ゼスティリアが発売日に届かない!
どちくしょー!!
てなわけで、どうぞ
「みなさん、ワイバーンですが、そろそろ飛べるそうですよ」
テラスに集められた一同は、ドロッセルからそう告げられた。
「ふむ……早いな」
ミラはワイバーンの回復の早さに驚いたようだ。
「それじゃあ、出発しよう」
ジュードの言葉に一同は、広場へと歩き出した。
「はぁ……また、アレに乗るのか………」
ホームズは、ポツリと呟いた。
◇◇◇
「……て、あれ?アルヴィンは?さっきまでここにいたのに」
ホームズは、キョロキョロと辺りを見回す。
「どうせまた、嘘つく準備です……」
エリーゼは、下を向いて悪態をつく。
「ふむ、一理あるな……」
ヨルはエリーゼの言葉に納得している。
「ははは……」
ホームズは、頬を引きつらせる。
否定したいのだが、完璧に否定する事は出来ない。
そんなエリーゼをジュードが、諭す。
「そんなはずないよ、エリーゼ」
少し声が震えているところを見るとジュードも完全に否定は出来ないのだろう。
そんな面子を見ていたミラが口を開く。
「他の者はどう思う?このままアルヴィンとこの先の戦いを共にしてもいいと思うか?」
答えづらい質問だった。自分達を裏切ったような男をそう簡単に信用できるものでは、ない。
ホームズも中々、微妙なラインだというのに、同じ様な事をしたアルヴィンが何も無しに信じてもらえるわけがない。
「お母さんの事で頑張ってるみたいだし、わたしは、応援してあげたいな……」
レイアは、優しくそう言う。
「私は、彼自身がこのまま行くのかとても心配しています」
ローエンがアルヴィンの事をそう評価する。
余り褒められた生き方をしてない。大人とは言いづらいところがあるのだ。
「ぷい……」
エリーゼは、少し膨れっ面をして顔を背ける。
代わりにティポが口を開く。
『でもさ〜僕を悪い奴から取り戻してくれたのもアルヴィン何だよね〜』
隣で聞いていたエリーゼは、少し驚いた顔をする。
「どう思う?ホームズ?」
尋ねるローズにホームズは、微笑む。
「おれは別にいいよ。同じ裏切り者同士、彼のことを信じてあげるよ」
場の空気が凍りつく。
「ホームズ……」
ローズの絶対零度の視線を喰らいホームズは、気まずそうに肩をすくめる。
「まあ、それはともかく、あの子ほどの戦力を手放すのはおれとしては御免被りたいね」
ホームズは、割と真面目に言う。
確かにパワータイプで戦い慣れしているアルヴィンは、重要な戦力である。
「他にも理由は幾つかあるけど、まあ、そんなところかな」
最後の方は、戯けてそう言った。
そんなホームズの言葉を聞くとジュードは、ミラの方を向く。
「ミラはどう思ってるの?」
「真意が分からない以上信頼は、出来ないが戦いにおいてはこと信用している」
ミラの言葉を聞きエリーゼが微笑む。
「本人のいないところで悪口なんて、イケナイ子のすることだぞ」
声のした方を振り返るとアルヴィンがそこにいた。
エリーゼは、アルヴィンを睨むと顔を背ける。
「知りません」
冷たい対応にアルヴィンは、肩をすくめる。
「俺の味方は、お前らだけだよ」
アルヴィンの物言いにジュードは、半眼を向け、レイアは、何処かの誰かさんの様に肩を竦める。
ホームズは、面子を確認する。
「うん、全員揃ったみたいだね」
ホームズの言葉にミラは頷く。
「ふむ、ならばそろそろ出発……」
「待ってください!」
ミラの言葉をエリーゼが止める。
『ローエン、友達とケンカするのー?』
ティポの言葉を聞いたローエンは、柔らかく微笑む。
「ナハティガルがああなってしまったのは、私にも責任があります。
私は私なりの覚悟をもって戦います」
ローエンの言葉を聞いてレイアは、ホームズをちらりと見る。
目のあったホームズは、レイアに片眉をあげる。
「頑張ろうね、ローエン。私も頑張るから」
友と戦う辛さは、レイアには分かる。だからこその、心からの応援だ。
「骨は拾ってやるよ、じいさん」
アルヴィンが、縁起でもない冗談を言うと、ローエンはアルヴィンを見る。
「その時はよろしくお願いします」
まさか、そんな返しが来るとは思わなかったのだろう。
アルヴィンは、顔を暗くする。
「……マジにとるなよ」
それぞれの言葉を聞くとジュードは、表情を固くする。
「覚悟は決まったね、後は……」
「ああ、準備を整えて出発するのみ……みんな準備はいいか?」
ミラの質問にみんな力強く頷く。
ミラはそれを見届けると、ドロッセルの方を向く。
「世話になったな、ドロッセル」
ドロッセルは、静かに首を横に振り、その後ローエンに言葉をかける。
「ローエン、お兄様の為にも必ず帰ってきて下さいね」
ローエンは、優しく微笑む。
「分かりました、お嬢様」
ローエンのその様子を心配そうに、そして満足そうに見ると、今度はホームズの方を向く。
「あなたもですよ、ホームズさん。貴方が仕入れる紅茶が終わりそうなんです。
また、持って来てくださいね」
ドロッセルの言葉に、ホームズは、少し目を丸くすると嬉しそうに微笑む。
「了解です。その時は、サービスしますね」
「具体的には?」
「三割引きでどうです?」
ホームズの言葉にドロッセルは、面白そうに笑う。
「そのセコさがらしいですね……分かりました。ちゃんとお金を用意しておきます」
ドロッセルの言葉を聞くとホームズは、そのまま自分のワイバーンへと歩いていく。
ローズは、後ろを付いていく。
「……随分と仲よさそうじゃない」
「お得意様と仲悪くてどうするんだい……」
ホームズの呆れた様な物言いにローズは、少し時間をかけて納得すると、ドロッセルの方をチラチラと見る。
「私もお茶菓子持って行ってもいい?」
「ドロッセルさんに聞けば?」
ホームズの言葉にローズはドロッセルの方を見る。
ドロッセルは、それを見ると優しく微笑む。
「えぇ、楽しみにしてますよ」
ローズは、嬉しそうに笑うとホームズの後を追うようにワイバーンに乗る。
「いい人ね、ドロッセルさん」
ローズは、心の底からそう言う。
するとホームズは、嬉しそうに微笑む。
「まぁ、お得意様ってのは、そう言うもんさ」
そう言ってホームズは、手綱を握った。
みんながワイバーンに乗るとそれぞれ飛び立って行った。
「待ってますよ、皆さん」
ドロッセルは、そう言って見送った。
◇◇◇◇
「世の中には、『しぼうふらぐ』と言うものがあるらしいな」
バナウル街道に降りるとヨルは、そう呟いた。
「……どこで覚えたのそんな言葉……つーか、どうしたの突然?」
ホームズは、グッタリとしながら返す。
因みにローズも似たようなものだ。
先程から魂の抜けた顔で雲の流れを見ている。
相も変わらず、言うことを聞かないワイバーンを操ってホームズは、疲弊していた。
「いや、何先程の女領主との会話を思い出してな」
ホームズは、ワイバーンの方を見ると口を開く。
「だったら、安心したまえ。さっきの命がけの空の旅でフラグ回収したから」
実際今回も3回ほど死にかけている。
勿論ワイバーン達が何処かの化け物を怖がっていたからだ。
ミラは、そんな会話をしている彼らを尻目にローエンにこの道であっているのか尋ねる。
「よし、それじゃあ、行こう!」
ジュードの言葉にホームズは、重い腰を上げた。
「ほら、ローズ行くってよ」
「うー……」
ローズは、なんとか頷くが立ち上がる元気は、無さそうだ。
ホームズは、ため息を一つ吐くとローズの手を掴んで引っ張りあげる。
ローズは、ホームズの行動に目をパチクリさせる。
「………ありがとう」
少し顔を赤くしながらローズは、礼を言う。
代わりにホームズは、怪訝そうな顔をする。
「まさか、手を握られて照れてるんじゃあるまいね。
別にこれが初めてじゃないだろう?」
確かにこれが初めてではない。
ホームズは、何回かローズの手を掴んでいるのだ。
ホームズの言葉を聞くとローズは、赤くなった頬をスッと元の色に戻す。
そして、
「いて!」
ホームズの頭にチョップを食らわせ、スタスタとホームズを置いて歩いて行った。
アルヴィンとローエンは、顔を抑える。
一部始終見ていたレイアとエリーゼは、何とも言えない顔でホームズを見る。
別にローズは、手を握られた事だけに照れていたのではない。
ローズを引っ張り起こしてくれた事に照れていたのだ。
滅多に見せない優しさにローズは、不意打ちを食らった気分だったのだ。
まさか、不意打ちでそれをやられるとは思っていなかった為、不覚にも照れてしまったのだ。
まあ、勿論手を握られた事にも照れていたのだが……
そんな乙女心を全く理解していないホームズは、痛む頭を抱えていた。
「こういうの知ってます……確か、デリカシーがないって言うんですよね?」
「正解だよ、エリーゼ……」
レイアは、ため息を一つ吐くと愚かで哀れな友人に視線を送った。
◇◇◇
「………ねぇ、ローズ……何が気に障ったか知らないけど、そろそろ機嫌直しておくれよ……」
緊張感のない哀れな声をだしているのは、ホームズである。
先程から口をきいてくれないローズにホームズは、気まずい思いをしている。
勿論、もれなくホームズの肩に居るヨルも気まずい思いをしている。
さっきから、レイアの方に助けを求める視線を送っているのだが、レイアは見ない振りをしている。
「………ねぇ、ジュード」
「何?」
「わたし達、これから王様に喧嘩を売りに行くんだよね?」
「そうだよ」
オロオロしているホームズを見てレイアは、ため息を吐く。
「緊張感ないなぁ………」
「ほ、ほら、張り詰めた空気を和らげようとしてるのかも?」
「いや、あいつらの空気張り詰めまくってんだろ」
ジュードの決死のフォローをアルヴィンが冷静に潰す。
段々と空が暗くなっている。
つまり、夜域であるイル・ファンに近づいているのだ。
敵の親玉へと乗り込むというのに、このていたらく。
そんな空気の中、ホームズが何かを見つける。
「ほ、ほら、ローズ!【アオイハナ】だよ!」
ホームズが指差す先には青色の綺麗な5枚の花びらを広げている花があった。
ジュードは、それを見て苦笑いする。
「……それ、カエルラでしょ?……【アオイハナ】って……まんまじゃん」
ジュードは、冷たくホームズをあしらう。
ホームズは、驚いたように手を叩く。
「へぇ……そんな名前だったんだ……」
ホームズは、そう言うと一本むしりローズに渡す。
「何?」
「あげるよ」
「はぁ?」
余りの突然の行動にローズが、ポカンと口を開けると、ホームズはその花をローズの口の中に放り込む。
突然の事にローズは、目を丸くして驚く。
「ちょっ……!何すんの……よ?」
モグモグと口を動かし首を傾げる。
「あれ?美味しい?」
そんなローズにホームズは、得意げに胸を張る。
「だろう?これはね、食べれる花なんだよ。肥沃な土地でしか育たないのが難点だけど、とても美味しいんだ」
疑わしげな目でローズは、ローエンとジュードを見る。
ローエンは、そんなローズに微笑みかける。
「その通りですよ。私も軍にいた頃は、よくお世話になりました」
ジュードもコクリと頷く。
ローズは、不思議そうな顔をする。
「どうして、私に?」
「いや、美味しいものでも食べれば機嫌も直るかなぁって、思ったんだけど……」
最後に行くにつれて声が小さくなっていく。
そんなホームズを見てローズは、ため息を一つ吐く。
「別にそこまで怒ってないわ……ごちそうさま」
ローズは、ホームズにそう返す。
「……うん、と言うか、やっぱり怒ってたよね?なん……」
ホームズが最後まで言葉を出さないようにアルヴィンがホームズの口を腕で塞ぐ。
そして、レイアが前に出て手を振りながら誤魔化す。
「えっと……ほら、何でもない……よ?」
ローズは、それを見ると深いため息を吐く。
「分かったわよ、なんでもないのね」
そう言って再び歩き始めた。
「ローエン」
ミラはそれを見ながらローエンに尋ねる。
「これから、という時なのに緊張感がまるでないのだが……」
「いいじゃないですか」
ローエンは、そう言って騒いでいる彼らを見る。
「これからという時にいつも通りでいるのも大切ですよ」
「物は言いようだな……」
騒ぎから逃げて隣にいるヨルは、そうこぼした。
はい!次回から、イル・ファンです!!
忘れがちですが、ホームズ達の最初の目的地でした。
懐かしいですね………
イル・ファンのあの夜域の感じがとても好きで、訳もなくジュード君を走り回らせた様な覚えがあります。
ではまた、八十六話で( ´ ▽ ` )ノ