異世界にて、烈海王、復ッ活ッ!!烈海王、復ッ活ッ!! 作:浦井朝時
コロコロコロコロ―――
ゴトッ―――
烈の連撃を受け、すっかり沈黙した楊「だったもの」……
それは、ちょうど大の大人が体育座りでうずくまったような
直径80㎝位の大きさを保持しながら闘技場内を転がり、
そして、壁にぶつかって静止した―――
それらの事実が意味するところは
傾斜0.1度未満のこの闘技場で、楊、もとい金剛石の球体が「転がる」という
烈による完璧な『打金剛』の完遂を意味する―――
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ギルドハウス ~マギカリーゼ支部~ 所属
下級魔導士 エリク・マラクソン
当時、その闘技場設立以来の歴史的瞬間を闘技場内客席にて目撃していたこの男は語る―――
「………あの時のことを覚えているかだって?」
エリク氏が乾いた笑い声をあげる。
「覚えるも何も、忘れようとしても忘れられないよあんな光景は」
そう言うと、真剣な顔つきになってエリク氏は話を続ける。
「いいかい? 俺たち魔導士はね、昔はそれはそれは尊敬されていたそうだよ」
「俺のおじいさんの代なんかは、ギルドハウスの仲間内でニンフを討伐した日になんかは町中お祭り騒ぎだったらしい」
「その中でも【一等上級魔導士】。この人たちはそれはもう大変な尊敬と敬愛の眼差しを国中の人々から集めていたとよくおじいさんは言っていたよ」
―――国内有数の魔導士学校での血のにじむような訓練
―――何千冊にも渡る書物の読破によって得た魔道への豊かな教養
―――そして、なにより魔道を志す者としての誇りと高潔さ
「郊外の末端地域や魔法生物の住む区域と国との境界で、ガーゴイルなどの危険生物から命を懸けて俺たちを守り、日々強くなることへの努力を怠らない彼らの姿は、マギカリーゼに住む少年たちの憧れの存在だった……」
しかし、今はそんな魔導士も潰えた―――
「原因は至極単純、転生者という生まれながらにして【補正】という能力を持つ人々の増加だよ」
―――古くからの歴史を持つ闘技場で
―――英雄と呼ばれた魔導士たちが
―――訓練も何もしていない【補正】能力を持つ転生者たちに為す術なく破れていく
「それ以降、マギカリーゼにおける魔法生物討伐や闘争の主人公は転生者たちに取って代わられ」
「魔道の鍛錬がもはや無意味であることを知った魔導士たちのレベルは極端に低くなってしまったんだ」
「俺たちはそれが当たり前になっちまったけど、当時の魔導士はどんな気持ちだったんだろうな」
所詮生まれながらの化け物には、生まれながらの化け物しか敵わない―――
「『目には目を歯には歯を』とはよく言ったものだ―――」
―――そんな俺たちが、闘技場で何を見たと思うッ!?
「およそ俺を含めた魔導士たちが諦めていた『鍛錬』による魔道力の強化によって生来的強者を倒そうという目論見」
「―――それを」
「【補正】能力も魔道も使わずに! 己の五体のみで! ダイアモンドを球体にしてみせたあの転生者は、再び蘇らせたんだ!」
生まれながらにして完成された「1」を
己の鍛え抜かれた拳のみで「
「………気づいたら立ってたよ。オレは」
「そしてね―――」
拝んでたんだよ―――手を合わせてさ……
「驚いたのはそれだけじゃねぇよ」
―――周りを見渡してみると、
「………」
「………」
「………」
同じように、みんな拝んでんだッ! こう両手を合わせて!
「世界にはいろんな宗教があるっていうけどさ……」
「やっぱ、人間って本当に心から信じられるものに出会えた時は、こう手と手を合わせちまうんだなって痛感したよ」
「―――でも、その表情は様々でさ」
感涙にむせび泣く魔導士もいれば―――
ただぽけーとしてる闘技場で敗れた転生者もいたり―――
あぁ……なんか呪文みたいなもん呟きながら拝んでる老婆もいたな―――
「それでも、そん時みんな心の中で思っていたことはさ、きっと同じだと思うよ―――」
嗚呼、努力や訓練を重ねれば、人って何でも出来るんだって!
「それからかな、オレが魔道の訓練を毎日怠らずにやるようになったのは―――」
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―――異様な光景
闘技場内のあちらこちらから聞こえる嗚咽の音
そして、闘技場中央に鎮座する一人の転生者……
彼らの胸に去来したはちきれんばかりの感動は
―――勿論燦然と輝く金剛石の美しさなどではなく
―――または、烈海王の持つ「強さ」そのものでもなく
鍛錬によって得られる人の強さに限界はないという「可能性」―――
そこから来ていることは、もはや言うまでもあるまい……
「くだらないね」
スタッ
烈「………」
キリク「くだらないよ、烈選手」
ガンッ
ゴロゴロゴロゴロ―――
キリク「こんな塊を作ったところで、一体何が図れるというのか……」
キリク「拳の頑丈さ? 技の練度? 破れない皮膚の厚さ?」
全て本当の強さには必要のない不純物なんだよッッ!!
キリク「その証拠に、ほら」
斬ッ
スパッ
バカリ
キリク「こんな塊、俺の【補正】武器で真っ二つだ、はは」
(……………………)
―――そうか
まだ、こいつがいたのか………………
烈「……それで」
烈「そろそろ、お相手してくれるのかな?」
烈「キリク君?」
ビキビキビキ―――
キリク「……あぁ」
キリク「いいぜ―――」
オレがてめぇらの幻想ごとぶった切ってやるよッッッ!!!
真打登場ッッッ!!!