今週は、忙しいんだか、暇なんだか………
てなわけでどうぞ
「ジュード!そっちは頼むわ。こいつは………」
ローズは、そう言うと、そのまま、押し返し、半身になる。
「私がやる!」
ローズは、そのまま右足に力を込め、ウィンガルとの戦いを始めた。
「待て!ローズ!」
ミラも加勢しようとする。
ウィンガルの実力が只者ではないというのもあるが、今のローズは、完全に冷静さを失っている。
そんな状態の奴を一人で戦わせるわけにはいかない。
「あら、貴方達の相手は私よ」
ウィンガルの所へ行こうとしたミラの前にプレザが現れる。
そう言うとヒールの高い靴でミラに蹴りを入れる。
ミラは、直ぐにバックステップでかわす。
プレザは、ミラに躱されるとすぐに精霊術を発動させる。
「ブルースフィア!」
ミラの頭上に水泡が結成され、真っ直ぐに落ちてくる。
「ミラ!!」
ジュードは、直ぐ様ミラに駆け寄り、ミラを安全な所まで引っ張る。
ミラは、ギリっと歯ぎしりをして、プレザを睨む。
どうやら加勢する事は許されないようだ。
「ミラさん!」
ローズの一番近くにいたローエンが、ミラに鋭く声を飛ばす。
「ローズさんは、私がどうにかします!」
ローエンが精霊術を唱える体勢をとる。
ミラは、そんなローエンにコクンと頷く。
「分かった、頼んだぞローエン」
ミラは、それを聞くとゆらりと立ち上がり、刀を向ける。
「仕切り直しだ、プレザ!」
「あら、怖い怖い」
ミラの剣幕に構わず、プレザは、妖艶に微笑む。
プレザが、ミラに気を取られている隙に、レイアとエリーゼが自分の武器にグッと力を入れる。
(……見るからに精霊術で戦うタイプ……だったら……)
ジュードも籠手に力を込め一気に突撃する。
(精霊術を発動させる前に倒す!)
レイアも同じ考えに至ったようだ。
ジュードと同じようにプレザに突撃する。
しかし、二人の突撃にプレザは、慌てることなく、ハイヒールの靴で地面を軽く踏み込む。
それと同時に広範囲に青白く輝く陣が展開される。
「守護方陣」
どこかの誰かさんのような守護方陣に二人は驚く。
しかし、どこかの誰かさんとは、比べ物にならない程の広範囲だ。
ジュードとレイアは、プレザの攻撃範囲にまんまと誘い込まれてしまったわけだ。
「うっ!」
「っつ!」
二人はものの見事に捕まってしまい、プレザに攻撃が届かない。
攻撃が終わるとプレザが手に持つ本を振る。
恐らく、マナか何かが込められているのだろう。
たかだか、本の攻撃だというのに、ジュード達は吹き飛ばされてしまった。
思わず膝をついたジュードにプレザは、更に攻撃を仕掛ける。
「クイーンモーメント!」
「グッ!!」
持ち前のハイヒールで、ジュードを執拗に踏みつける。
「『……ネガティブゲート!!』」
その隙にエリーゼが精霊術を完成させ、プレザを攻撃する。
ジュードは、その間にプレザから逃げる。
「ありがとう、エリーゼ」
『どういたしましてー』
ジュードは、大きく後ろに下がる。
お礼を言うと直ぐにプレザを睨み拳を振り上げる。
「魔神拳!」
ネガティブゲートに囚われているプレザにジュードは魔神拳を繰り出す。
魔神拳は、真っ直ぐにネガティブゲートの中に吸い込まれていく。
「やったか、ジュード?」
「いや……」
ミラに尋ねられたジュードは、首を横にふる。この程度で倒せたら、そもそも
エリーゼの精霊術が終わるそこには、相変わらず、余裕綽々で佇むプレザがいた。
いや、それどころか、精霊術を発動している。
「………嘘!」
レイアは、辺りを確認する。
見回してみても、精霊術が発動している様子はない。
「どこ?!」
そして、ジュードがプレザの精霊術を確認する。
プレザの精霊術は、ローズの頭上にあった。
「ローズ!!」
「遅い!ブルースフィア!」
ジュードの言葉も虚しくローズに向かって落ちていく。
ローズに向かって落ち、水泡が弾ける。
誰もが倒れているローズを思い浮かべた。
しかし、ローズは、凛として立っていた。
「なんで?」
エリーゼが訳が分からず、尋ねる。
けれども、その疑問は直ぐに解決した。
側にローエンが立っていたのだ。
恐らくオートマジックガードを発動させたのだろう。
「決まったと思ったのに……」
「残念だったな」
残念そうなプレザにミラが剣を振るう。
プレザは、手に持っている本で攻撃を防ぐ。
「ジュード、今だ!」
ミラの言葉に、プレザは、後ろを振り向く。
しかし、そこにはジュードは、いなかった。
騙されたかと思い、直ぐにミラに視線を戻す。
ここで、一つプレザはミスを犯した。
それは、頭上を確認し忘れたことだ。
「鳳墜拳!!」
炎を纏ったジュードの拳がプレザに叩き込まれる。
プレザが地面に倒れると、ミラは後ろに下がる。
「行くぞ、ジュード!」
「分かった!」
二人はそれぞれ、拳と刀を振るい空中に巨大なバツ印を描く。
「「絶風刃!!」」
風の刃がプレザを襲う。
「グッ!」
立ち上がろうとしたプレザは、攻撃を何とか防ぐが、それでもダメージは、免れない。
「やってくれるわね……」
油断なく、二人を見つめる。
そして、気付く。
「二人?」
そう、四人いたはずなのに、この二人、ジュードとミラしか見当たらないのだ。
思わず後ろを振り返る。
そこには、飛び上がっているレイアと、ティポグライダーで飛んでくるエリーゼがいた。
「はぁあああっ!!」
『くらえー!』
レイアの横薙ぎの一撃と、エリーゼの杖が、プレザを襲う。
プレザは、目を鋭くすると、それらを本で吹き飛ばし、二人を地面に落とす。
「きゃっ!」
「っう!」
二人は、直ぐに立ち上がり、武器を構える。
プレザは、周りを見回すとため息を吐く。
「もしかして、貴方達も
「当たり前でしょ!」
レイアが、真っ先に声を荒げ、ギロリとプレザを睨む。
「あなた達が余計なことしなければ、わたし達、特にわたしが痛い思いせずに済んだんだから!!」
ホームズと激闘を繰り広げたレイアの心からの叫びだ。
顔面を狙ったり、身体強化の精霊術が切れたレイアの腹に思い切り蹴りを叩き込んだりと相当容赦がなかった。
『まぁ、エリーゼをホームズは、攻撃しなかったけどねー』
エリーゼは、頷く。
本当にこればかりは、ずっと謎だったのだ。
初めて出会った時もそうだったが、どう考えても、ホームズがエリーゼに攻撃をしない理由はないのだ。
確かに、ティポという
しかし、精霊術を食うヨルを連れている、ホームズにとって、そんな事は関係ない。
頭数を減らすのなら、真っ先に狙うべきはエリーゼなのにだ。
「そして……」
エリーゼがそんな考えを広げているなか、レイアは、プレザを睨み、一度切った言葉を続ける。
「ホームズだって、辛い思いをせずに済んだ」
「あら?どうして、彼が辛かったと思うの?」
レイアの言葉を聞いて、プレザは、ニヤっと面白そうに、微笑む。
「仲間を裏切って辛くないと思う程、ホームズは腐っていないもん」
プレザは、レイアの答えを聞いて更に笑みを深くする。
「付き合いが、わたし達より短い貴方がよく言うわね」
「うわぁ……ローズがこっちにいなくてよかった……」
恐らく更に面倒くさい事になっていただろう。
引きつった顔を元に戻すと、レイアは、意思の強い目で睨む。
「知らないの?ホームズは、行商人、信頼第一。そんなホームズが信頼裏切って何も思わないわけないじゃん」
「レイア……」
レイアの微妙なホームズへの信頼にジュードは、頬を引きつらせる。
「それに……」
レイアは、それに構わず続ける。
「仲間思いなんだよ、ホームズは。とっても、分かりづらいけどね」
プレザは、その言葉に思わず目を向く。
それから、直ぐに元の表情に戻す。
「なるほど、それが貴方達の評価なのね」
それから、不敵に笑う。
「ところで、貴方達、そんな所にいていいの?」
「……?」
レイア達は首を傾げる。
しかし、ジュードは、直ぐに気付いた。
「みんな……!!」
「遅い!!」
プレザは、地面を軽く踏み込む。
「 守護方陣!!」
青白い光の陣に四人は、捕らえられてしまった。
そう先程の会話は、プレザが全員を有効範囲内に入れるために仕組んだ事なのだ。
物の見事に全員引っかかってしまった。
「飛んで火に入るなんとやら、って奴ね」
プレザは、そう言うと本を開いて何やら唱え始める。
どうやら守護方陣だけでは、無さそうだ。
「龍精召喚!」
「ま……さか」
プレザが、何をしようとしているのか、発生するマナの量を見れば、それは火を見るよりも明らかだ。
ミラは何とか体を動かそうとする。
しかし、上手くいかない。
「ドラゴネス・スニーカー!!」
二頭の水龍が出現し、口を大きく開けている。
ジュード達は思わず身構える。
しかし、水龍は、ジュード達を素通りして………
ローズの所へと進んでいった。
そう、向こうは、こちらと違い二人で戦っているのだ。
ローズさえ倒してしまえば、ローエン一人になってしまう。
加勢させないようにプレザが気をつければの話ではあるが、そう難しいことではない。
例え加勢に入ろうとしても、秘奥義を食らって瀕死のローズを人質にとってしまえばそれまでである。
どちらに転がろうと、
「逝っちゃいなさい!」
体勢を崩しているローズにかわすことは出来ない。
ローズは、ローエンに向かって刀を投げ、足止めする。
「ローズ─────!!!」
ジュードの叫びも虚しく水龍は、ローズへの距離を詰めていた。
誰もが諦めたその時、見覚えのある影が現れる。
遠目でもはっきりと分かる。
それは、巨大な猫の生首だった。
◇◇◇◇
「………ヨル?」
唖然としてる、ローズを他所にヨルは、二頭の竜を飲み込む。
そして、ゲップを一つ。
「あの野郎、思い切りぶん投げやがって……」
生首……ヨルは、元の姿に戻ると顔を丁寧に手で洗う。
「まあ……その分の価値はあったということか……」
ヨルは、ゆらゆらと尻尾を揺らす。
「な……んで?」
ローズは、ポカンとした顔をしている。
「そんなの、おれがいるからに決まってるだろう?」
その声の先に目を向けると、そこには、ポンチョをはためかせ、アホ毛を揺らした、ホームズ・ヴォルマーノが白い息を切らしながら、立っていた。。
雪だらけの白い世界で、碧い瞳を静かに輝せながら。
ようやくです……本当に………
では、また七十二話で( ´ ▽ ` )ノ