異世界にて、烈海王、復ッ活ッ!!烈海王、復ッ活ッ!! 作:浦井朝時
闘技場 選手入場口 (クラスマスター側)
ゴホッ! ガ八ッ!
キリク「ハァハァハァ……」
キリク「―――く、くそが……」
女魔導士1「き、キリク様、大丈夫ですか?」
キリク「大丈夫に見えるか!? ア”ァ!?」
女魔導士1「ひっ……」
女魔導士2(……良いザマ)
キリク(な、なんだアイツの拳の破壊力!?)
キリク(こっちは全身強化魔法付与してんだぞ!? ガーゴイルとまではいかなくても正拳突き程度なら相手の拳の方が砕けるレベル……)
キリク(それなのに、拳が砕けるどころかこっちが数十メートル吹っ飛ばされていい笑いもんだ!)
三人「………………」
ギロッ
キリク「何ぼさっとしてんだ!? 回復魔法だろ! 普通!」
三人「…………はい」
【治癒】
ポワワワワ―――
キリク「おい! 本当にいつも通りの強化魔法を付与したんだよな!?」
女魔導士2「………言わなくてもわかるでしょう。いつも通り、キリク様の全身にもてる限りの魔道力で強化魔法をかけたわよ」
女魔導士3「私たちの強化魔法に抜かりはなかったと思いますが……」
キリク「てめぇ、それは俺が弱いから吹っ飛ばされたって言いたいのか?」
女魔導士3「いえ、決してそのようなことは……」
キリク「てめぇらの強化魔法が弱すぎるんだろうが! ったく魔道都市最強レベルの女魔導士三人が聞いてあきれるぜ!」
女魔導士2(……強化魔法は私たちの専門外だから仕方ないじゃない)
キリク「なんか言ったか!?」
女魔導士2「……別に」
キリク「チッ!」
キリク(とは言ったものの、このままだとアイツを斬るどころか近づいただけでアウトだ)
キリク(なんとかして、アイツの動きを止めれれば、はらわた切り裂いて即決着なんだが)
女魔導士三人「………………ッ」
女魔導士1(す、すごい……)
女魔導士1(あんなに勢いのある打撃を正面から食らっているのに、内臓や人体的急所といった致命的な部位への損傷が全くない!)
女魔導士1(けど骨折や打撲は体中にあるから、私たちの回復が無かったら再起不能……)
女魔導士2(私たちの強化魔法が彼の打撃力を上回っていたから?)
女魔導士2(―――勿論違う! 現に防御系の強化魔法は解けててコイツ自身にダメージはあるし、第一あんな破壊力は絶対に私たちの強化魔法で防ぎきれる訳ない!)
―――つまり、意図的に力を抜いていた!? あの状況で!?
女魔導士3(―――それに、普通の打撃攻撃ならまず解除されることのない強化魔法の消滅……)
女魔導士3(そして、試合開始前から他の二人も気付いているこの感じ……)
女魔導士3(信じがたいけど、間違いない)
彼は……烈選手は、恐らく―――
キリク「おい」
女魔導士3「!」
女魔導士3「は、はい! なんでしょう?」
(ニヤリ)
キリク「良~いこと思いついた」
キリク「お前らの強化魔法、防御と脚力増強にだけ回せ」
女魔導士3「そ、それでは、先ほどのような高速の剣技は使えないかと思いますが?」
キリク「いいんだよ! 『剣自体の速さ』は!」
キリク「要は、アイツとの距離を詰められれば問題ない―――」
・
・
・
マイク「さぁ! さぁさぁさぁ!」
マイク「もはや、雌雄は決したといえるでしょうッ!」
マイク「キリク選手に一切の隙を与えずッ! 一太刀も浴びずッ! 一撃にて葬ったッ!」
マイク「皆さんッ! 今日! この闘技場の歴史がッ! マギカリーゼの歴史が変わるのですッ!」
マイク「【ドラゴン】クラス争奪戦ッ! その勝者は……」
待ったッッッ!!!
マイク「!?」
烈「実況者、彼はまだやる気みたいだぞ―――」
ズシャ―――
キリク「そうだぜ? 勝手に終わらせてもらっちゃ困るなぁ? マイクさん?」
マイク「な、なんと!?」
マイク「選手入場口へ吹き飛ばされ、再起不能と思われたキリク選手がッ」
マイク「無傷で生還しているッッ!!!???」
キリク「あの程度でこの【ドラゴン】クラスマスターである俺が再起不能になるわけないだろ?」
キリク「烈さんも、まさか勝ったとは思ってないですよね?」
烈「………………」
反則だッッッッ!!!!
レガロ「キリク選手は明らかに反則を行っています!」
ミネルバ「私も同じ意見よ!」
ミネルバ「解説のマイクさん! キリク選手は間違いなく外部からの治癒魔法を受けていることは、不自然な彼の回復からも明白!」
ミネルバ(本当は試合開始時から既に強化魔法も使っているのは薄々分かっていたけど、もしも下手に指摘して勝負自体がなくなることは、何より烈さんに対して申し訳なかった……)
ミネルバ(でも、『一対一』の勝敗が決した今なら言えるッ!)
ミネルバ「よって、この試合は―――」
キリク「だからどうしたッ!?」
ミネルバ「!?」
キリク「それがどうしたんだ? 魔導士ミネルバ?」
ミネルバ「ど、どうしたって……」
キリク「―――いいか?」
キリク「俺の存在はこのマギカリーゼにとって不可欠な存在なんだよ」
キリク「この地域周辺における、およそ他の冒険者には手に負えない数々の危険魔法生物の討伐を今まで誰がやったと思ってるんだ?」
キリク「この国の魔導士たちを誰が守ってきたと思ってるんだ?」
当然なんだよッ! 魔導士が俺に使役することはッ!
キリク「この国におけるおよそ全ての魔法は、俺の力そのものと言っても過言ではない」
ミネルバ「…………ザ」
ミネルバ「ザケんなッッッ!!! そんなもん通るかッ! この―――」
バッ―――
ミネルバ「!?」
ミネルバ「れ、烈さん?」
烈「―――もういい」
烈「ミネルバさん……君が怒るのも無理はないが」
烈「ここは一つ、私に任せてもらいたいッ」
ミネルバ「烈さん……」
キリク「ハイハイ。カッコいいねぇ烈さんは」
キリク「そんなカッコいい烈さんだ。例え俺が魔法による支援を受けてたとしても」
(ニタァ~)
キリク「卑怯とは言うまいね?」
烈「………………」
烈「……かまわん」
ある程度知りながらやっていたことだ
キリク「!?」
烈「およそ本人から感じられない強者の風格」
烈「両手剣を使うには心もとない脆弱な肉体」
烈「なにより、己の強さと【補正】武器の強さを混同し、あまつさえ自分以外の一切を弱者と断じるその傲慢さ」
フフ……
烈「【補正】あるいは魔道の力に頼るのはなんとなく目に見えていた……」
烈「むしろ感謝せせねばなるまい。この世界における魔道の奥深さと多様さ……その片鱗を、少なくとも君は見せてくれたのだから」
烈「―――いや、君ではなく、選手口で待機しているそちらのお嬢さん方と言うべきか」
女魔導士たち(!?)
女魔導士たち(気づいてたの? 私たちに?)
―――ダンッ!
烈「謝謝ッ!」
女魔導士たち(!)
―――長きに渡って忘れていた
他者から己へと向けられる『感謝』と『尊敬』という崇高な感情
それを受けた三人の女魔導士たちは…………
「「「……う、うぅぁ……」」」
苦痛や屈辱、悲哀によってしか流せなかった液体が瞳からとめどなく押し寄せ、
枯れ切ったと思われたその液体が、実はこんなにも体内に存在していたことに驚きを隠せないでいた――――――
キリク(おい)
三人(……!)
―――しかし、それも束の間
キリク(分かってるよな? 指示通りにやれよ?)
三人「………グスッ…ヒク……」
キリク(……やらなかったら)
この試合が終わった後どうなるか、分かるよな?
三人(ビクッ!)
三人(……コクリ)
キリク「……フン、流されやがって」
烈(……?)
キリク「……さ~て」
仕切り直しといこうか?
なにを企むのかキリクッ!?