1人と1匹   作:takoyaki

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八十七話です



バイトが忙しくて忙しくて……



てなわけで、どうぞ


会うは面倒の始め

 

 

 

 

「それで、クルスニクの槍は、何処にあるのか見当は、ついているのか?」

ヨルの言葉にジュードは首を横に振る。

「赤い服の女の子が映像に映ってたから……その子が何か知ってるかもしれないんだ」

「なるほど……ふむ……女の子か……」

ホームズは、そう言って首をうんうんと縦に振る。

さっきまでの取り乱しようが嘘のように通常運転だ。

「………」

ジュードは、胡散臭そうに見る。

「何だい?その目は?」

「いや、切り替え早いなぁと思って……」

「出来る男の条件さ」

ホームズは、そう言ってひらひらと手を振る。

そんなホームズをレイアが少し離れた所から怪訝そうに見ていると、レイアの肩にヨルが飛び乗った。

そして、小声で話す。

「切り替えてないぞ、アレは」

いつも通りに『女の子』という言葉に反応しているフリをしているホームズに一瞥を加えながらヨルは、ローズに言う。

「見れば分かるよ……と言うより、あんな事があったのに、直ぐに切り替えるなんて不可能だよ」

そう言ってレイアは、ヨルを見る。

「休ませた方が良くない?寝かした方がいいんじゃ……」

あんなに弱っているホームズを見たのは初めてだった。

足取りもいつもより少し遅い。

恐らく膝から崩れ落ちないように、踏みしめて歩いているのだろう。

「あいつは断るぞ」

しかしヨルは、レイアの提案を否定した。

「やっぱり?確かに一刻も早く壊した方がいいだろうけど……でも、それ以上に万全の状態で挑んだ方がいいと思うけど……」

自分を後回しするホームズの性格上、人の時間を遅らせる事を嫌がるのは、簡単に想像できる。

ただでさえ、ホームズの為に暫く足止めを食らった事が何回かある。

今回もまたホームズの為に足止めを食うというのは避けたいと思うのは自然と言えば自然だ。

しかしヨルは、そんなレイアの思考を否定する様に首を横に振る。

「そんな小難しい事じゃない。単純に……」

ヨルは、そこで言葉を切る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪夢にうなされるのが怖いからだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヨルの言葉を聞いたレイアは、思わずホームズを見る。

ホームズは、普通にジュードと話している。

その普通な顔の下にそんなものがあるとは想像しずらい。

「背負った荷物は重く、負った傷は深い」

ヨルは、そう言うとホームズを見る。

「あの馬鹿は、今でこそ平気になったが、それでも年に一、二回のペースでその出来事を悪夢で見る」

「……あんなに取り乱す原因になった出来事を?!」

レイアは、驚愕の表情を浮かべる。

そしてへらへらと胡散臭そうに笑っているホームズをもう一度見る。

「ねぇ、ホームズ本当に大丈夫なの?」

「大丈夫なわけないだろ……壊れてるんだよ……あの馬鹿は、とっくに、な。

前にも言っただろう……種類は違うが、あいつはあいつで……」

 

 

 

 

 

 

ヨルは、何かを思い出す様に言葉を一度切る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「化け物だって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヨルは、静まった湖畔に波紋を放つように静かにそう言葉を落とした。

ヨルの言葉の意味を再度認識したレイアは、いつもと変わらず、へらへらと笑っているホームズに唇を噛みしめる。

「……ヨル、ホームズに何があったの?」

ヨルは、少し悩むが直ぐに口を開く。

「話すと長い……また時間のある時に話してやる」

そう言ってヨルは、ホームズの元へと戻る。

レイアは、そんなヨルの後ろ姿を見ながら歩みを進める。

気になることは山程ある。

しかし、それどころでないのも事実だ。切り替えていかなければならない。

(ま、出来る女の条件だしね)

レイアは、そう思い直すと心配そうにホームズを見ているローズの肩を励ますように叩く。

ローズもレイアの様子を察しため息を吐く。

「ホームズの事、到達してるって思ってた」

ローズは、そこで言葉を切る。

そして、でも、と続ける。

「到達せざるを得なかったのね……」

気を抜けばあんなに取り乱してしまうのだ。

相当無理をして到達したのだろう。

今の状態に到達していなければ、先ほどのように取り乱してしまうのだから。

ある意味の防衛手段なのだろう。

ローズは、そこまで言って髪を縛り直す。

前にも見せた、気合いを入れる為のローズなりの儀式だ。

「まずは、クルスニクの槍。それのカタがついたら後で聞き出すわ」

力強く言い切るローズを見てレイアは、驚いたように口を開ける。

「なんか……変わったローズ?」

ローズは、一瞬キョトンとするが顔に笑みを浮かべる。

「当然」

目標を定めたローズに立ち止まっている時間は、ない。

そんな暇があるなら目標に向かって歩かなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の会話に耳を傾けていたヨルは、夜域の空を見上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(まぁ、到達した場所が正解とは言えないなんだけどな………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心の内でそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

ヨルがそんな事に想いを馳せ、ローズとレイアが会話をしている時、ミラが、赤い服の女を見つけた。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「あんたは……」

赤い服の女は、ゆっくりとミラの方を振り返る。

白い髪の長髪に赤い服がよく映える。

丸く大きな瞳、そして口をゆっくりと開く。

とても嬉しそうに。

「アハハハ!ようやくあんたを殺れる日が来たってわけだ!」

ローズは、近くにいるジュードに尋ねる。

「知り合い?」

「あー……うん、まあ……知らないと言えば嘘になるかな……」

煮え切らないジュードの返事にローズは、益々首を傾げる。

ミラとジュード以外知らないが、彼女とは、昔戦った事があるのだ。

その時と変わらず相変わらず、奇妙な動きをする。

ミラは武器を構えず尋ねる。

「待て、聞きたいことがある」

「アハハハ!バーカ!答えるわけねーだろ!」

赤い服の女は、ミラの要求を一蹴する。

そんな中ずっと黙っていた、ローエンが口を開く。

「あなた……何処かで………」

そして、思い出す。

「ひょっとして、トラヴィス家のナディア様ではありませんか?」

赤い服の女は、ローエンの言葉にハッとした表情をし、今までの目つきが一瞬戻る。

一瞬のことだったが、それはどう見てもローエンの言葉を肯定していた。

「やはり、そうでしたか……六家のお嬢様がどうして、ア・ジュールのスパイを?」

「私はトラヴィスなんて関係ない!」

ローエンの言葉に赤い服の女は、先程とは、打って変わって、凛として言い放つ。

そして、

 

 

 

「私は、四象刃(フォーブ)、無影のアグリアだ!」

 

 

 

 

 

最後の四象刃(フォーブ)が名乗りを上げた。

 

 

 

 

皆がその言葉に息を飲む。

 

 

四象刃(フォーブ)って!!」

「そんな、何で?!」

ローズは、理解が追いつかない。

何故、ラ・シュガルの貴族様が、四象刃(フォーブ)なんて物をやっているのか?

そんなローズを他所にミラは腕を組む。

「つまり、ガイアスの命令で動いているわけか……」

「だったら、なんだよ」

ミラは腕を解きアグリアを見る。

「お前はクルスニクの槍を破壊しようとしているのだな」

「あたりだよ!アハ!」

ここに来て、ようやくローズは、ミラが何を言おうとしているのかが分かった。

「私も同じだ。つまり、私はお前の敵ではない」

アグリアは、そんなミラの話を面白そうに聞いている。

「槍の運び出された場所を教えてくれ」

「アハハハ!誰が教えるかっつーの!」

アグリアは、とても楽しそうに笑って断る。

ついに我慢できなくなったレイアが口を開く。

「お願いよ。あなたもあんな危ない物壊したいって思うでしょう?」

レイアの言葉にアグリアは、笑うことを止める。

「くせぇな……」

「え?」

レイアは、そんなアグリアを怪訝そうに見る。

因みに後ろにいたホームズは、慌てて自分の匂いを嗅ぐ。

なにせ、先程吐いたのだ。

口をゆすいだとは言え、心配になる。

そんなホームズを他所に、アグリアは、高笑いをしてイル・ファンを指差す。

「決めた〜!槍を壊す前に、ラ・シュガルにぶっ放してやるよ」

「な?!」

驚いているローズを尻目にアグリアは、高笑いをする。

それが、レイアの癇に障ったのだろう。

「みんな一生懸命やろうとしてるのにどうして邪魔するのよ!」

レイアがアグリアに怒る。

そんなレイアを他所にアグリアは、更に面白そうに笑う。

「アハハハ!やっぱりくせぇよ!お前」

「何、失礼な人!」

レイアも黙ってばかりではない。

腕を組んで大変ご立腹だ。

アグリアは、下を向きながら言葉を続ける。

「お前、頑張れば世の中どうにかなると思ってるだろ」

そして、直ぐに天を仰ぐ。

「お前からはそんな悪臭がプンプンすんだよ!」

ローズは、そんなアグリアを唖然と見る。

「仮にも元貴族のお嬢様が悪臭悪臭言いまくってんだけど……」

とても似つかわしくない言葉を連呼しているアグリアが信じられないようだ。

「………んまぁ、世の中色々だよ」

そんなローズにアルヴィンは、適当に返す。

「頑張るのはいいことじゃない!」

ローズとアルヴィンを他所にレイアも負けじと言い返す。

しかし、

「うるせー、喋んなブス!」

アグリアも負けていない。

まあ、言っている言葉があまりにもレベルが低いのでみんな呆れ顔だ。

「な、なによー!」

レベルは、低いが言って欲しくない言葉を連呼するアグリアにレイアもたじたじだ。

「あのさ、その辺にしときなよ……君いくつだい?」

遂に我慢できなくなったホームズが口を挟む。

そんなホームズを見たアグリアが蔑むような目で見る。

それを見たホームズは、しまったと言う風に顔をしかめる。

「てめー………」

アグリアのその腹の底から響くような声に、ホームズから変な汗がダラダラと流れ出した。

「よくもまぁ……抜け抜けと顔をあたしの前に出せたな……」

そう言って剣を向ける。

「裏切り者」

ホームズに否定する言葉は、ない。

引きつり笑いが張り付き、ダラダラと変な汗の量が増えているホームズを見てレイアは、ため息を吐く。

「道理で静かだと思った……」

アグリアが現れてから、ホームズは、一度も喋っていない。

こういう事になるのが目に見えていたからだ。

そう、忘れがちだが、ホームズは四象刃(フォーブ)と繋がりがあったのだ。

「裏切りって言うのは、ある程度の友情と信頼が必要なんじゃなかったけ?」

「いや、まぁ……そうなんだけど……」

ジュードの言葉にホームズが、アグリアを見る。

もちろんホームズとアグリアの間にそんなものはない。

そして、アグリアが問題にしているのは、アグリアへ対する裏切りではない。

「あんだけ、恩を受けたガイアス様を裏切ったそうじゃねーか」

そう、問題にしているのはガイアスへの裏切りだ。

「その恩分の働きはしたよ」

「うるせー!裏切りは裏切りだ!」

そして、ホームズの言い分はハナっから聞く気はない。

まぁ、誤魔化しや言葉遊びで相手を騙すホームズには、ある意味一番の対処方とも言えるのだが。

ホームズは、うんざりと言う風に顔を押さえる。

「相変わらずだねぇ……君」

「まぁ、裏切ったホームズもいけないんだけどね……」

「君、どっちの味方だい?」

レイアをギロリと睨むホームズ。

レイアは肩を竦める。

そんな二人に構わず、アグリアは、禍々しい剣を構える。

「くっせぇブスに裏切り者……揃いも揃って、て奴だな……」

次から次へと出てくる汚い言葉遣いにヨルは、うんざりとした顔をする。

「相変わらず、品のない白髪だな」

「猫の分際でほざいてんじゃねーぞ!チビ!」

ヨルもため息を一つ。

そして、今度はミラに剣を向ける。

「あんたにやられた痛み忘れてないからね」

「話にならない奴だ」

ミラもアグリアに対して剣を構え、他の面子も武器を構える。

 

 

 

 

 

 

「っとに……だから、会いたくなかったんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホームズは、心底うんざりして構える。

 

 

 

 

 

 

絶不調のホームズの敵は、ホームズの苦手な相手……

 

 

 

 

 

 

 

(何も起きなきゃいいんだけれど……………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ローズは、ため息を吐いて刀を抜いた。

 

 

 

 

 







一度、偶々貰えたお休みでゼスティリアをやろうと思ったのですが、友達に映画に誘われました。



いや、思っていたより……と言うは、少し失礼な感じがしますね……
なので、ストレートに言いましょう。
面白かったです。
ただ静かに話が進んでいったのですが、凄く引き込まれました。


客層は、自分達が最年少ってくらい老夫婦やご老人がいました。


何の映画かって?





何てことない庶民の料理がいちいち美味しそうに見える、アレですよ。
自分は、ドラマの方はみていないんですけどね。




そんな映画を見て思いました。




映画って誰かと見た方が楽しいですね(笑)





ではまた八十八話で( ´ ▽ ` )ノ



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