レベルアップで世界最強 作:奈落兎
先に動いたのはテッタレス。
近接系戦闘職持ちの技能によくある『縮地』を思わせる速度でハジメに迫り鎌を振るう。
「────!」
速い、が得物の間合いの関係上ハジメの少し前で止まってから攻撃動作に移ったのでハジメの速度なら回避───
「っ!?」
直感。ハジメは後退ではなく、その場でしゃがむ。ハジメの頭上を大鎌の
もしあのまま下がれば鎌の刃がハジメを襲っていただろう。
「とっ、ちぃ!」
振り抜いた鎌を、慣性など力で無視して振り上げたテッタレスはそのまま振り下ろす。横に飛び退いたハジメが居た場所に鎌の
鎌の長さが変わった。間合いが掴みにくい。
だが、此方の間合いに無理矢理にでも入れれば此方の物だ。
──影渡り
幸いにも光量が多く影が出来ている。即座に影を通して転移しアイスタガーで斬りつけるがギィン! と金属音が鳴り響く。
「───!?」
『────』
テッタレスが持つのは2本の短剣。柄も刀身も全てが漆黒の短剣。どこから現れた!?
「────!」
ギギギィン! ガィン! と二人の間で火花が散る。ハジメの速度に完全に対応している。もっと速く、と『疾走』を発動しようとして、ハジメの脚を何かが貫いた。
「ぐ!?」
動きが止まったハジメに向かって振られる短剣。ハジメは影渡りで岩の影に転移し回避すると錬成で岩を無数の槍に変え放つ。それらはテッタレスの足元から湧き出るように現れた無数の黒い棘に弾かれる。
「………影か」
棘も、武器も、その素材はテッタレスの影のようだ。恐らく影を操るスキル。と、テッタレスがスッとハジメを………より正確にはハジメの纏う【影の衣】を指差す。
「───!?」
オスカー戦の経験からテッタレスの指先からハジメの纏う【影の衣】に伸びた細い糸に気付き慌ててスキルを解除しようとするも消えなかった。即座に脱ぎ捨てると同時に【影の衣】の内部が黒い棘で満たされる。あのまま着ていたらアイアンメイデンも真っ青な事になっていた。と、ハジメが顔を青くする中テッタレスが接近する。武器は双剣。
影の攻撃はテッタレスの自身の影から伸びるように行われる。近接戦に持ち込み、足元から襲うのが有効と判断したのだろう。
ハジメは少しでも予兆を感じ取れるように【天歩】の派生スキル、空中に立つ【空力】を使い地面より少し高い位置に立つ。
魔力は少しずつ消費されていくが影の僅かな揺らめきから攻撃を察知できる。
下から伸びてくる影の槍を後ろに大きく飛びかわしたハジメにテッタレスは双剣を無形態に戻しすぐ様鎌に作り変え振るう。
しゃがんで避けようにもテッタレスの影はハジメの足元まで伸び既に無数の刃の先端を生やしている。
──土中遊泳
霊気に満たされた地面です 透過できません |
「!?」
後ろに大きく飛びそのまま壁に潜ろうとしたが、発動に失敗する。僅かな硬直。されど己の実力を凌駕してる相手には大きな隙。
「ぐぅ!!」
大鎌の刃を逆手に構えた左のアイスタガーで受け止める。孤を描いた刃をガリガリ音を立てながら滑ったアイスタガーは柄にぶつかり、勢いの乗ったテッタレスの『筋力』をハジメの腕に伝える。
「──ぎっ!?」
その勢いに乗り跳ぼうとすれば鎌の一部が変形して左手を貫く。変形は続く。刃が生き物の様に曲がりながらハジメの首を狙う。影渡りを使おうとしたが間に合わないと判断したハジメは腕を切り落とし回避してから移動するが、移動してすぐテッタレスの追撃、影の杭が迫る。
ハジメは地面を錬成で隆起させ影を区切る。地面ごと上に持ち上げられた影から伸びる杭は見当違いな方向に伸びた。
「報酬1、状態の回復」
ハジメはデイリークエストの報酬を使い傷を癒やすと壁を蹴り破片を飛ばす。破片はテッタレスに向かうも、その破片の隙間を縫うように黒い矢が迫りハジメは上に跳ぶ。
──アーティファクト 錬鎖
オスカー特製のアーティファクトの一つ、鎖を袖口から数本飛ばすハジメ。先端が杭になっている鎖は地面に突き刺さると同時に弓を構えていたテッタレスの周囲の地面が盛り上がり鰐の顎のようにテッタレスを挟む。
『─────!』
が、内部から破壊される。意趣返しとでも言うかのようにテッタレスの周囲で蠢く影の鎖がハジメに向かうが天歩を利用し空中移動すると背後から斬りかかる。
鎌首をもたげた影に防がれる。
ハジメはさきほど切り落としたことでナイフを落とした左手に魔力を込める。
──風爪+飛爪!
爪から斬撃を飛ばす飛爪と風を纏い爪の切れ味を増す風爪の合わせ技。左手による攻撃手段など打撃だけと油断していたテッタレスを深く切り裂く。
『─────!』
テッタレスは左腕が切り落とされ、しかし影を操り見た目だけ修復すると即座に向かってくる。ハジメは『豪脚』を使いテッタレスを蹴り飛ばし。
そのまま地に足が付く前に猛攻を開始する。
ハジメの本来のスタイルである速度重視の連撃ではなく、威力重視の攻撃を食らわせる。
テッタレスの影から直接放つ攻撃は僅かな硬直がある。1秒にも満たない硬直。ハジメとてその隙を責めるのは難しい。ならば、その場に留めさせない。
『─────!』
『速度』も『筋力』も、本来ならテッタレスがハジメに勝る。それでも押されるのは傷によるものと、気迫の差。
「こちとらキスが待ってんだよ。こんなところで死ねるか!」
本物の腕より力と反応速度で劣る影の左腕を破壊し、右腕に風爪を叩き込む。
『────!!』
そのまま武器を捨て、殴る。ちまちま切るより此方のほうが有効と判断した。
テッタレスが纏うのもまた【影の衣】なのだろう。物理耐性30%。威力は3割減だが、確実に効いている。
テッタレスはズタズタに引き裂かれた右腕を影で縛り無理矢理動す。骨組みがあるぶん左腕より操作が速い!
「─────!」
『─────!』
両者の拳が同時に相手のほおにめり込む。仰け反る両者は、しかしすぐに大勢を立て直しテッタレスは再び短剣を構えハジメは拳を握る。
「ハァ───ハァ、ふう………げほ、はあぁ………」
ドサリと腰を落とし大きく息を吸うハジメ。その体には無数の刺突傷や切り傷があった。
そんなハジメの前には頭部が殴り潰されたテッタレスの死骸。死んでる、よな?
| レベルがアップしました! レベルがアップしました! レベルがアップしました! |
死んだっぽい。ならばそろそろアイテムの光が出るか、とハジメがポーションを飲み立ち上がろうとした時だった。
「な………」
テッタレスの死体の輪郭が溶けるように崩れ、黒い靄となりハジメを覆う。死後の呪い系統か!? と警戒するハジメが『システム』の報告を待つと
| 職業専用スキルを習得しました |
「………あ?」
転職した時のように、【職業専用スキル】を得たというメッセージが来た。
【スキル∶影の仕立て】 職業専用スキル 必要マナ なし
冥王より貴方に与えられた権限です 影を操り武器、防具などに変えられます 位階が下の【死神】の【影の衣】を 操作可能 【影の衣】作成権限 |
これは、テッタレスが使っていた技か。ひょっとして、設定的には【影の衣】を作ったのはテッタレスだったのだろうか?
【スキル∶冥府の門番】 職業専用スキル 必要マナ なし
冥王より貴方に与えられた権限です 冥府の門を開ける権限です 冥府の門を通る際、冥府内で訪れた 場所に自由に転移できます |
もう一つは冥府探索に役立ちそうだ。冥府の門とはアレのことだろう。と、考え込んでいるとハジメは口の中に何か違和感を覚える。何かが口の中にあるような………?
暫くしたら消えた。不思議に思い、口を開け鏡を取り出す。
「あんらこれ………」
舌には『Ⅳ』と言う文字が書かれていた。
因みにハジメは【冥王の影】 ペンテ
今回の戦いで 【冥王の影】 テッタレス・ペンテ
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