1人と1匹   作:takoyaki

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九話です。



春休み終了までのカウントダウンが、始まりました。


全ての道はホームズに通ず

「やあ、レイア!どうしたの?」

今にもヨルに向かって回し蹴りを放ちそうな状態で爽やかな笑顔を向けながら言った。

「ああ、うん。ヨル君?のお皿を取りに来たんだ」

「なるほど!じゃあ、これからは、おれが持っていくよ」

「よろしく!」

「ああ、任せて!それじゃあ、おやすみ!」

「うん、おやすみ!」

そう言ってレイアはホームズの部屋から出て行った。

 

 

 

「じゃなくて!今ヨル君喋ってたよね!」

そして、すぐに戻って来た。

「気のせいだよ。」

「昨日の夜も聞こえたんだけど」

「実はおれ、腹話術が得意なんだ。なあ、ヨル!」

「そうだな、ホームズ」

「『上等だ』ってハモってたよね」

「…………」

万事休す。もう、言い訳のしようがない。

「諦めたらどうだ」

ヨルは言うが

「レイア、これは夢だ!さあ、ゆっくり寝るんだ。明日も早いぞ。」

「わたし、明日休みだけど」

ホームズは諦めない。

「なら、余計に休まなくちゃ。夜更かしはお肌の天敵だよ。可愛いレイアがお肌ボロボロになる所なんて、おれは見たくないゼ☆」

「うわぁ……」

キラッと爽やかにウィンクをしながら、言うホームズにレイアはドン引きだった。

「いつも言ってるだろ。お前が、そう言う事言ったってギャグにしかならないんだよ」

いつものテンションに戻ったヨルが冷静に言う。

「おれの何がいけないんだーー!」

「全部」

「全部だね……」

ホームズの叫びにレイアとヨルは口を揃えて言った。

「全部ってなにさ、具体的に言ってよ!直すから!」

「顔と存在」

「死ねってか?!あと、レイア、君も何か言って!」

「ドンマイ?」

「なんで疑問形?!」

もうやだお前ら全員敵だ、とか言ってホームズは膝を抱えてしまった。

「なんか、話進まないな。わざとやってるのかな?」

「今回のはガチだな」

「今回?」

レイアはけげんそうに聞いた。

「そいつにとって話を逸らすのと本当の事を隠すのは専売特許だからな。お前も心当たりがあるだろ?」

レイアはカレーを食べた時の事を思い出す。

「……そうだね…」

だったらと続ける。

「ヨル君教えてよ。あなたは、何者なの」

「精霊に近い化け物ってところだな」

「化け物?」

 

「そいつはね、かつてリーゼマクシア中を地獄にしたんだってさ」

いつの間にやら復活したホームズが机に座りながら話に加わってきた。そして、どっか適当に座ってと言ってレイアを座らせた。

「フン、もう傷ついたふりはいいのか?」

「……今回のはガチなんだけど、君もさっきそう言ってたよね?」

「さあな」

「このヤロー……ま、話してあげるよ」

そう言って、ヨルの事を話した。かつてリーゼマクシア人の霊力野(ゲート)からマナを絞りとって殺しまくった事、封印されていたこと、そして、ヨルがホームズに取り憑いていること。

「なるほど、だからいつも一緒にいたんだね」

「そゆこと」

それにしても、とレイアは言う。

「ヨル君がそんな、大悪党だったなんて……ひとは、いや、猫は見た目によらないね」

「結構見た目で分かったと思うけど……」

真っ黒で怪しさ倍増だ。

「でもさ、大丈夫なの?また、ヨル君がまた周りの人の霊力野(ゲート)からマナを絞り取るなんてことしたりするんじゃないの?」

「それはないよ。その封印術は強力でね、彼が取り憑いている人間以外の霊力野(ゲート)からマナを取ることはできないようにされているんだ」

「ま、後は精霊術からマナに変換して吸収することぐらいだな」

「何それ!そんなことも出来るの?!」

レイアは驚いたようだった。そんな状態の彼女にホームズは言った。

「出来るんだなこれが。そう言えば、その能力は禁止されなかったんだね」

「それを、封じないからこその強力な封印だったんだろう。俺に掛けた封印は一定条件下でのみ最強の封印だったんだからな」

それらの話を聞いていたレイアは言った。

「よくわかんないけど…つまり、ヨル君にもメリットを与えることで封印を強くしたってこと?ギブアンドテイク的な?」

その話を聞いたホームズは目を丸くして言った。

「まさにそれ!よく分かったね。さすが看護師を目指すだけのことはあるね!」

「いや…看護師関係ないとおもうけど」

若干呆れながらレイアは言った。それよりも、と続ける。

「ヨル君に与えられた、メリットって何?ああ、ヨル君応えて。ホームズだと本当の事を話してくれなさそうだから」

「信用ないな……おれ」

「自業自得だろ。まあいい、話してやる。幾つかあるが、ひとつは、さっき言った通り、俺の精霊術を食う能力が封じられなかったことだな」

ヨルは、爪を1本出していった。そして、2本目を出して続ける。

「二つ目は、人間が、要石に触れそしてその人間の願い事を叶えてやれば封印が解かれること。まあ、逆に願い事を叶えられないと封印は解けないんだがな」

3本めの爪を出す。

「三つ目、取り憑いている奴が事故や病気つまり、殺される以外の方法で死ぬと取り憑いている状態から解放される、晴れて自由の身て奴だな」

4本めを出す。

「四つ目は、さっきも取り憑いている人間の霊力野からはマナを好き放題手に入れる事ができる、てところだな」

レイアはしばらく考え込むと口を開いた。

「さっきも気になったんだけどさ、ホームズ大丈夫なの?霊力野からマナを好き放題取られて」

「大丈夫だよ。おれ、霊力野(ゲート)ないというか、退化しているからマナを作りだせないんだ。だから、『霊力野(ゲート)』からマナを取るなんてことヨルには出来ないんだよ」

「だったら他のところから……てそうか!封印のせいで霊力野からしかマナを取れないのか」

「そう言う事♪」

「最初から分かっていればな…10年以上こいつと一緒なんてことなかったのに……」

「ああ、なるほどホームズに騙されちゃったのか…」

レイアは少し同情するように言った。

「騙すなんて人聞きの悪い。ただ、おれは本当の事を言わなかっただけだよ。勝手にそのバカが勘違いしただけだ」

ホームズは心外そうにそう言うとヨルをバカにし始めた。

そんな彼らを見てレイアは言った。

「君達仲悪いね……初めて見た時とは全然そうは見えなかったのに」

「……どこをどう見たら仲良く見えるのさ」

「肩に猫乗せて旅してたらそうとしか見えないよ」

そう言われて彼らはお互いを見た。

「やっぱ肩乗るのやめてくれないかい」

「歩くのたるいからやだな」

「こんの、クソ猫」

予想外の面倒くさがりな返しにホームズは顔を歪めた。

そんな彼らを見ていた、レイアはそう言えばと思い出したように言った。

「ホームズが殺された場合ヨル君はどうなるの?」

「ものっそい、物騒なこと平気でいうのやめてくんない」

げんなりしながら、ホームズは言った。もう、いい加減慣れた方がいいのかな、と考えていた。

「俺が死ぬ」

そんなホームズを無視して、ヨルは続けた。

「じゃあ、ヨルが殺された場合は?」

「ホームズが死ぬ」

「君達にはデリカシーと言うものがないのかい?」

「だったらさ……」

ホームズの言うことを無視して続けた。

「もし仮にホームズに霊力野(ゲート)があったとして、そこからマナを絞り取って殺しちゃったら、ヨル君も死んじゃうじゃないの?」

「なぜだ?」

「だって、ホームズが殺されるちゃうとヨル君は死んじゃうんでしょ。分かる?」

「「………あ」」

彼らはポンとそれぞれ手と肉球を叩いた。

「つまり、ヨル君はどちらにせよ、ホームズが自然に死ぬまで取り憑くはめになってたんだよ」

「まあ、君の発言はスルーするとして……」

ホームズはヨルの方を見て言った。

「おれに会ったのが運のつき、てコトだね、ヨル」

「お互いにな」

彼らはニヤリと笑ってお互いを見た。

「ま、だいたいレイアの質問には応えられたと思うけど、あと何か聞きたいことある?」

ホームズはレイアに向き直るとそう言った。

「ホームズの願い事は何だったの?」

「昔、魔物達があるところを集団で襲おうとしていてね、それを、倒してくれと頼んだんだ」

レイアは怪訝そうに黒猫ヨルを眺めた。

「おい、ムスメ、お前信じてないな。封印が解けたばかりの俺はな、元の姿だったんだよ。だから、余裕だったんだ」

「元の姿?」

「そう、元の姿。マナさえ、足りてればお前なんか一捻り…ダブシュ」

「物騒なことを言うなっていってるだろう」

ヨルはホームズのアイアンクローにより最後まで、言うことができなかった。そんな様子を見てレイアにひとつ疑問が浮かび上がった。

「ヨル君はさ、」

「何だ?」

やっと、解放されたヨルは顔をさすって言った。

「願い事のデメリットは話したの?」

「当然だ。話さないと封印が解けないからな」

今度はホームズの方を向いて言った。

「じゃあ、ホームズは他人の為に自分の人生を犠牲にしたの?」

「別に、その時はその場におれもいたから、自分の為というのもあるけどね」

「フン、阿呆か。だったら何故、お前は自分を助けてくれと頼まなかった」

今度はヨルにも言われた。少し、ニヤリとしている所を見ると、どうやら、思うところがある様だ。

「別にどちらにせよ一緒だろう?自分だけ助かろうが、他の人も助かろうが、残りの自分の人生犠牲になるんだから。だったら、大人数助けた方がいいじゃないか」

それにね、ヨル、と続ける。

「おれが、最初に叶えようとした願いは、もっとバカバカしいものだったろう」

右手の指輪を見ながらそう言う。

「最初の願いって?」

レイアがそう聞くとホームズはヨルを見て、 人差し指を一本立てて口に持っていて言った。

「内緒。ヨルも言うんじゃないよ」

「へいへい」

レイアは、少しむくれた顔をしたが、すぐに直して言った。

「ま、いずれ話してくれるのを待つよ。お金を払い終わったら終わりだなんて、おもわないでね」

「おお、怖!せいぜい覚えておくよ」

ホームズは肩をすくめて言った。

「まあ、声の正体が分かって良かったよ」

レイアはにっこりと笑って言った。

「最初聞いた時は何だと思ったんだい?」

「誰かがいるのかと思ったよ。だから、次の日確かめたんだよ。」

「確かめた?いつ?」

ホームズは訳がわからないと言う顔をしている。

「今朝だよ」

「今朝って……まさか!」

「そのまさかだよ」

そう、レイアは朝ホームズを起こす時レイアは、ホームズの布団を全部引っぺがしていた。あれは、布団の中に人がいないかどうか確かめていたのだ。

「なるほどね。じゃあ、客室からのゴミを確認したって言うのも?」

「朝確認したら、部屋にいなかったから、窓からにげたのかな?て思って、確認しに行ったんだよ」

「あの時ゴミが落ちてないか確認したって言ってなかった?嘘付いたのかい?」

「別に嘘は言ってないよ。ちゃんと確認したし。そうだな……ホームズ風に言うなら、」

一旦言葉を区切るとニヤリといたずらっぽい笑みを浮かべながら、

「『本当の事を言わなかっただけ』と言う奴かな」

やられた、とホームズは顔をしかめた。

「フン、一本取られたなホームズ」

ヨルにまで言われてしまった。

「そうだね。おれ達に気付かれないように調べて、最終的には答えに辿りついた。間違いなく、今回はおれらの負けだ。大したもんだよ、君は」

「なんか、面と向かって褒められると照れるね」

照れると同時に少し後ろめたい。何せ、ホームズの事をかわいそうな子だと思っていたのだから。まあ、この事は隠しておこうと思ったら

「まあ、大方おれの事、友達がいないから声音を変えてまで話し相手がいるように演じている、かわいそうな子だとでも思っていたんだろう?」

しっかりばれてた。

「やっぱりばれた?ゴメンね。なんの痕跡もなかったから、そうかなて思ったんだ」

「なるほどね、それがマティス医院でのセリフに繋がる訳だ。…やれやれ、少し考えれば分かりそうなものだね」

そう言ってホームズは伸びをし、さて、と続けた。

「すっかり遅くなっちゃったね。そろそろ部屋に戻りなよ」

「それもそうだね。それじゃ、おやすみ!」

そう言って、ずっと座っていたベッドから立ち上がり、伸びをした。そんな様子を見てホームズは呆れたように言った。

「君ね……後学の為に言っておくと、夜遅くに男の部屋に来て、ベッドに座るというのは、やめた方がいいよ」

レイアは一瞬何を言われたか意味がわからなかったが、すぐに理解して、顔を赤くしながら言った。

「だ……だって、適当なところに座ってていったじゃん!」

「ちゃんと、椅子を空けてあげただろう」

ホームズは机に座りながら椅子を指した。

「……以後気を付けます……」

「よろしい」

そんな雑談(?)をして、レイアは出て行こうとした。しかし、ヨルはそれを引き止めるように言った。

「そう言えば、部屋に誰もいなかったのを確認した時、普通にドアから出て、玄関を通って行ったとは思わなかったのか」

ヨルの問いにレイアは事もなげに言った。

 

 

 

 

「思わないね。だって、お母さんに気付かれないように、そんな事をやるなんて不可能だからね」

そう言い残すと、レイアは部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

残されたホームズ達は呆然としていた。

「レイアの母、ソニアさんて何者?」

「人間の母というものは、そんなんばっかか?」

「おれの母さんとソニアさんで考えない方がいいと思うよ」

「お前の母親も化け物みたいだったもんな」

「君がそう言うんだから相当だね……」

さて、彼らは思う。この突然きた疲労を解決しなければと。その為にもするべき事は何かと。

 

 

 

「「寝るか」」

 

こうして、ル・ロンドの夜はふけていった。







えーっと、イノセンスの次にやったのは、そう!今書いている、エクシリアです。


自分はこれをやるためにバイトをし、PS3を買い、テレビを買いました。
結果、リビングにあるテレビより、自分の部屋にあるテレビの方がいい物になるという事態が発生しました。


薄型液晶テレビてすげーな!!

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