海見たいな……
「やっ……と、着い……た」
「ちょっ……喋んな、ゲロ臭い」
ようやく、ルロンドに到着したホームズとヨル。
病院に行ったり、エレンピオスの情報を探したり、商品を仕入れたりとやることは山ほどあるのだが……
「…………」
船酔いのせいでぐったりと地面に突っ伏している。
「おい、いい加減にしろ。船からはもう降りただろうが。」
「おれに構わず……先に行け……」
右手をふらふらと動かしている。
「俺がお前から一定以上離れられないと知ってて言ってるな。おら、せめてベンチまで行け。こんなところで寝てたら迷惑だろうが」
「うう……まさか、君に常識について説教されるなんて…世も末だね……」
「噛むぞ」
「分かったよ……動くよ、動きますよ。毎度毎度その地味にリアルな脅しやめてくれない」
そう言うとズリスリとベンチまで這って移動した。その様子は、はっきり言って気持ち悪いの一言に尽きる。
「はあ、地面が揺れないて、いいものだなあ」
ホームズは深く腰をかけながらいった。今なら思える、吹き抜ける潮風が気持ちいいと。
しかし、風下にいるヨルはたまったもんじゃない。潮風が吹くたびに、ホームズの方から酸っぱい匂いが漂って来るのだ。
「ほんとにゲロ臭い。場所交換しろ」
「やだよ、しばらくは動きたくない」
ホームズはベンチの背に頭を預け、空を見上げた。太陽が眩しい。日光を遮る様に左手にある円盤をかざす。するとその時、左手の中指にある指輪がきらりと光った。
「はあ〜あ、そろそろ手がかりが欲しいな」
エレンピオスを探してはや2年。ほとんど空振り、だけで終わらず、戦闘になることの方が多くいい加減疲れてきた。ここいらで、一発何か欲しいものだ。
「その為にもまず、病院にいけ」
ヨルは鼻を前足で抑え隣から漂ってくる悪臭に耐えながら言った。尻尾は、ホームズの包帯の巻かれているところを指している。
それを見て、ホームズは思い出した様にげんなりとした顔で言った。
「あれは、きつかった。よく生きてたもんだと思うよ」
「ま、ひとえに俺のお陰だな」
ヨルは胸を張った。
「ひとえに君のせいだろう。君が喋らなかったら、君の正体がバレる事もなく、戦闘にもならなかっただろうね」
対する、ホームズはジト目を送った。
「お前……ぬいぐるみが喋ったら誰だって驚くだろ」
「猫が喋りながら言ってもいまいち説得力に欠けるな」
それから、ん、力をいれて伸びをすると立ち上がった。
「さて、船酔いもだいぶ引いたし、そろそろいくか!」
そう言って、ルロンドの街に向かって歩き始めた。
「肩に乗るかい?」
「はあ、匂いぐらい我慢するか」
ホームズの問いかけに応えると、いつものようにぴょんと、跳び乗った。
「?」
「どうしたのさ?」
船に乗っている時もそうだった。肩に乗る時いつもと違う感じたのだ。
しかし、まあ深く考えてもしょうがない。ヨルはそう思い直し、ホームズになんでもないと応えた。
この違和感の正体が後々面倒ごとを引き起こすのだが……彼等はまだ、知る由もない。
ルロンドはとても静かでのどかな街だった。
「いいね、おれ老後はここで暮らしたいよ」
港から続く坂道を登りながらそんなことをホームズは言っていた。ちなみに、ただいま18歳。
「老後まで生きてるといいけどな」
「今言わないでよ。笑えないよ」
つい最近、死にかけたばかりである。
「今後もありそうだよな」
「だから笑えないって……」
そんなことを言っていると病院についた。ついたのだが…
「マティス治療院?」
看板にそう書かれていた。
「こんにちはー!」
入ると、元気な女の子が迎えてくれた。歳はジュードと同じくらいだろうか。なんて事を考えていると、
「あれ、見ない人だねどうしたの?わたしはレイア、レイア・ロランド。あなたは?」
凄くフレンドリーに話しかけられた。しかも自己紹介付き。
「おれはホームズ、ホームズ・ヴォルマーノ。そして、この黒猫がヨル」
驚いたが、一応自己紹介をすると、包帯を見せながら、怪我をした事、船で一応処置して貰った事、ルロンドについたら念のため病院に行くよう言われたことを話した。
レイアはそれらをなるほどと言いながらメモをしていた。
ホームズは怪我した理由を言おうどうしようか迷ったので
「ところで、君はここの家の子かい?」
少し探りを入れてみた。
「違うよ。わたしは看護師だよ」
ならば、ともう一つ聞く。
「ジュード・マティスって知ってる?」
「知ってるも何も、ジュードはわたしの幼馴染みだよ」
満面の笑みで応えた。それはもう嬉しそうに。
怪我した理由をいうのはやめとこう。医師に言わなければならなくても、せめてこの子にだけは言わないでおこうと、ホームズは決意した。
そんなホームズの決意よそにレイアはそれに、と続けた。
「この治療院の院長のディラック先生の一人息子だよ。今は医者の勉強をする為にイル・ファンにいるんだ」
案の定だった。どおりで、ジュードがどのへんの家にいるか、どんな家かしっかりと言わないはずだ。行けば絶対分かるもの。
はあ、とため息をついた。ラッキーと喜びたいのだが、不自然な幸運のしっぺ返しを食らってしまったばかりの身としては素直に喜べない。
(しっぺ返しどころじゃなかったしな……)
そんなことを思っていると、今度はレイアが質問してきた。
「どうしてジュードを知っているの?」
「道端でばったり会ってね、その時色々話したんだ」
嘘は言ってない。サマンガン街道も道端と言うし、偶然出会ったのも本当だ。イル・ファンではないが。
「色々って?」
「王様の話とか、シャール卿のこととかね」
嘘は言ってない。ホームズが話しただけだが。
「どう、元気そうだった?」
「とっても元気だったよ」
それは、ホームズの体で実証済みだ。とりあえず、朝飯を口から出させるほど元気だ。
「ふーん、良かった。手紙出してもぜんっぜん返って来ないからそう言うのわかんないだよね。でも、良かった元気そうで」
ただいま元気に逃亡犯です。
レイアは元気そうな幼馴染みの話を嬉しそうに聞いていた。しかし、仕事もちゃんとやっており問診票の様なものを書きあげていた。
「さて、順番が来たら呼ぶから待っててね」
レイアはそう言って待合室を手で示した。
ホームズがそこに行こうとすると、その前にとレイアが言った。
「猫、預からせてもらうね。もし、猫アレルギーの患者さんがいると大変だからね」
ふむ、とホームズは考える。一定の距離以上離れられないのだが、まあこの中くらいなら大丈夫だろうと、思いヨルをレイアに渡した。
「せいぜい、可愛がられて来いよ」
思いっきり嫌そうな顔して、ヨルはレイアに抱っこされていた。
待合室で座っていると隣の老人に話しかけられた。
「いい子じゃろ、レイアちゃん。笑顔もかわいいし」
「そうですね」
とホームズは同意した。あの時の笑顔は間違いなく輝いていた。ちなみにホームズの笑顔はヨル曰く、胡散臭いらしい。
「とっても、努力家でな。頑張ればどうにかなる、が信条なんじゃよ」
「それはすごいですね」
ホームズは少し驚いた。だいたいあの年頃にもなると頑張ってもどうにもならないことと言うものに出会い、努力することが馬鹿らしくなってしまうものなのに、とホームズは思った。
「さらにの、あの子はジュード一筋。健気じゃろ」
「そうですね」
ミラとジュードが息を合わせて戦っているのを思い出した。……言わないでおこう。
「だから、狙っても、アタックしても無駄じゃよ」
ニヤニヤとしながらその老人は言った。どうやらそれが言いたかった様だ。
「ふふ、分かりました。肝に命じておきます」
ホームズは微笑みながら平然と返した。ある程度予想は出来ていたのでこれぐらいの返しは余裕だ。
「なんだか胡散臭い笑顔じゃのう」
この返しは予想外だった。そんなにおれの笑顔は胡散臭いのだろうか?そんなことを考えていると、ホームズは診察室に呼ばれた。ディラック・ギタ・マティスに。
「怪我は一応、応急手当はされているが、軽くはない。一体何をした」
「命懸けの戦いを少々」
「一応生きているところを確認すると君が勝ったと考えればいいかな?」
「逃げるが勝ちって知ってます?」
「なるほど。それより君は船酔いする方かな?」
「やっぱり、臭いですか?」
という事はレイアにもきっと思われていただろう。
男にとって、女の子に臭いと思われるのは死活問題だ。
面と向かって言われたら恐らく一週間は立ち直れない。
そんな風にショックを受けているホームズをよそにディラックは傷を診ていった。
「入院するほどでもないな。しばらく通って貰えばどうにかなる。とはいえ君はここの人間ではないから、入院させた方が都合がいいのだが……」
そう言って、なにかの紙を見る。
「あいにく、ベットが空いていない。あるにはあるがそこは急患用なんだ。すまないが、ロランドの所で泊まってくれないか?話は私が通しておこう」
「ロランド?」
「宿屋だ」
何処かで聞いた様な?と思ったがまあ、深く考えずにいいですよと言った。
「他になにか聞きたいことはあるか?」
「一つだけ」
ホームズは人差し指を立てて聞いた。
「エレンピオスへの行き方を知りませんか」
ディラックの手が止まった。
「君はアルクノアか?いや違うな。アルクノアだったらそんな質問を私なんかにしない」
「理解が早くて助かりますよ、マティス先生。危うく第二ラウンドに突入するところでしたよ」
ホームズホッと胸を撫でおろす。
「君は何故そんなことを知りたい?」
ディラックは聞いた。
「おれの両親がエレンピオス人なんですよ。だから、両親の生まれ故郷ぐらい見ときたいなと思いましてね」
「生まれ故郷を見たい?」
「そういうもんじゃないですか?自分を育てた両親が何処でどういう風に生きてきたか?そんな場所を見て見たいとおもいませんか?少なくともおれは見たいですよ」
そして何より、と続ける。
「見た事のない場所、行った事のない場所に行きたいと思うのは、当たり前じゃないですか?」
ホームズの言い分を聞き、ディラックは少し考えた。
「何処まで、知っている?」
「両親がエレンピオス人だということ、ジルニトラという船に乗っていた人の大半がアルクノアに属している事。そして、おれ達エレンピオス人は霊力野が退化している事、ぐらいですかね」
「なるほど、
「なんか、昔言っていたような、言わなかったようなて、感じです。」
ホームズは余り、エレンピオスについて知らない様だ。恐らく、両親がわざと教えなかったのだろう。とディラックは考える。エレンピオス人の、やっている事に息子を巻き込まれないために。アルクノアに巻き込まれない様に。
そんな親心を無視していいのか、とも思った。
その時、疑問点が一つ出てきた。
「ジルニトラの乗客なんて、どうやって調べた?」
「ああ、母さんに渡されたんですよ、乗客名簿をね。エレンピオスに行ってみたい、と言ったら、『じゃあ、調べてご覧。』って」
そもそも、そんな親心はなかった。
「『はっきり言って危険しかないけど、』と一応忠告付きで」
「君の母親は何を考えているのだ」
ディラックは額に手を当てながら言った。
「それ、おれも聞きました……」
ホームズは当時の事を思い出して、遠い目をしている。
「なんて、応えていた」
「『我が子の幸せ』と言っていましたよ」
もう、ついていけない。ディラックは頭が痛くなってきた。その様子を察したのかホームズは続けた。
「まあ、要するに、最初の頃はアルクノアに巻き込まれない様に危険を避けていたけれど、知りたいのだったらその危険と向き合いな、という事らしいです」
「君の母親は教えてくれなかったのだな」
「まあ、母さん自身そこまで深く知らなかったというのが1番の理由ですが、それ以上に…」
「それ以上に?」
「『親は子どもを苦労させるものだ』との事でした」
ディラックは考える。なんとなく彼の母が言いたいことがわかってきたのだ。
苦労して、死にかけて、手に入れた事は、楽して母を頼って手に入れたものよりも、ずっとずっと価値のある物だ。そういう事を伝えたかったのだろう。
母としては、息子を危険になどさらしたくない。実際、彼が小さい頃は守っていたのだ。けれども今回は心を鬼して、息子に試練を与えたのだろう。
「それから君はずっと手掛かり探して旅をしている訳か、一体どれくらい?」
「もう、かれこれ2年です」
「『かわいい子には旅をさせよ』というやつだな」
ディラックはやっと理解出来た様だった
「?別に、旅なら小さい頃からしていますよ。母親も行商だったので、おれもついて行きました」
ホームズは、微妙にトンチンカンなことを言っていたが、ディラックは気にせずに言った。
「わかった話そう。君のその2年の努力に免じて」
ゼステリア、ゾクゾクとキャラが出て来てますね(^O^)
楽しみでしょうがないです!!
ただ、なんで、公式ホームページより毎回ジャンプの方が先なんだろうと思いますが……
PV第2弾が早く見たい!!