予定がいっぱい!!
もう、泣こうかな………
てなわけで、どうぞ
「……なんか、話したら気が楽になったわ……」
マーロウの所で決意を新たにしたローズは、橋の上でポツリと呟く。
年長者に話すというものは、自分を見つめ直すいい機会なのかもしれない。
何せ、自分よりも長く生きているのだ。
経験から来る含蓄もローズの様な若造とは、量も質も段違いだ。
「とはいえ、これからどうしよう……」
ローズは、欄干に顎を乗せ、ため息を吐く。
それに呼応するように、先ほど戻った家から取ってきた新しい羽織が風にはためく。
気は楽になったが、悩みは尽きない。
ホームズの事もそうだが、自分自身の事もだ。
周りに比べて自分の情けなさが目立つ。
「分かってはいるんだけど……」
「何が?」
ローズのポツリとした呟きにジュードが尋ねる。
「うあ!!」
ローズは、心から驚き、勢いよく欄干から離れてしまい派手に転ける。
「え……ゴメン……大丈夫?」
まさかそこまで驚かれると思わなかったジュードは、思わず謝る。
「いや、別にどうって事ないわ……死ぬほど驚いただけだから」
「ねぇ!本当に大丈夫?!」
ジュードの心配など、どこ吹く風と言った風にホームズは、立ち上がる。
「まあ、別にどうって事ないわ……」
「ふ、ふーん……それでどうしたの?」
ジュードの質問にローズは、眉間にしわを寄せ首を傾げる。
「なんて言うのかな……、こう、このままじゃいけないのは、分かってはいるんだけどって感じかしら……」
ジュードは、ローズの話を聞いて頭に指を当てる。
「もしかして、ローズ……変わりたいの?」
ジュードの言葉にローズは、ポンと手を一つ叩く。
「そう、それよ!」
ローズは、うんうんと頷いている。
「なんかさ、みんなを見ていると、私もこのままじゃダメだって思うっていうか、焦るっていうか……」
街にいた時は、気づかなかったし思いもしなかった。
しかし、ミラを見て、ローエンを見てレイアを見て、そして………
「なに?何かついてる?」
ローズにじっと見られたジュードは、思わずたじろぐ。
「いやね、なんかジュードは、頑張ってるなぁと思って……」
「どういうこと?」
ジュードの質問にローズは、少し微笑む。
「ジュードは別に普通の少年でしょ。でも、変わろうと頑張ってる」
ローズは、そう言うと欄干にもたれかかる。
「自分だけなんの変化もしてないなんて、焦るわ……特に自分よりも年下の人達が頑張ってればね」
「……そういうもん?」
「そういうもの」
ローズは、にっこりと微笑む。
「とりあえず、私はホームズと同じ土俵に立てるくらいは、変わりたいの……レイアを見ててそう思った」
ローズは、そこで言葉を切り俯く。
「でも、それだけじゃ、
今のところのローズの悩みはそれだ。
ホームズに関係する悩みが一つ減ったと思ったらまたもう一つ。
「はぁ〜……乙女に悩みは尽きないものね」
ローズは、ふざけたように言葉を続ける。
ジュードは、そんなローズを見て微笑む。
「まあ、お互い頑張ろうね」
「そうね」
ローズは、そう答えると歩き出した。
ジュードは、そんなローズを見て首を傾げる。
「どこ行くの?」
「んー……まぁ、色々」
ローズはそう言ってジュードに手を向け手をヒラヒラと振り、雑踏の中に紛れていった。
◇◇◇◇
「……はぁ、また来ちゃった……」
ローズは、家族の墓の前でため息を吐く。
あのホームズ達との墓参りの時に全てが終わったらもう一度来るとローズは、心に決めていたのだ。
決めていたのだが……
「このザマか……」
何処かの誰かさんの様に格好が付かない事この上ない。
「……ローズ?」
その声に振り返ると、そこにはエリーゼとティポがいた。
「エリーゼ?!」
ローズは、驚いて声を上げる。
それから、首を傾げる。
「どうしてこんな所に?」
「歩いてたら、ローズが見えたから……」
『だから、ついてったんだよー』
ローズは、ティポの言葉を聞いてため息を一つ吐く。
「声かけてくれればいいのに……」
「だから、声をかけましたよ」
目的地に着いた後にだが……
呆れるローズに構わず、エリーゼは、墓石に目を向ける。
「それ、ローズのお父さんとお母さんのお墓ですか?」
「まぁね」
ローズは、そう言って静かに墓を撫でる。
全く汚れていない。
恐らく、マーロウが毎日綺麗にしているのだろう。
「ローズは、寂しくない……ですか?」
エリーゼの質問にピタリと動きを止める。
「ストレートに聞くわね……でも、そっちの方が有難いわ……」
ローズは、そう言って笑う。
エリーゼの質問の答えは、その笑顔を見るだけで分かる。
「今でこそ、こうやってお墓詣りに行くけどね、昔は出来なかったわ……」
ローズは、昔を思い出す様に言葉を続ける。
顔には、華やかな笑顔はない。
「このお墓ってのは、人がこの世にはいない証拠に見えない?私にはそう見えてね……それを見ると母さんも父さんも姉さんも、もう死んでいる。そんな事を自覚する事になる。
それが堪らなくやだったのよ」
代わりにあるのは見てるだけで胸を締め付けられる様な笑顔だ。
「でも、マーロウさんがそんな私の気持ちを見抜いてね、必ず月に一回は、お墓に連れて行っていたわ」
ローズは、そう言ってエリーゼの方を向く。
「まぁ、お陰で家族の死にようやく私は向き合えた。だからこそ、こうして墓参りに来るわけよ」
そこでローズは、言葉を区切るとにっこりと微笑む。
「マーロウさんには、感謝しているわ。やっぱり、残された身としては、お墓参りぐらいしたいもの」
エリーゼは、そんなローズの話を聞いて頷く。
「私も……お父さんとお母さんのお墓参りしたい……です」
スカートをキュッと握りしめる。
考えてみれば自分の父親も母親のお墓参りをしていない。
もう時間が経っているためもう見つからないかもしれない。
しかし、思ってるだけ、願ってるだけでは確率は、ゼロのままだ。
「だから、私も頑張り……ます!」
『住んでた所を見つけてやるー!』
エリーゼ達のそんな様子を見るとローズは、目を丸くし、そして直ぐに優しく微笑む。
「えぇ、頑張ってね」
ローズは、墓石から離れる。
「さて、私はそろそろ行くわ。貴方達も早めに帰った方がいいわよ」
ローズは、そう言って墓地を後にした。
◇◇◇◇
「『だから、頑張り……ます』か……」
ローズは、エリーゼの言葉を思い出しながら、道を歩きながらポツリと漏らす。
(なんかだか、本当にみんな頑張ってるなぁ……)
ローズは、そう言って空を見上げる。
(いつまでも子供ままじゃいられないってことかしらね……)
周りが大人や大人になろうと頑張っている連中が多い。
ローズは、ようやく自分の焦りの正体に気づく。
(私だけが子供みたいだ……)
ジュードもレイアも自分と歳の近い二人との間に差を感じるのは、
ホームズとの間に距離を感じるのは、
結局の所、そこに繋がる。
「ん?ローズか?」
「……!ミラ」
ローズは、向かいから歩いてくるミラに声をかけられ、考え事の世界から引っ張り戻される。
ローズは、ミラをジトっと睨む。
「貴方達には、私を驚かせる趣味でもあるのかしら……」
「私には、そんなのないぞ」
「知ってるわよ……」
八つ当たりに近い悪態を真面目に返されてしまいローズは、ため息を一つ吐く。
「それで、どうした?ローズ?先程から元気がないようだが……」
ローズは、言葉を詰まらせる。
「……ねぇ、一つか聞いてもいい?」
「質問にもよるが……」
ミラの言葉を肯定と受け取ったローズは、質問をする。
「この前のハートハーブの時に言ってわね、貴方の足の事……」
ローズの言葉にミラは顔を険しくする。
ホームズがいない間にローズは、ミラから事情を聞いている。
「貴方はクルスニクの槍を破壊しようとした結果、ナハティガルに捕まり、足を失った……貴方は怖くないの?その時の事を忘れてるわけじゃないでしょう?」
ローズは、そう言って何かに怯えるように肩を抱く。
「ローズ?」
ミラはそんなローズに眉を寄せながら尋ねる。
「私はね……まだ、あの、家族と過ごした家に入れないの……」
唇をぎゅっと噛みしめる。
「怖いの……私の家で起きたあの夜の事が、忘れられなくて………」
「じゃあ、今暮らしてるのは……」
ミラの質問にコクリと頷く。
「マーロウさんの紹介してくれた所で暮らしてるわ」
ローズは、必死な目で見る。
「ねぇ、貴方はどうして平気なの?!」
ミラは暫く黙ると口を開く。
「きっと、お前と私では、少し事情が違うだろうが……」
ローズの必死な質問に慎重に言葉を選びながら続ける。
「私にとって、
マクスウェルとして為すべきことだ。
もし、私に恐怖を感じるとしたら、それは、使命を果たそうとする炎が消えることだ」
ミラの凛とした佇まいに息を呑む。
そして、知る。
自分との確固たる差を。
確かにローズの場合とは、微妙に違うものがある。
しかし、そういう事を差し引いても、差を感じざるを得ない。
「ミラは、強いね」
ローズは、心からそう言う。
自分が弱いばかりに起こった事をローズは、決して忘れない。
だからこそ、剣術を習い「強さ」を身につけたはずだった。
だが、結果は、凄惨たるものだった。
今のミラを見てローズは、気づく。
自分が身につけたのは、所詮「力」であって、「強さ」ではない。
そして、ミラが持っているのは、「意志の強さ」だ。
これは、凄いと思うし、そして、それと同時に羨ましいと思う。
(……て、思っちゃダメよね…)
ローズは、首を振り、手を握りしめる。
確かに今のローズには、ミラ程の意志の強さは、ない。
しかし、それは、あくまで、『今は』という話だ。
(だったら、これから、少しづつ強くなっていけばいい……)
自分の持っていない無い物、意志の強さ。
それを自覚したローズが取るべき行動は、何だ?
(決まってる。自分にそれが無いのなら、持てばいい……その為には……)
ローズは、握り拳を胸に持って行き、顔を上げる。
「ミラ」
そう言ってミラを見るローズの目に宿る光は、先程までの弱々しいものではない。
「なんだ?」
ローズは、自分の決意を告げる前に一つ呼吸をする。
「私は、貴方に追いつく。
そして、私は、自分を……こんな情けない自分を、変えてみせる」
今のローズの目に宿る光は炎のように明るい。
「本当の意味で強い人間になってみせる」
真っ直ぐに目を見て告げるローズを見て、ミラは少し驚いた後、真剣な顔になると口を開く。
「私はどうすればいい?」
「ただ、見届けてくれればいいわ。私が、貴方に追いつくその時を」
ミラはローズの決意表明を受け、柔らかく微笑む。
「わかった。見届けよう」
ミラの笑顔にローズも釣られる様に微笑んだ。
◇◇◇
「やれやれ、落ち込んでるかと思ったけど……」
レイアは、物陰からローズとミラを伺いながら、そう呟く。
「心配ないみたいだね」
元気な笑顔を見せるローズを見るとレイアも微笑み、その場所を後にした。
因みに自分の今の悩みは、積みゲーが三つ程あることです。
忙しい時期に二つ同時に手をつけたのが敗因だと思います………
そして、読みかけの本も溜まっています………
さらに、用事も沢山あります………
せっかく、就職が決まったというのに全く心休まる時がありません……
では、また七十七話で( ´ ▽ ` )ノ