1人と1匹   作:takoyaki

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九十一話です



祝一周年!!は、過ぎたのですが……
それでもまさか、一年も続くとは思いませんでした……

てなわけで、どうぞ


馬鹿の尻拭い

「ペットの世話ぐらいしっかりしてほしいものだな」

ミラは、呆れながら剣を抜き、自分の後ろにいるホームズに文句を一つ。

「ペットだったら、少しは愛着も湧くんだけどねぇ」

「全くだ」

ホームズの言葉にヨルは、うんうんと頷く。

ホームズは、一旦納得しかけて首を傾げる。

「どういう意味だい?」

「どういう意味だと思う?」

ホームズは、しばらく固まるとヨルの首を絞め上げる。

「あぁ、もう!そんな事やってないで!」

ジュードは、隣にいるホームズを呆れながら止める。

そして、ミラと背中を預けながら尋ねる。

「そっちは、任せて良さそう?」

「問題ない。そっちは?」

問われたジュードは、近くにいる面子を確認する。

元凶のヨルにエリーゼ、そしてホームズ。

更に和解したのかしてないのかよく分からないアルヴィン。

「問題……ないよ」

「声が震えてるぜ優等生」

アルヴィンの言葉により一層頬を引きつらせるジュード。

「ひぃ、ふぅ、みぃ……ダメだ。数えるのが面倒くさい」

そう言って、ホームズは忌々しそうに隣にいるヨルを睨む。

この旅の厄介事を運んでくるのは、八割がヨル、二割がホームズだ。

その八割が発動したと考えるべきだろう。

「まぁ、いつもの事だし、頑張りますか」

ため息一つで切り替えると、ホームズは肩にいるヨルに話しかける。

「あのさっきやった、尻尾の根、できそう?」

「あんなの早々何度も出来るわけないだろ」

「色々食ったじゃないか」

「……時間がかかるんだよ。さっきもそうだったろ?今回に限って言えば、時間をかけている場合じゃないだろ」

「ごもっとも」

ホームズは、そう言うと隣にいるアルヴィン達に話しかける。

「って事になってるから」

「先行きの明るい知らせをどーも」

アルヴィンは、油断なく構えながらそうホームズに返す。

「それで、何か案でもある?経験豊富な傭兵どの」

「エリーゼの詠唱を援護しながら、片っ端から倒すってのが、最有力だけど……どうする?優等生?」

「どうもこうも、それしかないでしょ」

エリーゼも武器を取り出しヨルを睨む。

「ヨルのせいですからね!」

『このバボー!!』

「んだと、このヌイグルミ!」

牙を剥くヨルの頭をホームズは、鷲掴みにする。

「君にそんな事を言う資格は……」

ホームズは、そう言って大きく振り被る。

「待て、テメッ!何する……」

「ない!!」

そして、そのままヨルの言葉を聞かず兵士に投げつけた。

突然の攻撃に思わずたじろぐ兵士。

次の瞬間、ホームズとジュードが踏み込む。

「ハァァ!!」

先陣を切って二人は、攻撃を仕掛ける。

回し蹴りを腹に当てる。

しかし、相変わらず、効きが弱い。

「厄介だこと……」

そんな事を呟いてる間に他の兵士の蹴りがホームズを襲う。

それを何とか盾で防ぐ。

「どうしたもんか……」

兵士とは、言わば戦いのプロ。それが装備しているものが生半可なものな訳がない。

それがワラワラと出てくる。

先程とは、量が桁違いだ。

もう一度蹴りの構えをとる。

今度は、タダの回し蹴りではない。

脚が闘気を纏う。

「獅子戦哮!!」

獅子を模る闘気が兵士を襲う。

先ずは、一人。

「とはいえ……こんな技連発してたら、こっちが先にバテちゃうよ……」

「何か他に手はないのか?」

ヨルの言葉にホームズは、兵士達の攻撃をかわしながら、考える。

「確か……鎧通しだっけ?鎧の中に衝撃を伝えるやつ……母さんがよくやってた……」

ジュードの方を見てみると、どうやら心得があるようで的確に倒していく。

「……アレか……しっかし、一朝一夕、つーか、突然の思いつきで出来んのか?」

「無理だね」

ホームズは、そう言って考える。

手詰まりに近いのだ。

まあ、エリーゼの詠唱さえ完成してしまえばこちらのもんなのだが……

アルヴィンがどうにか援護しているとはいえ、これ以上は、ジュードとホームズでせき止めなくてはならない。

 

 

 

 

「ゴリ押しで行くか……」

ホームズは、そう言って剛照来の構えをとる。

しかし、発動させるより早く相手が攻撃を仕掛ける。

発動さえすれば相手を吹き飛ばすこともできるのだが、発動させてもらえない。

 

 

 

 

 

 

 

 

『君程度のゴリ押しなんて、たかが知れてるゼ』

 

 

 

 

母の言葉を思い出す。

 

 

 

『いいかい?絶対防御の鎧なんざ存在しないんだ。完璧な鎧なんてものがあるだとすれば、それは、鎧じゃないゼ』

よく、ホームズの母は、ホームズが生き抜く為に幾つかの技術を授けた。

足技も戦い方の授業の一環だ。

 

 

 

 

「そうか!」

 

 

 

ホームズは、後ろから振り下ろされ剣を蹴り上げる。

敵は天高く腕を上げている状態になる。

その状態が終わらない内にホームズは、肘を突き出す、

そして、そのまま相手の脇に肘から自分の体重を打ち込む。

そう、鎧を着て動く以上、関節にまで鎧を仕込むことは出来ない(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

めき、と相手の骨の折れる音が聞こえる。

そして、タチの悪いことに脇の衝撃は、肺にまで到達する(・・・・・・・・)

「ッツ、ガァ!」

兵士は、そう呻くと倒れてしまった。

暫くは指一本足りとも動かせそうにない。

「大成功。流石、年の功って奴だ」

ホームズは、そう言って兵士に躍りかかる。

(……狙うは)

向かってくる兵士に対して、低めに足を上げる。

(関節!!)

ホームズは、兵士の膝を横から蹴る。

鈍い音が響き、兵士は、崩れ落ちる。

「ジュード、肩貸したまえ!」

「え?!」

ホームズは、了承など取らず、ジュードの肩に飛び乗ると、それを踏み台にし天井に向かって飛び上がる。

「ヨル!」

「わーってる」

ヨルは、黒い球を吐き出す。

霞となりホームズの脚に纏わりつく。

ホームズは、そのまま天井に降り立つ。

「アルヴィン!!」

ホームズは、蹴りの構えを取りながらアルヴィンを呼ぶ。

「……っち!どうなんっても知らねーぞ!ヴァリアブルトリガー!!」

アルヴィンは、銃を構えるとそのままホームズに向かって打ち出す。

ホームズは、そのままその弾丸を蹴り落とす。

 

 

 

 

兵士の集団に向かって。

 

 

 

 

弾丸を蹴り飛ばすと言うこの非常識さ、今のホームズでないと出来やしない。

突然の頭上からの攻撃に兵士たちは慌てふためく。

その隙にホームズが地面に降り立つ。

 

 

 

 

爆砕陣のおまけ付きで。

 

 

 

 

「はじけろ!!」

爆ぜた地面に巻き込まれ、兵士達は、吹き飛ぶ。

何人かは耐えて、ホームズに攻撃を繰り出すが、ことごとく脇や、ひざに蹴りを打ち込まれ意識を飛ばす。

 

 

 

 

 

 

「薙ぎ払え、葬送の鎌……」

『切れるぞ〜』

「うわっ、やっべ!」

ホームズは、急いで兵士達から離れる。

「『ブラック・ガイド!!』」

エリーゼの精霊術が発動し闇の鎌が出現し、兵士達を薙ぎはらう。

 

 

 

精霊術が消えたときには、立っているものは、1人もいなかった。

ホームズは、パンパンと服を叩いてゴミを落とす。

「うーん……どうにかなったみたいだねぇ、そっちは?」

「こちらも似たようなものだ」

ミラはそう答えて刀をしまう。

「急ごう!応援が来る前に」

ジュードの言葉に皆が頷くと一同は、走る。

「あぁ、そうだ」

ホームズは、そう言ってエリーゼにオレンジグミを渡す。

「あげる」

エリーゼは、突然の事に驚いたが、直ぐに食べる。

「原因に優しくするとはな」

「君が言うんじゃない!」

ホームズの言葉を鼻であしらう。

「驚く方が悪い。これから命がけの戦いが待ってるんだぞ。この程度でビビってどうする」

ヨルの物言いは、めちゃくちゃだが筋は通っている。

「私、もうびっくりしません!」

『足なんか引っ張らないぞー!」

エリーゼは、そんなヨルの言葉を弾き飛ばす。

そしてグミを食べると共に決意を新たにする。

 

 

 

 

 

 

「ヨルだって怖くない、です!」

 

 

 

 

 

 

 

「だってさ」

ホームズは、ニヤリと笑ってヨルを見る。

「……はぁ」

怖くないと言われて何となく腑に落ちないところはあるものの、たくましくなってくれた所には賞賛すべきものがある。

なんとも言えないヨルに変わり、ホームズはエリーゼの背中をポンと軽く叩く。

「頼りにしてるよ、エリーゼ」

「ドンと来い、です!」

エリーゼは、力強く頷いた。

 






着々と山場に近づいてます。
こうなるとこっちもノリノリです






さて、それはともかく活動報告に企画を入れておきました

どうぞ皆さんご応募下さい!!

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