1
「あの白チビはさあ、うちの隊四人がかりでの攻撃を一人で凌いだんだよ」
「ふうん。そうなのか」「だから戦ってみたかったんだよなあ」「確かにあいつはかなり強いぞ。なんせ私の後輩だからな」
C級の対戦ブース。
酒場は通信越しに米屋と喋りつつ手元の機械を操作し、彼に対戦を申し込む。空閑とやるはずだった米屋だが、残念ながらその望みは叶わず、なぜか酒場と対戦することになっていた。詳しいことは省くが、空閑はA級隊員
「十本勝負でいいのか?」
米屋が酒場に確認する。酒場がその形式で米屋に勝負を挑んだのだ。「ああ」と酒場。「いつも小南と十本でやっているからな」
「小南に鍛えられてんのか。じゃあ期待できるな」
「逆だ逆。私が小南を鍛えているんだよ」
「へえ。言うじゃん」
お互いに住宅地を模した仮想空間に転送される。転送位置は車道の真ん中。彼我の距離はおよそ三十メートル。酒場の得物はスコーピオンで、米屋の得物は弧月(槍)。ともに実力者なのは言うまでもないが、リーチでは圧倒的に米屋が有利。ただ、酒場は既にボーダー内でも屈指のスコーピオン使いになっている。
機械音声の「ランク外対戦十本勝負開始」という合図とともに酒場はゆったりと歩いて米屋との距離を詰め始める。米屋は軽く槍を構えて酒場を待った。
スコーピオンを使う攻撃手はほぼ例外なくスピード型。どこかで速度を上げて有利な位置取りを狙うはず——と米屋は読み、的中する。酒場は距離十五メートルほどで右に飛び、民家の塀を踏んで壁に着地し、跳ね返る。そのまま直線的に鋭く飛び込んでくると思いきや、踏み台にした民家の塀を使ってふわりと跳躍。切り揉み状に回転しながら空中からスコーピオンを伸ばして米屋の首を狙う。
塀を使った曲線的な動きに対応しそこねた米屋は反撃の機会を逸した。だが酒場の攻撃からは危なげなく身を守る。相手の武装がスコーピオン一本ということでシールドは使わず、身を引いて対応した。間合いを取られて困るのは酒場の方だ。地上に着地すると、またもや高く跳躍するフェイントをかけてから今度は低く斬り込む。このフェイントは米屋には通じず、攻撃の軌道上に槍の反撃が置かれる。酒場は攻撃を断念し、横にすれ違うことで攻撃を躱す。しっかりとコントロール可能なスピードで動けているようだ。
場所が入れ替わり、攻守も逆転する。米屋は高速で槍を突き出し、酒場の急所を連続で狙う。これを酒場は完全に受けきれず左肩を負傷。米屋の間合いから出ようと後退する。そこへ米屋は深く踏み込み、会心の一撃を入れる。右脇に深傷を負う酒場。反撃としてスコーピオンを振るい、米屋の脚を傷つけるも、致命傷には至らずトリオン体の中枢部分を抉られてダウンする。
「やられたぁ!」
ブースの黒いベッドにボスンと転送された酒場は、頭を抑えてのたうちまわる。「くそ、強いな。槍相手は戦いにくい……だがもう理解した」
「はっはっは。いーだろ、槍」
笑う米屋だが、内心では予想以上の酒場の実力に驚いていた。これが入隊一ヶ月の隊員の戦闘力か? 冗談キツイ。既にA級レベルだ。
二戦目、二人は民家を間に挟んだ位置に転送された。米屋は後退しつつ後ろの家の屋根に飛び乗る。すると酒場も米屋の前の民家の屋根に乗った。
お互い横方向に移動しつつ間合いをはかる。この時の主導権は米屋が握っている。得物の差だ。これがどうしても影響する。酒場が攻撃を食らわせるには、米屋の攻撃を掻い潜って間合いの内側に入る必要があった。
ガキンと刃をかち合わせてぶつかる。屋根という不安定な足場だが、お互いバランスを崩さず、しっかり刃に体重を乗せている。米屋が一歩後退し、二段突きを繰り出すと、酒場は攻撃を嫌って屋根から降りる。米屋も追って屋根から跳ぶ——そこにドンピシャでスコーピオンが投擲された。
「うおっ!?」
完全に反応が遅れたが、構えていた槍が運良くスコーピオンを弾く。「だめか」と酒場が呟いた。リーチの差を強引に潰そうとしたようだ——確かにそれは米屋の意識の外から攻撃できたが、失敗した。
スコーピオンの再生成まで数秒、酒場は丸腰だ。好きに叩ける。着地した米屋は猛然と酒場に突きを入れる——その突きを、酒場は完璧に読んでいた。
身を横にずらし、柄を掴む。米屋の引き手に合わせて力を込め、柄を捻り、米屋から槍を奪う。「トリガー臨時接続」「まじか」米屋はぼやき、距離を取ろうとしたが胸を槍に貫かれる。
投槍。
またしても酒場は武器を飛び道具として扱った。
「米屋ダウン」
機械音声が米屋の敗北を告げる。黒いベッドに落とされた米屋は「くあ〜っ」と唸った。悔しそうだが、口元は明らかに笑っている。楽しそうでもあった。
「最後の突きは軽率だったな。焦って飛び込んじまった」
「そうだな。おかげで大技が決まった」
通信越しに酒場の声が答える。口調こそ冷静だが、声色には隠しきれない嬉しさが乗っていた。
三戦目は米屋の勝ち。順当な経過を辿った順当な勝利のように見えた。酒場は一度も米屋を崩せず敗北した。しかし四戦目は酒場が勝つ。攻防の読み合いを酒場が制し、足で槍を蹴っ飛ばしてスコーピオンを差し込んだ。順当に進めば米屋が有利だが、一つ崩れれば酒場が勝利をものにする——そんな勝敗の法則が見えてきた。
五戦目はこれまでで最も白熱した攻防の末、酒場が勝った。やはり米屋の間合いの内側に入れたのが大きい。弾幕のような激しい槍の連撃を掻い潜り、脚に一発、次いで腕を斬り落とし、最期の足掻きとして米屋が放った槍の投擲も防ぎ、首を落として勝利した。酒場側も片腕と片手を失った薄氷の勝利だった。
六戦目は米屋が勝った。終始槍の間合いを堅持して、酒場を近づけさせなかった。最後の最後で米屋のフェイントにかかり、酒場は敗北した。米屋はこの戦いを無傷で制したが、「神経使わされてんな」と疲れ気味にぼやいた。
そこから二戦は立て続けに酒場が勝った。屋内戦に持ち込めたのが大きかった。九戦目に米屋が一戦取り返すが、十戦目はまたもや酒場が勝つ。トータルでは六対四となり、酒場の勝利となった。
「負ける気は更々なかったんだがなぁ」
対戦ブースから出てきた米屋は、いつものシニカルな笑みを湛えながらそう言った。米屋としては不本意な結果だろうが、酒場の実力を知る小南や空閑などからすれば、むしろ善戦した方だと言うだろう。
「私も負ける気などなかったさ」酒場は胸を張って言う。
「だろうな……。あんた——酒場さん? ものは相談なんだけど、もう十戦付き合ったりしてくれたりしない?」
「構わないぞ——ああ、ただちょっと待ってくれ。先にちょっと二、三戦、訓練生とランク戦やっていいか? もうすぐで正隊員に上がれそうなんだ」
2
三浦雄太が対戦ブースに来た時、そこは妙なざわめきに包まれていた。どうしたのだろうと辺りを見渡すと、知り合いを一人発見したので近寄る。
「
「三浦先輩! それがすげーんすよ!」小荒井は興奮した調子で説明する。「米屋先輩が訓練生とやって負けたんですよ!」
「ええ!?」あの米屋が!? 雄太は驚きを隠せない。米屋陽介といえばA級七位三輪隊のエース攻撃手だ。その実力はボーダーでも屈指である。それが訓練生に敗北した? どんな奇跡が起こった。
「で、その訓練生、ついさっきC級をごぼう抜きしてB級に上がったんです」
「何その人、カナダ人?」
「いや日本人だと思いますけど。いきなりどうしたんですか」
「ごめん、自分でもなんでカナダ人なんて言ったのかわからない……」
「そうですか——まあいいや。あれですあれ。あの人」
小荒井が指差した画面には二つの名前が表示されていた。どうやらこの二人が今五本先取をしているらしい。一方には米屋とある——小荒井は先ほど米屋が負けたと言っていた。では再戦中だろうか。もう一方の名前はなんだろうと視線を移した時、雄太は本日二度目のサプライズを経験した。
——酒場佳子。
「酒場さん!?」
酒場さん!? え? ホントにあのクラスメイトの酒場さん!? あの、最初転入して来た時はミステリアスな雰囲気で格好良い感じだったけど英語の時間にdangerousをダンゲロスと読んだことで面白ずっこけキャラが定着した酒場さん!?
「知り合いですか?」
「え、うん。……クラスメイト」
「マジすか!? え、じゃあオレちょっとあの人に挑戦したいんですけど、取り次ぎ頼めます?」
「え……」正直雄太は酒場とあまり接点がない。接点はないが、酒場は誰にも壁を作らず我をぶちまける性格だということは知っている。いきなり話しかけてもまあ大丈夫だろう——というような計算を一瞬行った後「いいよ」と言う。
「やった!」
小荒井が喜んでジャンプした直後、酒場と米屋の勝負がつく。勝者は米屋。五勝四敗という白熱したバトルだった。
「あーくそお! やられた!」
酒場は髪をわしゃわしゃとかき混ぜながら元気よくブースから飛び出て来た。「完っ全に裏をかかれた。うあー……」
「いやー、ようやっと決め台詞が言えたわ」と満足そうに言いながら、米屋も隣のブースから出てくる。米屋と言えば「……と、思うじゃん?」というセリフである。これが刺さるシチュエーションが試合の中で到来したらしい。酒場に合わせてオプショントリガー「幻踊」を使わない分、通常より裏をかく手数が少ないのが響いていた。
「あの、酒場さーん」
頭を掻き毟りすぎて山姥のような感じになっている酒場に、雄太は遠慮がちに声をかけた。「酒場さん?」
「ん? お、三浦くん。なんだこんなとこで、奇遇だな」
雄太に気づいた酒場は髪の中に手を入れたまま、でも手を動かすのはやめて雄太の方を見た。寸前までものすごく悔しがっていたはずが、今はけろっとしている。
「何か用か?」
「用っていうか……ええと、酒場さんと対戦したいって人がいるんだけど、どうかな?」
「対戦」と酒場は雄太の言葉を繰り返す。「おおいいぞいいぞ。やろう。誰だ?」
「オレです!」
小荒井は威勢よく手を挙げた。「小荒井
「よろしくっす」
酒場は真顔で挨拶を返した。
小荒井はスコーピオン一本しか持たない酒場に合わせて孤月一本で挑んだ。五本先取の対戦結果は5−0。圧巻であった。
「めちゃ強え!」
「うん。本当に強いね……」雄太は驚愕の感情をもってうなずく。まさか酒場が——美術の時間に最後の晩餐を描いたのは誰かと聞かれて、ベートーベンと答えた酒場さんがこんなに強いなんて。
「酒場先輩、そろそろオレにも稽古つけてよ」と、今度は緑川が酒場に勝負を申し込む。酒場はまた二つ返事で承諾し、お互いにスコーピオン一本のみで五本先取。これは5−2で酒場が勝利した。緑川がとったのは最初の一本と四本目。「うーん、勝てない……」と唸る緑川に、酒場は「お前は速いけどわかりやすんだ」と言葉をかけた。
「もっとフェイントとか緩急つけろってこと?」
「んん、まあそうだな。慣れられたのを見たら裏択をじゃんじゃか切っていけ——でもまあ、戦場で会う敵は大体一見さんだから、普通は初見殺し一個覚えていれば良いのだが」
酒場さんが緑川に助言をしている。あの酒場が——返された生物のテストをまじまじと眺めた後、「へえ、カメにも肺ってあるんだな」とかなんとか呟いていた酒場さんが。
「おー! なんか強ぇ新人がいるとか聞いたから来たけどやっぱ酒ちゃんじゃねーか!」
新たなるキャラクター——もとい新たなるクラスメイトが現れる。向こう側の通路からやって来た仁礼光が、辺り憚らず大声で酒場を呼んだ。
「あれヒカリ、なんだその格好。なんか頭良さそうだな」
「オペレーターの制服だよ。さっきまで仕事してたからさ。早いとこジャージになりたくてしょーがねー」
「ほほう、オペレーターの制服か。いいな。私もオペレーターになればそういう感じになるのか」
「やめとけやめとけオペなんて。こまっちいことしこたま覚えさせられんぞ。アタシでも音をあげかけたし」
「……おいヒカリ」と、それまでずっと光の横で黙っていたギザギザの青年が口を開く。「俺をここまで連れて来たワケをさっさと言え。んでふざけた理由なら帰る」
「あー忘れてた。酒ちゃん、こいつカゲな。ウチの隊長。酒ちゃんこいつと戦ってくれ」
「はァ!?」カゲと呼ばれたギザギザの青年——
「ふむ、全然構わないぞ。私は今ノリに乗っているのだ。さあ、どこからでもかかってこい!」
「……オイ、なんだあの変な女は」
「アタシの友達を変な女とか言うな。仕事中に敵が来ねえつまんねえってぼやいてたから連れて来てやったんだよ。心配すんなって、酒ちゃん強いに決まってるから」
「帰る」
「おいちょっと。カーゲっ、おい!」
「なんだって防衛任務明けに模擬戦なんかやんなきゃなんねーんだ。こっちは疲れてんだよ」
そう言って広間から立ち去ろうとする影浦だったが、酒場が得意げに言い放ったセリフ「なんだ私の実力に恐れをなしたか」を聞いてピタリと動きを止める。
「テメー今なんつった」
「『なんだ私の実力に恐れをなしたか』と言った」
「ふざけてんのか?」
「私はいつだって本気で生きている。で、どうした? やるのかやらんのか」
影浦が酒場を睨むと、酒場はふふんと笑みを浮かべて余裕の表情で影浦を見つめ返す。影浦はふーっと大きなため息を吐くと、気怠げに踵を返して対戦ブースに向かう。
「気が変わった。お望みどおりバラしてやるよ」
3
スコーピオンは孤月と比べて、軽くて持ち回りが便利という以外に「自在に刃の形を変えられる」という利点がある。普通の短剣、ナイフとして使うだけでなく、小型の刺又のようにして相手の刃を絡めたり、鞭のように伸ばしたり、腕や足から生やしたりすることが可能な武器なのだ。この特性の理解度——スコーピオン一般の熟練度において、酒場はどうやっても影浦に劣る。
「酒場ダウン」
初戦、伸びる刃によって胸を突かれ、仮想空間から対戦ブースのベッドに投げ落とされる酒場。「……強いな」と静かに呟いた。
一方、対戦相手である影浦は奇妙な感覚に陥って首を捻っていた。
「なんだアイツ……?」
酒場の攻撃には、意志が感じられない。
というのは酒場にやる気がないとかそういう話ではなく、影浦のサイドエフェクトに起因する感想だった。「感情受信体質」と呼ばれる特異な体を持つ影浦は、人の感情の乗った視線を感じることができる。つまり戦闘時には、達人が「気配」を察知して敵の攻撃を躱すのと同じようなことができる。攻撃より先に攻撃の感情を感じ取り、的確に防御して反撃。それが影浦の強さの一因なのだ。
しかしこの変な新人は、刃に一切の感情を乗せることなく攻撃を仕掛けてくる。
奇怪だ。そして避けにくいことこの上ない。
「
第二戦が始まると、酒場は一気に影浦との距離を詰めた。スコーピオンの扱いとそれによる間合い管理のノウハウで劣るのなら、そもそも間合い管理をしなければ良い、という決断に踏み切ったらしい。超近距離でのブレードによる斬り合いならば酒場の方に一日の長があるとみたのか。
だがこの試合も影浦が制する。単純な一対一の腕前において、影浦はボータートップクラス——いや、ともすれば総合一位の太刀川すら食うかもしれない。戦闘センスが飛び抜けているのだ。
第三戦、酒場はまたもや影浦と距離を詰めて待ったなしの剣戟を繰り広げる。お互い一歩も引かず、かと言ってお互い一撃も当たらない不思議な時間が斬り結んでから八秒ほど続いた。埒が明かないと影浦が一歩距離を取ろうとした時、酒場がひゅかかっと片手で短く二段突きを繰り出す。避けようとしてさらに後ろに下がったところに合わせて踏み込む。影浦が小指の腹から出したブレードで横に払うと、酒場はそれを跳んで躱し、空中からスコーピオンを投げて影浦の腹を抉った。
「トリオン供給機関破損。影浦ダウン」
「うおおスゲエ! カゲから一本取った!」
両手を上げてはしゃぐのはブース前の観戦スペースで席に座って大画面を観ていた光。その横に(なぜか)座らされている雄太も、改めて酒場の強さに目を見張る。まさか影浦ともまともに戦えるとは。
「捉えた」
にいっと笑った酒場は続く四戦目、またしても影浦に勝利する。今度はさらに距離を詰め、スコーピオンの斬り合いというよりはもはや殴り合いつかみ合いの喧嘩に持ち込んで影浦を転ばし、喉元に刃をブッ刺した。「ヤロウ……!」という影浦の怒りが爆発し、五戦目は影浦が取った。
「にしてもアイツ……」
六戦目も連続して勝利した影浦には、やはり酒場と戦う時に奇妙な感覚があった。攻撃に感情が乗っていないだけではない。なんと言うかこう、普通の攻撃手とは何かが違うのだ。こうやって戦っていると、強いのはわかるが、それ以上に、本職の攻撃手ではないということがうっすらと読み取れてくる。
七戦目、酒場は再びスコーピオンの投擲による奇襲を狙うが、影浦はこれに完璧に対応。一点読みが外れ、酒場は敢えなく両断された。影浦の勝ち越しである。この後酒場が大いに悔しがったことは言うまでもない。「ぐおお負けた! くそお!」とのたうちまわる酒場を見て、雄太は「ああ、確かに酒場さんだ。間違いない」と安堵したという。
「——な、酒ちゃん強かっただろ?」
隊室への帰り道、光はゴキゲンで何度もそう言って影浦の肩を叩いてきた。「いい加減にしろ」と言っても「いやー、あのスコーピオン投げはやばかったわ」などとしみじみ感想を語る始末。いや、確かに一度目、あのタイミングでのスコーピオン投擲は完全に意表を突かれたが。
「アイツ、何者だ?」
「アタシのクラスメイトだよ。十月ぐらいに転入してきたんだ」
転入生。ということは三門の出身ではないのか。「どうした? 興味出たか?」と嬉しそうに追求してくる光を押し返し「ちげーよ」と言う。そう言いながら、しかし向こうが挑んでくるのならば受けて立ってやるのもやぶさかではない——影浦はそう思っていた。