1人と1匹   作:takoyaki

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八十二話です!



布団にいるはずなのに寒い!どういうことだ!!



てなわけでどうぞ


いつかの敵といつもの友

「ん?あれは……」

花を買いに広場に来たホームズは、見覚えのあるコートの男を見かける。

「よう」

「……アルヴィンじゃん。怪我大丈夫かい?」

「お、まあな」

アルヴィンは、ひらひらと手を振る。

「何してたんだい?」

ホームズの言葉にアルヴィンは、ん?と顔を向ける。

「さっきまで、ミラと話して、次にジュードと話して……てな感じだ」

「ふーん……」

ホームズは、出会っていない。

どうやら、すれ違いになってしまった様だ。

「二人は、何だって?」

ホームズの言葉にアルヴィンは、肩を竦める。

「俺の事を信頼するんだか、しないんだかって、感じだな」

「それはそれは……」

ヨルは、アルヴィンに冷ややかな目を向ける。

「『僕もミラみたいに精霊と人を守れるかな』だってさ」

「なんだい、それ?」

怪訝そうなホームズにアルヴィンが、肩を竦める。

「ジュード君の言葉、あいつ成長してるよね」

「君の言動から、悪意しか感じないのは気のせいかい?」

ホームズは、呆れたようにふざけているアルヴィンを見る。

アルヴィンは、少し面白そうに笑う。

「さて、どっちでしょう?」

「知らない方が幸せそうだ」

ホームズは、頬を引きつらせながら答える。

そんなホームズにアルヴィンは、ところで、と切り出す。

「ホームズは、俺の事を信じるのか?」

ホームズは、肩を竦める。

「まぁ、信じてあげるよ。おれは」

「随分と微妙な返事だな……」

アルヴィンの言葉にホームズは、片眉を上げ、指を一つ立てる。

「なんと言ったって君はおれと同じく、ここ、リーゼ・マクシアの人間じゃない」

もう一つ立てる。

「んで、次に君の生い立ちには、まぁ、言い方は何だけど、同情するものがある」

そして、更にもう一本指を立てる。

「そして、最後に一つ」

ホームズは、胡散臭い笑みを浮かべる。

「おれと君は裏切り者同士。なんか、こう通じる物がある……そう思わないかい?」

アルヴィンは、少し驚いた顔をすると、クククと面白そうに笑う。

「そう奴だよな、お前は」

ホームズも面白そうに笑う。

二人とも笑顔だというのに寒気がするほど空気は、薄ら寒い。

ホームズは、笑みを引っ込めると真剣な顔を向ける。

「まぁ、おれはみんなに信じてもらえた。

だったら、誰かを信じてやるのが当たり前だと思わないかい?」

ホームズの言葉にアルヴィンは、目を丸くする。

それから、ふっとため息を吐く。

「そんな理由で俺を信じるのか?」

「なんだい?これ以上何か理由が欲しいのかい?」

「いやいや、充分だよ」

ホームズの言葉にアルヴィンは、空を見上げ、ふと疑問に思った事を尋ねる。

「なぁ、お前はどれくらい隠し事してるんだ?」

「内緒。男は秘密があった方が格好良いからね」

ホームズは、人差指を一つ口に持っていくといつものように胡散臭い笑顔で答える。

アルヴィンは、ため息を吐く。

「よく、そんなんでミラ達に信用されたよな」

ホームズは、肩を竦める。

「生きてれば不思議な事なんていくらでもあるさ」

「流石、俺より年下の奴が言うと説得力が違うぜ」

アルヴィンの言葉にホームズは、肩を竦める。

「おれより年上の君が分からない事がおれに分かるものか」

「違いねえ」

アルヴィンは、面白そうにホームズの減らず口を聞いている。

それから、もう一つ質問をする。

「なぁ、両親の故郷なんて行ってどうするんだ?」

「どうするって……」

ホームズは、不思議そうな顔をする。

「まさか、特に目的もなく行くのか?」

「いやいや、両親の故郷を見てみたいんだよ」

アルヴィンの質問にホームズは、当たり前のように言う。

「知らないことを知りたいと思い、行ったことのない所に行ってみたいと思い、食べた事のないものを食べたいと思い、見たことのないものを見たいと思う、それに理由なんているのかい?」

ホームズは、当たり前のように理由を並べる。

それから、ホームズは、肩にいるヨルを見る。

「殆どのことが気が合わないけど、そこだけは、通じ合うものがあるよね」

「そこだけは、な」

ヨルは、欠伸をしながらホームズに答える。

ヨルの言葉に頷くとホームズはいつもの笑みを浮かべる。

「要約すると、行きたいから、行きたいんだよ」

そう言ってホームズらしい答えで締めた。

しかし、アルヴィンは、そこで質問を止めない。

「それだけじゃないだろ?確かにそれも嘘じゃないだろうが、もう一つか、二つ理由があるだろ?」

ホームズは、アルヴィンの的を得た質問にニヤリと笑う。

「まあね。でも、言わなくてもいいだろう?」

ホームズは、中指の指輪を空に掲げ、それからアルヴィンを見る。

「ゴシップ好きなおばちゃんじゃないんだから、さ」

ホームズは、肩を竦める。

「根掘り葉掘り聞くなんて紳士じゃないだろう?

ま、君を紳士と呼ぶのは、少し無理がある気がするけど」

「お前ほどじゃないぜ」

ホームズは、思わず頬を引きつらせる。

その頬を戻すとなんて事無さそうに話す

「まあ、大した理由じゃない。気が向いたらたら話してあげるよ」

アルヴィンは、やれやれとため息を吐く。

「せいぜい期待せずに待ってるよ」

アルヴィンの言葉にホームズは、ニヤリと笑うと花屋に向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……くせ者揃いだこと」

アルヴィンは、誰に聞かせるまでもなくポツリと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

ホームズは、花を抱えて屋敷へ向かっていった。

屋敷の階段には、レイアが座っていた。

「ん、なにしてるんだい?こんなところで?」

「ホームズこそ……って、あぁ、なるほど」

レイアは、ホームズの持っている花束を見て納得したようだ。

「クレインさんのお墓参り?」

「まあね。あの人には、色々とお世話になったし」

ホームズの言葉にレイアは、そうと返事をする。

「何か落ち込んでいるのかい?」

「んー……まあ、色々と。乙女に悩みは尽きないんだよ」

ホームズは、レイアの言葉にニヤリと笑う。

「空の王者が乙女だったとはね……」

「……まだ、そのネタ引っ張るの?」

レイアは、半眼を向ける。

ホームズは、肩を竦めて答える。

それから、何かを思い出したように、手をポンと叩く。

「あぁ、そうだ。いい機会だから聞いちゃお。ミラに見せたあの紙には、なんて書いてあったの?」

「紙……って、あ!」

レイアは、思い出したようだ。顔を赤くすると目をそらす。

「な、何でもない」

「要約するとつり目のガキが心配だ!って感じだったな」

ヨルの言葉に、レイアは、驚いたように顔をヨルに向ける。

「み、見たの?!」

「いや、別に。……そうか、そんな事が書いてあったのか」

ヨルは、ニヤリと笑みを浮かべる。

「やられた……」

レイアは、がっくりと肩を落とす。

つまり、カマをかけたのだ。

レイアは、少し落ち込むが直ぐに開き直る。

「そうですよ!ジュードが医者に成れなかったら困る、怪我したら困るって書いたんだよ!」

つらつらと述べていくレイアをホームズは、面白そうに笑っている。

レイアは、反対に頬を膨らませていく。

「大変だねぇ、幼馴染みは」

「ホームズもね」

ホームズは、二刀流の昔馴染みを思い出してため息を吐く。

「まあ、別の意味でね」

ホームズは、何回暴力を振るわれたか思い出せない。

まあ、段々と割合が上がってきて、七対三ぐらいの割合でホームズが悪いのだが。

レイアは、落ち着くとホームズに座るように促す。

ホームズは、レイアところでおなじように階段に座る。

レイアは、先程の雰囲気とは、がらりと変えてホームズに尋ねる。

「ホームズはさ、黒匣(ジン)とかクルスニクの槍とかどう思う?」

「どうって……あっていいものじゃないだろう」

ホームズは、色々と思い出す。

昔戦ったアルクノアの持っていた黒匣(ジン)

あれは、あってはいいものではない。

「ふーん……前にさ、私が怪我したって話したの覚えてる?」

「まあね」

ホームズは、レイアの言葉を肯定する。

「あれさ、黒匣(ジン)だったんだよね……」

「ま、だろうと思ったけど」

「気づいてたんなら、言ってくれればいいのに……」

レイアは、頬を引きつらせながらホームズに悪態をつく。

ホームズは、ため息を一つ吐く。

「君みたいな一般人に、そんな裏側を教えるわけないだろう」

「まぁ、それもそうだけど……」

「それに、推論にすぎなかったからね」

ホームズの言い分に納得するとレイアは、空を見上げる。

「……ホームズは、さ……この旅が終わったらどうするの?」

レイアの問いにホームズは、首を傾げ、考える。

「まぁ、両親の故郷を探そうと思うけど……」

「結局それが一番の目的だもんね、ホームズにとって」

レイアの言葉にホームズは、頷く。

「ミラの報酬は、それに関する情報だけど………それが確実とは限らないし……」

レイアは、ホームズの言葉を聞いて驚く。

「確実じゃないの?」

「あれ、言ってなかったっけ?可能性があるかもしれない、その程度のものなんだよ」

ホームズは、平然と何を今更と言うよう言葉を発する。

「無駄骨になるかもしれないって思わないの?」

レイアの言葉にホームズは、考える。

そして、暫くして口を開く。

「例えばさ、ここに100個の閉じられた箱があるとするだろう?」

ホームズは、手で箱の形を示す。

「この中に一つだけ、飴がある箱がとする……レイア、君ならどうする?」

「なにそれ?なぞなぞ?」

「いや」

ホームズは、首を横に振る。

「だから、普通に考えておくれ?」

ホームズの言葉にレイアは、頭をひねる。

というか、悩まなくても答えは出ている。

「箱を片っ端から開けていくしかないんじゃない?」

ホームズは、頷く。

どうやら正解のようだ。

「100個の箱の内1個をあける。すると中は空だった。ということは、残り99個の中にある事になる。次にもう一個開ける。するとまたしても中は空だった。ということは、残り98個の中にある事になる」

ホームズは、順を追って説明していく。レイアは、段々とホームズの言いたいことが分かってきた。

「そうやって、箱を片っ端から開けていく作業、君は無駄骨だとおもうかい?」

「……なるほどね」

レイアは、納得したようだ。

「ま、箱の中に本当に飴玉があるという大前提が必要だがな」

ヨルは、水を差すようにホームズにニヤリと笑いかける。

ホームズは、頬を引きつらせる。

しかし、一理あるのだ、ヨルの言うことには。

もし、ミラを犠牲にせず、エレンピオスに行く方法がなかったとしたら、それは………

「徒労以外の何物ではないな」

ホームズの旅は、何も実らせないことになる。

「ま、おれとしては、そうならない事を祈りながら、箱を開けるしかないねぇ……」

ホームズは、ため息を吐きながらそう答えた。

そんなホームズを見てレイアは、理解する。

(そっか、ホームズって分かりづらいけど、いつもその不安と戦ってるんだよね……)

自分の弱みをそうそう見せず、そして、自分の常識から少し外れている友人をレイアは、また一つ理解する。

レイアは、立ち上がるとホームズを真っ直ぐ見る。

「あのさ!きっと見つかるよ!ホームズの両親の故郷に行く方法」

ホームズは、レイアに目を向ける。

「根拠は?」

「わたしの勘!」

「は?」

ホームズは、レイアの言葉に思わずマヌケな顔をする。

「わたしの勘は、当たるの!」

「そんな話、初耳だけど………」

「いいの!」

レイアは、そう力強く胸を張って言い放つ。

そんなレイアを見てホームズは、顔の暗い影を振り払うと嬉しそうに笑う。

「やれやれ、君って人は………」

ホームズもレイアを習うように立ち上がる。

「そうだねぇ……いつか、見つかるさ。人生は長いんだものね」

「そういう事」

レイアは、笑う。

「ふふふ、ありがとう、レイア」

ホームズは、お礼を言うと歩き始めた。

「それじゃあ、おれはこれで」

ホームズは、そう言ってクレインの墓へと歩いて行った。

「ホームズ!頑張ろうね!」

そんなホームズの背中にレイアは、声を掛ける。

ホームズは、ひらひらと手を振って答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「100個の閉じられた箱を開ける、か……」

ヨルは、先程のホームズのたとえ話を思い出しながら言う。

「なんだい?」

そんなヨルにホームズは、怪訝そうに尋ねる。

「せいぜい、うっかりパンドラの箱を開けないよう気をつけることだな」

ヨルは、口角をつり上げニヤリと笑った。

ホームズは、冷めた目でヨルを見る。

「ご忠告どうも。せいぜい気をつけるよ」

 

 

 

 

 






レイアとアルヴィンでした!
ぶっちゃけた事を言いますと、この決戦前の話は、レイアしか考えていませんでしたが!
ローエンの話を何となく考えたら、「こりゃあ全員分やらなきゃならんだろ!!」
と思い直して全て書きました。
まだ、幾つか残っていますが、どれも難産でした




あ、活動報告に企画を投稿しました!



では、また八十三話で( ´ ▽ ` )ノ

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