人形と研究者   作:鋭い縫い針

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人形と研究者

「なるほど、内部器官も人間と酷似した配置をしていますね、どうして酸性の液体が入った胃を模した物、って肺ですかこれ、アンドロイドに呼吸は必要なのに、わざわざ呼吸をする器官を取り付けたんですか、効率の悪い」

ドロシーは体中に血液を模した液体を付け解剖を続けていた。

傍から見ればスプラッタな光景だろう、実際エミールが引いている、自身が液体で汚れようとも気にせずに解剖を続けていく。

器官を取り外し、それぞれどのような機能があるのか調べ、再利用できるパーツは綺麗に保管する。

アンドロイドのソフトウェアは戦闘という名の虐殺の際分析しつくしていた。

人間に近い無駄が多い、戦闘用に作られたくせに感情を持ち一体一体に個性を持ち疑似記憶によりさらに人間味を増している。

ドロシーは戦闘用ではなく何でもできるように作られた万能型だった、人間だったドロシーが全てを尽くして作り上げアンドロイドあるドロシーが自己改造を繰り返し行った完璧で完全なアンドロイド。

ドロシーは自身を誇りに思っていた。ずっと引きこもっていたためどのくらい通用するかという疑問はあったが先ほどの虐殺で程度は知れた。

「だから私は外に出ても大丈夫、でもサンプルは少しでも欲しい、もっと比較対象が欲しい」

自分が弱かったら?あっけなく破壊されてしまったら?

認められない不安が湧き出てくる、エミールに勝てるだろうか、あの機械生命体共に勝てるだろうか、あのアンドロイド達は捨て駒で本当はもっと強い個体がいるんじゃないのか。

恐怖、未知への恐怖だった。

「未知なんて認めない、全て調べつくしてやる」

解剖するための道具が手に力を込めたからか歪む。

ドロシーは外の世界が怖かった、ずっと一人っきりで引きこもっていたため思考する時間が増えたのだ。

それは研究の合間に考えてしまう、今より思考スピードが遅かった人間の時ほど楽観的な思考ができていなかった。

とどのつまり、アンドロイドのドロシーは少し、人間の時と比べるとほんの少しだけ現実を見えていた。

頭を振り思考を戻す、ドロシーは一晩かけアンドロイドを調べつくした。

 

解剖し終わった後シャワーを浴びる、その際着替えは洗濯機に突っ込んだ。

身体に水が伝い汚れを洗い流す。老廃物はなくとも汚れはする、今回はさらにだ。

「ふぅ」

アンドロイドになった後でもシャワーは気分も洗い流してくれる。

「これからどうしましょうかね」

外の世界には未知が多すぎる、やることが盛りだくさんだ。エミールについてもまだわかっていることは少ない。

手短なエミールと機械生命体から調査するか、それとも他にアンドロイドの集落がないか探すか。

「ははっ」

アンドロイドは先ほど大量に壊したじゃないか。また繰り返すのか。

でも、

「寂しい」

人間だったころのドロシーならあり得ないだろう言葉だ。

エミールという話し相手ができて安堵を覚えた。

アンドロイドが人間に近いとわかって、仲良くできればと思った。

そう、あり得ない思考。

ドロシーは生前の記憶と今の自分の差に大きな違和感を覚える。

「私はどうしてしまったのでしょう」

気づきたくなかった、気づいていた、自覚したくなかった。

「私はドロシーであって」

そうだって彼女は、

「蝨滄俣闍ア驥悟ュじゃない」

アンドロイドのドロシーなんだから。

 

それから着替え自室に戻った。ベットに倒れこむ。

他者と出会って自分を知ってしまった。

「私はドロシー、蝨滄俣闍ア驥悟ュという名の人間の大量の疑似記憶を持つアンドロイド。だからこそ錯覚していた私は蝨滄俣闍ア驥悟ュなのだと」

でも違かった。

「私は新たな存在だった、蝨滄俣闍ア驥悟ュの思考パターンと私の思考パターンを比較すれば分かる」

蝨滄俣闍ア驥悟ュなら殺しても何とも思わない。蝨滄俣闍ア驥悟ュ悪逆非道な行いをしても何も感じない。蝨滄俣闍ア驥悟ュなら自分のためと割り切れる。

でも私は?アンドロイドを殺したとき、自分のためと壊した、でも心のどこかで仕方がなかったと言い訳をしている。

「私は私です」

そう割り切れれば楽なのに、私は目をつむりスリープモードに落ちていった。

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