「そのコーヒー・・・俺の能力だ」
俺と同一の代物だと分かって、ついそう口に出してしまった。
「なに?」
白衣の男は怪訝な顔をする。
こうなっては仕方が無いので、思い出した事を説明する事にする。
「俺の能力で出現したフィクションだ」
「なんだと、コレがか?」
白衣の男はコーヒーの無くなったコップを持ちあげて見せた。
「そうだ、そして同時にそいつはあんたが望んだものだ」
きっと白衣の男の脳内で、コーヒーを飲む自分をイメージしたに違いない。
だからコーヒーが、あの机の上に突然出現した。
まさか能力影響下の人間も、俺と同じ事が出来るようになっているとは思わなかった。
いや、そもそも忘れていたんだから、そんなこと思う事も出来ていなかったか・・・
「あぁ、確かにコーヒーがあればなと思ったが」
「そいつが原因さ、ただし現実に起きている事じゃない」
そう現実に起きている事では無い。
能力影響下にいない第三者が、さっきの状況を見れば、パントマイムをやっているようにしか、見えていないだろう。
しかし逆に言えば、それだけ本物に近い幻想を、認識していると言う事だ。
「あんたの飲んだコーヒーは幻想、俺の能力影響下から離れればコップは消えるし、飲んだ感触も無くなるだろうな」
「・・・・・・規格外だな」
「おいおい、そんな事を言うな。まだ良心的だろ」
他の奴らと比べれば、まだまだ良心的だと思うね。ほんとに
例えば、トカゲとか、シャイで(ナイス)ガイな奴とか・・・うん、この話題は止めておこう。
「そういや自己紹介していないな、あんた名前は何て言うんだ?おっと俺に名は無いぞ、もう既に捨てたからな。いや、意味が無くなったが正しいのか?」
「最後の言葉が気になるが、まぁそうだな。俺は[削除済]だ。この場所で、主任をやっていた。今ではお前のせいで、この有様だがな。ぜひ■■とでも呼んでくれ」
露骨に強調したな、こいつ・・・
「へぇへぇ、わるぅございました。んで■■、これからどうするんだ」
「こいつ・・・はぁ、まぁいい。そうだな、外に出て他の支部との連絡手段を探さす事だな。ここは、辺境中の辺境、[削除済]に存在しているからな」
俺の情報が出ていかない様に施設は完全停止、機動の為の発電施設は崩壊し、生き残って使える予備バッテリーはもう僅か。精々記録しかできないパソコンで、記録を残すだけらしい。
今いるのは、地下130m地点の部屋だとのこと。
「・・・ちょっと失礼」
「おい、どこに行くんだ」
「能力影響下入った人間?が、今しがたこの上に」
俺はこれ以上の返答は聞かずに、飛び上がった。