1人と1匹   作:takoyaki

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七十三話です




何でこんな時間に投稿したかって?




飲み会の後だからです!!


酔っ払いです!


テンションフォルテッシモー!!



てなわけでどうぞ


刀抜いて逃げる

 

 

「ホームズ!!」

 

 

 

 

ローズは、慌ててホームズに駆け寄る。

「そう、焦りなさんな、急所は……外れているんだから」

ホームズは、そう言って刺さっている刀に手をかける。

「待って」

ジュードがそれを止める。

「下手に抜けば大出血だよ」

「なら、どうする?このまま、こいつは、刀と共に暮らすか?」

ヨルの言葉にジュードは、真剣な表情になる。

「……治癒孔で治療しながら、同時に刀を抜くしかない……レイア、指示をするから、その時に真っ直ぐ抜いて」

「………うん、わかった」

力強く頷いたレイアをヨルは、見ると満足そうに笑う。

「尻込みしたら、どうしてやろうかと思っていたところだが……」

ヨルは、レイアの様子を見る。

「……杞憂だったようだな」

「看護師見習いだからね」

そう言うとレイアは、ホームズの近くに膝を突く。

「ローズは、ホームズの体高を高くして。他のみんなはホームズを押さえて………多分暴れるから」

「……えっ?……ちょ……、そんなに痛いの?」

なけなしの血が更にホームズから、引く。

ローズは、それに構わず、ホームズを膝枕する。

「あ、そうだ。ホームズ、ハンカチ貸して」

「………何に使うの?」

ホームズのポケットから無理やりハンカチをあさると、ホームズの口に突っ込む。

「舌噛んだり、歯にひびが入るとダメだし……」

「ねぇ、おれはこれからどうなるの?」

ジュードは、そんなホームズを無視するとみんなに目配せをする。

「いくよ……」

「待って……心の準備が………」

 

 

 

 

 

『『せーの!!』』

 

レイアが深々と刺さった刀を引き抜く。

 

 

ホームズの腹に激痛が走る。

最早、痛み通り越して炎だ。

 

 

 

「い─────ッ!!!」

 

 

 

声にならない。

 

 

 

 

「……もう少し!!」

レイアがラストスパートをかける。

 

 

 

案の定、手足に力が入る。

ミラ、ローエン、エリーゼが力を込める。

 

 

 

 

「………取れた!」

 

 

 

 

レイアは、ホームズの腹に深々と刺さっていた刀を遠くに投げる。

ジュードが素早く傷を塞ぐ。

ホームズの傷は、見事に消え去った。

「ホームズ、ライフボトル……」

レイアから、ライフボトルを受け取ると一気に飲み干す。

「………この前のナイフよりきつかった………」

ホームズは、げんなりしている。

「これに懲りたら、もう無茶はしない事ね」

ローズは、そう言って頬を摘む。

その間に、ジュードがホームズを治癒孔で治していく。

エリーゼは、それの手伝いだ。

「………よし、とりあえずこれで大丈夫だと思うけど……どう?」

「いい感じ」

そう言って、ホームズはゆっくりと立ち上がる。

傷は、全て治った。

しかし、身体に残ったダメージと、身体から消えた血までは、治らない。

正直な所、立つので精一杯だ。

それを見越すとジュードがホームズをおぶる。

 

 

 

 

「やってくれたな……」

ウィンガルが意識を取り戻した。

髪の色も言葉も元に戻っている。

プレザもゆっくりと立ち上がる。

二人とも意識を取り戻したとは、いえ、まだダメージがありそうだ。

ミラは、ゆっくりと剣を構える。

「また……相手をしてくれるのかしら?」

今にも斬りかかりそうなミラをジュードが止める。

「邪魔するな!」

「違うよ!アレ!」

ジュードの視線の先には、ア・ジュール兵が迫ってきていた。

「潮時という奴か……」

一行は、一気に駆け出す。

ローエンも最後に駆け出す。

「また、逃げるのか……イルベルト……」

そんなローエンに、ウィンガルが言葉を投げかける。

「あなたが、逃げたから、ナハティガル王は………」

ローエンは、立ち止まる。

実際、反論のしようがないのだ。

しかし、ローエンは、それを振り切るように再び走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼らを遠くからアルヴィンは、眺めていた。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「なんとか、逃げ切れた………」

 

 

 

 

 

ジュード達は、今、モン高原にいる。

ホームズは、雪を避ける為にフードを被る。

「代わるわ、ジュード」

「……じゃあ、お言葉に甘えて」

流石にジュードでも、雪に足を取られながらホームズを背負いながらずっとと言うのは無理だ。

ローズがホームズを背負い直すと、ミラは、ローズの背中にいるホームズに尋ねる。

「それで、お前はいつから裏切るつもりだった?」

ミラのストレートな物言いに慣れたホームズは、ため息一つ吐かず話す。

「……カン・バルクの一日目の夜から、かな」

「えらく、具体的だね………」

ジュードは、ホームズの詳しいタイミングに少し呆れる。

「ほら、アレだよ。君たちが、おれにアルヴィンを探させに行かせたでしょ?」

ローエンがあごひげを触る。

「ああ、あの時ですか……」

「そ。その時に、アルヴィンからウィンガルさんからの手紙をもらったんだ」

ホームズは、順番に話していく。

「まあ、色々書いてあったけど、要約すると、『時が来たら、ガイアス王に最も有利になる様に動け』って所かな」

「恩を返せ、とは書いてなかったの?」

レイアは、ホームズに尋ねる。

レイアの質問にホームズは、少し驚くと首を横に振る。

「まあ、明確には書いてないさ」

つまり、暗にそう言っていたということだ。

ホームズは、ミラの言葉を思い出しながら、今度は、逆に自分から訊ねてみる。

「あのさ、ウィンガルさんから、聞いたって言ってたけど……どの辺まで聞いたの?」

ホームズの質問に、エリーゼが答える。

「ホームズのお父さんのお墓があるって言ってた……です」

エリーゼの答えにホームズは、少し目を伏せ、自嘲するように言葉を繋いでいく。

「………思ってたより、しょうも無い理由だろう?

何せ、おれの命を助けられた、とか、おれの家族を助けてもらった、て訳でもない。間違った道に迷いそうだったのを救ってくれたって訳でもない。ただ、墓を建ててもらったってだけの話だ」

ホームズは、エリーゼの方を向くと言葉を続ける。

「………でも、おれとっては、デカイ恩だった……

なんと言ったて、おれは、行商人。

死体なんて、野山の何処かに埋めちゃうのが当たり前だったからねぇ……

でも、ガイアスさんとウィンガルさん達は、カン・バルクに墓を建てていいって言ってくれたんだ……」

ホームズは、静かに目を閉じる。

その時の事を思い出しているのだろう。

この気持ちを理解してもらえるとは、ホームズは思っていなかった。

人によっては、甘いの一言で済ましてしまうようなものだ。

寧ろ、やってもらって当たり前と思えればホームズもこんな事をしなかったかもしれない。

しかし、ホームズには、それが出来なかった。

そして、その出来事は、ホームズにとっては、絶対に返さなければならない恩へと変わっていった。

だから、今回、ホームズは、ジュード達を裏切ったのだ。

そりゃあ、迷いも消えるはずである。

自分の生き方をホームズは、真っ直ぐに選んだのだ、迷うわけがない。

レイアは、ため息を吐く。

恩を返す、

 

これは、間違っていない。

しかし………

 

 

 

「そうは言っても、迷って欲しかったよ………ホームズ……」

レイアは、ポツリと言う。

ホームズとの一対一(サシ)の勝負。

あの時、ホームズから迷いは感じなかった。

友と戦う事に迷わなかったホームズにレイアは、寂しさを感じていた。

ホームズは、そんなレイアを見ると少し驚くがすぐに穏やかに笑う。

「君は、迷いながらも戦っていたね……やり合ってて分かったよ……」

そう言うと、ホームズは、レイアの方を見る。

「本当にいい奴だね、君は」

ホームズは、そう言って前を向く。

そこで、ホームズは大事なことに気づいた。

まだ、自分のすべき事を何もやっていない事に。

「えっとさぁ………」

ホームズは、言葉を区切ると皆を見回す。

「……ごめん。今回は、みんなに迷惑をかけたよ……」

ホームズの言葉に一同は、目を見開き、思わず立ち止まる。

なんと言ったって、あのホームズが真剣に自分の過ちを認めて謝ったのだ。

いつも、のらりくらりと生きて自分の弱味を誤魔化している様な男が、こんなに弱味を見せている、こんなに驚く事があるだろうか。

ホームズは、更に口籠りなから言葉を続ける。

本当は、これが一番言いづらいのだ。

ホームズは、目を泳がせる。

「えぇっと、後さ、凄く言いづらいんだけど………出来ればさ、まだ、みんなと一緒に旅をしたいんだ………ダメ……かな?」

 

 

 

 

 

 

その瞬間、ローズは、ホームズを背中から落とす。

 

 

 

 

 

 

「……何するんだい!!」

尻もちをついたホームズは、雪まみれになりながら、抗議をする。

因みにヨルは、巻き込まれる前にレイアの肩に逃げた。

そんなホームズをローズは、見下ろす。

「貴方、少しは頭を使いなさい」

ローズは、そこで言葉を切るとミラ達を見る。

みんな少し呆れている。

「何の為に、足手まといの貴方を背負ってここまで来たと思ってるの」

ホームズは、尻もちをついたまま驚いて目を丸くする。

そんなホームズにローズが、手を差し伸べる。

ホームズは、暫くそれを見つめるとフードを深々と被り、目元を隠す。

 

 

 

 

 

 

「………ありがとう」

 

 

 

 

 

ホームズは、そう言うと、ローズの手を取る。

ローズは、優しく微笑むとホームズを再び背負い直す。

 

 

 

 

ヨルは、その様子を見て少しだけ笑う。

 

 

 

 

 

「あの馬鹿、泣………」

「しー……」

レイアがヨルの口を押さえる。

もちろん、レイアだって気づいている。

あの時、ありがとうと言ったホームズの声は震えていたのだ。

ホームズが深くフードを被っているため分かりづらいが、目元も涙でいっぱいだろう。

ヨルやレイアだけでなく、みんな気づいている。

そんな中、ティポが、ホームズのところまで飛んでいく。

何処かで見たことのあるハンカチを咥えて。

 

 

 

『どうぞー』

 

 

 

ホームズは、ティポからのハンカチを受け取る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おれは幸せ者だよ」

 

 

 

 

 

 

ホームズは、小さく、本当に小さくポツリと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 












良かった……ちゃんとここまで書けた………
安堵で胸が一杯です。



あぁ、後、明日というか、もう今日ですが……二日酔いが怖いです。
ヤダヤダ
ではまた七十四話で( ´ ▽ ` )ノ

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