1人と1匹   作:takoyaki

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九十八話です



桜が咲いて驚きです。

いや、自分達の地域じゃ基本的に入学式の時期に桜なんて咲かないんですよ。
だいたい、グループが固まってくる、入学式から二週間後ぐらいからなんです。
なので、今年の入学式は、絵になるだろうないいなぁ〜、羨ましいなぁ〜……
なんて、思いながら仕事をしていたら、帰りに傘を忘れて雨に打たれました。


わかったよ、余計な事を考えず、仕事するよ……

てなわけで、どうぞ


身から出た結果

「なんだ、お前達。所属と名前は」

ミラ達は案の定、ラ・シュガル兵に進入を止められてしまった。

足を止めたミラとジュードに代わり、ローエンがすっと前に出る。

「私は、ローエン・J・イルベルト」

その名前に聞き覚えがある様で、兵達も戸惑う。

「え?『指揮者(コンダクター)イルベルト』殿?」

「こんな事態です。戦況を伺えませんか?」

「ハッ!では、こちらへ」

そう言ってミラ達は中継地へと通された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「なんです?それ?」

ホームズは、不思議そうに机の上に広げられ、駒が乗っている光っている地図を見る。

「これは、リリアルオーブの反応を拾い戦況図を見るものです」

兵士の説明にホームズは、目を丸くする。

「へぇ……そんな物がこの世にあるんだねぇ……」

ローズも口にこそ出していないが、驚いているようだ。

「……あれ?これだけなんか違うね」

レイアは、そう言って一つ異彩を放っている駒を指差す。

「それは、参謀副長殿が勧めている戦略の部隊です。

四刃象(フォーブ)アグリアの妨害を突破したようですね」

「(その妨害を突破したのって……)」

「(まあな)」

ホームズとヨルはコソコソと会話をする。

ミラは彼らに構わず眉をひそめる。

「ジランドの戦略だと?」

「えぇ。一の鐘の後には、予定地点に至るはずです。

詳細は聞かされていませんが、戦局の流れを一気にこちらへ寄せる、切り札のようなものだとか」

「切り札、ねぇ……」

ホームズは、苦い顔をする。

何せ自分の腕がこんな様になった原因の一端だ。

間違いなくあの力は、切り札になり得る。

「作戦実行の際、予定到達地点へできるだけ部隊を集結させるように指示が出ています」

ローエンは、話を聞くと地図をいじり矢印を出す。

「ふむ、……この進路だと……」

矢印は、曲線を描き一つの地点を示す。

「予定到達地点はここですね」

「は、はい。流石ですね『指揮者(コンダクター)』」

褒められてもローエンの顔は晴れない。

「嫌な予感がしますね……」

顎髭を触りながらポツリと呟く。

「ああ」

ミラも頷く。

「クルスニクの槍を使うつもりだろうが、自軍に詳細を明かさない理由が見えない」

「……クルスニクの槍は、ジランドという人が持って行ったんでしょうか……」

エリーゼがポツリとこぼす。

「状況から考えればそうだと思う……けど……」

エリーゼの言葉にジュードは、頷きミラを見る。

ミラは静かに頷く。

「クルスニクの槍を起動に必要な鍵は、私が奪い、イバルに託してある」

「だから、槍は使われる事はないって思ってたんだ」

ジュードが後を引き継ぐ。

「ですが、槍は持ち出され、使用準備が進められている。

それはつまり……」

「新たなカギが生み出されたのかもしれん」

ローエンとミラは推測をまとめる。

ホームズがそんな中、包帯だらけの手を挙げる。

「あの〜、根本的な事を聞くんですけど……ファイザバード沼野でどうやって動いてるんです?霊勢がめちゃくちゃで戦争(ソレ)どころじゃないと思うんですけど……」

微妙に場に合わない呑気な声で言うホームズにローズは、ため息を吐く。

兵も少し戸惑う。

「あ、はい。ア・ジュールで開発された増霊極(ブースター)は、ご存知でしょうか?」

「えぇ、まあ、おおよそ」

そう言ってホームズは、エリーゼの近くに浮いているティポを見る。

皆も同じ事を考えていたようだ。

『うぅー。そんな見ないでよ恥ずかしいー』

「あぁはいはい、かわいいかわいい」

ホームズは、適当に手を振る。するとムッとしたティポがホームズの頭に齧り付く。

そんなホームズを見て兵士は、顔を引きつらせる。

「あの……大丈夫ですか?」

「あ〜別に大丈夫です。きっと手加減してくれるだろうって信じてますから」

「血が出てるんですが……」

ホームズの頭から垂れる赤い液体により一層頬を引きつらせる。

エリーゼは、ホームズを半眼で睨んでいる。

「エリーゼ!!」

「ホームズがいけないんです!!」

喧嘩を始めた二人にミラが咳払いを一つすると、ローズは、静かに頷き無言で拳骨をホームズだけに落とす。

突然脳天に現れた痛みに思わず頭を押さえ、ローズを睨む。

「静かにしろ、ホームズ。話が聞こえん」

ローズを睨んでいるホームズにミラはピシャリと言い放つ。

「何でおれだけ………」

ホームズは、そう言ってティポを引っ張る。

しかしとれる気配はなく、無情に伸びるだけだ。

「すみません。お話の続きをお願いしてもいいですか?」

ローズは、ホームズの前に立つとそう話を進める。

兵は、頬を引きつらせながら説明を続ける。

「敵はその増霊極(ブースター)でマナを増大させ自分達の周囲の霊勢を変化させています」

「マナで地の微精霊を大量に召喚し、地場(ラノーム)に変えたのですか」

ローエンは、驚いている。

「なんと言う奇策……流石ウィンガルといったところですね」

感嘆するローエン。

「ラ・シュガル軍は、どうやって抵抗しているんですか?」

「我々にも増霊極(ブースター)がありますから」

頭にティポをつけたままホームズは、素直に驚く。

ホームズが驚いてる間にローエンが口を開く。

「兵全員に配備し、小隊に一人霊勢を変化させるものを置いたのですね」

「は、はい。その通りです」

その言葉を聞くとティポは、ホームズの頭から口を離す。

『もしかして、僕らの出番ー?』

「いや、ここはローエンに任せよう。

地の術に長けているものがやった方がいい」

ミラの一言にティポとエリーゼは、ガックリと肩を落とす。

その様子を面白そうに笑っていたホームズは、ローズに殴られていた。

「時間がありません。ジランドを追いましょう」

ローエンがそう言って残ると、後の面子は、外に出た。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「エリーゼ、傷を治してくれないかい?」

頭から血を一筋流しながらホームズは、エリーゼを半眼で睨む。

「…………仕方ないです」

そう言って精霊術をかける。

ホームズの傷はふさがり、流血も消えた。

「お礼くらい言ったら?」

隣で見ていたローズがそう言うと、ホームズは、ティポを指差す。

「はぁ?!こいつが原因なんだよ」

「貴方が余計な事を言うからでしょ」

「じゃあ、何かい?『きゃ〜♡か〜わ〜い〜い〜♡』……とでも言えば良かったのかい?」

「いや、何も言わなきゃよかったのよ」

ホームズの女子の声真似に若干鳥肌を覚えながらローズは、いたって冷静に返す。

達が悪い事に若干可愛かった。

「ホームズは、一言も二言も多いんです」

「モテたかったら、もう少し寡黙な方がいいかもね」

「流石、君が言うと説得力が違うゼ、元気っ子」

『それを止めろって言ってるんだよー!』

「まあ、それが出来りゃ苦労はないよな」

ヨルは肩で耳をピクリと動かしながら、どうでもよさそうに言う。

女子三人(+ヌイグルミ+一匹)に責められ、思わずホームズもたじたじだ。

「そこまで、言わなくても……」

泣きそうな顔をしているホームズにレイアは、苦笑いをしながら口を開く。

「まあ、たまには手加減無しでいかないとね」

「君がおれに対して手加減したところをみたことないよ!!」

ホームズは、涙目でそう返した。

そんな事を話していると、ジュードとアルヴィンが話しているのが目に入る。

「ん?アレは……」

ホームズは、少し眉をひそめる。

腕を広げ肩をすくめている様は、何処か胡散臭い。

程々のところで切り上げるとホームズは、彼らの所まで歩いていく。

「なんの話をしてるんだい、ア〜ルヴィン?」

ホームズは、そう言って肩を組む。

ニヤリと胡散臭い笑みを浮かべているホームズにジュードが説明する。

「その、また、アルヴィンが一人で行動してて……」

ホームズが呆れた顔で見る。

「君……」

「また、嘘つくんですか?」

エリーゼは、少し口調を強くして問い詰める。

「は?何を言ってんだよ、エリーゼ」

アルヴィンは、サラッと言う。

『アルヴィン!白々しいぞー!!』

ティポもエリーゼに続く。

明らかに不信の目を向けられているアルヴィンは、ジュードに尋ねる。

「おたくも、おれのこと疑ってんの?」

「……………」

ジュードは、俯く。

「アルヴィンさん。さすがに今の状況で一人で行動されると疑わざるを得ませんよ」

ジュードに代わりローエンが厳しく問い詰める。

それに続くようにジュードも口を開いた。

「アルヴィン。今は僕達から離れないでよ」

「本当だよ、約束だからね!」

レイアもそれに続き、幼馴染みコンビに押されアルヴィンは、苦笑いをしながら頭を掻く。

「はいはい」

「モテモテだねぇ、アルヴィン君」

「そりゃあ、おたくとは違うさ」

馬鹿にしたように言われホームズは、青筋を額に立てると、そのままチョークスリーパーをかけようとする。

しかし、直ぐにローズの鉄拳がホームズに飛んでくる。

「ふぐぉっ!!」

もろに画面にもらったホームズは、アルヴィンから離れ、後ろから倒れる。

「腕は安静に」

 

 

 

 

「……忠告どうも。涙が出るほど嬉しいよ」

 

 

 

 

 

顔に落ちる雨に混じって、ホームズの頬を一筋の涙がつたった。

 

 

 

 

 

 

 

そのあまりのクリティカルヒットにレイアは、引きつり笑いをする。

「あのさ、もう少し優しくしようよ……」

馬鹿(ホームズ)には、いい薬よ」

ローズは、ひらひらと手を振ってどうでも良さそうに返す。

「さて、ホームズ。残り何時間だ?」

いつの間にやらレイアの肩に逃げてきたヨルは、ホームズに尋ねる。

ホームズは、仰向けのまま時計をポケットから出す。

 

 

 

 

「………只今、一時間経過……残り一時間でーす……」

 

 

ホームズは、懐中時計をぱかんと開き針の動きを確認する。

ヨルはそれを見ると今度はミラ達を見る。

 

 

 

「さて、足手まとい復活まで残り一時間……どうする?」

 

 

 

 

 

ヨルの問いにジュードは、一瞬言葉に詰まる。

 

 

 

 

 

 

「どうするもこうするもない」

 

 

 

 

 

 

ホームズは、懐中時計を閉じ、ポンチョを翻し立ち上がる。

 

 

 

 

 

 

 

「ハンデぐらいで、足手まといになる程やわじゃないよ、おれは」

 

 

 

 

 

 

 

 

先程までの情けなさが嘘の様に凛とした佇まいに空気もぴしりと張り詰める。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………いつも、そうしてればいいのに………」

ローズは、ホームズから顔を背けながら小さく呟いた。

レイアは、横で聞いていてため息を吐く。

 

 

 

 

 

 

「なるほど……しかし、ホームズ、お前はここにいろ」

「は?」

ホームズから、間抜けな声が出た。

ミラの言葉に思わずホームズから力が抜ける。

ぴしりと張り詰めた空気は、一瞬で緩んだ。

「えぇーっと……今なんて?」

「だから、ここにいろホームズ。幸い、ローエンの顔が利くから悪いようにはされないだろう」

「なんで、おれを置いていくんだい?」

訳がわからないという顔でミラを見る。

「お前は、どうせ腕を使うからだ」

ミラは、ホームズの両腕を指しピシャリと言い放った。

「自分の身体を酷使し、ギリギリのところで勝利を掴み取る……そんな事をしてるお前が、自分の腕を使わないなんて、まずない」

闘技場、ウィンガル、ナハティガル、上げ出せばきりがない。

そんな訳で、ホームズは足手まといとかそれ以前の問題として連れていけないのだ。

「…………」

反論のしようが無いのでホームズは、目をそらす。

それをミラは了承と取った。

「では、荷物は私たちが持っていく。お前は、そこで一時間大人しくしていろ」

「…………え?」

「後で合流しよう」

「いや、ちょ、ちょっと……」

「安心して下さい、ちゃんと話は通しておきました」

「いや、じゃなくて……」

「あと1時間経ったら、ラ・シュガル兵が増霊極(ブースター)を持って一緒にホームズさんと行動してくれるそうですよ」

「え?いや、本当に置いてくの……」

「では、行くぞ、みんな」

ミラの言葉にホームズを抜かして全員が力強く頷くとローエンが増霊極(ブースター)を展開させる。

 

 

「では、また会おう」

ミラは、そう言ってローエン達を引き連れ颯爽と去って行った。

その堂々とした立ち去る様にホームズは、ポカンと立ち尽くし思わず見送ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、今の状況、一人でいると疑われるんだよね、確か」

「お前の場合は、連れてく方が信用出来ないんだろ」

ヨルは尻尾を振りながら、もうすっかり見えなくなった方向を見つめるホームズにそう返す。

「…………ハァ」

ホームズは、ため息を一つ吐いて中継基地のテントの中に入っていった。

 

 

 









因みに学生時代一番綺麗な桜の場所は、放牧牛が通る所でした。


牛糞さえ我慢すれば最高の花見スポットだと思います。





本編の内容は、まあ、タイトルの通りです。



人の忠告無視してれば、こうなりますよ。えぇ、全く。





ではまた九十九話で( ´ ▽ ` )ノ

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