茶苦茶です……」

ホームズは、完全に大会運営の言い分に引いている。

「これで、俺は大会に関する全ての事に関われない」

「………まさか」

嫌な予感がする。

「そう。つまり、この集団毒殺の件に俺は関わる事が出来ない」

「………マジかい」

八方塞がりだ。

集団毒殺の件も闘技大会に関係している。

つまり、それをマーロウに調べる事は出来ないのだ。

毒殺を図った連中が捕まればいいのだが、マーロウにはそれをやるのは、不可能なのだ。

「裏でこそこそやる程度なら、幾らでもやり様があるが、それだとはっきりいって限界がある」

マーロウも恐らく、悔しいのだろう。

しかし、上層部の決定に刃向かう事は出来ない。

マーロウの事を慕う人々にまで、被害が及ぶからだ。

「そーいやぁ、アルヴィンとか言う男はどうした?」

「さあ?」

ホームズは、肩を竦める。皆も同じだ。

「まあ、そいつにもそう言っておけ」

マーロウは、そう言って出て行こうとする。

「待ってください」

ホームズは、今にも出て行きそうなマーロウを止める。

「………おれらに襲いかかってきた連中が炊事場の方で気絶してるんです。身柄を拘束しておいてくれません?理由は、一般人への暴行ってところで」

「起死回生の策でも思いついたか?」

「まさか」

ホームズは、つまらなそうに否定する。

「唯の現状確認の策です」

マーロウは、ホームズの意図に気付いた様だ。

煙をモクモクと吐き出してニヤリと不適に笑う。

「なるほど、一般人が襲われるってのは、闘技大会と無関係な事件(・・・・・・)だもんなぁ」

ホームズも同じ様に意地の悪い笑みを浮かべている。

出て行こうとするのを見送るとレイアは、神妙な面持ちでミラ達を見る。

「辞退した方が良くない?」

毒を盛り、ホームズに闇討ちをかけるような連中だ。

この先何があるのかわからない。

ミラは腕を組んで悩む。

ここで辞退してしまえば、ワイバーンが手に入らない。

「とりあえず、今日は休みませんか?みなさん色々あって疲れたでしょう」

ローエンの提案にジュード達は頷く。

「ローズは、まだ目を覚まさないみたいだね………」

ホームズは、ベッドで寝ているローズを見る。

「そんなに………酷い様だったの?」

レイアは、恐る恐るホームズに尋ねる。

「ん、まあ、楽しい場所ではなかったよ」

当たり前だ、人が死んでいるのだから。

少し、黙るとホームズは、再び口を開く。

「彼女にはね、辛い記憶があるんだよ。トラウマっていうのがピタリなくらいの奴がね」

「それって一体………」

「言うわけないだろう、ジュード。今回のはおれの話じゃないんだ。どうしても知りたかったら、本人に聞く事だね」

ホームズは、そう言ってローズのベッドの側に椅子を持ってきて座る。

その様子をレイアは、不思議そうに見る。

「ホームズは、部屋にもどらないの?」

ホームズは、小さく笑う。

「んー……この子が起きるまではね」

椅子に深く腰掛ける。

レイアは、少し驚いてから、微笑む。

「優しいね、ホームズ」

そんなレイアにホームズは、ゆっくりと頭を横に振る。

「そんな事ないさ」

ホームズは、手を組んで下を見る。

表情が影になって見えづらい。

「本当はね、もっと側にいてあげなきゃいけない時があったんだ。だから……ね」

「負い目に感じてるだけって事?」

レイアは、ホームズが濁した言葉を引き継ぐ。

ホームズは、ローズの顔を濡らしたタオルで拭いて、顔についた血を取っていく。

「まあね。だから、そんなに優しい理由でもないんだ」

ホームズは、静かにそう答えると、顔を上げてローエン達に言う。

「とりあえず、ローエン達は部屋に戻りなよ。おれもこの子が起きたら戻るし」

「分かりました。ホームズさんも程々に」

ホームズは、ローエンの顔を見ずに頷く。

ローエンが出ていくとジュードもそれに従った。

「じゃあ、わたし、タオルと洗面器の水を変えてくるね」

「悪いね、よろしく頼むよ」

レイアは、そう言って、洗面器とタオルを持って部屋を出る。

その前にホームズの方を振り返る。

 

 

 

 

 

(大事なんだろうなぁ)

 

 

 

 

 

でなければ、負い目などそもそも感じはしない。

 

 

 

 

レイアは、微笑んで部屋の扉を閉めた。

 

 

 









りんごのうさぎさん作れる人!(挙手)




因みに自分は、無理です。作れません




昔作ろうとして、惨殺死体みたいな物を作り上げました。



では、また、四十七話で( ´ ▽ ` )ノ

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