1人と1匹   作:takoyaki

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八十九話です



大分日差しは春になってきましたね。



でも、まだ平気でマイナス何ですが……



てなわけで、どうぞ


殴り込み?

「さて、とりあえず……」

ホームズは、そう言って伸びているアグリアを指す。

「色々聞き出した方が良さそうだねぇ」

ホームズが言葉を発し終わる前に、ミラは、階段から飛び降り刀を向ける。

目を覚ましたアグリアは、驚きで目を丸くする。

そんなアグリアに構わずミラは、口を開く。

「生憎、剣は不得手でな……うっかり手が滑らないよう、よく考えて喋ることだ……槍は何処だ」

切っ先を向けられたアグリアは、観念したように喋る。

「研究所の地下に秘密の通路があってオルダ宮に繋がっていたんだ」

「オルダ宮?」

黙って聞いていたミラが不思議そうにする。

「ナハティガルのいる城だよ」

そんなミラにジュードが説明をする。

「……びっくりだねぇ……ここまで、クルスニクの槍にご執心とは」

用意周到にも程があると言うものだ。

ホームズは、砕けた口調で忌々しそうに顔を歪めながら言う。

「そんなものがあるとは、初耳ですね……」

ローエンも驚きを隠せないようだ。

「まだあるのか?」

「残念。さっきの爆発で潰れたよ」

アグリアの言葉にミラは、落胆する。

「使えないか……」

そんな風に呟き目をそらしたミラを目ざとく察すると、アグリアは、仰向けのまま足だけで移動する。

その様は、カサカサという音がぴったりだ。

「あ!逃げるな!」

レイアが止めるが、もう間に合わない。

遥か彼方の階段の上まで移動すると、じたんだを踏む。

「マクスウェル!あんたもいつか、グチャグチャにしてやるからね!」

そう言った後、びしっと指を差す。

「ホームズ!お前もだ!あたしをコケにした事、きっちり後悔させてやる!」

ホームズは、頬を引きつらせる。

「……勘弁しておくれよ」

そう言ってアグリアは走り出そうとして、ぴたりと足を止める。

「そうだ、忘れるところだった……」

アグリアはゆっくりと振り返りながら、レイアを睨みつける。

「そこのブス!これだけは言っといてやる!お前がどんだけ頑張ろうと、報われることなんてないんだよ!」

アグリアは、言いたい事だけ散々怒鳴り散らすとレイア達に背を向け、走り去って行った。

「な、何であなたにそこまで言われなくちゃいけないの!」

もちろんこのレイアの叫びは、届かない。

「なんなのよ!あの子!」

レイアは舌を出し、あっかんべーをする。

ホームズは、去りゆくアグリアを興味深そうに見ている。

そんな中、ヨルが口を開く。

「あの白髪女とレイアは、何度ぶつかるんだろうな……」

「さてね」

ホームズは、肩を竦める。

「ま、考え……信念かな?まぁ、そいつが違う者同士は戦うことが世の常だよね」

そんな事を話していると、レイアがホームズの方を振り返る。

「随分好き勝手言ってるけど、ホームズもターゲットに入ってるからね」

レイアの指摘にホームズは、ため息を吐く。

「良かったな、女のターゲットになったぞ」

「わーい、超嬉しい。涙が出そう」

ホームズは、適当に手を上げて喜びを表す。

そんな彼らに構わずミラは、思案する。

「オルダ宮か……敵の本陣だな」

「ミラ」

「分かっている、まずは様子を伺おう」

心配そうなジュードにミラは、そう返す。

会話が終わったのを見計らうと、ローズは、ジュードに尋ねる。

「それで、オルダ宮ってどこなの?」

ローズの質問にジュードが真っ直ぐ指差す。

「そこの橋を真っ直ぐ行った先だよ」

ジュードの答えにローズは、腕を組む。

一本道の橋を真っ直ぐ、隠れる場所もないというのに、お尋ね者二人と、元参謀長を連れて行く。

「まあ、行ってみるしかないわよね、結局の所……」

不利な要素を考えないようにする為にも、ローズはため息で切り替えた。

「よし、行こう!」

ジュードの声と共に一行は、歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「なんなの、あの子!」

レイアは、道中ずっとこの調子だ。

「なんでわたしが、あんなひどいこの言われなくちゃいけないわけ!?」

「あぁ……ブスだとか、臭いとか、天然とかだね」

「ホームズ……最後の奴は言われてないよ」

レイアの半眼の睨みにホームズは、目をそらす。

しばらくホームズを睨んでいたレイアだったが、直ぐにアグリアの話しに戻す。

「ローエン、アグリアって子、本当に貴族のお嬢様なの?!」

腕を組み唇を尖らせながら、レイアは、不満げだ。

そのご立腹の様子を見たローエンは、少したじろぐ。

「は、はい。確かトラヴィス家の次女です。もっともトラヴィス家は……」

ローエンは、そう一旦言い淀み、続ける。

「数年前の放火で、屋敷が全焼し、一族がほとんど亡くなった筈ですが……」

「ああ、その話聞いたことある……そっか、それってアグリアのところだったんだ」

ホームズの言葉にローエンは、頷く。

「はい。恐らく大変な思いをしたのでしょう」

その言葉にレイアは、顔を伏せる。

「あの子、家族を亡くして………

それで、あんなんになっちゃったのかな……」

さっきとは違いレイアは、悲しそうだ。

そんなレイアを見てミラは、ふふと笑う。

「面白いな。怒っていた相手にすぐ同情するとは」

ミラのその言葉にレイア自身も呆れたように肩を竦める。

「こーいう性格だから、クサイって言われちゃうのかもね」

「そういう性格じゃなかったら、レイアじゃないよ」

ホームズは、さも当たり前のように言う。

余りにも自然に言われた為レイアは、一瞬何を言われたか分からなかった。

ミラもそれに続くように優しく言う。

「ホームズの言う通りだ。それに仮にそうだったとしても、それはレイアの優しさの匂いだ」

「そうですとも」

ローエンも頷く。

そして、それから少しおどける。

「おっと、私達もクサイことを言ってしまいましたね」

「全くだ」

ヨルは、ホームズの肩で耳をボリボリと後ろ足で、さながら猫のようにかきながら、気だるそうに言う。

そんな彼らを見てレイアは、明るく笑う。

「みんな、ありがとう」

その言葉に各々笑みでかえす。

レイアの言葉を聞いたヨルは、ホームズの肩の上にいながらレイアの方を向かずに言葉をかける。

「あの白髪女が何と言おうと、お前はお前なりに自分の経験から得た物を信条としているんだ、卑下することじゃない」

ヨルの珍しく優しさのある言葉にレイアは、目を丸くするが、直ぐに微笑む。

「ホームズに、ヨル……珍しい事もあるもんだね」

ホームズは、思わず肩を竦める。

「ま、それはあの白髪女にも言えることだがな」

「あっ、やっぱりヨルだ」

人間をなかなか褒めない化け物は、何処まで行ってもぶれない。

そんな中、ホームズが思い出したように口を開く。

「えーっと……さ……レイア」

言いづらそうに頬をぽりぽりと人差し指でかいているホームズを見て、レイアは、不思議そうに首を傾げる。

「何?」

「んー……その、さっきはゴメン……急に怒鳴りつけたりして」

レイアは、突然謝られてしまい、言葉を失う。

しかし、直ぐに先程の研究所での出来事だという事にたどり着く。

確かにあの時のホームズの態度は褒められたものではない。

謝るのは、当然と言える。

とはいえ、レイアとしても過去に何があったかは、知らないが辛い思いをしていた事ぐらいは分かっている。

だから、いいよと言おうとして、口を開くが、直ぐに意地の悪い笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

「ホームズが謝るなんてね。明日は雷でも降るのかな?」

 

 

 

 

レイアのそのニヤリとした笑みとともに出た言葉にホームズは、目を丸くすると苦笑いをする。

「……っとに、いい性格してるよ」

「ふふん」

ホームズの言葉にレイアは、胸を張る。

側で見ていたローエンは、そんな二人を見て微笑んでいる。

「一本取られましたね、ホームズさん」

ローエンの言葉にホームズは、肩を竦める。

すると、レイアが手を差し出す。

ホームズは、不思議そうにその手を見る。

「なんだい、その手は?」

「握手。仲直りの」

「別に、喧嘩してた訳じゃないだろう?」

ホームズは、片眉を上げながらそう言う。

すると側で成り行きを見守っていたミラが口を挟む。

「物事には、ケジメと言うものがあるのだろう?ホームズ」

ミラのそのもっともな言葉にホームズは、ため息を吐いてレイアの手を見る。

握手を待つ形の手だ。

ホームズは、そのレイアの手を持ってレイアの顔の位置へと移す。

そして、ホームズは、その手にハイタッチをする。

「……ま、これからもよろしく」

「……相っ変わらず、素直にやらないね……ま、ホームズらしいけど」

レイアは、やれやれとため息を吐いた。

ミラとローエンも優しく微笑んでいた。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

ホームズ達がそんな事をしながら歩いていると、オルダ宮の門が見えてきた。

門の前は、兵士が数名で守っている。

「……どうする?」

ローズの言葉に、レイアが不審そうに当たりを見回す。

「あれ?以外に手薄だね」

そう、門の前にしか兵がいないのだ。

妙と言えば妙である。

「出来ればこのまま突破したいね」

ジュードにしては、珍しい物騒な発言にホームズは、目を向く。

「しかし、敵の本拠だ。慎重に行かなくては」

「二人ともリリアルオーブの調子は、大丈夫かい?」

ミラとジュードが普段とは逆の事を言っているのでホームズは、首を傾げている。

そんなホームズとは対照的にローエンは、静かに顎髭を触って思案する。

エリーゼは、それを不思議そうに見ている。

「ローエン?どうしたんですか?」

「いえ………」

エリーゼの質問にローエンは、顎髭から手を離し提案し、そして、提案する。

「ジュードさんの言うように……やってみませんか?」

その言葉に、アルヴィンは目を向く。

「おいおい。珍しくミラが慎重にって言ってるのに」

ホームズも頷く。

「だよね。こんな機会もう二度とないかもしれないんだよ」

失礼な事を言うホームズをミラは、ひと睨みして黙らせると、ローエンに尋ねる。

「何か考えでもあるのか?」

「考えと言うほどのものでもないですけど……どうでしょう?」

ローエンの言葉に、ジュードはあっさり頷く。

「ローエンがそういうんだったらそうした方がいい気がする」

ヨルは、そんなジュードを馬鹿にしたように見る。

ホームズは、そんなヨルを目で制すると兵士達の方と向き直る。

「いち、にぃ……」

ホームズは、数え、敵の戦力を図る

「ふむ。三人か……まあ、この人数ならどうとでもなるね」

「因みに言っておくと、四人だ」

ヨルの訂正にホームズは、決まり悪そうな顔をする。

「ぷっ!」

横で聞いていたローズは、思わず吹き出す。

「…………」

ホームズは、そんなローズを半眼で睨んでいた。

「さて、ヨルのおかげ(・・・・・・)で正確な人数も分かった」

ミラは、前を見据える前にジュードと目を合わせ頷く。

「ホームズ、任せたぞ」

そのあと、ホームズの方を見てそう告げた。

ホームズは、静かに頷く。

「行くぞ!」

ミラとジュードに続くようにホームズ達は走り出した。

 

 

 

 

 

 

「何者だ!止まれ」

兵士達は、走ってくるジュード達にそう言って武器を構える。

 

 

 

 

 

 

 

「それで止まるならこんなところ来ないよ」

 

 

 

 

 

突然上空から聞こえた声に兵士達は思わず上を見上げる。すると、そこには夜空を背負ったホームズが足を天高く掲げていた。

武器を構え、唖然としたている兵士にミラを飛び越えたホームズの踵落としが決まる。

先程の言葉は、ミラ達が着く前に奇襲を仕掛けて突破口を作れというのが、ミラからの指示だったのだ。

奇しくも今回、ホームズは、前回やった裏切りによる足止めとは、逆の事をやっている。

(偶然か……それとも……)

ホームズがそんな事を考えていると踵落としを決めたはずの兵士がゆらゆらと立ち上がる。

流石に兵隊の鎧は、頑丈だ。

「ま、どっちでもいい事だねぇ」

そう言ってホームズは、向かってくる兵士の顔面を掴み、思い切り地面に叩きつける。

フルフェイスの兜の中で響き渡る轟音に兵士は、直ぐに立ち上がる事が出来ない。

 

 

 

 

「今だ!ホームズに続け!」

 

 

 

 

 

 

彼らの大勝負が始まった。

 

 







殴ってないんで、蹴り込みの方が正しいかも(笑)


たまには、登場人物の微妙な説明を


喋る時、「〜だろ」という風に、「ろ」で止まるのが、ヨル、「〜だろう」と「う」が入るのがホームズです。
と、注意して書いているつもりなのですが、前半とかは、上手くできてないかも(・_・;





では、また九十話で( ´ ▽ ` )ノ

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