1人と1匹   作:takoyaki

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四十九話です。




何か目が覚めたので、この時間に投稿してみました




てなわけで、どうぞ


泣きっ面に駄目押し

「はあ?!ミラがいない!?」

朝一発目の驚きがそれだった。

ジュードからの報告にホームズは、思わず耳を疑った。

「あの子は、仮にも狙われてる身なんだよ」

「そうなんだよ………」

ジュードも心配そうだ。

ホームズは、頭をガシガシと書く。アホ毛が一本、ぴょこんと立つとホームズは、急いで着替える。

「取り敢えず、おれも行く………」

「よう、ホームズ。元気か?」

今にも出かけようとした矢先、マーロウが入ってきた。

「っとに、タイミングの悪い……」

「まあ、そういうな。取り敢えず、例の報告がある」

声を潜めてマーロウは真剣にいう。

「場所を変えたい、俺の所で話をしたいのだが……」

ホームズは、完全に困ってしまった。緊急を要するものが、二つも重なってしまったのだ。

「……取り敢えず、あのオンナの事はつり目のガキ共に任せて、おれ達で情報だけでも貰ってくるってのが妥当じゃないか」

「………そうするかねぇ。任せてもいいかい、ジュード」

「うん。そっちも任せるよ」

ジュードにそう言うと、ホームズは、マーロウの後をついて行った。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

「まずは、報告だ」

マーロウは、キセルを吹かす。

「とっ捕まえた、アルクノアどもだが、上から解放しろとのお達しが出た」

「やっぱり………」

ホームズは、唇を噛む。

「お前の策的には、どうなんだ?現状確認は出来たか?」

ホームズは、下を向く。

「アルクノアを手放せというお達し………誰がどう考えても、上の連中とアルクノアは繋がってる。

いや、もっと正確に言うなら圧力がかかってると考えたほうが妥当かもしれません」

「ま、だろうな」

マーロウは、ケムリを吐き出す。

自分達の情報が漏れれば、アルクノアは、困ってしまう。

それを奴らは、強奪や暗殺という力技ではなく、上から指示を出させている。

「随分とアルクノアが根を下ろしているみたいだな」

ヨルは、忌々しそうにこぼす。

マーロウは、苦い顔をする。

「油断してたつもりはなかったが……お前らからの依頼は、かなりギリギリだったようだ」

「ですね………とりあえず、おれはこの事を報告しに行きます。他は何かありますか?」

マーロウは、首を振る。

出て行こうとすると、突然、鐘が鳴り響いた。

「コレは……?」

マーロウは、苦々しい顔をする。

「まあ、ろくでもないことが進行してるんだろうな。取り敢えず、ホームズ。お前は闘技場へ行け」

「……まあ、そうするしかなさそうですね」

靴紐をしっかりと結ぶ。

ホームズが靴紐を結び終えると、マーロウが何かを投げつける。

慌ててキャッチし、何を投げつけたか、確認する。

 

 

 

そこにあったのは、包帯だった。

 

 

「昨日の傷口が開いたら使え」

ホームズは、しばらく包帯を見る。

「ありがとうございます」

ホームズは、そう素直に手をあげて礼をいう。

マーロウは、キセルを咥える。

「……ホームズ、気をつけろよ」

マーロウは、心配そうに声をかける。

「言われなくても、です」

ホームズは、いつもの胡散臭い笑顔でそう言うと部屋を出ていった。

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「ミラ!」

闘技場についたホームズは、ミラの姿を見つけるとツカツカと歩いて行き、ミラの頬をつねった。

ふぇにをふる(何をする)!」

「あれ程一人で、出歩くなと言っただろう!」

珍しく声を荒げるホームズにミラも少し息を飲む。

「落ち着きなさい、ホームズ。ミラは、一人ではなかったわ。アルヴィンと一緒だった」

ローズの言葉にホームズは、ミラの頬から、手を離す。

「………そう良かった」

アルヴィンとあの会話をした以上素直に、喜べないのだが、何も無かったので、とりあえずホームズは、胸を撫で下ろした。

「ホームズさんの策は、どうなりました?」

ローエンの言葉にホームズは、顔を顰める。

何せ余りいい知らせでは無いのだ。

「一応の成果はあったよ」

ホームズは、一旦区切ると再び話を始める。

「昨日捕まえといた、アルクノア、上の連中から解放しろとのお達しがでた」

「つまり、上の連中とアルクノアは、べったりって訳だ」

ヨルが、ホームズの言葉を引き継ぐ様に言う。

ローエンは、あご髭を触る。

「アルヴィンさんの情報と被りますね」

ローエンの様子から察して、嫌そうな顔をする。

「さっきの鐘といい、今のこの雰囲気といい、今何がどうなっているんだい」

「実はですね………」

何も状況がつかめていないホームズにローエンは説明をする。

 

 

 

「今から決勝戦をやる?!」

「はい」

「しかも、前王時代のルールにのとって、一対一で相手が死ぬまでやる?!」

「はい。その話が出た時、ミラさん狙いの策だと、アルヴィンさんが教えてくれました」

ホームズは、思わず爪を噛む。

事態は、ホームズが思っている以上に最悪な事になっている。

ヨルは、話題に登ったアルヴィンを目を細くして見る。

「………何故こいつが、んな事を知っている」

「アルヴィン、昔アルクノアに雇われていたんだって」

ヨルの質問にジュードが答える。

「……ほう」

「で、これからは、アルクノアからの仕事は引き受けない様にするって」

ジュードの言葉にヨルは、アルヴィンの方を見る。

「ま、優等生に頼まれたからな」

まだ、疑いの目を向けているヨルをホームズは、目で制すると、ミラに話す。

「……狙いは、多分ミラだけじゃないよね」

恨みを買っているのは、ホームズも同じだ。

「だが、奴らが優先して倒したいのは、私だろう」

ホームズが言うつもりのセリフをミラは先回りする。

「だから、今回は私が出よう。ホームズ、お前はジュード達と共に観客席から、私を狙おうとしているアルクノアを見つけてくれ」

ホームズは、渋々頷く。

「………わかった。君も気を付けなよ」

ホームズのセリフを聞くとミラは、思い出した様に手を叩く。

「ホームズ」

「ん?」

「心配かけて済まなかった」

ミラは先程抓られた頬を撫でながら言う。

ミラから、面と向かって謝られるのは、初めてだったため、目を丸くする。

「………その通りだから、よーく反省したまえ」

ホームズはそう言った。

「人のこと、言えませんよ、ホームズさん」

ローエンは、そう言ってホームズを見る。ホームズは、気まずそうにしている。

ローズを背負って血だらけで帰ってきたり、いじめられてても助けを求めなかったりとホームズもなかなかのものだ。

「さあ、行こう」

ミラは皆を先導する。

 

 

 

一同は、ミラについていく。

 

 

 

そんな中、ローズは、列の後ろで髪を縛り直す。

「どうしたの、ローズ?髪緩んでたの?」

ローズは、首を横に振る。

「別に、ただ、気合いを入れようと思って」

口に髪留めの輪っかを口に咥える。

そして、歩きながら髪を後ろで一つにまとめると、口にあった紐を髪に持っていき、綺麗に縛り、後ろに垂らす。

いつもの、ローズのお約束のスタイルになった。

レイアは、その手際に驚いている。

「凄いね、ローズ。鏡を使わずにこんなに綺麗に………」

「慣れれば誰だってできるわ」

謙遜する訳でも、照れる訳でもなく、ただ、当たり前の様に言う。

レイアは、引きつり笑いをしている。

「そういえばさ、その髪留めってローズが買ったの?」

「いいえ」

ローズは、少し間を置く。

「私の誕生日にイスラが買ってくれたの、家族が殺された次の年の、ね」

そう言ってローズは、レイアに微笑みかける。

「だから、私の宝物なの」

「そう」

同時にレイアも笑顔になる。

その後、頬をパンと両手で叩いて気合いを入れる。

「よし、頑張ろう!」

「えぇ!」

ローズもそう答え、二人は、前を歩いている一行に追いついた。

 

 

 

 

一行は、辿り着く。

 

 

 

 

 

 

文字通り死闘を繰り広げるであろう、舞台へと。

 

 

◇◇◇◇

 

 

【最初に登場したのは、キタル族代表だ!】

 

 

場内のアナウンスと共にミラは堂々と歩いてくる。

 

 

【先日不幸な出来事がありましたが、大会執行部の努力により、無事、開催される事になりました】

 

 

ホームズは、観客席で辺りを見回している。

皆それぞれが持ち場について警戒している。

 

 

【それに伴い、今回は公平に行う為、過去の慣例にならい、前王時代のルールでしたいと思います】

 

 

「………人間というのは、随分と頭の悪い事をいう様になったな」

「螺子が飛んでいるだろうさ」

ヨルとホームズは、呆れている。

そんな事をしながら、ミラの対戦相手を見る。

対戦相手はやけにでかい機械の様な物をもっている。

 

 

「………アレは!」

ホームズは、見覚えのある機械に思わず目を剥く。

 

 

 

 

 

 

一瞬の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

機械の切っ先に電気がチャージされたかと思ったら、次の瞬間には、電撃が真っ直ぐにミラに向かって走っていた。

 

 

「今、詠唱をしなかった!」

ホームズとは、離れた所にいたジュードも驚いている。

 

「アレが黒匣(ジン)だったのかい……」

ホームズは、舌打ちをする。

詠唱なしで、あの威力、最早兵器の域だ。

あの大きさであの威力なのだから、クルスニクの槍なんて正直考えたくも無い。

黒匣(ジン)一つでも厄介なのに、一人の筈の対戦相手が次々とそれぞれ、黒匣(ジン)をもってやってくる。

 

 

「こりゃあ、マズイかも……」

ホームズは、苦々しい顔になる。

 

 

 

 

「いや、離して!」

 

 

 

 

ホームズが呟いたと同時に、エリーゼの声が聞こえた。

ホームズが思わず声のした方、つまり、右斜め前の席に顔を向けると、そこには、ティポを取り返そうとするエリーゼがいた。

ミラが狙いの筈なのに、襲われているのは、エリーゼとティポだ。

「おい、さっきから、奴らの行動がめちゃくちゃでちぐはぐだ。

どうなってやがる、ホームズ」

ヨルは何が何だかわけが分からないという、感じだ。

しかし、ホームズから返事はない。

「ホームズ?」

怪訝そうにヨルはホームズの顔を覗き込む。

 

 

 

 

 

 

 

「……ったく奴らは、おれのわき腹に恨みでもあるのかねぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、ホームズの口から血が吐き出される。

ホームズの口の中は鉄の味でいっぱいだ。

「ホームズ!」

ヨルの声を聞きながら、ホームズは膝から崩れ落ちる。

わき腹を見てみるとナイフが、深々と刺さっている。

「クソ!取り敢えず、あのムスメか、つり目のガキ、呼んでこないと………」

ヨルは、辺りを見回す。

一番近くにいた、レイアをヨルが呼ぼうとするが、ホームズは、口に指を当てる。

「コレは………おれ達で対処しよう」

ホームズは、無理矢理立ち上がり、ナイフを引き抜く。

案の定血が溢れ出てくる。

「やっぱりねぇ………ま、ナイフなんて、どうせ、取れるし」

ホームズは、そうつぶやく。

そして、ハンカチを傷口にあて、出発前にマーロウにもらった包帯で縛る。

マーロウが意図した用途とは、少し違うがホームズは、何とか、形だけでも、止血する。

止血を終えると、再びヨルに向き直る。

「流石に、こんな事をする奴を野放しにしておくわけにもいかないだろう?」

ホームズの言葉にヨルは、思わず耳を疑った。

「正気か?!こんな人間がいる中から、お前を刺した奴を見つけるっていうのか?!」

「まあね。考えがないわけじゃない」

ホームズは、ヨルの言葉に答える。

しかし、ヨルの心配事は、それだけではない。

寧ろ、傷の方が重要だ。

「………分かってるのか?ここじゃ、人が多すぎて、お前の唯一の回復手段の守護方陣が使えないんだぞ。急所を外れているとは言え、軽い怪我じゃない。治療を優先した方がいいと思うが……」

ホームズは、額に油汗を浮かべるとポケットから、アップルグミを出して、食べる。

少しだけ、顔に生気が戻る。

「ミラにエリーゼにティポ……これ以上みんなにトラブルを与えてもしょうがない」

ホームズの目には、決意の色が現れていた。

自分の事を後回しにするこのクセ。

ホームズの達が悪い所は、その誰もが尻込みするような選択肢を強い決意をもって選ぶのだ。

こうなってしまうと、誰にも止められない。

何を言っても無駄だと思ったヨルは、忌々しそうに顔を歪め、それから、ため息を吐く。

「………死ぬなよ。俺まで死ぬ事になるんだからな」

ヨルとホームズの関係は、そう言うものなのだ。

「そうならないように、君がいるんだろう?」

ホームズのいたずらっぽい笑みを見てヨルは、嫌そうに顔を歪める。

 

 

 

 

 

「いい性格してるな、本当に」

「だろう?」

 

 

 

 









どうして、休日に限って早くに目が覚めるのでしょうか………


二度寝してやる!!



では、また五十話で( ´ ▽ ` )ノ

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