1人と1匹   作:takoyaki

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五十六話です。


10月も始まりましたね




てなわけで、どうぞ


孝行したい時に限って、親がいない

「さて、昨日は、聞きそびれちゃったけど、いつシャン・ドゥに出発するんだい?」

ホームズの質問にジュードが説明する。

「なんか、今、戦争開始の雰囲気が高まっていて、許可なくワイバーンを飛ばせないんだって」

「………マジ?」

ホームズは、ゲッと言う顔をする。

「だから、許可を貰いにカン・バルクに行こうって事になったんだ」

ホームズは、組んでいた手をほどく。

「なるほどねぇ………戦争開始も現実味が出てきたって訳か」

ホームズは、やれやれと言った風にため息を吐く。

「それだけではない。エリーゼの実験についても聞きたいことがある」

ミラは、ジュードの説明にそう付け加える。

そこに更にレイアが口を挟む。

「でね、カンバルクの王様に言って協力して、戦ってもらえないかな〜って話もしてたの」

ホームズは、レイアの話を聞いて眉間にシワを寄せる。

「戦うって………誰と?」

「だ、誰って、クルスニクの槍を使おうとしている、ラ・シュガルの王様、ナハティガルと」

ホームズは、頭を抱える。

「戦うって、戦争だよ」

レイアは、言葉を詰まらせると目を逸らす。

「………アルヴィンと同じ事を言うんだね」

「戦ってもらおう、レイア」

先ほどの忠告する様子をガラッと変えて、ホームズは、レイアの肩に手を置き力強く言う。

「オイ………どういう意味だ」

アルヴィンは、こめかみをひくつかせる。

ホームズは、肩をすくめる。

「まあ、冗談は、さて置き………それぐらいの交渉はした方がいいかもね」

ただし、と指を一本、ピンと伸ばす。

「それをすれば否応なしに戦争に巻き込まれるからね、それぐらいの覚悟はしておいた方がいいんじゃない?」

ホームズの言葉にレイアは、頷く。

「因みに言うと、ホームズさん。ガンダラ要塞で増霊極(ブースター)の実験らしきものを見ました」

ホームズは、腕を組んで黙る。

代わりにヨルが口を開く。

「なるほど、両国して、増霊極(ブースター)の開発をしてて、両国して戦争をしようとしてる訳、か…………愉快な話だな」

ヨルの言葉に一同は、押し黙る。

なかなか、切羽詰まった現状なのだ。

「んで、出発は、いつだい?」

「明日かな。ミラの足の調子も考えると、今日、出発ってわけにもいかないから……」

ジュードの言い分にホームズは、黙って頷く。

「了解。それなら、今日一日は、自由行動ってところかい?」

「まあ、そんなところだ」

ミラの言葉にホームズは、ふむと腕を組んで考える。

今日一日、どうやって過ごそうかと。

ホームズとしては、一日中寝ていてもいいのだが………

そうこうしているうちに、アルヴィンが口を開く。

「んじゃあ、俺はちょっとよらなきゃならんところがあるんで、ここで失礼させてもらうぜ」

そう言って、アルヴィンは、部屋を出て行った。

「私も少し、街をまわるとしよう、ジュード、君はどうする」

ジュードは、人差し指を頭にこめかみに当てる。

「僕は買い出しに行ってくるよ。今回の騒動で色々と回復アイテムが減ったし」

「ふむ、なら、私も手伝おう」

ミラの提案にジュードは、ありがとうとお礼を言う。

「エリーゼも街を見てくれば?ジュード達と一緒に」

ローズは、エリーゼにそういうとエリーゼは、少し戸惑っていたが、ジュードがにっこりと笑うと小さく頷いた。

「では、私は武器を新調しにいきましょうかね」

ローエンは、あご髭を触っている。

「じゃあ、わたしも!」

レイアは、手を上げる。

そんなレイアをホームズは、半眼で見る。

「この前、新しいの買って上げたじゃないか……」

レイアは、ホームズの言葉に指を一本出してチッチッチッと振る。

「棍じゃなくて、包丁。流石に何の魔物切ったか分からない刃物で料理して欲しくないでしょ」

レイアの言うことも、もっともである。

ホームズも納得がいったようだ。

「………棍買ってあげたの?」

ローズが恐る恐る尋ねる。

レイアは、ギクリと肩をあげる。

そう、そこだけ聞くとレイアにプレゼントしたようにしか聞こえないのだ。

「そうだよ」

どう答えようか、レイアが迷っていると、ホームズはノータイムで返事をする。

案の定、ローズは、少し仏頂面になる。

(うわぁーーー!嘘は言ってないけど!!本当の事も言ってない!!)

心の中で、絶叫する。

まあ、確かに、買った事は事実だ。

正確に言うなら弁償したのだが。

そんな中、ミラは、ポンと手を叩く。

「おお、あの時の棍の事か!ちゃんと弁償したんだな」

「弁償?」

新たなキーワードにローズは、首を傾げる。

「うむ。ホームズとレイアが試合をしたのは、知っているだろう?あの時、ホームズは、レイアの棍を真っ二つに折ったのだ」

「何してるの、貴方は………」

ローズは、半眼で、ホームズを見る。

ホームズは、すっ、と視線を逸らす。

ホームズとしては、弁償する事になったということをいいたくなかったのだ。

何故なら、女の子の物を壊して!とローズに怒られそうだったからである。

「で、弁償するよう、私が言っておいたのだ」

「………へぇー」

ローズは、少し安心したような顔をしている。

レイアは、ホッと胸を撫で下ろす。

予想と違った反応にホームズも胸を撫で下ろす。

そんなホームズに若干イラッと来たが、レイアは、理性を持ってそれを抑える。

ホームズは、一日の過ごし方を考え込み、ポンと手を叩いてローズを見る。

「そうだ、ローズ。君の家族のお墓に案内しておくれ、挨拶したいし……」

ローズは、少し驚いた様だが直ぐに頷いた。

「えぇ、いいわよ。私も出発前にしようと思っていたし」

ヨルは、話が終わるといつもの様にホームズの肩に乗る。

皆の過ごし方が決まると、ミラは口を開く。

「それでは、各々宿屋で集合だな」

「だね。んじゃ、また後で」

そう言って、ホームズは、ローズと共に宿屋を出て行った。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「………それにしても、驚いたわ」

「なにがだい?」

ローズの言葉にホームズは、墓参り用の花を選びながら、答える。

「どうして、私の家族のお墓参りなんてしようと思ったの?」

ホームズは、これ下さいと店員に言うと、ローズの質問に答える。

「母さんが、随分とお世話になったみたいだからね」

ホームズは、店員から花を受け取ると歩き出す。

ホームズが進行方向を指差しローズに確認を取る。

ローズは、頷く。

「ホームズのお母さんが?」

そう言ってローズは、考え込む。

「あぁ。言われてみれば、よくウチによく来てたわ。貴方は、なんやかんやで、ウチには、来てないわね」

ホームズの「最低宣言」の後、最終日まで、二人は会っていない。

なので、ホームズは、ローズの姉以外顔を知らないのだ。

「ま、だからさ、母さんの代わりに俺が挨拶しとこうかなって」

そんな風に言うホームズにローズは、兼ねてからの疑問を尋ねる。

「というか、貴方のお母さん、どうして一緒じゃないの?」

ホームズは、肩をすくめる。

「おれも、もう十八だゼ。いつまでも、ママにベッタリってわけにはいかないだろう」

「………それもそうね。流石に私も少しヒクわ」

ホームズは、顔をひくつかせる。

「正直な感想、ドーモ」

ホームズは、一旦言葉を切るとローズに再び口を開く。

「てなわけで、カン・バルクで別れて来た」

「ふーん」

ローズは、そう返事をする。

「見えてきたわ、ここよ」

そう言って、指を指すとそこに墓石が三つある。

そして、墓石の前に酒が置いてある。

「………確実にマーロウさんだね」

「でしょうね」

「父さんと母さん達と一緒にお酒が飲みたかったな……」

ローズは、寂しそうに呟く。

「……まぁ、大人になったら、親と一緒に飲むってのは、夢だよね」

ホームズは、墓をに積もっている、埃を払う。

「……いなくなってから、あれもして欲しいとか、これもしたかったとか、してあげたかって次から次へと出てくるんだから世話ないわ」

ローズは、そう言って手を合わせる。

ホームズは、屈んで花を置き、手を合わせる。

「ヨル、君も手を合わせたら?」

「肉球でいいか?」

ホームズは、肩をすくめる。

「ご自由に」

ローズは、そんなヨルに驚きを禁じ得ない。

「……驚いたわ………貴方がそんな事をするなんて。てっきり、『こんな石に手を合わせて何が楽しいんだ?』ぐらい言われると思った」

明らかに、ローズは、昔の話をしている。

あの時のヨルは、死と言うものがよくわかっていなかった。

ヨルはつまらなそうに鼻を鳴らすと墓石を見る。

「………生きていれば変わるものだ」

そう言って、2人と1匹は、死者に挨拶をする。

 

 

 

 

 

今後の事、これからの事、最近の事、様々な事を彼らは心に思いながら手を合わせる。

 

 

 

 

それぞれが何を思っているか分からないが、それでもいいとホームズは、思った。

 

 

 

 

「さて…………」

ホームズは、目を開ける。

ヨルは気配を察して肩にのる。

「そろそろ行きますか」

「そうね」

ローズは、そう言ってホームズに賛同する。

「あ、そうだ。忘れるところだった」

そういうと、ローズは、懐から例のハンカチを出す。

「はい、落し物(・・・)貴方に渡しとくわ」

ホームズは、黙ってハンカチを見る。

それから深いため息を吐く。

「君の頭の上にでも落ちてたかい?」

「よく知ってるわね」

ローズは、少し含み笑いをする。

ホームズは、頭に手を当てる。

「………意地っ張り」

「借りは、作りたくないの」

ローズは、ぷぃっとホームズから顔を逸らす。

ホームズは、そんなローズからハンカチを受け取ると懐にしまう。

ヨルは二人のやり取りを肩から眺める。

(やれやれ、こいつらは、本当に……)

ヨルもため息を吐きたい気分だった。

そんなやり取りの後、ホームズ達は今一度墓を振り返る。

「最後にもう一度、していくかい?」

ローズは、ゆっくりと首を横に振る。

「いいわ。また、旅が終わった時にでも行くわ」

そう言うと今度は、ホームズの方を向く。

「貴方こそ、もういいの?」

ホームズは、静かに頷く。

「報告すべきことは、全部報告したからね」

今度はホームズがヨルに目を向ける。

「……別に俺もこれ以上やる事はない」

ヨルはホームズの質問に先回りして答えると欠伸を一つする。

「んじゃあ、街をうろついて、宿に帰りますか」

 

 

 

 

ホームズがそういうと一行は、歩き出した。

ローズは、最後にもう一度だけ、振り返る。

 

 

 

 

 

(いってきます。父さん、母さん、姉さん)

 

 

 

「おーい、ローズ!行くよ」

 

 

ホームズの声が離れたところから聞こえる。

 

 

 

「分かってるわよ!」

 

 

 

ローズは、そう返事をすると、墓石を振り返らずにホームズの元へ走って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 








さて、後もう少しで、カン・バルクに行きます。




企画もまだまだ、やっています。詳しくは活動報告にて
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