何だか、百話以内で終わるのか、不安になってきました……
てなわけで、どうぞ
「ん?」
ウィンガルは、懐から出てくる光を疑問そうに見る。
「なるほど、リリアルオーブか」
ウィンガルは、鬼の形相で刀を押すローズを見る。
「貴様程度の奴がそれをどこで手に入れた?」
「私の師匠からもらったわ」
つまり、マーロウから貰ったのだ。
「……そうか」
ウィンガルは、ローズを押し返し、大きく後ろに下がる。
「このまま戦うのは、得策では、なさそうだ」
ウィンガルは、目の前で手を交差する。
「はぁあああ!!」
突然ウィンガルの身体が光り始めた。
そして、それが振り払われるとそこには、先ほどの黒髪が嘘のように白く輝く、ウィンガルがいた。
「な、何あれ!」
レイアは、ウィンガルの突然の変化に驚いている。
ミラは、眉を潜める。
「マナが、急激に………」
その理由にジュードが思い至る。
「
「どういうこと!?」
『なんだ、おまえー!』
エリーゼとティポも驚きの声を上げる。
《エリーゼ!誰に向かってそんな口を聞いている!
先輩には、敬意を払うもんだ!》
「言葉が……」
ジュードは、怪訝そうに見る。
「これは、……ロンダウ語?」
ローエンには、何の言葉だか分かったようだ。
《マクスウェル。捕らえるつもりだったが、殺した方が早そうだ》
ウィンガルは、そう言うと、ミラに飛びかかろうとする。
ミラは、剣で受ける為構える。
《馬鹿め!》
ウィンガルは、ミラを飛び越えローエンに狙いを定める。
精霊術師を狙うのは常套手段だ。
(速い!)
ローエンも予想していなかった訳ではないが、想像を上回るスピードで来た為反応が遅れてしまったのだ。
しかし、ウィンガルの刀がローエンに届くことはなかった。
《貴様……!》
ウィンガルの刃をローズが二刀を交差させ防いでいた。
「貴方の相手は私よ……」
ローズは、そのままジュード達に声をかける。
「ジュード!そっちは頼むわ。こいつは………」
ローズは、そう言うと、そのまま、押し返し、半身になる。
「私がやる!」
そう言うと切先を真っ直ぐ相手に向ける。
「散沙雨!!」
ローズの無数の突きが、ウィンガルを襲う。
しかし、攻撃はそれだけでは終わらない。
「秋沙雨!!」
更に、剣撃を加える。
だが、ウィンガルは、それをたった一本の刀で全て弾く。
「……ちぃ!」
《今度は、こっちの番だ!》
ロンダウ語でそう言うと今度はウィンガルの剣撃の嵐がローズを襲う。
「こなくそ!」
ローズは、ウィンガルの剣撃の嵐を二刀をでいなし、弾き、反撃の気配を伺う。
二人の戦いは、剣撃の打ち合いは、苛烈を極め文字通り、火花を散らしていた。
最早目で全てを追うのは不可能である。
(………ダメだ!決め手に掛ける!)
拮抗は、している。
マーロウの指導の賜物だろう。
あの、フォーブの、更に能力を底上げしている、ウィンガル相手にローズは、一歩も引いていない。
しかし、所詮拮抗しているだけなのだ。
勝ちの一手に後一つ届かない。
「ローズさん!!」
ローエンの声にローズは、ウィンガルの正面から外れる。
「フリーズランサー!!」
ローズが横に移動すると、ローエンの精霊術が、氷の槍となって、ウィンガルに襲いかかった。
《グゥ!!》
ウィンガルの声が雪煙の中に消える。
「ローエン!こいつは、私が……」
食ってかかるローズにローエンが厳しい視線を送る。
その迫力にローズは、思わず黙る。
「頭を冷やしなさい、ローズさん。今しなければならないことはなんですか?」
「ウィンガルを倒すこと」
「それは、二人では出来ませんか?」
「……そんな事ない」
ローズは、ようやくクールダウンする。
ローエンは、にっこり微笑む。
フリーズランサーによる雪煙は、晴れ始めている。
ゆらりと起き上がるウィンガルがわかる。
ローエンは、真っ直ぐにウィンガルに刀を構える。
「では、一緒に頑張りましょう」
ローズは、頷くと刀を大きく振り被る。
二人のリリアルオーブが輝き始める。
「ローエン!」
「了解しました!」
二人のリリアルオーブが大きく輝く。
ローズの二刀をローエンの精霊術の冷気を纏う。
冷気により、元々の白銀の刀が更に白く輝く。
「「絶氷刃!!」」
ローズの二刀から放たれる二つの氷の斬撃が、ウィンガルを襲う。
起き上がりにもう一度技をくらいウィンガルは、大きく吹き飛ぶ。
「やった……?」
ローズは、怪訝そうに様子を伺う。
「ローズ!!」
ジュードの声にローズが振り返る。
「遅い!ブルースフィア!」
プレザの精霊術が完成し、ローズの頭上に形成されている。
「しまっ………」
そう思った時は遅かった。
その水泡は、ローズに向かって一直線に落ちていった。
《ざまみろ》
水泡が落ちた瞬間、先ほどの攻撃で再び起きた雪煙を刀で払いウィンガルが姿を現す。
ローズの膝を付いた姿を確認しようと水しぶきが消えるのを待つ。
しかし、そこにいたのは、膝を付いた惨めなローズではなかった。
凛として立つ勇ましいローズだった。
「……!」
プレザは、何故という顔をする。
対照的にローズは、にやりと笑う。
「助かったわ、ローエン」
「いえいえ、女性を守るのは紳士として当たり前ですよ」
ローエンがギリギリのところで
「なるほど」
ローズは、少し微笑むと、ウィンガルまで跳躍し、一歩で距離を詰める。
「仕切り直しよ」
そう言うと、踏み込んだ足を軸足にして回る。
「円閃牙!!」
遠心力で更に威力の増した二刀の攻撃をウィンガルに叩き込む。
ウィンガルは、突然の事に驚いたもの、防ぐ。
そして距離を空ける為、ローズの腹を蹴る。
「────っ!!」
ローズは、後ろへ押される。
しかし、歯ぎしりをするとウィンガルが攻撃を仕掛ける前に、体勢を立て直すとそのまま、突っ込む。
「……ヌルい蹴りね。どっかの誰かさんとは、大違いだわ」
刀を持ったまま、両手を合わせる。
「獅子戦吼!!」
ローズの猛攻にウィンガルは、なす術もなく、後ろに吹き飛ばされる。
《ちっ……魔神剣!》
「打ち返す!」
ローズは、地面から宙に向かって刀を振る。
「魔神剣・双牙!!」
ウィンガルの斬撃をローズの一つの斬撃が打ち消し、もう一つの斬撃がウィンガルを襲う。
《舐めるな!》
ウィンガルは、空中に飛び上がる。
《鳳凰天翔駆!!》
炎を纏いローズに突撃する。
「地砕昇!」
ローズは、地面を刀で叩きつける。
それにより、石畳みが砕け土煙が巻き上がる。
《それで防いだつもりか!》
ウィンガルは、土煙の中にはためく、羽織りを見つけると、ウィンガルは、構わず、突き進む。
そして、見事捕らえる。
しかし………
(手ごたえがない……)
土煙が晴れると、そこに現れたのは、
刀に刺さり風で、はためくローズの羽織りだった。
《まさか……》
思わず、後ろを振り返る。
そこには、所々土で汚れ、そして、煤で汚れている、ローズが刀を振りかぶっていた。
本当は、黙っているつもりだったが、ばれてしまえば、仕方ない。
「はぁあああああ!!!」
思い切り叫んで力と気合いを入れる事にしよう。
ウィンガルは、それを防ぐ。
しかし、勢いまでは殺せず、刀で防いだまま、大きく吹き飛ばされた。
《くそ!!》
ウィンガルは、直ぐに起き上がるとそのまま突撃をする。
《散沙雨!!》
刀が雨となって、ローズに襲いかかる。
しかし、ローズは、刀の腹で受ける。
一つ一つ、丁寧に、そして、素早くウィンガルの攻撃を全て防ぎきる。
やがて、ウィンガルの攻撃が止まる。
ローズもウィンガルの攻撃が止まると二刀をだらんとだらしなく下げる。
「……終わり?」
ローズは、下にだらんと下げた二刀に力を込める。
「なら、次ば私の番ね!」
ローズは、下げていた刀を頭上高く振り上げ、そこから連続技へとつなげていく。
「爪竜連牙斬!!」
ローズの二刀による連続攻撃が出る。
ウィンガルもさるものローズの攻撃を全て防ぐ。
とはいえ、防いでいるだけでは、ない。
《調子に乗るな!》
ウィンガルは、ローズの刀を一本弾き飛ばす。
弾き飛ばされた刀は、宙を舞いローズの背後に落ちる。
ローズの刀が一本になってしまった。
ローズは、後ろに下がる。
ウィンガルは、それを逃さない。
下がるローズに追撃を仕掛ける。
しかし、ウィンガルが踏み込んだそこは………
「フェイタルサーキュラー!!」
ローエンがナイフで作り出した魔法陣の中だ。
発動した精霊術に捕らえられ身動きが取れない。
《小癪な!》
ウィンガルは、無理矢理動こうとする。
ローズは、その止まった瞬間を利用し、一本の刀の切先をウィンガルへと向ける。
「瞬迅剣!!」
ローズは、そのまま突撃を仕掛ける。
ウィンガルは、何とか手を動かし刀を構え、ローズの攻撃を逸らす。
外してしまったローズは、そのままウィンガルの横を通り抜け、背後に回る。
しかし、直ぐに右足で強く踏み込むと、体勢を整える。
そして再び刀を奮おうとする。
しかし、ローズの刀が届くより先に、ウィンガルの拘束が解けてしまった。
ウィンガルは、振り向きざまにローズに攻撃を仕掛ける。
二つの刃が激しくぶつかり火花を散らす。
(ここは、負けられない………)
ローズは、そのまま鍔迫り合いに持って行き、歯を食いしばって自分の持てるだけの力を込める。
ウィンガルは、そのローズの顔を確認するとニヤリと笑う。
そして、込めていた力を一旦緩める。
突然の事にローズは、前のめりなってしまう。
支えを失い、体勢を崩したローズをウィンガルが強く押し返す。
「しまっ…………」
ローズは、ゆっくりと地面に倒れこむのが分かる。
ウィンガル相手にこんな隙を見せるのは、はっきり言って死と同じだ。
(だけど、防がなくちゃ!)
ローズは、倒れこみながらも刀を構え、何とか前を見る。
しかし、そこにいたのは、ウィンガルでは、なかった。
何かの術が完成した、プレザだった。
「ドラゴネス・スニーカー!!!」
「──────!?」
術どころの騒ぎでは、なかった。
発動していたのは、プレザの秘奥義がだった。
水の双竜が、ローズを目掛けて襲い掛かってくる。
《同じ手に二度も三度も引っかかる奴をマヌケと言うんだ》
(ヤバイ!)
しかし、体勢を崩しているローズには、何も出来ない。
刀を一本で防げるものではない。
いや、刀が二本あっても厳しい。
「ローズさん!!」
ローエンが何とかオートマジックガードを発動させようと走ってくる。
(ダメね……これは)
恐らくオートマジックガードで防げる容量を遥かに超えている。
だからこその秘奥義なのだろう。
例え、もし仮に防げたとしても、ローエンも多大なダメージをもらってしまうだろう。
(……足を引っ張っても仕方ないわね)
ローズは、
ローエンは、刀が飛んでくるとは思わなかったのだろう。
慌てて細剣で防ぐ。
その為、
もう、絶対に間に合わない。
ローズの狙いが分からないローエンではない。
「ローズさん!!」
ローエンの言葉、そして、ジュードが何か叫んでいる言葉をボンヤリと聞きながらローズは、自分に向かってくる水竜達を見る。
素早い筈の竜達がゆっくりと自分に向かってくるように感じる。
それこそ、一秒が一時間に感じるという奴だ。
そんな限りある永遠の時間の中、迫ってくる竜を前にローズは、考える。
結局、一番の役立たずは誰だったのだろう、と。
考えるまでもない、それは、
何せ、ホームズとの戦い。
ローズは、何も出来なかった。
他の面子はホームズ相手にどうにか戦っていた。
レイアに至っては、ホームズを完全に倒していた。
じゃあ、ローズは、どうだ?
ホームズとの戦いでは、戦いにすら辿り着けなかった。
今も、結局同じ手に二度も引っかかり、やられようとしている。
(……情けない)
なす術のないローズは、心の中でそう呟いた。
もう、竜達は目前まで迫っている。
(もうちょっと素直になっとけばよかったかな……)
ローズは、何処かのアホ毛を思い出しながら、大きく口を開けた二頭の龍をボンヤリと眺めた。
やっぱり刀を使った闘いには華やかさがありますね。
では、また七十一話で( ´ ▽ ` )ノ