異世界にて、烈海王、復ッ活ッ!!烈海王、復ッ活ッ!!   作:浦井朝時

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例にもれず滅茶苦茶理論です。

烈海王にこんな改変加えてほしくないという方にはほんとごめんなさい。

どうか温かい目でご覧になってくださいね……


第二十九話 「vsキリク⑥(『マナ』とは)」

 ブリュミエール大学 魔道力学部 応用魔道力学科 最年少名誉教授

 

 

 アテナ・グラディウス

 

 

 

 「え? 転生者が魔法を使えるかだって?」

 

 こちらが投げかけた質問を聞き返すと、アテナ教授はまたかと言わんばかりに美しい容姿に似合わない、なんともめんどくさそうな面持ちでブロンドの髪をぼりぼりと搔き毟る。

 

 「はぁ……あんた、転生者?」

 

 「あ、違う? 記者? あっそ」

 

 「良かったわぁ~ 学園長から話聞いた時にはまたか~て思ったけど……」

 

 「よくいるのよね~ 転生者特権? みたいなもん使ってうちの研究室に来て、『魔法の使い方を教えろ』って聞きに来る転生者共」

 

 「こっちもさ? 近年の魔道軽視の風潮の中で研究費補助金を捻出するだけでも毎日糞忙しいって言うのに、魔法のまの字も知らないガキが聞きに来るなっつーの。せめて幼少教育レベルの教科書ぐらいの知識をつけてから来いってんだよ、ゴミ共」

 

 どうやら、相当転生者に対してご立腹のようだ。

 

 「まぁ、あんたが私の話を分かりやすく、それこそ転生者たちが集まりやすいギルドハウスとかの掲示板とかに記事として載っけてくれるんならめっけもんかもね」

 

 そう言うと、アテナ教授は立ち上がり、縦横30mはあるのではないかという巨大な黒板に、チョークを浮遊魔法で浮かせながら何かを描き始めた。

 

 

 

 「そんじゃま、軽く説明しますか」

 

 完成された模式図を見ると、中心に人間と思われる絵が描かれており、その周りに丸い粒のようなもの、そして番号の割り振られた矢印が何本か描かれていた。

 

 「いい? まぁ、あんたがどのくらいの知識を持ってるのか分からないから、この世界に来たばかりの転生者にもわかるように話すけど」

 

 

 「そもそもこの世界において『魔法』という存在と『マナ』という概念は切っても切り離せない物なの」

 

 そう言うと、浮遊するタクトで先ほどの模式図の人間の周りに漂う粒状のものを指し示す。

 

 「『マナ』っていうのはこの世界における―――言ってみればエネルギーの源みたいなものね。これを体内に取り入れ利用することによって魔導士は初めて魔法と言われる現象を発現させることが出来るわけ」

 

 「で、このマナというのはこの世界にの大気中の至る所に存在するんだけど、それを人間―――もとい魔法生物が体に取り入れて魔法として発現させるまでには……まぁ細かく見るともっと色んな工程があるんだけど、主に5つ存在するの」

 

 そして、タクトを操り、各矢印に標準を順に合わせていく。

 

 

  Ⅰ.大気ないしは外部からのマナの体内への吸収

 

  Ⅱ.Ⅰで得たマナの体内における蓄積

 

  Ⅲ.蓄積したマナの自身の使用する系統魔法で使用する基礎属性への変換

 

  Ⅳ.属性変更したマナの外部への放出

 

  Ⅴ.詠唱ないしは魔方陣によって放出したマナを『魔法』として形式化

 

 

 「以上が簡単に説明した魔法発現までに至る工程なわけよ。分かった?」

 

 もう少し詳しく教えてほしいと頼むと、アテナ教授はこれまた目を細めいかにも気だるげに「しょうがないなぁ~」と言いながら再び解説を始めてくれた。

 

 

 「まず、ⅠとⅡについては大丈夫よね? 要は食事と同じように外からマナを取り込んで、それを魔法発現の必要量まで蓄えるっていうことだし」

 

 「問題はⅢとⅤかしら? マナという概念になじみがない転生者には理解しがたいかもね」

 

 

 「マナっていうのはね、大気中に存在する状態や未使用の状態では属性としては『中性』なの」

 

 「ただ存在しているっていうだけで、それだけでは何の利益も危害も及ぼさないわけよ……基本的には」

 

 「んで、それを生物が取り込むと、変換速度に差異はあれども自分が使用可能になるようにマナの属性変更が行われるわけね」

 

 「例えば炎系統の魔法を頻繁に使う魔導士が吸収したマナは『赤』属性に変換されがちだし、回復魔法を頻繁に使う魔導士が吸収したマナは『白』属性に変換されやすいってこと―――もっとも、その種類は多岐にわたるし、蓄積されたマナが魔導士の体内で同時に複数系統の属性に変更されることもあるけど」

 

 「ともかく、そうやって魔導士はマナを魔法発現の糧として利用できるようにするわけ」

 

 そして、今度は模式図の人間から伸びている矢印に標準を合わせる。

 

 

 「そうして属性変更したマナをⅣで放出……そして、そのときに放出したマナに定型化した様式を持たせるように、詠唱や魔方陣、魔術紋といった外部的な知識が必要になるわけ」

 

 

 「例えば同じ『白』属性に変更したマナを放出したときでも、外的要因である傷や打撲痕を回復する治癒魔法と、内的要因である内臓や代謝といったものを回復する治癒魔法とでは、効力が全然違うでしょ?」

 

 「つまり、発現したい魔法に応じた文脈化された法則性っていうのがきちんと存在して、それについての知見が無ければいくらⅠ~Ⅳがうまくいっても思い通りの魔法は使えないってわけよ」

 

 

 メモを取り終わるのを見届けると、アテナ教授は満足げに頷いた。

 

 

 「ま、ざっとこんなもんね。魔道の発現に至るまでの本当に基礎的な説明については」

 

 「ね? 私たちが簡単にポンポン出しているように見える魔法にも、ちゃんとこういう定式化された方法論があるわけよ」

 

 

 

 「……それなのに、あの糞転生者共ときたら」

 

 「さも自分が魔法を使えるのが当然であるのかのように上から目線で聞いて来るし」

 

 「一番頭に来たのは『なんで転生したのに魔法が使えないんだよ!?』……だと?」

 

 

  ふっざけんなよッ!? 

 

 

 「太古からの高名な魔導士たちによって積み上げられてきた魔法がそう簡単に使えるかってんだよ!?」 

 

 「というかなんで転生前の世界では魔法という概念があんのに魔法に対して楽観的な奴が多いんだよッ!? あいつらの世界で魔法ってどんだけ軽く見られてんだよッ!?」

 

 「てかこっちが【補正】能力とか言う自然法則無視したデタラメな力がなんで使えてるのか知りたいわ! 努力もしてないくせにイキりやがってこの○○○○ッッッ!!!」

 

 

 ひとしきり叫び終えると、はっとしたように顔を上げ、先ほどのオタク気質な会話はどこへやら、本来の美しい容姿が際立つように人差し指を口元に当ててアテナ教授はこう言った。

 

 「……今のはオフレコでお願いね。記者さん♡」

 

 

 

 「あ、忘れた」

 

 「そういえば、最初の質問は『転生者が魔法を使えるか』よね」

 

 

 

 「―――理論的には不可能ではないわ」

 

 

 

 「現に魔法を発現した転生者の事例もごく稀にだけど確認してるし、そもそもマナはあらゆる生物と自然とのかかわりの中で循環するものだから、さっきの工程をちゃんと踏まえさえすれば転生者でも魔法は使えることは事実よ」

 

 

 

 

 「―――ただ」

 

 

 「魔法を使えた転生者つっても、ほとんどが幼少期という学習や生活習慣の吸収効率が高い時期にこっちに転生してきて、たまたま生き残ってマギリカーゼに来れた子たちがほとんどだし」

 

 「ある記録だと、成人後の転生者がこの世界の10代後半で一般的に使えるような魔法を習得するまでに20年かかったともあるから」

 

 「転生者が魔法を使えるかという問いについては、基本的には不可能と考えた方がいいと思うわよ―――無駄な期待を持った転生者を増やさないためにもね」

 

 

 

 

 「――あ」

 

 突然何かを思い出したように声を上げるアテナ教授。

 

 「でも……もしも、だけど―――」

 

 

  

  前の世界で『マナに似たもの』への理解が深い転生者なら、

 

  あるいは可能かもね……

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 ―――『気』

 

 

 

 中国武術において重要な役割を持つ、自然から得られる根源的エネルギー

 

 

 高名な武術家たちはこれを身に宿し、体内で移動・放出することによって超人的な力を得ることが出来るという

 

 

 

 そして、実はこの『気』という概念

 

 

 他の地域や時期、果てには異なる世界において、様々な名称で呼ばれている

 

 

 

 ―――『オーラ』

 

 ―――『霊気』

 

 ―――『チャクラ』

 

 

 ―――そして、『マナ』

 

 

 

 実はこれらの諸エネルギーは根源的には同一のものであり、

 

 どれか一つの要素における親和性が高い者は、総じて他の諸エネルギーへの親和性も高いのである。

 

 

 

 

  ―――すなわち

 

 

 今回烈に起きた『異常事態』

 

 

 これは、烈が転生前の世界において猛烈な中国武術の鍛錬によって習得した、

 

 常人ならざる『気』という自然エネルギーとの親和性の高さと見識の深さによって生じた帰結に他ならない

 

 

 

 

 ―――約一時間における站椿をしながらの瞑想

 

 

 

 この期間内に烈が体に取り入れた『マナ』量は、当時のマギリカーゼの一級魔導士が常時体内に蓄積している『マナ』量とは比べ物にならないものであり、

 

 

 

 吸収・蓄積されたその高密度の『マナ』は―――

 

 

 体内のみに留まらず―――

 

 

 

 

 

 

  ついに、烈の周囲30㎝に高密度のマナのシールドを構成するに至るッッッッッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  いやいやいやいや!!!!

 

 

 

  いくらなんでもそれはないでしょ?

 

 

 

  それに、第一そんなことが出来るんなら転生前でもシールド使えてたっしょ? 烈海王?

 

 

 

 

 

 

 そう思った一部の諸君もいるのではないだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『エネルギー保存の法則』

 

 

 

 

 

 

 古くから議論されてきた

 

 『この世界におけるエネルギー量は一定量である』

 

 という科学的理論に基づいた自然法則における一つの仮説

 

 

 

 実は、この法則はあらゆる世界においても普遍的に通用する。

 

 

 そして、それはこの異世界でも例に漏れないのだ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

  それと烈海王の膨大なマナの蓄積とどういう関係が?

 

 

 

 

 

 

 

 

 現代社会に生きる諸君の周囲を見てみよう。

 

 

 

 張り巡らされる電線

 

 大量の化石燃料によって動かされる大型機械

 

 

 

 

 人の力を超えた、近代産業革命が生んだ膨大なエネルギーを使用する文明の利器の数々

 

 

 

 ―――とどのつまり、

 

 

 

 この世界の大気中に残った『気』を始めとした根源的エネルギーは、

 

 

 もはや枯渇状態にあるといっても過言ではない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな中でもなお大気中に残る僅かな『気』を五体に取り入れ、

 

 中国武術が生んだ天才と言われた烈海王が、

 

 

 

 世界の大半が樹木におおわれ、大気中に膨大なマナを含むこの世界に転生したら―――

 

 

 

 

 

  そんなもん、最強に決まってるでしょッッッッッ!!!???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――しかし、

 

 

 

 『気』には深い見識のある烈であっても

 

 

 転生直後においては自身と既に一体化したマナの気配を察知するには至らず、

 

 

 

 

 ガーゴイルとの戦闘――― 

 

 

 站椿前後における自身の体の変化―――

 

 

 

 

 

 そして、今まさにキリク選手の剣が五体に達する前に押し留められているという

 

 

 およそ信じ難い状況において、自身の力の根源を確信する―――

 

 

 

 

 

  烈海王ッッッここに『魔道拳士』としての己の道を見出すッッッッッ!!!!!

 

 




『魔拳』烈海王ッッッここに誕生ッッッ!?
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