1人と1匹   作:takoyaki

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七十五話です。




ペースが落ち気味………


まあ、師走に近づくにつれてリアルの方が大分忙しくなってきましたからね。
取り敢えず、週一を目指します!!




てなわけでどうぞ







負うた子に教える。

「いらっしゃ………て、何だ、ローズかどうした?」

突然の来訪にマーロウは、驚く。

ローズは、そんなマーロウに無言を貫く。

「……紅茶でいいか?」

無言を肯定と受け取ると、マーロウは似合わない可愛らしいカップを用意する。

そして、薬缶に火をかけると薬缶を凝視する。

紅茶のお湯は沸騰直後がベスト。

美味しい紅茶を作ることにこだわるマーロウは、気を抜かない。

暫く時間が経過し、ベストだと見極めると火から外しポットにお湯を注ぐ。

そして、それぞれ二つのカップに注ぐ。

「……ほれ」

「……どうも」

ローズは、マーロウからの紅茶を一口飲む。

マーロウもそれを確認すると、紅茶に口を付ける。

「………ホームズが、敵に回りました」

マーロウは、紅茶を思わず吹き出す。

「は?」

「まあ、今は和解してますけど……」

ローズは、それに構わず紅茶を飲む。

「待て待て、何が起こったか分からん、最初から話せ」

マーロウに言われてローズは、ホームズにまつわる出来事を最初から話し始めた。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「………なるほど、そういう話か」

マーロウは、煙管に火をつけ咥える。

「……ええ」

ローズは、最後の一口を飲む。

「実は、ここに来たのは理由があります」

ローズは、マーロウを真剣な目で見つめる。

マーロウは、気だるげに煙を吐き出す。

「まあ、大体予想が付くが………何だ?」

 

 

 

 

「貴方は、ホームズの事をどこまで知っているんですか?」

 

 

 

ローズは、凛とした声で告げる。

マーロウは、煙を大きく吸い込むと吐き出す。

ローズは、煙に顔を顰めることなく言葉を続ける。

長年世話になっていれば副流煙なんて何のことはない。

「ホームズが敵に回ったと話した時は動揺したのに、経緯を話した時、貴方は、大して動揺しなかった」

ローズは、更に睨みつける。

「経緯に関して言えば、貴方は、全部知っていたのではないですか?いや、下手すれば今話したホームズの秘密の他に貴方は、何か知っているんじゃないんですか?」

 

 

マーロウは、ローズのカップが空になっているのに気づくと、ティーポットから、ティーカバーを外し紅茶をローズのカップに注ぐ。

 

 

 

 

 

「お前が知らないことは、大体知っている」

 

 

 

 

 

マーロウは、紅茶の入ったカップをローズに渡す。

ローズは、握り拳を作るとテーブルを殴りつけた。

派手な音が鳴り響き、ガシャンと音を立てて、ティーカップがひっくり返る。

「………話して下さい」

ローズは激情を隠そうともせずに、マーロウを睨む。

「却下」

対するマーロウは、至って冷静だ。

というより、そろそろ聞かれるだろうと思っていたのだ。

「なんで!?」

「ホームズが話さなくちゃいけねーことだからだ」

マーロウは、煙管を咥え直すと台拭きを探して、テーブルを拭く。

「正確に言うなら、俺がここで弟子にせがまれてしていい話じゃない」

マーロウは、椅子に深く腰掛ける。

灰皿を近づけると、煙管の灰を捨てる。

「今回の件で、ちったぁ、分かったと思うが、あの馬鹿が話していないことを知ろうとすれば、気分を害するだけだ」

マーロウは、煙管をもう一度咥える。

「あいつも、それが分かってるから、言わねーんだよ……これからは特に」

「これからは?なんで?」

マーロウは、やれやれといった風に肩を竦める。

「お前らこれから王様の所に乗り込みに行くんだろ?

そんな時に関係のない、士気の下がる話をしてもしょうがないだろ」

マーロウは、煙を吐き出す。

ローズは、何となくだが、納得する。

確かに決戦に行く前に、士気が下がる話をあまり聞いてみたいとは思わない。

ローズが理解したのを確認するとマーロウは、言葉を続ける。

「ってのが、三割、残り七割は、そんなの関係なく話したくないって奴だ」

マーロウは、空になった自分のカップに紅茶を注ぐ。

「……俺も本人から直接は、聞いていない、あいつの母親から聞いたんだが………」

紅茶を冷ましてから、口を付ける。

「……納得したよ。アレは、話したくない」

マーロウは、そう言葉を区切るとローズを見る。

「つーわけだ、悪いな」

「……仕方ないですね」

ローズは、ため息を吐くと渋々引き下がった。

「にしても、お前がちゃんとホームズの事を知ろうとするなんてな」

「……やっぱり、少し甘く見えました?」

ローズの言葉に、マーロウは、ふぅと煙を吐く。

しっかりと答えない。

しかし、どう見ても行動は、肯定している。

「原因は、あの元気な嬢ちゃんか?」

「………えぇ」

ローズは、俯く。

「あの時、私だけ、ホームズとの戦いに参加できませんでした。

昔馴染みと、ホームズと戦うなんて、想像もしてなかったんです。

いざ、ホームズと向かい合ったら、手が震えてそれどころじゃなかった」

マーロウが、ローズのカップに紅茶を注ぐ。

「………でも、レイアは、向かっていった。友人として、ホームズの敵になって、完全に勝利しました」

ローズは、マーロウの方を見る。

「マーロウさんの言った通りでした。

あの時、私はうかうかしていて、自分にも、ホームズにも、レイアにも負けてしまいました」

「妬いたか?」

マーロウの言葉にローズは、少し首を傾げる。

「………あってるような……間違っているような……何ていうか、こう………経験ありませんか?自分よりも、優れている人を見ると、自分も負けたくないってそう思うこと」

「ないわけないだろ」

マーロウの返事にローズは、悲しそうな顔をして、俯く。

「……そして、それと同時に自分が如何に未熟かという事を理解してしまうこと」

マーロウは、煙管を置く。

ローズは、顔を下に向けたまま言葉を続ける。

「………覚悟が足りなかったんです、私は……この旅に同行する、覚悟が………」

マーロウは、黙ってローズの言葉を聞いている。

声が震えているのが手に取るように分かる。

「みんな、自分の為すべき事をしようと必死だった。

レイアは友人として、

ミラは、マクスウェルとして、

ジュードもローエンもエリーゼも、それに続くように……

裏切ったホームズにだって、為すべき事をなそうとしていた、恩を返すという為すべき事を………でも、私は……私だけが……」

ローズの膝の上にポタポタと水滴が落ちる。

あの戦いは、結果としては、ミラ達の勝利となった。

しかし、ローズだけは違う。

ローズだけが、あの場に立つこともできなかったのだ。

あの場に立つ事に尻込みしてしまった。

迷わずにホームズを倒そうと戦ったミラ。

迷いながら戦い、ホームズを止めようとしたレイア。

自分は、どちらでもない。

勝ってもいなければ、負けてもいない。

ましてや、引き分けですらない。

戦いに参加すらしていない。

ホームズと戦えなかったこと……

それは、とても優しく間違っていない。

事実、ホームズと戦ったレイアは、そう思っている。

むしろ、戦うことに迷わなかった、ホームズの方が間違っていると思っている。

しかし、あの時、ローズは気付いてしまったのだ。

自分が、この旅を、ミラの使命を、ナメていたこと、

そして、ホームズと向かい合う覚悟がなかったこと。

ただ、十年ぶりに再会したホームズと旅が出来ると浮かれていただけだと………

「………十年前に、ほんの僅かな期間しか過ごしてないくせに……ホームズの何を理解しているとおもっていたんでしょうね……」

ローズは、自嘲するように言葉を吐く。

自分が弱いばかりに自分の痛みを人に押し付けたくない、そう思って剣術を習ったというのに、このザマだ。

自分がホームズと戦うという痛みをレイアに押し付けてしまった。

情けなくてしょうがないのだ。自分のいることが間違っていたと本気で肌で感じてしまう、そんな出来事だった。

マーロウは、そんなローズを黙って見つめる。

覚悟が足りないのは、何となくマーロウは理解していた。

確かに十年前の想い出は、ローズにとってもホームズにとっても忘れられないものだ。

そんな想い出のホームズと再び一緒に行動出来る。

その喜びが悪いとは、言わない。

むしろ、十七歳の少女が、その理由で動くのは、普通と言ってもいい。

しかし、軽いとも思う。

結局ローズが理解しているのは、追いかけているのは、十年前のホームズだ。

十年も経てば誰だって成長する。

自分の知らない過去を十年分持っているのだ。

そんな人間の事をローズは、理解した気になっていた。

そして、そんなホームズをローズは、追いかけていた。

これは、危うい以外の何者でもない。

寧ろよくこの程度で済んだものだと思う。

マーロウは、煙管に溜まった灰を捨てる。

「それに気付けただけ、てめーは上出来だ」

そして、再び煙管を咥え直す。

「一応聞いておいてやる、ホームズは、お前にとってなんだ?」

 

まず決めるべき覚悟は、ホームズと向き合うというものだ。

 

これを決めなければ何も始まりはしない。

 

 

 

 

マーロウの質問にローズは、涙を拭いて顔を上げる。

 

 

 

 

 

「昔馴染みで、そして……」

 

 

 

 

 

ローズは、にっこりと笑う。

 

 

 

 

 

 

 

「友達です」

 

 

 

「まずは、そこからだな」

マーロウは、にっこりと笑った。

どうやら、ローズは、ようやくスタートラインに立てたようだ。

このローズの言葉がその証拠だ。

 

 

 

 

 

何故これが、スタートラインに立った証拠になるか?

それは、古今東西の物語が示す通りである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずはお友達から、と。

 

 

 








会話メインの話を書いているとバトルが書きたくなってきます。
バトルメインの話を書いていると会話メインの話を書きたくなってきます。
難しいものだ………




では、また七十六話で( ´ ▽ ` )ノ

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