1人と1匹   作:takoyaki

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八十四話です。




ふざけた話ばかり書いていると真面目な話を書きたくなり、真面目な話を書いているとふざけた話を書きたくなる……
何事もバランスですね
てなわけで、どうぞ



縁は異なもの通なもの

「………何してるんだい?ローズ?」

「見ての通り、掃除よ」

ローズは、そう言うと箒のゴミをちりとりに集める。

「……質問を変えるよ、ローズ。どうして、掃除をしてるんだい?」

ローズは、ちりとりに集めたゴミをゴミ箱に捨てる。

「ただ、泊めてもらうのも悪いから、掃除でもしようかなって」

ローズは、そう言うと広間のソファに腰掛け、本を開く。

ホームズは、ローズの栞に見覚えのある花があるのを見つけた。

「それかい?おれが上げた花の冠の花って?」

ローズは、一瞬動きを止めるが、本を閉じて答える。

「そうよ」

そう言ってローズは、栞をホームズに見せる。

「へぇ………」

ホームズは、少しだけ嬉しそうに微笑む。

ローズは、気恥ずかしそうにホームズから、栞に視線を移す。

「……で、貴方こそ何してるのよ」

「あぁ、クレインさんのお墓参りの帰り。後はダラダラしてようかなって時に君が掃除をしてるのが目に入ったの」

ローズは、ホームズの言葉を聞くと首を傾げる。

「クレインさんって?」

「ドロッセルさんのお兄さんだよ。ナハティガルの手の者に殺されたらしいんだ」

ホームズの話を聞きローズは、顔を曇らせる。

「……もしかして、だからあんなに若い女の子が領主をやっているの?」

「正解。多分亡くなってからそう日は立っていないよ……」

ローズは、ドロッセルの事を思う。

「……そっか、思ったよりもナハティガルの名前を聞くわね……」

改めて、自分が一体誰に挑もうとしているのかを再認識した。

「何だか、貴方達に会ってから色々と変わったわ……」

「………どの辺が?」

「アルクノアを知った。まぁ、昔から知っていたけれど、それでも実際に見たのは初めてだった訳だし……後は、黒匣(ジン)やら、マクスウェルやら、ガイアス王やら、四象刃(フォーブ)やら、ナハティガル王やら……大騒ぎもいいところよ」

「まぁ、あそこにずっといれば知ることもなかったし、関わることもなかったろうね」

ホームズは、肩をすくめる。

ローズは、伸びをする。

「お陰で自分がどれだけ、未熟者か理解する事が出来たわ」

伸びをした後ローズは、静かに下を向く。

カン・バルクの城での事を思い出しているのだろう。

彼処で自分が如何に覚悟が足りなかったのかはっきりと分かった。

そして、そういう事が分かるほど……

「みんな凄いよね……」

「みんながみんなって訳じゃないだろう………例えば、つり目のガキとか」

ローズの言葉をヨルが冷めた口調で遮る。

ヨルの言葉を聞いてローズは、首を横に振る。

「それでも、ジュードは、変わろうとしてる、大人になろうと必死になってる。勿論、迷いながらね」

そこでローズは、言葉を切ると伸びを一つ。

「年下が、そんな事になってるだもの……焦らない理由はないわ……」

ホームズは、黙ってローズの話を聞いている。

「だからさ、私も目標を作ったの。こうなりたい!て言うものをね」

「へぇ………誰?」

と聞きながらもホームズは、何と無く予想は付いていた。

このパーティには、それが一番似合う奴がいるのだ。

男でも、恐らく目指すだろう。女なら尚更だ。

 

 

 

 

 

「ミラよ」

 

 

 

 

予想通りの言葉にホームズは、少しだけ微笑む。

そんなホームズに構わず、ローズは、言葉を続ける。

「私はミラみたいに自分の信念を貫き、使命を果たせる人間になりたい」

「ま、彼女、人間じゃないけどね」

「人の決意を茶化さない」

ローズに睨まれホームズは、肩をすくめる。

「その為にも私は、覚悟を決めるわ。今度こそ、ね」

ローズは、ギュッと手を握る。

ホームズは、黙ってローズの決意をきいていた。

そんなホームズを見て、ローズは、決意を熱く語っていた自分が恥ずかしくなったのか、顔を赤くする。

「ま、ま、まあ、成れたらいいなぁ……なんて感じなんだけど……」

ホームズは、そんなローズを片眉をあげて見る。

「最後までカッコつけたまえローズ。その決意は、誇れるものだ。高みを目指す、その心意気、覚悟、決意、どれをとってもいいものだ」

真っ直ぐな褒め言葉にローズは、更に反応に困ったように顔を赤くしながら頭を掻く。

「そ、そう?」

ホームズは、そんなローズに優しく微笑む。

「楽しみしてるよ、君がそんな人になるのをね」

皮肉もからかいもないホームズの言葉にローズは、赤くなった顔を隠すように背ける。

「意外ね、貴方がそんな事を言うなんて」

「友人の成長を楽しみにしない奴はいないだろう?」

「………ま、それもそうね」

ホームズの言葉に少し冷静さを取り戻す。

「貴方は、成長するのかしら?」

「なんで、そこ疑問系なんだい?」

ホームズは、頬を引きつらせながら尋ねる。

ローズは、椅子に深く腰掛ける。

「……何というか、もう成長し終わってる感じがするのよ、貴方」

ホームズは、神妙な顔をしながら聞いている。

「もう、やるべき事も見極めて、その為の努力もして、覚悟も決めて……なんかさ、大人というか……」

「そりゃあ、君より年上だからね」

ホームズは、どうでも良さそうに答える。

ローズは、ホームズの返答を適当に聞きながら首を捻る。

何だかニュアンスが違う気がする、と。

これよりももっと近い表現がある様な気がするのだが……

しかし、直ぐにぴったりな言葉を探し始める。

「そうじゃなくて……えっと……あぁ、分かった」

「?何が?」

「到達してるのよ、貴方」

「到達?」

「そう、なんかこうゴールしてるみたいな」

ホームズは、ローズの言葉に肩をすくめる。

「くっだらない。おれをいくつだと思ってるんだい?まだ、十八だゼ。

まだまだ成長するんだよ、これからね」

ホームズは、そう言って欠伸を一つ。

そんなホームズに構わずローズは、続ける。

「何だか残念な行動の方が多いけど、時々?偶に?稀に?見せる行動を見るとやっぱり凄いなって思うわ」

ホームズは、そこで目を丸くする。

「……君がおれの事を褒めるなんて……珍しい事もあるもんだね」

心の底から驚いているホームズにローズは、しまったと唇を噛む。

何と無くその場の雰囲気でホームズを褒めた気恥ずかしさが一気に襲ってきた。

しかし、否定するのもあまり好ましくない。

「……え、え、えぇ、そうでしょう?」

ローズは、精一杯なんて事ないという風に笑う。

勿論引きつった笑みになっているのだが。

ホームズは、ローズの言葉にニヤリと笑い、意地悪く尋ねる。

「ま、目標にする程じゃないだろう?」

「他人の褒め言葉ぐらい素直に受け取りなさいよ……」

ローズは、一気に冷めた表情になった。

ホームズは、クックックと楽しそうだ。

対するローズは、膨れっ面だ。

ヨルはそんな二人のやりとりを聞いていてため息を一つ。

ホームズは、ひとしきり笑うと深いため息を吐く。

「……『到達してる』か……」

「どうしたの?」

「まあ、君の言葉が意外に的を射てるなって……」

「?」

「こっちの話」

そうやって胡散臭く微笑むホームズを見てローズは、ため息を吐く。

「その秘密主義もどうにかしたら?」

ホームズは、肩をすくめて立ち上がる。

「ま、気が向いたらね」

「……答える気ないわね」

半眼のローズを他所にホームズは、自分に割り当てられた部屋へと歩いて行く。

 

 

 

 

 

 

「あぁ、そうだ、ローズ」

突然名前を呼ばれたローズは、少し戸惑う。

「何?」

 

 

 

 

 

 

 

「頼りにしてるよ」

 

 

 

 

 

 

ホームズは、そう言い残し去っていった。

 

 

 

 

 

ローズは、ポカンとしていたがホームズが姿が見なくなると少し拗ねたようになる。

「不意打ちは、卑怯だと思うわ……」

悔しそうにそういった後、ローズは、もう一度口を開く。

 

 

 

「任せなさい!」

 

 

 

そう言って胸をどんと叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

ホームズは、与えられた部屋に入るとベッドに倒れこむ。

「なーんか、みんな色々考えてるんだねぇ」

仰向けになるとホームズは、ポツリと呟いた。

「……お前も別に例外じゃないだろ?」

ヨルの言葉にホームズは、眉をぴくりとあげる。

「あのオンナと約束をするまで、裏切る羽目になるかもしれないとビクビクしていたのは、何処のどいつだ?」

「さて、誰だろうね」

ホームズは、肩をすくめ、それから口を開く。

「まあ、約束もしたし、そんな事はもうないだろうけどね」

「……ま、お前は一度決めればそうそう破らないだろうからな」

ヨルの言葉にホームズは、少し笑顔になる。

「まあね」

そう言ってから何かを思い出すように指をくるくる回す。

「そう言えば、おれってナハティガルの顔も知らないんだよね……どんな奴なのんだい?」

「俺が知るか」

「だよねぇ……」

ホームズは、ふむと腕を組む。

「おれだけ、縁が薄い気がするなぁ……」

「何が?」

「いや、ローエン、ジュード、ミラ、エリーゼ、アルヴィンは、一度は対峙したことがあるわけだろう?

レイアとっては、自分の国の王様。

ローズとっては、一応敵国の王様。

なんかおれだけ、こう……ね?」

「報酬が欲しいんだろ?だったら、それだけで十分じゃねーか」

ホームズが、言葉を探しながら言うホームズにヨルは、どうでも良さそうに返す。

「まあ、そう考えこまなくとも縁だの因縁だのは、お前が忘れてるところでひょっこり顔を出すさ」

「……そう?」

ヨルの言葉にホームズは、首を傾げる。

「……おれがナハティガル王に対して関わっているものって、クルスニクの槍のぐらいしか思い当たらないんだけど……おまけにそれも実物を見たわけでもないし……なんか、冷静に考えてみれば裏切るとかそれ以前に……こう……」

ホームズは、うーんと唸りながら何かピッタリの言葉を考えた後ヨルのほうをみる。

「アレだ。文字通り、縁も所縁ないって奴?」

「どうだか」

ヨルはそれが正解とは思っていないようだ。

首を傾げるホームズにヨルは口を開く。

「昔っからな、縁とか因縁ってやつは、生きてきた分絡みついているものだ。

そして、大抵の人間は、それに気付かない」

ヨルはそう言ってホームズを見る。

「例えば、俺とお前の関係がそうだろ?きっと俺に関わらなければ、お前はマクスウェルと闘うこともなかった……

な?お前が気付かなかっただけで、マクスウェルと因縁だって、生じてだろ」

「……属に言う縁は異なもの味なものって奴かい?」

ホームズの言葉にヨルは頷く。

「てなわけで、馬鹿王にもお前が気付いていないだけで何かの因縁があるかもしれんぞ」

「……ま、忠告程度に聞いといてあげるよ」

そう言うとホームズは、うーんと大きく伸びをし、感慨深げに口を開く。

「………とりあえずは、あれだ。やっと、ここまで来たって奴だねぇ」

「長かったな……」

ヨルもホームズの言葉に同意する。

この手掛かりの手掛かりを掴むのに幾年も。

手掛かりに辿り着くまで、何日も。

この道のりは、長く険しいものだった。

しかし、ようやく彼らの望むものが手に入るかもしれない。

結局確実ではないところがなんとも言えないのだが、そうは言っても今まで一番根拠のあるものだ。

ホームズにも自然と力が入る。

 

 

 

 

「もう少しだ……ヨル」

「そうだな。足を引っ張るなよ」

「君こそね」

 

 

 

ホームズとヨルは悪態をつき合い、どちらともなくニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれの決意をそれぞれの胸に秘め、束の間休息は、こうして過ぎて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

決戦の日はもうすぐだ。

 

 

 

 

 

 

 

 








最後はローズとヨルで締めました。


もう本当に難しかった………
何回手直ししたか分からないです……
本当は、昨日の内に上げたかったんですが……難しくて無理でした。
性格が気難しい奴らを締めに使ったせいだろうな(笑)
たぶん次更新するのは、番外編の方かな……
ではまた八十五話で( ´ ▽ ` )ノ
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