レベルアップで世界最強 作:奈落兎
この世界はその昔から種族間同士で争いが絶えない。
まあ人間なんて肌の色や言語の違いはもちろん何なら容姿が醜いというだけで差別する人種だ。身体的特徴が異なればそれだけ戦争も置きやすい。
だが、それでも戦争が長続きしたのは神の仕業だという。各々の神は他種族、他神を神敵とし、神と奇跡に魅せられた者達はそんな神敵を滅ぼさんと躍起になる。
しかし実際は神々はそんな者達を見ながらゲームのように楽しんでいるのだとか。
そんな神々を討つべく立ち上がったのが解放者。オスカーを始め、七人の神代魔法使いに一人の『プレイヤー』が中心メンバーだったのだとか。
そのプレイヤーはハジメのように『強者を目指して』───デイリークエストがなかったらしく能力値はハジメより低かったのだとか。
それでも昇華魔法という神代魔法などと組み合わせ強化し強くなるも、解放者についた者達と神を信仰する者達、人同士の争いに心を痛め自らの命を持ってその戦争を止めたそうだ。
「無責任だね。その結果がさらに数百数千年の神の統治だ」
『返す言葉もないね。でも、目先の者を見捨てて、その先の幸福だけ考えれば、僕達はきっとその先も全てを犠牲にするようになった。最終的な結果のみを求める事になってしまった』
恵里の言葉にオスカーはそう返す。彼とて思うところが無かったわけではない。人々の為に闘おうとした彼女が、人々同士の争いを止める為に、敵に回った人々まで救おうと命を捨てたのだ。憎みもした。だが、それでも闘いが止まり、あの時、あの時代の死者が減ったのは事実なのだ。
「ま、僕はそれを無責任だと思いこそすれど、責める気はないよ。誰が死のうが、結局は僕等にとって他人だ。
問題があるとすれば、ハジメが神と戦う選択をした場合神が似たような手を使う可能性もあって、ハジメは頭が良いから今も未来も天秤に掛けて、片方をとっても後悔してしまう事だ」
まあ、十中八九神と戦うだろう。そもそも神がどういった基準であのクラス………厳密には天之河を選んだのか知らないが、一度目をつけた以上仮令戻ったって何度でも召喚される可能性がある。
それ以前にハジメは人を殺せる覚悟は出来るかもしれないが見捨てる覚悟は少ないだろう。
例えばその相手が『これは俺達の戦いだ! 後から来た奴が邪魔すんな!』と怪物に挑んだらハジメも手は出さな…………いや、出すな。絶対出す。死ぬギリギリではあろうが助ける。
そういうハジメ相手に神の手はそれなりに有効だろう。
オスカー曰く『プレイヤー』は強くなるほどそういった殺人に関する忌避感を薄れさせるとは言うが、それは『システム』的に
「僕と見ず知らずの誰か、どっちが大切なんだろうね」
「きっとそれなら恵里を選ぶ……」
「そして後悔するんだろ。僕を前にしながら、顔も知らぬ見捨てた誰かを常に考える…………ああ、嫌だ嫌だ。そんなの耐えられない」
ユエの言葉に恵里は自分を選んでくれた後のハジメを想像し顔をしかめる。
いっそ弱いまま盛大に裏切られば性格が作り直されたかもしれないが、それでは恵里が好きになったハジメでは無くなる。
見ず知らずの誰かの為に動ける。それは天之河と同じだがちゃんと救おうと考え、その結果起きた不幸にも目を向け後悔できるハジメが好きなのだ。
「だから結局、ハジメの為に神を殺さなきゃいけない。まあ、お人好しのハジメでも、この世界の長い歴史で起きた差別までは、この世界の人達で何とかしろと考えるだろうから神殺しまでだけどね」
『ああ、そうだね。異世界の人間に、この世界の命運を任せてすまない』
「そう言えばハジメは?」
デイリークエストには隠し要素があった。
実はこれ、ノルマを2倍こなすと一度だけ特別な『ランダムボックス』が貰えるのだ。
『祝福されたランダムボックス』と『呪われたランダムボックス』の何方か1つ。ハジメは両親と相談し、手に入れたのは『祝福されたランダムボックス』。
『プレイヤーが望むアイテムが支給される』というそれは、確かに強くなると決めたハジメに必要なものだった。
【アイテム∶冥府の鍵】 入手難易度∶S 種類∶鍵
ダンジョン∶冥府の鍵です オルクス200階層で使用できます |
使用しなかった理由は入手難易度からしてダンジョン難易度Sという高レベルダンジョンである事と、場所が解らなかったこと。
今は職業も手に入れこの世界でだいぶレベルアップした。故に挑む準備は整った。
「あ、ここに居たんだ」
と、背後から声をかけられる。恵里だ。
「………? どうかしたの?」
「ちょっと挑んでくる」
「……………そう」
その言葉に、恵里は納得したように呟く。
「………今度は言ってくれたんだね」
「まだ根に持ってる?」
「もちろん」
「そうか………」
「…………………」
「………………」
暫く無言な時間が続く。先に口を開いたのは恵里だった。
「行かないで、って言ったらどうする?」
「行かない」
「でも、その結果この先何かに失敗すれば、挑んでおけば良かったって思うんだろう?」
否定は出来ない。だから黙っていると、恵里はため息を吐く。
「良いよ、行って来たまえ」
「良いのか?」
「やるべき事をやらず失敗して後悔するより、やれる事は全部やって失敗する方がショックは少ないだろう?」
それはそうかも知れないが失敗前提で話を勧めないでほしい。
「………ありがとな」
「せいぜい気をつけて。帰ってきたら、キスしてあげる」
「なら、ますます頑張んねえとな」
ハジメはそう言うと鍵を使用し、光のゲートを潜った。
ゲートを抜けるとそこは薄暗い洞窟の中だった。
緑鉱石ではなく、青白く光る水晶が幾つも生え洞窟内を照らしている。ふと振り返ると、ゲートが塞がれていなかった。このダンジョンは出入りが可能なようだ。そこは、かなり安心できる。
「………向こうか」
奥から強い気配を感じる。ハジメはその気配に向かって歩き出した。
暫く進むと開けた場所に出る。そこでは水晶が整理されているのか規則的に並び、部屋の奥には巨大な扉………門が見える。
その門の前に立つ人影。
文字通りの影があった。光を全て飲み込むかのような漆黒の衣を纏い、顔がある場所からは黒い靄が溢れている。エリヘルよりも更に影のようなモンスターはハジメを認識すると己の影から黒い靄を溢れ出させ鎌を生み出す。
| 【冥王の影 テッタレス】 |
ヒュドラが表ボス、オスカーが裏ボスとするなら、さしずめ隠しボスと行ったところだろう。肌がひりつく濃密な殺気を前に、ハジメは攻撃に備え【影の衣】を纏い、己の得物を構えた。
オスカー・オルクス
最初は完全支配しようとしたが恵里をして抵抗力が強く自由意志を残すことに加え幾つか条件を受け入れる事でようやく縛ることが出来た魂の持ち主。
解放者の一人。『縛り』の一つとして迷宮攻略には力を貸さないので迷宮に挑むための条件も教えない。
奈落編の裏ボス
テッタレス
種族名がハジメの職業名と同じモンスター。
奈落編の隠しボス。
感想お待ちしております