1人と1匹   作:takoyaki

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六十九話です



バトル?バトル?バトル?



てなわけで、どうぞ


怒髪天を衝きあげる

「何とか、逃げたけど………」

ローズたちは、門の外まで来た。

しかし、ここまで来るのに色々あり過ぎた。

仲間だと思っていた、アルヴィンに裏切られ、 ホームズに至っては、ジュード達に容赦ない攻撃を繰り出してきた。

「やっぱり、アルヴィンは、嘘つきです」

エリーゼは、俯く。

「ホームズも……折角仲直りしたのに………」

スカートの裾をギュッと握りしめる。

まさか、ホームズが裏切るなんて、エリーゼも思いもしなかったのだ。

分かりづらかったとは、言え、あんなに自分の事を心配していた人間がいとも簡単に、裏切った。

そして、仲直りしたばかりというのもダメージが大きい。

「……ホームズさんが、裏切るとは、思いませんでした」

先程のガイアス王との謁見を思い出していた。

あの時のホームズは、エリーゼの為に、仲間の為に、喧嘩を売っていた。

まさか、あれもこの為にやった事なのか?

ローエンにも分からなかった。

『アルヴィンをダンザイしろー!ホームズも引きずり出せー!』

ティポの言葉に、ローエンは、髭を触る。

「何か、事情があるのかと思いましたが、今回ばかりは………」

ローエンは、考える。

「何が僕が信じてるのを知ってるだ……アルヴィンも、ホームズも!!」

ジュードは、吐き捨てるように喋る。

 

次の瞬間、扉の降りる音がする。

城外へと続く最後の扉が閉まる。

 

「城外に逃げたぞー」

 

 

兵が追ってくる気配がする。

恐らく、ホームズが気絶しているのを見つけたのだろう。

 

ローエンが、急いで扉を調べる。

すると、近くに妙な機械がある。

 

 

「どうやら、ここにマナを注ぎ込めば、門が開くようです。

ただし、七個とも近いタイミングでやらなければなりません」

ローエンの言葉にジュードが頷く。

「ガンダラ要塞の時と同じだね」

「ガンダラ要塞?」

レイアは、不安げに首を傾げる。

「……何それ、聞いてないわよ」

ローズも不安げだ。

「大丈夫ですよ、精霊術と要領は、一緒です」

ローエンの言葉に二人は、戸惑いながら頷く。

「……分かった」

「……やってみるわ」

二人の返事を聞くとミラが口を開く。

「時間がない。機会(チャンス)は、一度だけだな」

その言葉を合図にそれぞれが持ち場に着く。

ローズは、言われた通りに手をかざす。

今回、自分は、全く役に立っていない。

何としてもここでケジメをつけなければならない。

ローズは、更に気合いを入れるとマナを注ぎ込む。

そんなことをしてる間に、ジュード、エリーゼ、ミラ、ローエンと着々と終わっていく。

「…………!」

ローズも最後にマナを注ぎ込み終える。

「出来た」

しかし、これで、全てではない。

まだ、レイアが残っていた。

全く色が変わることのない機械にレイアは、涙を堪える。

「……せっかく、足手まといじゃないって言われたんだ……それを裏切りたくない!」

期待を裏切るのは、確かに辛い。

しかし、それ以上に辛いのは、評価を裏切ることだ。

そんなレイアを嘲笑うかのように、機械は、全く色を変えない。

「どうして、かわらないのよ!!」

レイアがそう嘆くと、ミラの手が添えられる。

「ミラ………」

「……落ち着け、レイア。お前が人より劣っているなんて事は無いのだから………」

ミラの方を涙目で見る。

「あの時、ホームズをお前は倒した。だからこそ、ヨルも認めたのだろう」

「………聞いてたの?」

「さっきの言葉聞けば分かる」

レイアは、ミラの言葉に涙を拭う。

ミラは、それを確認すると、表情を引き締める。

「さあ、やるぞ!」

二人は、手をかざすと更にマナを注ぎ込む。

「「はぁああああ!!」」

すると、すぐに色が赤へと変わる。

赤に変わると、連動して扉が開く。

「早く!!」

ジュードの言葉に全員その扉を駆け抜けた。

ローズは、後ろを振り返ろうとするが、何とか堪える。

「……馬鹿」

 

 

 

 

ローズは、悔しそうに呟くと再び駆け出した。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「私を置いて先に行くなんて、そんな奴滅多にいないわよ」

青いタイツの女、プレザは、そう言って一行を見る。

「なるほど、どうやら、ホームズは、ちゃんと仕事をしたみたいね。さすが」

「貴方、一体……?」

「あら、気になっちゃう?やっぱり女の子よね……」

ふふふとからかう様にプレザは、ローズを笑う。

ローズは、それを取り合わず質問を続ける。

「『プレザ』って事は、ガイアス王の部下?」

「正解」

ローズの質問にプレザは、どうでもいいように手を叩く。

「……イル・ファンから、脱出した私達は、最初から狙われていたわけか………」

ミラは、腰に手を当ててプレザに言う。

「ニ・アケリアじゃ、アルが、陛下に貴方達の情報を売ったのよ」

ジュードは、それを聞くと悔しそうに口を噛む。

「アルヴィンは………最初からあなた達の仲間だったんだね」

ジュードのその言葉を聞くとプレザは、先程までの笑みを引っ込める。

「やめて。あんな男………仲間でもなんでもないわ」

その迫力に皆は、言葉を失う。

それを察するとすぐにまた笑顔をつくる。

「………ふふ、私達の関係は、貴方達にお任せするわ」

そう言って、プレザは、ジュードを見る。

「……アルは組織を渡り歩く根無し草の一匹オオカミよ、誰にも心を許さない、信じたほうが悪いわ、ボーヤ」

話が終わると今度は、ウィンガルが口を開く。

「戦になれば、クルスニクの槍が最たる脅威となるのは、明白。それがわからぬマクスウェルでは、ないだろう」

「お前らの縄張り争いに手を貸すもりはない」

ミラは、腕を組む。

「アレを手にすればお前達には悲惨な結末が待っているだろう」

ミラの言葉に顔をしかめると、刀を構える。

「随分と上から見られたものだな」

ミラも刀に手を掛ける。

そんなミラをローエンが手で制する。

「お辞めなさい!戦功者と名高い貴方もその誉、剣で得たわけではないでしょう」

ミラが刀から手を離す。

「若さが見誤らせているのでは?」

ウィンガルは、表情を崩さず、刀を構える。

「イルベルト殿、それが貴方の限界……古い……故に間違い……逃げ出す」

ローエンは、言葉に詰まる。

そんなローエンに代わり、今度は、ローズが口を開く。

「ねぇ、ウィンガルさんて言いましたよね……」

ローズは、真っ直ぐに見据える。

「答えて、ホームズは一体何で貴方達に味方したの?」

「あぁ、簡単な事だ。あいつは、私達に恩があった」

「恩?」

「そうだ。人によっては、馬鹿馬鹿しいの一言で済ましてしまうだろう。

だが、ホームズにとっては、特別に恩義を感じるものだったのだろう」

何処か遠くを見つめるウィンガルにローズは、首を傾げる。

「それって一体……」

ローズの質問にウィンガルは、ローズ達を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここには、奴の親の墓がある。余所者である、あいつの親の墓を置くことをガイアス王と私達が許可したのだ」

 

 

 

 

 

 

 

その言葉に一同は、言葉を失う。

「………ホームズのお父さんのお墓が?」

「そうだ」

ローズは、目を丸くする。

エリーゼが今度は、ウィンガルを見る。

「そんな………お父さんのお墓があるなんて、私、聞いてません!」

「言えるわけないだろ、自分が裏切るというようなものだからな」

エリーゼの啖呵をウィンガルは、一蹴する。

エリーゼは、何も言えなくなって、押し黙る。

そんな中、ウィンガルの答えにより、ローズの頭の中にある言葉が浮かび上がる。

 

 

 

 

────ま、おれも、義理と人情と報酬で生きてる、行商人なんだよ────

 

 

 

「『義理と人情』………そういうことだったの……」

ローズは、ギリっと歯ぎしりをする。

一体、どんな報酬を貰ったのかそちらにばかり気が行ってしまうが、そうではなかった。

ホームズは、ガイアス王達から受けた恩義を返すために、ミラ達を裏切ったのだ。

更に腹の立つことに、ホームズは報酬で裏切ったとジュード達を勘違いさせた。

理由は、単純。

ホームズを倒すということに対して罪悪感を感じさせないためだ。

ローエンの感じた違和感は、全てここに通じる。

つまり、裏切りたくて裏切った訳ではないのだ。

ホームズのあのちぐはぐな行動は、全てここに繋がる。

エリーゼの為にとんでもない啖呵を切ったのも、ミラを庇おうとしたのも、ローズを背負って無茶な戦いをしたのも全部本当のことだった。

ホームズ自身も裏切りたくはなかったのだろう。

しかし、ホームズは、仲間と恩どちらを取るかで、悩み、そして、恩の方を取ったのだ。

ホームズという男はそう言う奴なのだ。

ローズは、ホームズの気持ちを考えるといたたまれない気持ちになる。

そして、声を震わせながら、ウィンガルを見る。

「じゃあ、貴方達はそこにつけ込んで……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういう事になるな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ローズの中で何かがプチンと切れた。

 

 

 

 

 

 

 

ローズは、その言葉を合図にウィンガルに斬りかかった。

ウィンガルは、それを防ぐ。

「ローズ!!」

突然の行動にジュードは、思わず叫ぶ。

「よくも……よくも……よくも!!」

ローズは、ギリギリと刀を押す力を強める。

こいつらは、ホームズの弱みにつけ込んで利用したのだ。

最も付け込んで欲しくない弱みに。

許せるわけがない。

それと同時に自分自身も許せない。

どうして、見抜けなかった。

 

 

 

 

嘘は何一つ付いていなかったというのに。

 

 

騙すことが得意だって知ってたはずなのに。

 

 

どうして、自分は、そんなホームズの気持ちに気付けなかった?

どうして、自分は、そんなホームズを止める覚悟すら持てなかった?

 

 

許せなかった。

 

 

 

「許せる………ものかーーーー!!」

激情と共にローズは、刀に込める力を一層強める。

ローズの二刀とウィンガルの一刀、三本の刀がギチギチと異様な音を立て始める。

「うるさい」

ウィンガルは、そう言うとローズを押し返す。

ローズは、思いがけない力に思わず転んでしまう。

そんなローズにウィンガルは、続ける。

「だいたい、あんな奴を信じたお前らが悪い。

よくもまぁ、あんな胡散臭い男を信じたものだ」

「……」

ローズは、ウィンガルを睨みつける。

「あいつは、自分の事を全く話さない。そんな奴をどうして信用できる」

「……」

「いずれ遅かれ早かれ、こうなる事は分かっていただろう」

「……そんな事ない」

ローズは、立ち上がる。

「──────?」

「そんな事、思わなかった。信じてた」

「何故?」

ウィンガルの問いかけに、ローズは、悔しそうに呟く。

「……理由なんてない」

「だから、裏切られるんだろうな」

「黙れぇえ──────!!」

 

 

 

 

 

ローズは、地獄の底から響くような雄叫びをあげ、激怒の刃を再びウィンガルへと向けた。

 

 

 

 











因みに剣道の二刀流は、大学生、まあいわゆる社会人からです。
かっこいいですよね。
一度生で見たんですが、凄かったです。



では、また七十話で( ´ ▽ ` )ノ

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