1人と1匹   作:takoyaki

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八十一話です



一昨日、日刊ランキング5位を獲得しました!
6位だ!とおもって活動報告したら、いつの間にやら、順位が一つ上がって、あらびっくり………
これもそれもあれも、全て読んで下さる皆さんのお陰です!
本当にありがとうございます!!
これからも日々精進していきたいと思います!

ゴホン、長くなりました




てなわけで、どうぞ


温故知人

「はぁ……やれやれ、衝撃の事実が発覚したねぇ……全く……」

カバンのショックから冷めきらないホームズは、天井を見上げながらポツリと呟く。

「衝撃つうか、笑撃だったけどな」

「誰が上手いこと言えって言ったんだい……何も笑えないよ……」

身体を休めろと言われたヨルとホームズは、ダラダラと過ごしていた。

「さてと、折角頂いた休みだし……」

「どうするつもりだ?」

「クレインさんのお墓参りにでも行こうかな、と思うけど……どう?」

「ま、拒否権はないだろ、俺に」

「よく分かってるじゃないか」

ホームズは、どうでも良さそうに、ヨルに返事をすると部屋からでて、階段を降りる。

一階の大広間にローエンが物憂げに一人佇んでいた。

「……ローエン?」

気になって声をかけると、ローエンは、考え事から、引き戻され少し驚いた顔を向ける。

「ホームズさんでしたか」

「そうだよ」

ホームズは、ひらひらと手を振る。

ローエンは、それを見て口を開く。

「いよいよですね……」

「そうだねぇ……」

ホームズは、そう言って微笑む。

相変わらず胡散臭い。

特に何も隠していないのにだ。

「……まだ、決意は固まらないのかい?」

ホームズは、ローエンに尋ねる。

「決意というより、覚悟ですね……」

「覚悟?」

首を傾げるホームズにローエンは、微笑む。

「ホームズさんが、私達を裏切った時、レイアさんは覚悟を決めて挑んでいました。気づいていました?」

ホームズは、先程の笑みを引っ込める。

「……彼女、迷ってもいたけど、そんな中でも覚悟を決めてたねぇ……絶対におれを止めるっていうね」

ホームズは、椅子に腰をかける。

「あの時、レイアがおれを倒してくれなかったら、多分ここにはいないよ」

ホームズの言葉にローエンは、頷く。

「あの時、レイアさんに出来たことが私には出来なかった。

友の間違いを正す覚悟がなかったんです」

「………なるほどね……思い出すわけだ、過ちって奴を……」

「そういうことです」

ローエンは、ホームズの言葉にそう返す。

ホームズは、席に着く。

「でもさぁ、別にいいんじゃない?」

ホームズの言葉にローエンは、首を傾げる。

「レイアに言われて思ったんだ。友達と戦う覚悟を決めることが正しいとは、限らないって」

ローエンは、ホームズの言葉に静かに微笑んで頷く。

「……しかし、必要なことです」

「必要?」

今度は、ホームズが首を傾げる番だ。

「えぇ。そして、友の間違いを正す為に戦う覚悟を決めることは、決して間違ってもいないと思いますよ」

ローエンの言葉を聞いたホームズは、しばらく考える。

「………それもそうだね……」

ホームズは、考えきった後深く息を吐きながら言う。

「難しいもんだ……やれやれ」

大きくため息を吐きながらホームズは、言葉を出す。

「えぇ、本当に……」

ローエンは、そうこぼした。

「もし、もしですけど、ホームズさん」

「なんだい?」

「私がこの戦いから降りるとしたら、貴方は、私を責めますか?」

ホームズは、少し目を丸くする。

「どうしたんだい?突然?」

「いえ、なんとなくそう思っただけです」

ホームズは、驚きはしたが、碧い目をローエンに向ける。

「別に、責めないよ」

そう言って、ホームズは肩を竦める。

「君が、いなかったらいなかったでそれなりに頑張るさ」

「私は必要ないですか?」

「そうじゃなくてさ……」

ホームズは、困ったように頭をボリボリとかく。

「友人と戦うのは辛いことだからさ、それを辛いと感じるなら、それは仕方ないと思うよ」

ローズを蹴り飛ばした時、ジュードと戦った時、ミラと戦った時、そして、レイアと戦った時、辛くなかったと言ったら嘘になる。

「だからさ、そこから降りたら、おれ達が頑張ってナハティガルと戦うさ」

ローエンは、目を丸くしている。

それから、嬉しそうに目を細める。

「実は、ジュードさんに言われたんです。『この戦いから降りても僕は責めないよ』、と」

「ジュードが?」

「えぇ。だから、少し気になったので尋ねさせて貰いました」

ホームズは、それを聞くと微笑む。

「満足かい?」

ローエンは、微笑み返す。

「なら、良かった……と、そうだ、ローエン、クレインさんのお墓って何処にあるんだい?」

ローエンは、一瞬何を言われたか分からなかったが、直ぐに理解する。

「屋敷の裏です……クレイン様も喜びますよ」

ホームズは、それを聞くと椅子から立ち上がる。

「ありがとね……さて、行く前に、ちょっと、トイレへ……」

ホームズは、そう言うとヨルを置いて歩き去って行った。

大した距離ではないので別にどうってことはない。

ポツリと一匹残されたヨルは、つまらなさそうに尻尾を振っている。

ヨルは、そして、ピタリと尻尾を止める。

「……因みに言っておくとだ……」

ヨルは、そこでローエンの顔を見る。

「お前がこの戦いから逃げたら、俺はお前の事を軽蔑する」

ヨルは、ニヤリと口角を上げる。

「ま、元々人間を尊敬なんかしていないがな」

ローエンは、特に表情を変えない。

黙ってヨルの言葉を聞いている。

「お前は、馬鹿王の友人である前に、一国の参謀長だったんだろう、指揮者(コンダクター)?」

そう言って、テーブルの上に移動する。

「だったら、お前には、責任があった筈だ、王を止める役目がな?」

テクテクと可愛らしく、しかし、声は、震える程の迫力でテーブルを歩く。

「二度も三度もそれから逃げるような馬鹿を軽蔑するなと言う方が難しいと思わんか?」

ヨルは小首を傾げながら尋ねる。

その仕草だけ見ればとても可愛らしい。

しかし、ヨルがそれをやっているというのが問題だ。

それだけで、不気味さが増す。

「ま、というのが一般論だ」

ヨルは、尻尾をローエンに突きつける。

「……一般論?」

ローエンは、不思議そうにする。

今までその様にローエンは、責められてきたのだ。

それは確かに正しかったし、間違っていなかった。

それをヨルは、一般論と言って切り捨てたのだ。

「ここからは、俺の自論だ。というより、レイアを見ていて思った」

ヨルは、そこで言葉を切るとホームズの方を見つめる。

「友とやらに全てを賛同する理由はないのだろ?間違っていたら、間違っていると言わなければならない、正さなければならない」

ヨルは、再びニヤリとわらう。

「それが出来なければ、ただの信者だ。友とやらとは言えないだろ」

ヨルの言葉にローエンは、少し驚いて目を丸くする。

「盲信する人間なんざ、気持ち悪いの一言に尽きる。

軽蔑するのは、当然だろ?」

ヨルの言葉にローエンは、面白そうに笑う。

「ふふふ、あなた方は、本当に面白いですね」

ローエンは、そう言って天井を仰ぐ。

「……そうですね、そうですよね……」

ローエンは、そう言ってヨルの方を見る。

「ありがとうございます、ヨルさん」

「そりゃどうも」

ヨルは、そう言うと、もう用はないと言わんばかりにテクテクと歩き出した。

歩いて行った方向を見れば、そこには、トイレから出てきたホームズが歩いて、こちらにやってきていた。

「……何を話していたんだい?」

ホームズは、不思議そうに尋ねる。

「内緒って奴だ」

「ふーん、そう」

ホームズは、肩を竦め、歩き始めようとする。

すると、玄関前でエリーゼにばったり出会う。

「あれ?エリーゼ、どうしたんだい?君もトイレ?」

ホームズがそう言うとティポが飛んできて頭をかじる。

「サイテー……です」

エリーゼは、デリカシー皆無のホームズを冷たい目で睨む。

「ホームズの声が聞こえたから来ただけです」

ホームズは、無理矢理ティポを取るとエリーゼに目を向ける。

「なんで来たんだい?」

「……少し、聞きたい事がある……です。ちょっと来て下さい」

「?」

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

不思議そうなホームズに構わず、エリーゼは、近くの部屋にホームズを入れ、椅子に座らせる。

そして、自分も座ると更に言葉を続ける。

「どうして、初めて会った時とこの前の時、私を攻撃しなかった……ですか?」

ホームズは、少し目を丸くすると、困った様に頬を引きつらせる。

「え……言わなくちゃダメ?」

「それで、ホームズが裏切った事はチャラにする……です」

「君の寛大な措置に感謝するよ」

ホームズは、やれやれと大きくため息を吐く。

それから、少し寂しそうな顔をして話し始める。

「ローエン達には話したけど、おれは、とある村で、昔、君みたいな境遇の女の子に会った事があるんだ」

エリーゼは、驚く。

まさか、ホームズがそんな自分と同じような子に会っているとはおもわなかったのだろう。

ホームズの話はまだ続く。

「その子もイスラに売られたみたいでね、いつも泣いてたんだ。寂しい、寂しいってね」

ホームズは、そう言って話す。

「その子は、施設に引き取られていたから、厳密に言えば一人じゃなかったけど、お父さんとお母さんの事を思い出していつも泣いてた」

後ろで手を組みホームズは、更に言葉を続ける。

「ま、おれは村にいた間は、だいたいその子と過ごしていてね……おれとその子の年の差が六つ。ちょうど、エリーゼと似たような年の離れ方なんだよ」

「……もしかして、一緒にしてますか?」

「ま、そういう事」

ホームズは、そう言って肩を竦める。

エリーゼは、納得した。

ホームズは、エリーゼとその子を重ねてしまっている。

だから、エリーゼに対してはどうしても戦えないのだ。

頭で分かっていても、後一歩の踏み込みがどうしても出来ない。

「因みに教えておくと、こいつのガキのメソメソ嫌いも似たような理由だ」

肩にいるヨルが口を挟む。

ホームズは、うんざりしたようにヨルを見る。

「君は余計なことしか言わないよね」

「ホームズも……です」

エリーゼの言葉にホームズは、頬を引きつらせる。

そんなホームズに構わず、エリーゼは、続ける。

「どんな子でした?」

「泣き虫だったね」

ノータイムで返すホームズにエリーゼは、頬を引きつらせる。

それから、先程とは違い言いづらそうに言葉を濁す。

「まぁ、後、ちょーーっと変な、いや、変わった子だったなぁ」

「……」

相変わらず、ホームズには、微笑ましいというものが似合わない。

もう少し、暖かい話を期待していたのだが………

「どうして、仲良くなったんですか?」

「彼女の話し相手がおれしかいなかったんだよ」

エリーゼは、首を傾げる。

「施設のみんなは、当たり前だけど、親がいないからそこにいるんだよ。だから、一々自分が、それを悲しいとそこで泣くわけにいかなかったんだよ」

ホームズは、そう言って椅子に深く腰掛ける。

「んで、隠れて泣いているところをおれがうっかり見つけちゃってね……そしたら、なんかおれの前だけで泣くようになって、いつの間にか話すようになったんだよ……あれ、逆だっけ?いつの間にか話すようになって、おれの前だけで泣くようになったんだっけ?」

『どっちでもいいーよー』

迷うホームズをバッサリとティポが切り捨てる。

思わずこめかみをひくつかせる、ホームズ。

「どうして、でしょう?」

エリーゼの言葉にホームズは、肩を竦める。

「知らない、頑として答えなかったから、あの子」

ヨルは、頭の上でため息を吐く。

どうやら我慢できなかったようだ。

「お前が何も言わなかったからだ」

ホームズは不思議そうな顔でヨルを見る。

「慰めもせず、余計な事も言わず、ただ黙って、泣き止むまで待ってたから、奴はお前に懐いたんだよ」

ヨルの言葉にホームズは、更に目を丸くする。

「懐かれてたの……か?いや、心当たりがないわけじゃないんだけれども………うーん……あれを懐かれてたと言うべきなのだろうか……」

ホームズは、複雑そうな顔でうんうんと唸っている。

エリーゼは、ため息を吐く。

「ホームズって、本当にろくな目にあってませんね」

エリーゼは、ホームズの女運の悪さにため息を吐く。

僅かではあるが、同情を禁じ得ない。

それから、エリーゼは少しだけ微笑む。

「やっぱり優しいですね、ホームズ」

自分の時もそうだったし、ローズの時も、分かりづらいが色々と動いている。

そんなエリーゼの言葉にホームズは、心底驚いた顔をして、真剣な声で言う。

「君がおれのことを褒めるなんて、明日は雹でも降るんじゃないか?」

ホームズの言葉にエリーゼは、半眼で呆れる。

「そういうところがダメなんですよね……」

『バーホ!』

エリーゼは、ホームズがモテない理由を改めて再確認した。

エリーゼとティポの言葉にホームズは、決まり悪そうに肩を竦めると、立ち上がる。

「さて、聞かれたことはあらかた話したと思うけど、まだ何かあるかい?」

ホームズの質問にエリーゼは、首を横に振る。

「まぁ、この辺でいいです。多分これ以上は、どうせ喋ってくれないです、ホームズは」

「理解してくれて、どーも」

ホームズは、ひらひらと手を振って答える。

「じゃあ、おれはおれで用事があるから、この辺で」

そう言って扉に手をかける。

「ホームズ」

そんなホームズをエリーゼが呼び止める。

「なんだい?」

エリーゼの言葉にホームズは、振り返る。

「頑張りましょう……ね」

エリーゼの力一杯の言葉にホームズは、目を丸くするが、直ぐにニヤリと笑い、エリーゼに人差し指を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

「誰に言ってるんだい、エリーゼ・ルタス」

 

 

 

 

 

ホームズは、そう言って部屋の扉を閉めた。

 

 

 

 













何故、クリスマスよりイブの方が盛り上がるんでしょう?
まあ、自分が言っても悲しいだけなのですが……



いいんです!
少し早めにやりましたから!クリスマスパーティー!
友達と盛大に寮でやりましたよ!
ケーキ食って、チキン(焼き鳥)食って、ワイン(それとビール)飲んで、最後に友人に殴られて、大騒ぎでしたよ!

楽しかったぜ!コンチクショー!!
あれ、涙が………



ではまた八十二話で( ´ ▽ ` )ノ

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