後方小話   作:文系グダグダ

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ヒャァ!ガマンできねぇ!(今月二回目)
ストックをためられないアホの図


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「さあ、指揮官。しっかり働くのよ」

 

 執務用のテーブルの端に積み上げられた紙束を見ながら、AK-12はティーカップを傾ける。彼女のテーブルにはティーセットが置かれているのみで、物言いも含めてとても仕事をしているとは思えないだろう。

 傍から見れば、副官とは思えない尊大な態度ではあるが、指揮官は黙々と紙媒体の書類に目を通し、決済やコメントをつけていく。

 

「最新型の軍用戦術人形を電子書類の精査や決済に使うなんて、指揮官は贅沢物ね。少しはあたしのありがたみを感じなさいな」

 

「ああ、助かる」

 

 指揮官はそう言うと、AK-12の淹れた紅茶を口に含みながら、彼女の演算能力ではどうしても干渉できない紙の書類と格闘していたのであった。

 AK-12は相変わらず優雅なティータイムを堪能していた。

 

 ――勢い良く開かれる司令室の扉。

 

 視界に飛び込むはAK-12率いる叛逆小隊の一員であるAK-15であった。

 自身の格好は普段と変わりないが、自身の名前を冠する銃器が見当たらないということは可及的速やかに解決するべきトラブルはないと指揮官は判断した。

 

 AK-12と同じ工場、同じ基礎設計を有しているが、彼女とは違った煌めきを残す銀糸の髪を靡かせながら、ズカズカと比較的大股で歩き、指揮官に詰め寄る。

 軽口を叩く事もしないほどに冷静で、戦術人形としてストイックな生き方をしていたAK-15が、急ぎとはいえノックをせずに入って来たことを鑑みれば、なにか起こるだろう……

 AK-12とは違う肉体的な綺麗さと力強さを兼ね備えたその顔は髪型の都合上、左目が前髪で見えない物のいつもとは雰囲気が違うと指揮官は察する。

 

 AK-12も同様に敵襲やそれに準じる非常事態ではないことを察したのか、しかしAK-15の様子に何かあったのは間違いないと感じていたが、冷静にティーカップを口つけようとしたその時であった。

 

「指揮官、お伝えしたい事が」

 

「発言を許可する」

 

 AK-15は表情を変えずに指揮官を見た。

 

「指揮官、貴方のことが好きです」

 

 

 

 

 

 

 

 ――優雅が死んだ音がした

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん゛ッ゛っ゛!」

 

 口調は軽やかだが、冷酷さを兼ね備えたAK-12声帯から、絞り出されるような声色。

 

 先程まで優雅に紅茶を傾けて、王侯貴族のように振る舞っていたAK-12の雰囲気が消え失せて、もはやこの空気と全く合っていない。

 椅子をひっくり返し、紅茶のむせ返りに苦しむAK-12を、慌てた指揮官がAK-12を抱きかかえたのがついさっき。

 

「大丈夫か?」

 

「え゛ほ゛っ゛、え゛ホ゛ッ゛っ、お゛っ゛ふぇ゛っ

 AK-15、貴女一体突然何を? きゅうに、なにをいうの?」

 

「素直になった方がいいかと結論づけましたので」

 

 AK-12の豹変に動じることもなくAK-15は再度指揮官を見つめた。

 目は見開かれ、口角を僅かに上げると『ちゃんと聞き逃すなよ?』と言わんばかりの様子で告げた。

 

「もう指揮官の前で仮面をかぶるのはやめにします。非効率ですから」

 

 指揮官は無言でAK-15の言葉を傾注している中、AK-15はAK-12にお構いなしに静かに力強く告げた。

 

「私は貴方のことをとても好ましく思っております。

 率直に申しますと、貴方を恋慕しております」

 

 ――は? ナニコレ?

 

 AK-12のメンタルモデル内を支配する感情はこれに尽きた。

 

 自分の音声認識システムと言語の翻訳・認識機能は明らかに突発的なエラーを起こしていた。

 確かに今AK-12自身の機能が障害を起こしていなければ、先程AK-15の口からぶちかまされた言語は愛の告白と言っても良い。

 

「どこのどいつよ? AK-15に吹き込んだやつは。今すぐ血祭りに」

 

 ―― 血 祭 り 。

 

 指揮官は何時にもなく過激な発言をしたAK-12に対して、内心で困惑しながらも彼女を抱き起こし、椅子を引き立てる。

 指揮官に倒れたところを抱き起こされている事にも目も暮れず、両目を見開いてあたりを見回してから、AK-12はAK-15を注視した。

 

「これは私の意見だが、異論でも? AK-12」

 

 いつも通りに見えない表情を浮かべながら明確にそう表明したAK-15を見て、AK-12は冗談の類や同僚(RPK-16)に教唆された訳ではないと今ここではっきりと認識した。

 

「そもそも、指揮官? どうしてそんな、平気な顔をしてるのかしら?」

 

 両目を見開いたままノータイムで指揮官に首を回して指揮官にフォーカスをあわせてAK-12は捲し立てる。

 

 ――なんでこの中で私が一番リアクションが大きいのよ? 当事者は全く動じてないじゃない!

 

「???」

 

「AK-15がさっきなんて言ったかおわかり?」

 

 無自覚に人や戦術人形、かたや民間企業または個人契約の勤め人と国家の暴力装置としての関係をすっ飛ばすような発言をAK-15に喰らわれたくないAK-12は代わりに腹いせと言わんばかりに指揮官を責め立てた。

 もう既に性格もこの中でそんな冗談も絶対に言わないであろうと分かりきってる同僚(AK-15)よりも、内心では指揮官もAK-12と同じ状況であることを……突然に難聴や認知機能に極部分的な障害を起こしていることを信じて……

 

 指揮官はAK-12とAK-15を交互に見ながら、重い口を開いた。

 

「……指揮官を好いていると、恋慕していると」

 

「はい、間違いありません。指揮官」

 

「………………あらそぉ」

 

 もう全てを察したように指揮官の言葉とAK-15の言葉に対して深く納得したように頷くと、AK-12はとりあえずといった風に指揮官の腕の中から離れるように立ち上がった。

 

「ま、まあ、良いんじゃないかしら? 有能な人は私も好きだし、AN-94も気に入ってるし叛逆小隊全体で面倒を見てあげるのも悪くないわね

 まあ、あんたも気にいるのは当然の事だから想定内ではあるわ」

 

 指揮官は怪訝そうにAK-12を見やった。

 

「少しヒールが絨毯に絡まっただけよ、これもうダメよ。交換しなきゃ」

 

 副官に収まる以上、見た目もそれ相応にしようとして、コンバットブーツではなく、私物として持ち込んだヒールを履いて来ていたのは指揮官も知っていた。しかし……

 

「……バランスの崩し方的に背中からひっくり返って」

 

「ひっくり返ってません」

 

「いや」

 

「ひっくり返ってません」

 

「…………そうだな」

 

 ――ああ、認めないのか。と指揮官は察し、そして忖度した。

 AK-12は記憶を改竄したらしく、先程のやり取りはきっとメモリーから削除されるのだろうと指揮官は感じた。

 

「やはりあの時に深夜に貴方と話したことがやはりメンタルモデル内で残っていまして」

 

「え、なにそれきいてない」

 

 AK-12の呟きを無視してAK-15は語り続ける。

 

「そう思えば、自ら歩み寄る事も必要だと説いたZB-26には感謝している。

 私達に戦術人形には縁のない事を思っていた本能、それは理性による論理的な効率よりも優れていることを貴方は証明した以上、私もそれを叛意を示すわけにもいかない」

 

 AK-15は指揮官の片手を両手で差し出して包み込むと、自身の胸に誘導をした。

 

「だから、伝えられるものは伝えるべきだと思ったんです。手遅れにならないうちに……

 私達戦術人形は死んでもバックアップはあります、しかし指揮官は死んでしまえば二度と言葉と意志を伝えることは叶いません」

 

 双眸を丸くして、驚いた風の指揮官は頷いた。

 

「そうか、しかし今こうして司令室に急いで飛び込んだ所で伝わらないわけでも無いだろうに……それで関係が変わると思ったのか?」

 

 指揮官の最もな指摘にAK-15は右手の人差し指で軽く頬をかいた。

 

「……先送りにするよりは早く伝えて悪いことは無いと思いましたから」

 

「確かに、何が起こるかわからないのは事実だ」

 

 AK-12が両目を見開いたり閉じたりとしている中、指揮官は確かにAK-15の言葉に嘘はないのだろうと感じた。

 

 ――愛されていることは、この上なく実感できる。

 

 とても嬉しいと同時に、やはり惜しい。

 しかし指揮官とAK-15は、一般的な恋愛に落ちる男性と女性ではないのだから。

 

「AK-15の気持ちは分かった。

 ――ちゃんと伝わっている」

 

「ありがとうございます」

 

 AK-15は口角浮かべて笑みを浮かべようとするが、引きつった笑みになってしまい、どうにも嬉しさを表現できない様子であった。

 

「すみません、あまり慣れていないもので。そういった無駄な事は遮断していたもので。

 AK-12やRPK-16のように柔軟に繊細な表情表現をするには難しい」

 

「構わない、感情表現は他にも色んな方法がある。一緒に探すも良し、上達を目指すも良しだ。やりたいようにすることを許可しよう」

 

「ありがとうございます。私は私なりの方法を模索するつもりです」

 

 AK-15は無表情のまま両手を伸ばして指揮官の両脇を持つと、指揮官を引き込んだ。

 いままで司令室の執務用テーブル越しに話をしていたが、AK-15側に指揮官は引き込まれ、指揮官の頭はAK-15の胸に収まった。

 

「好意を示すには抱き止める物だと、映像媒体で学びました。

 今の私にはこうすることで指揮官に感情を最大効率で伝えられると思ったのですが……」

 

 

 相変わらずAK-15は表情を崩さないが、間近にいた指揮官には頬が薄っすらと赤みを帯びている事がわかった。

 

「そうか」

 

 指揮官はAK-15の行動を拒絶すること無く、そのまま受け入れていた。

 

「……やはり、あの時(模擬戦闘時)、脚部を損傷した私を気づかって横抱きにしてくださった時からこの匂いは嫌いではない」

 

 AK-15はそのまま顎を引いて彼女の胸に沈んだ指揮官の頭に鼻を押し付け、目を閉じる。

 

「なんか少し腹が立ってきたわね」

 

 AK-12は傍からみるとバカップルのそれである抱擁を見て、そうつぶやいた。

 自分よりも伝え方が下手くそだろうと高をくくっていたAK-15に先を越されて、想定以上の破壊力を目の当たりにして頭が冷えて来たこそ考えられることがAK-12にはあった。

 

 AK-12にあってAK-15に無い、あるいはその逆であるからこその差異。

 

 それはAK-12自身が危うくひっくり返……りそうになったと言えな……言えなくもないパーソナリティーの根底に根ざすものであった。

 

「あたしの目の前でよりによって指揮官とイチャついてなんて……」

 

 指揮官に聞き取れない範疇で呟いたその呟きはAK-15にはきちんと聞こえており、電脳上でメッセージがAK-12に送られてきた。

 

『認めましょう。指揮官は我々叛逆小隊で預かる事を。しかし、私も指揮官がいなければ最高峰のパフォーマンスを発揮できないのも事実。私の取り分は確保させてもらう』

 

『だからって私の目の前で正面から愛の告白なんて、生意気も良いところじゃない?』

 

「こんな愛想もない女ですが、どうかよろしくおねがいします。指揮官が私の好意に応えてくれるだけ、私もそれ以上を指揮官に伝えるように最大限の努力は惜しまないつもりです」

 

 AK-15は指揮官に悟られないように腕に力を込めて、彼の顔を胸に埋める。AK-15は目を細めてAK-12と視線を交わしてメッセージのやり取りを行った。

 

「そもそも、指揮官はどうして少しの照れもないの? これじゃあ理不尽よ」

 

 普通、異性に対して愛していますなどと言えば、たとえアンドロイドでも絶世の美人であるならば誤解を生んでもおかしくはないだろう。

 もはやここまでの事を言って、相手が何が言いたいか分かっていないのであればそれはただの阿呆である。

 

 そして決して指揮官はただの阿呆ではない事もこの場にいる二人はよく知っていた。

 

 AK-15のベアーハグから開放された指揮官はだからこそAK-15にこう訪ねたのだ。

 

「念の為に言うが、例えば私が女であったとしても、AK-15の気持ちは欠片も変わらないのか?」

 

 二人は指揮官がここまで距離を取りたがる理由を知らない。敬愛以上の関係に踏み込めない事は結構邪魔なものなので、あわよくばここで取っ払ってしまいたいとAK-15は考えてこのような暴挙に出てみたが、如何せん強敵であると、AK-15は感じていた。

 

『AK-12、指揮官はこのような人ですよ? 私は叛逆小隊の隊員で分割した分以上は求める気はありません。

 叛逆小隊全体として彼の攻略に当たらねば落とせぬ相手です。』

 

「はい、変わりません。希望であればその時は疑似男性ユニットを換装して当たる所存です」

 

 AK-12はメッセージに答える形で、二人を煽り倒そうと決意した。悔しいが、AK-15の考察は蓋然性のある話だと感じたからだ。

 

「では改めてAK-15から指揮官に言ってみれば宜しいわ。先ほどAK-15が飛び込んできた時と同じように。さあ! さあさあさあ!」

 

 或いは、AK-12自身ではなんだかんだ言って悔しかったのかもしれない。

 

 ――AK-15に先を越されたことが。

 

 というよりは、厳密に分析するならAK-15が最初に紡いだ「好きです」というあの言葉がAK-12自身ではそういう意味合い(・・・・・・・・)に捉えてしまって動揺を露わにしたことが悔しかったのかもしれないだろう。もしかしたら、指揮官も同じように受け取ったのかもしれないと……

 

 その辺り、勝ち負けや興味ごとにこだわるAK-12自身の良い所も悪い所も出てしまっているのかもしれないが、いずれにせよ。

 

 ――ここまで場を整えて、改まった時に正面切って返事を言えるのか?

 

 好奇心と期待と勝負魂と、羞恥に塗れるのなら指揮官にも同じ目に合わせて一泡吹かせてやるという私怨がごちゃ混ぜになって何が何だか自分でもよく分からなくなっているAK-12の目の前で。

 

 

「指揮官、貴方を愛しています」

 

「返事はしないと、な」

 

 

 

 

 

 ――指揮官は真っ直ぐAK-15を見据えて告げた。

 

 

 

 

 

「私もAK-15、君のことは命の恩人(・・・・)として好ましく思っている。ありがとう」

 

「……………………なんでぇ」

 

 

 

 

 

 ――それ(性愛)これ(敬愛)とは話は別である。

 

 

 

 

 

 AK-15に対して答えた、指揮官の照れの欠片もない真摯な言葉はあくまでも敬愛であり、性愛の欠片などもない様子に、AK-12は呻くように呟き、こうも思った。

 指揮官と出会って、関わり合っている時は、どうも上手くいかないことのオンパレードだと……

 




ぼくは、はんぎゃくしょうたいのなかでAK-15が一番すきです
これだけははっきりと真実を伝えたかった
AK-12が便利すぎる、他の候補でUMP40がいたけど今回は彼女に狂言回しをお願いしました
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