1人と1匹   作:takoyaki

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五十二話です。




三連休なので、連続投稿してみました!



日曜朝八時も、もう終わりそうですね………



待ちきれないような、寂しい様な………


てなわけで、どうぞ!


無理も道理も通らない

「随分経ちますね……」

ローエンは、ポツリとこぼす。

かれこれ大分時間が経った。

しかし、何の報告もないのだ。

この何もしない時間というものは、人を不安にさせる。

「アルヴィン、もしかして………」

「…………」

不安というものは、人によからなぬ思考を働かせる。

ジュードの言葉にミラは否定しない。

レイアは、先程から、下を向いてる。

「わたし、どうして、エリーゼが席を離れちゃったのに気付かなかったんだろ……そうすれば……」

レイアは、俯いて声も震えている。

「レイアのせいじゃないよ」

「でも………」

自分を責めるレイアをジュードは、慰めるがレイアは、なかなか元気にならない。

ローズは、この雰囲気を振り払うかの様に手をパンと叩く。

「………その辺にしときましょ。今回の件は、言い出せばキリがないわ」

そう言って、ローズは、静かに寝息をたてているホームズを見る。

「………だけど……」

自分の落ち度を責めてしまう事は中々やめれない。

 

 

「二人の足取りが分かったぞ!!」

 

 

ユルゲンスがドアを勢いよく開け、入ってきた。

 

「何処へ行った!?」

「王の狩り場だ」

 

 

ミラの質問に後からのっそりと入ってきた男がキセルを咥えながら答える。

「マーロウさん?!」

ローズは、少し驚く。

マーロウは、そんなローズにひらひらと手を振って返す。

「王の狩り場?」

ジュードは、不思議そうに聞き返す。

「キタル族の所有する土地だ。街のそばに広がる原生林帯で、代々ア・ジュール王が狩りをするんだ」

今度はユルゲンスが答える。

マーロウは、煙をゆっくりと吐き出すと後を引き継ぐ様に口を開く。

「んで、ついでに言うと危険な魔物がわんさかいる。街のすぐ近くの野原以外な」

「分かりました………ホームズ、起きなさい」

「ん………」

ローズがホームズを揺すって起こす。

ホームズは、ゆっくりと起き上がるとベットからでる。

「あれ?マーロウさん、どうしたんです?」

どうやら、ようやく気付いた様だ。

マーロウは、呆れている。

「情報を届けに来たんだよ、奴ら、王の狩り場に向かったらしい」

「…………了解です」

ホームズは、そう言うと近くにかけてあったポンチョを羽織る。

そして、靴紐を結ぶ。

「ヨル、君も起きたまえよ」

ヨルは、ホームズの言葉に不機嫌そうに起きるとホームズの肩に乗る。

準備の出来たホームズを見るとジュードは立ち上がる。

「ありがとう、ユルゲンスさん、マーロウさん」

ジュードは、お礼を二人に言う。

しかし、ユルゲンスは首をゆっくりと横に振る。

「お礼なら、マーロウさんに言ってくれ。マーロウさんがいなかったら、未だに捜索が出来なかった」

ユルゲンスは、親指でマーロウを指す。

「どんな手を使ったんです?」

ホームズの問いにマーロウは、にやりと笑う。

あまり、いい予感はしない。

「さてな………さ、早いとこ捜しに行って来い。それから、ジュード、」

「はい?」

突然呼ばれるジュードは、戸惑う。

「見つけたのは、ユルゲンス達だ。だから、礼ならそっちな」

キセルを咥えていつもの調子で言うマーロウ。

ジュードは、少し動きを止めるがすぐに笑顔になる。

「二人ともありがとうございました」

そう言うとジュード達は部屋を後にした。

部屋から出るのを見送ると、マーロウは、キセルを咥え直す。

ジュードの言葉に少し面食らいとマーロウは、ふぅっと静かに息を吐き出す。

「やれやれ、年をとったなぁ、俺も………ま、後は若い奴らに任せるか」

 

 

◇◇◇◇

 

 

街を出て、すぐの所に花一面の野原が広がっていた。

「これって……」

レイアは、ホームズとローズの話を思い浮かべる。

ホームズは、手をヒラヒラと振る。

「そ、おれとローズの思い出の場所。ここは、まだ魔物達がいないんだよ」

そう言って、ホームズは、地面を見る。

「足跡は、ない。消した形跡も、ない。………ヨル」

「へいへい、本当は、こんな犬みたいな事したくないんだが………」

ヨルは、ホームズの肩から降りると野原の匂いを嗅ぐ。

「ふむ、ジャリとチャラ男の匂いがしない。こっちは通っていない様だ」

「なら、こちらか」

ミラは別の方向を指差す。

「多分、ね」

ホームズは、頷く。

ローズは、腕を組んで考える。

「そっちの方角は、確か………リーベリー岩孔………なるほど、おあっつら向きの場所ね」

「場所も分かったし、急ごう!」

ジュードの言葉に皆頷く。

そして、直ぐに野原に背を向け、一行は、走り出す。

しかし、野原を離れると直ぐに魔物に囲まれてしまった。

「あぁ、もう邪魔!!食らえ、瞬迅脚!!」

ホームズは、声を上げると、そのまま構え飛び蹴りを魔物にお見舞いする。

魔物はダウンするのだが、直ぐに別の魔物が来る。

「くそ!輪舞旋風!」

次の魔物をホームズは、回し蹴りを当てる。

しかし、今度は当たりが弱かった様だ。中途半端に攻撃した為、相手を怒らせてしまった。

「げっ!!」

回し蹴りを放った直後であるホームズは、隙だらけだ。

回避もガードも出来ない。

 

 

 

 

 

「集え!輝け……!」

 

 

 

ホームズの目の前で光が収束する。

 

 

「んで、弾けろ!フォトン!」

 

 

ローズの詠唱が完成し、収束した光が弾け、魔物を吹き飛ばす。

「助かったよ、ローズ!」

ホームズは、ローズに感謝する。

当の本人は、ホームズの方を見ずに魔物を見ている。

「ホームズ、魔物は倒さなくてもいいわ、キリがないもの。代わりに時間を稼いで」

「………りょーかい」

ホームズは、返事と共に走り出す。

ローズは、刀を構えバツ印を作る。

「豪雨でこい!聖なる光!」

詠唱を始めたローズを潰そうと魔物が群がってくる。

しかし、

「爆砕陣」

ホームズの空中から、かかと落とし。

地面が爆発し、魔物達を吹き飛ばす。

「もういっちょぉ!守護方陣!」

ホームズは、力強く踏み込む。青白い光の円がホームズとローズを囲む。

 

魔物達は動けない。

 

次の瞬間ローズは、閉じていた目を開く。

詠唱は完成した、

 

守護方陣の青白い光を浴びながら、ローズは高らかに告げる。

 

 

 

 

 

「レイ!!」

 

 

 

周りにいた魔物に光が雨となって降り注ぐ。

それで倒れた魔物もいるが、普通に立っている魔物もいる。

「今のうち!」

ローズの言葉と共に一行は、ダッシュで逃げる。

幸い追ってくる魔物はいなかった。

魔物から逃げきると一同は、一息つく。

「で、ヨル、エリーゼの霊力野(ゲート)の気配は?」

「小ムスメの読み通りだ。リーベリー岩孔に気配がある」

ヨルは、耳と髭を緊張させ、答えた。

「急ごう」

「そうだね」

ジュードの言葉に一行は、頷くとそのまま走り出した。

 

 

暗く広がるリーベリー岩孔へ。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「本当にここで間違いないんだね、ヨル?」

ジュード達はリーベリー岩孔に辿り着いた。

そこは、薄暗く何も分からない。

ある意味アジトにするには、ここ程ピッタリな場所は、ないかもしれない。

 

 

「ああ、見ろ」

ヨルは、そう言って地面にある、小さな足跡を示す。

「まだ、新しいですね」

ローエンは、屈んで観察する。

「ほんとだ。きっとエリーゼのだよ」

レイアは、喜んでミラを見る。

ミラは静かに頷く。

「探してみよう。ただし、慎重にな」

「それが出来れば苦労はないねぇ」

ホームズは、そう言って足元にある石を拾って振り向き様に、後ろ後方に投げる。

ホームズの投げた石はアルクノアの手に当たる。

石の痛みに思わず、持っていた黒匣(ジン)を落とす。

ホームズは、それと同時に駆け出し、アルクノアの顔面に回し蹴りを叩き込む。

しかし、当たりが弱い。

ホームズは、まだ、本調子ではない。

だから、先程から、後もう一押しの威力が出ない。

ホームズは、相手への攻撃が不発な事にいち早く気付くとそのまま顔を掴み、地面に叩きつけた。

叩きつけられたアルクノアは、かろうじて、意識を保っていた。

ホームズは、相手の背中の上に乗ると、腕を締め上げ、拘束する。

「グッ!」

「二度も三度も不意打ちを食らうわけないだろう」

ホームズは、ギリギリと腕の締め上げを強くして行く。

「さて、答えて貰おうか、あの大男と、ぬいぐるみ連れた女の子は、どこだい?」

「………向こうの奥だ」

ホームズは、少し拍子抜けした。もう少し、抵抗をするなり沈黙をするなり、何かすると思ったのだ。

しかし、ホームズの思惑とは逆にあっさりと答えた。

「………ヨル、少し集中してその方角を探ってくれないかい?」

ヨルは頷くと、集中的にその方角のエリーゼの霊力野(ゲート)の気配を探る。

「いるな。嘘はついてない様だ」

ヨルの言葉にレイアとローズは走り出した。

残されたジュード、ローエン、ミラ、ホームズ、そして、ヨルは首を傾げる。

「えらく、素直じゃないか。どういうつもりだい?」

「行けば分かる」

ホームズは、拘束を強くしようとするが、ミラに止められる。

「後にしよう、ホームズ。まずは、エリーゼとアルヴィンが先だ」

「………そうだねぇ」

ホームズは、アルクノアを無理矢理立ち上がらせ鳩尾に、膝蹴りを叩き込んだ。

アルクノアは、変な声を出して倒れる。

完全に意識が飛んだ様だ。

それを見届けると、ミラ達もレイア達の後を追った。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

一行が辿り着くと、そこには、ぐったりしているアルヴィンと、下を向いているエリーゼがいた。

ジュードは、怪我をしているアルヴィンに駆け寄り治療を始める。

「んだよ………俺に任せるんじゃなかったのかよ」

弱々しく言う不満を言うアルヴィン。

「拗ねないでおくれよ。心配したんだよ」

ホームズは、アルヴィンに苦笑いする。

「エリーゼ……」

レイアが心配して名前を呼ぶとエリーゼは、レイアを通り過ぎて、ミラに泣いて駆け寄った。

ミラは突然の事に戸惑っている。

「どうした?怪我はしてないようだが?」

「ティポが、ティポが……」

レイアは、ティポに目を向ける。

連れたかれたかと思ったら地面に放置してある。

「良かった、ティポも無事で……」

 

 

 

 

 

 

 

『はじめまして、まずは僕に名前をつけてね』

 

 

 

 

 

 

 

 

「え………?」

 

 

 

突然の事に、レイアは、硬直する。

『はじめまして、まずは僕に名前をつけてね』

そんなレイアに構わず、ティポは、壊れた様に繰り返す。

「………これは?」

ローズの理解が全く追いつかない。

「アルクノアの一人が、ティポから何かを抜いた途端そうなっちまった」

アルヴィンが、みんなの疑問に答える。

ホームズは、腕を組んで考える。

「そうか………だから、あのアルクノアは、アルヴィン達と居場所を教えたのか………」

もう、既に目的は、果たされているのだ。

隠す理由は、何処にもない。

「ティポ……やっぱり、仕掛けで動いてたんだ……」

ジュードは、言いづらそうに口を開く。

「仕掛け……?」

エリーゼは、涙声で聞き返す。

「うん。自分で喋ったり、動いたりする様に作られたって事」

あまり言ってて愉快な事ではない。しかし、ジュードは、エリーゼに告げた。それが年上の役目と言うべきものなのだろう。

「でも………それでも……お友達だったんです……」

エリーゼは、訴える様に泣き崩れてしまった。

「で、そのアルクノアはどうしたんだい?」

ホームズは、疑問をアルヴィンにぶつける。

「一人はやったけど、もう一人には逃げられた」

「感謝する。アルヴィン」

アルヴィンの言葉を聞いたミラは、そう言うとエリーゼを引き剥がす。

エリーゼは、そんなミラを信じられないものを見るような目をする。

ミラは、エリーゼの事を気にせず、黒匣(ジン)を壊す。

ホームズは、その姿を複雑な面持ちで見ている。

「ミラ、ティポは?」

それでもエリーゼは、ミラに尋ねる。ホームズとヨル、そして、ローズの面々は、知らないが、ミラはティポを助け出した事がある。

「抜き取られたものを取り戻せば、元に戻るんじゃないかな」

ジュードは、レイアからティポを受け取りながら言う。

「アルヴィン、アルクノアがにげたのは?」

「とっくの前だよ」

ジュードの言葉を聞くと、ミラはアルヴィンに尋ねる。しかし、返って来たのは一番聞きたくない言葉だった。

何故なら、ミラが次に何を言うのか、簡単に想像ができるのだ。

「なら、取り戻すのは難しいだろ。ここには、もう用はないな」

「え………でも、ミラなら………」

縋る様なエリーゼの言葉にミラは容赦無く次の言葉を告げる。

「お前が、奴らを捜したいと言うなら止めはしない。だが、その時は、お前とはそこで、お別れだ」

「………」

エリーゼは、不満そうに言葉を飲み込む。

「貴様のオモチャの為に割く時間はないってことだ」

納得できてないないエリーゼに、ヨルはとどめの一撃を刺す。

「オ……オモチャ?」

「ヨル!」

ローズが食ってかかる。

ヨルの言葉にエリーゼは、バットで殴られたな衝撃をうける。

ヨルは、激昂したローズを馬鹿にした様に見る。

「じゃあ、お前が捜しに行ってくるか?俺は止めんぞ。貴様の知り合いが何人死のうが知ったことではないからな」

ウッと固めた拳をローズは解く。そう、ミラの目的は、クルスニクの槍を破壊する事だ。

ローズは、それに協力する為にここにいるのだ。

自分の故郷を守る為に。

ヨルの言葉から、我に返ったエリーゼは、何かを思いついた様にホームズの方をみる。

「マーロウさんに……頼んで、貰えませんか……?」

エリーゼの精一杯のお願いだが、ホームズは、渋い顔をして首を横に振る。

「マーロウさんは、君達を捜す為にかなり無茶な手を使ったみたいなんだ。……正直、あの人をこれ以上アルクノアに関わらせたくない」

「そんな………」

誰もアルクノアを追う事はない。

もう、ティポを元に戻す手は完全になくなった。

エリーゼは、肩を落とすしかなかった。

「取り敢えず、街に戻りませんか?」

ローエンが流れを変える様に静かに提案する。

「そうだねぇ」

ホームズが返事をし、皆もそれに続いた。

エリーゼは、いつもの様にティポを抱えているが、背中が、いつもより小さく見える。

ホームズは、そんなエリーゼを後ろから見て、ため息を吐く。

「何とかしてやりたいのは、やまやまなんだけどねぇ……」

「じゃあ、お前が捜しに行くか?」

ヨルがニヤリと笑う。

ホームズは、嫌そうな目をヨルに向ける。

「君は、そういう奴だよな」

ホームズもティポのデータを抜き取ったアルクノアを追う事は出来ない。

ホームズにも優先順位というものがある。

はっきり言ってエリーゼ達の問題は、ホームズにとっても優先されるものではない。

とはいえ、肩を落としているエリーゼを見て割り切れる程、ホームズは、大人ではない。

要は、甘いのだ。

「頭では分かっていてもって奴か………」

ヨルは、息を吐くようにこぼすと、ホームズの方を見る。

「いつもいつも、下らん事で悩みやがって……」

ヨルは、歩いているホームズの肩で暗闇に浮かぶ三日月の様な笑みを浮かべる。

「その悩みで、何が救われるんだ?」

ホームズは、不気味な笑みを浮かべているヨルを見る。

「………君には関係ない事だ」

ホームズは、ヨルの方を見ずに返す。

思い当たる節があるのだろう。

ホームズは、少し表情を固くする。

対照的に、ヨルはクックックと、おかしそうに笑う。

「そりゃあ、そうだ」

化け物のヨルにとって、誰が救われようと知った事では、ない。

ヨルはそこで、一旦言葉を切り、物思いに更けながらう呟く。

「ま、でも、人間の特権だよな、そういうの」

ホームズは、ヨルの言葉を聞き、片眉を上げる。

「羨ましいかい?」

「どっちだと思う?」

ニヤリと笑いながら尋ねるヨルに、ホームズは、肩をすくめる。

 

 

 

 

 

 

「おれには、関係ない事だ」

「そりゃあ、そうだ」

 

 

 

 

 

 

ヨルは、もう一度面白そうに笑った。

 





精霊術は、既存のもの(テイルズ内)ですが、ローズの詠唱は、オリジナルです。


勝手に自分で考えました。



最初は、レイヴンの様にふざけたものを考えていたんですが、ローズのキャラじゃないなぁと思い断念しました。



とはいえ、あんまり凝りすぎるのもな〜と考え、今の様になりました。


一応ブツブツと喋って(人のいない所で)ゴロが言い風にと考えてあります。
因みに、電車の中でもやりかけました。

最近じゃ、一番冷や汗をかいた瞬間でした。




ではまた五十三話で( ´ ▽ ` )ノ

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