レベルアップで世界最強   作:奈落兎

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奈落の吸血姫

 この迷宮は、錬成師からすれば宝の山だ。様々な鉱石があり、様々な武器を生み出せる。後恵里やハジメにとっては更に宝の山。様々な技能/スキルが手に入った。

 因みに気配を消すだけの鮫から得たスキルは『隠密』。姿も匂いも魔力も気配も消せる。恵里は魂を感知するから直ぐに解るそうだ。

 現在ハジメが得たスキルは

 

・暗視

・気配感知

・石化の魔眼

・隠密

・毒痰

・遠見

・魔力感知

・潜水

・毒血液

・強酸

・鎌鼬

・触爆

・土中遊泳

 

 ハジメはルーン石が出るまで、恵里は成長が止まるまで一つの階層にとどまる。恵里の銃の腕も大分上達した。

 二人の背後には奈落の魔物達がゾロゾロついてくる。もちろん全て死体だ。水棲のモンスターも使いみちがあるかもと死体をハジメの『インベントリ』に入れてある。

 そして、ハジメと恵里が落ちた階層から50層目。

 

「扉だね」

 

 そこには扉があった。

 脇道の突き当りにある空けた場所には高さ三メートルの装飾された荘厳な両開きの扉が有り、その扉の脇には二対の一つ目巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座していたのだ。

 扉に近づけば2つの窪みがある魔法陣が見えた。ハジメは父と手伝いでプログラミングなどを行うこともあり、『知能』の指数も上げたことでこの世界の魔法陣に描かれたどの部位が何を意味するのかを解る程度には知識をためた。そのハジメをして、目の前の魔法陣の性質がわからない。

 本質は変わらないだろうからもう少し時間をかければ解るかもしれないが、おそらくかなり古い魔法陣だ。

 

「開ける?」

「もちろん」

「楽しみだねえ。扉の先にあるのは希望か、絶望か。まあ50階層だし中ボスかもね」

 

 恵里はその前に、と石像2つに向かって杖を振るう。 闇色のオーラが溢れ恵里に吸収された。

 

「これでよし」

 

 どうやら生物と鉱石が合体し、普段は石化して休眠しているようだが、動けないのをいい事に魔力と魂魄を吸い取る恵里。

 魂魄魔法で新たな魂を作り定着させると石から生物に戻り恵里に跪いた。

 それを確認し、ハジメが扉を力の限り殴ると殴った箇所が完全に吹き飛び扉全体にも蜘蛛の巣状の亀裂が走り崩れていく。

 

「ケホケホ………豪快だなあ」

 

 立ち上る砂煙に咳き込みながら周囲の死体に命じ風を起こさせる恵里。発光器を持った死体達が薄暗い扉の向こうの広間を照らそうとするが必要ないと止める。

 自立思考が出来るのだから大した魔法だ、魂魄魔法というのは。と、感心しながら瓦礫の上を歩きながら中に入る。

 中は、聖教教会の大神殿で見た大理石のように艶やかな石造りで出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。そして部屋の中央付近に巨大な立方体の石が置かれており、部屋に差し込んだ光に反射して、つるりとした光沢を放っている

 その立方体を注視していたハジメは、何か光るものが立方体の前面の中央辺りから生えているのに気がついた。

 

「………誰?」

 

 それは人間だった。あるいは人の形をした何か。

 金糸のような金髪が垂れ下がり顔を隠して居ても美しいと思える顔はやつれており、弱々しい赤い瞳が除く。

 年は12か13の少女だ。

 恵里はジッと眺めた後、よし、と呟く。

 

「殺そう」

「えっ!?」

「おい……」

 

 恵里の声に少女がビクリと震え、続いて久々に声を出したのかエホエホと咳き込む。

 

「ま、待って! ……お願い! ……助けて……」

「もちろん断るぜ。君を助けたところで僕等になんのメリットがあるって言うのさ。第一こんなところで封印されている奴が危険人物でないとも限らない」

 

 何、痛いのは一瞬だよ。と爪熊の死体を一歩前に歩かせる恵里に、少女は恐怖の視線を向ける。もう泣きそうな表情で必死に声を張り上げてた。

 

「ちがう! ケホッ……私、悪くない! ……待って! 私……」

 

 知った事かよと恵里が爪熊の爪に風を纏わせ、振り上げ、ハジメが仕方ないとばかりに止めようと動く。が──

 

「裏切られただけ!」

「待て──」

 

 ピタリと少女の首の皮を薄く斬り爪が止まる。ハジメも後少しで爪熊の腕を切り裂く所だった短刀を止めた。

 

「……………裏切られた………裏切られた、かぁ」

 

 恵里の脳裏に浮かぶのは、父の死後暴力を振るうようになった母。そして、父を忘れたかのように連れてこられた男に、本当の意味で助けてくれなかった同級生。

 

「…………………話そうか。僕が性急過ぎた。僕らは言葉が通じる人間だったね」

 

 さあ話せ、と恵里が笑顔で言ってくる。少女はゴクリとツバを飲み込んだ。

 

「私、先祖返りの吸血鬼……すごい力持ってる……だから国の皆のために頑張った。でも……ある日……家臣の皆……お前はもう必要ないって……おじ様……これからは自分が王だって……私……それでもよかった……でも、私、すごい力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」

 

 枯れた喉で必死にポツリポツリと語る女の子。話を聞きながら恵里は呻いた。家族に裏切られ、捨てられたと言うのに既視感が湧いたのだろう。しかし、ところどころ気になるワードがあるので、湧き上がるなんとも言えない複雑な気持ちを抑えながら、恵里は尋ねた。

 

「君は、どっかの国の王族だったのかい?」

「……」

 

 無言で頷く少女に、そっか、と返し一度目をつぶる。

 

「殺せないっていうのは?」

「……勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る」

「……それはすごいね。けど、君が怪しくなった」

「な、なんで…………!? エホ、ケホ!」

「だって、君の傷治ってないぜ? 嘘は良くないな」

 

 恵里がそう言って少女の首元を指で撫でる。その指には血が付着していた。先程爪熊が斬った傷だ。まだ傷は塞がっていない。

 

「固有、魔法……だから。この石に、魔力吸われて………生命維持しか、出来ない」

「つまり君を殺せる方法があるってことだろ? なのに封印?」

「それは、だけど………おじ様は……そう、いって………」

 

 恵里の目がスッと細くなる。聡明な彼女の事だ。気付いたのだろう。故にその瞳に宿る色は、嫉妬だ。

 

「ふーん。でも、殺してその魂を食べた方が僕等としては有意義だなあ」

「恵里………」

「っ…………解ってるよ」

 

 ハジメの言葉に不貞腐れたようにそっぽを向く恵里。ハジメがそんな彼女の頭を撫でれば頬を赤く染め、顔を隠すように抱き着いてくる。

 

「んじゃ、少しじっとしてろ」

 

 ハジメがそう言って立方体に触れる。黒い魔力の紫電が溢れ、立方体に魔力が注がれていく。

 

「っ……こいつは」

 

 少女の言葉からてっきり魔力は吸収されるのかと思いきや、ハジメの魔力に抵抗するように弾く立方体。あくまで吸うのは少女の魔力だけという事だろう。

 が、ハジメの魔力量はトータス同様の表記ではない。おそらく目の前の少女の最高値よりも高い。やがて魔力が押し負け、立方体はドロリと崩れた。

 少女の体が地面に落ちる。

 

「これ着てろ」

 

 ストアから適当に外套を買う。防御力補助も何もない種類としてはガラクタ扱いだが裸よりはマシだろう。

 

「………ありがとう」

 

 と、少女がハジメの手を握る。恵里がジッとその少女の手を見たので離すと「あ…」と切ない声を上げた。

 

「……名前、なに?」

「南雲ハジメだ」

「僕は中村恵里だ…………」

「お前は?」

 

 「ハジメ、恵里」と二人の名前を口ずさむ少女は、名を聞かれ暫く考えたあと顔を上げる。

 

「……名前、付けて」

「は? 付けるってなんだ。まさか忘れたとか?」

 

 長い間幽閉されていたのならあり得ると聞いてみるハジメだったが、女の子はふるふると首を振る。

 

「もう、前の名前はいらない。……ハジメの付けた名前がいい」

「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダー────」

「待った待った」

 

 某金髪ロリババア吸血鬼の名前をつけようとした恵里にハジメが呆れたように止める。そして、改めて少女の容姿を見る。

 

「………んじゃ、ユエで」

「ユエ?」

「ああ、ユエって言うのはな、俺達の故郷で〝月〟を表すんだよ。最初、この部屋に入ったとき、お前のその金色の髪とか紅い眼が夜に浮かぶ月みたいに見えたんでな……どうだ?」

「……んっ。今日からユエ。ありがとう」

 

 少女、改めユエがそう言って微笑むと、恵里は上に目を向ける。

 

「ハジメ、来るよ」

「おう。ユエを頼む」

「………………はいはい」

 

 恵里は一瞬嫌そうな顔をしてユエを俵担ぎしその場から飛のく。困惑するユエの視界の中、蠍のような魔物が降ってくるのが映る。

 その魔物は体長五メートル程、四本の長い腕に巨大なハサミを持ち、八本の足をわしゃわしゃと動かしている。そして二本の尻尾の先端には鋭い針がついていた。

 

「ハジメぇ!」

 

 ユエが叫び恵里から飛び降りようとするが恵里の力の方が圧倒的に上だ。

 

「はな、して! ハジメが………助けなきゃ!」

「助ける? 君に何が出来るって言うのさ」

「っ! 恵里が、血をくれれば……」

「それに、もう終わる」

「え───」

 

 次の瞬間、バチィ! と雷光が迸る。発生源は蠍モドキ…………の下。目を凝らすと土煙の中に人影が佇んでいた。

 

「キシィィィィィィッ!?」

「なかなか頑丈だな………」

 

 紫電を纏ったハジメはそう呟くと拳を握る。

 

「吹き飛べ」

「─────!?」

 

 ドガァァァァンッ!! と爆音が響き蠍モドキの体が浮かび上がる。とある階層で蜂型の魔物が持っていた固有スキルで、体に何か触れた瞬間爆発を起こすというもの。

 蜂は針を打ち出していたが、ハジメは打ち出せるものは無いのでこういった形で扱えるようになった。因みに、実はダメージは返ってくる。ハジメの耐久値が高く余程の威力を出さない限りはノーダメージではあるが。

 爆発の衝撃で内臓が破裂したのか、蠍モドキはひっくり返ったまま泡を吹きピクピク痙攣する。恵里がユエを降ろし、蠍モドキに近づき触れると黒いオーラが溢れ出し吸い込まれ、痙攣すら止まる。

 そのまま指で軽く蠍モドキを撫でると起き上がり、恵里に跪いた。

 

「んじゃ、お願いねハジメ」

「へいへい」

 

 一応は死体扱いなのでインベントリにしまえる。ハジメは蠍モドキをインベントリの中にしまい、恵里と共にユエに振り返る。

 

「……………貴方達、何………」

「「カップル」」

 

 

 

レベルがアップしました!

 

    【 お 知 ら せ 】

『プレイヤー』が要求レベルに到達しました

 

   『クエスト案内』

『転職クエスト』が届きました

 

 

 

名前∶南雲 ハジメ  レベル∶40

職業∶なし      疲労度∶0

称号∶竜殺し(他3)

 

HP∶11390

 ──

MP∶8960

────────────────

筋力∶535 体力∶535

速度∶535 知能∶460

感覚∶452

────────────────

   分配可能ポイント∶0




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