レベルアップで世界最強   作:奈落兎

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福袋ガチャでマイフレンドが7人来た。ロムルスより驚いた


幕間 帝国最強と勇者一行最強

 対峙する雫とエリーゼ。

 雫の得物は無銘『冥雲』。エリーゼが構えるのは細い剣だ。

 

「…………?」

 

 既視感。

 エリーゼの構えを見て、雫は何処か懐かしい感覚を覚える。剣の構えといえば同門の光輝はどうかと見れば特に気づいた様子はない。

 

「…………やはり」

「っ………」

 

 と、エリーゼが声をかけてきたので意識を戻す。模擬戦とはいえ相手から意識を割いてしまった事を反省する。

 

「似ていますね」

「………? …………!」

 

 その言葉に、気づく。既視感の正体。

 エリーゼの構えは、似てるのだ。日本の剣道家………いや、どちらかと言うなら剣術家か?

 刀を扱う前提、重さで斬るのではなく、斬れ味で斬る構えに良く似ている。

 

「行きます」

 

 その言葉と同時にエリーゼが踏み込む。魔力の流れは感じなかった。純粋なる体術。だが、速い。

 振り下ろされた剣はまっすぐ刃が立てられており、雫は『冥雲』の刃を立て受け止める。

 刀は横からの衝撃に弱い。この世界にしかない素材で作られた『冥雲』は横からの力にもある程度耐えるが、エリーゼの力を横から受けるべきでは無いと判断。

 そのまま数合打ち合う。剣戟の音が響き、受けきれなかった剣に皮膚を浅く切り裂かれる。しかしそれは雫のみだ。

 

「───っ」

 

 強い。

 技術、基礎能力、精神力。その全てが雫を上回る。七罪を前にしたかのような圧迫感。これが帝国最強の聖人。

 

「貴女は、違いますね」

「?」

「基礎は、2ヶ月以上前からあったものです。他の勇者の仲間達とは違う」

「………基礎なら、光輝にもあったはずよ」

「ええ。ですが、あれは心構えがまるで出来ていない。あれでは基礎を実践で活かせるわけもなく………活かせないのならば無いも同然です」

 

 皇帝と言い皇女と言い、どうやら帝国にとって世界を救う勇者の評価は低いらしい。

 

「さて、それではそろそろ」

「ええ……」

「「聖人らしく、戦うとしましょう」」

 

 瞬間、両者から魔力が暴風となって吹き荒れる。それもすぐにやんだ。活性化した魔力は両者の内にて練られ、身体能力を底上げする。

 

「───!」

「…………」

 

 次の瞬間二人が消えた。

 少なくともその場にいる者達はガハルドを除き、そうとしか判断できなかった。

 剣戟の音が響く。時折残像が見えるばかりで二人の姿は捉えられず、火花と砂埃が舞うばかり。

 

──八重樫流 山嵐

 

「───っ」

 

 鞘と刀を瞬時に持ち替えるフェイントにも、あっさり反応するエリーゼ。漸く二人の剣戟が一旦止まる。お互いに距離を取り、エリーゼは己の剣に顔を向けた後雫に向ける。

 やはり、強い。恐らく本気を出していない。

 雫が互角に戦えているのは彼女の手加減と、我流ゆえの僅かな拙さ、そして彼女の理想とする戦い方に剣があっていないゆえだ。なるほど、ハジメを欲しがる訳だ。理由は解った。だが、絶対に渡すつもりはない。

 

「………貴女の剣」

「?」

「やはり、私の理想通りです。それを扱う、あなたの技もまた」

 

 そう言ってエリーゼは………()()()()

 

「───!?」

 

 その目に見つめられ、全てを見透かされるような感覚を覚える皮膚が泡立つ。

 空を思わせる蒼い瞳はまっすぐ雫を捉え、しかしすぐに閉じる。

 

「……目を、開けないの?」

「ええ。この目は、()()()()()()()()

 

 そう言って再び剣を構えるエリーゼに、先程以上の既視感。

 

──八重樫流 流水落葉

 

 水流れるが如く緩やかでいて、しかし速い接近。そこから放たれる一撃を()()()()()()()()()()

 

「───!?」

 

 エリーゼが使ったのは、間違いなく八重樫流刀術。

 驚愕するも見知った技故にギリギリで反応し防ぐ。地面を擦りながら勢いを殺した雫の前で、エリーゼは軽く剣を振るっていた。感覚を確かめるように。

 

「今のは………」

「私の目は、少し特殊でして。この目にはあらゆる情報が入ってくるんです」

「情報?」

「ええ。薄目にしても構成する物質、用途………その剣が私にとって理想的だと判断できたのもこの目のおかげです。ですが、完全に開くと見えすぎる………体格、体脂肪、体重、身長、体温は勿論血管の枝分かれの数から、その人がこれまで歩んできた過去まで見えてしまう。だから、貴女の剣を、学ばせて頂きました」

 

 それこそエリーゼの持つ異能。エリーゼの前で人は隠し事を行えない。戦士であればこれまで学んできた技術を盗まれる。

 勿論、()()()()なのだから完璧とは言い難い。エリーゼの才能を持ってして、再現率は8割といったところだろう。だが、なれてくる。

 雫はふー、と細く息を吐き刀を鞘に収める。

 

「…………その構えは知ってます。ですが、敢えて使いません」

 

 そう言いつつエリーゼも剣を鞘に収める。だが、違う。似てるが、雫の構えとは異なる。2人は良く似た、しかし異なる構えのまま、同時に踏み出す。

 

──八重樫流抜刀 疾風之舞

 

──我流抜剣術 空切笛

 

 ヒュッ、という刀が空を斬る音と、ピュウという剣が空を斬る笛のような音が一瞬だけ響き、ぶつかり合う。

 

「「────っ!!」」

 

 パキャァン! という高い音が響き鉄の破片が舞う。

 

「…………っ」

「武器に、救われましたね………」

 

 雫とエリーゼは短くなった己の得物を見つつ、エリーゼは残った刃を鞘に収めながら言う。雫は悔しそうに俯いた。

 冥雲はハジメが雫の為に造ってくれた刀だ。雫以上に使いこなせる者など居ないと思っていたし、事実同じ八重樫流の光輝でも十全に使いこなせなかったろう。

 だが、もしエリーゼが冥雲を持っていたなら、言い訳のしようもなく負けていた。ステータスの差なんてものではない。エリーゼは本気を出さず、雫に合わせていた。

 

「いい経験になりました。感謝を………今回は、引き分けで構いません。なので、私も好きにやらさせてもらいます」

「ええ………」

 

 頭を下げてきたエリーゼに雫も頭を下げ皆の所に戻る。悔しそうに唇を噛み締める雫に、香織も鈴も話しかけられない。話しかけるのは、空気を読めない我等が勇者!

 

「雫、気にする事はない。南雲の造った武器のせいで、君が負けたわけじゃない」

「……………黙れ」

 

 一応、ハジメが刀を造る工程をみていた錬成師達は居るらしい。そのうち何人かはハジメの足を舐め技術を学ぼうと王都で逃走劇を繰り広げたらしい。

 似たようなのを造っているし、雫も見せてもらった事はあるが、満足の行く代物はなかった。それでも王国のアーティファクトよりは使えるはずだ。

 

「……………っ」

 

 だが、『冥雲』の代わりにはとてもなりえない。性能的にも、雫の心情的にも。

 

 

 

 

 

「………………」

「……………」

「……………………」

 

 翌日、リリアーナは気まずい気分を味わっていた。昨日、ハジメからもらった剣が折れてしまった雫が落ち込み普段している早朝訓練も行っていないようだったから元気づけようとお茶に誘ったのだが、途中出会ったエリーゼが製作者であるハジメについて教えて欲しいと言い出しお茶会に参加。

 そして、無言の時間が続く。

 

「………エ、エリーゼ様は、お強いんですね。噂通りです」

「様は結構。どちらも、同盟国のトップの娘に過ぎません」

 

 それはそうだが帝国の皇族と王国の王族では単身ではまるで別物だろうと思う。

 

「………あ、あの、雫」

「何?」

「え、えっと………」

 

 エリーゼがいる状況で、負けたことを持ち出すことも出来ずリリアーナはちょっと泣きたくなってきた。

 

「…………南雲ハジメとは、どんな人物ですか?」

「とても、強い人よ」

「ほう………」

 

 強い人間と聞きエリーゼは興味を示す。その辺りは実力主義の帝国人らしい。

 雫はふぅ、と息を吐いてから、南雲ハジメという人物について話し出す。

 刀術や体術こそ学んでいないものの、祖父の弟子であり同門とも言える間柄であったこと。日本刀に関しては彼も漫画や祖父からの知識だけで造ったのはこの世界で初めてとのこと。ベヒモスを圧倒できるだけの力を持ち、しかし不死身となったベヒモスとの戦闘の際、奈落へ落ちてしまったこと。

 

「私の過去を見ればわかるんじゃないの?」

「見えすぎて疲れますので」

 

 一度目にすれば問答無用でその存在の情報が叩き込まれるエリーゼ。実は人の顔をまともに見れた事はない。

 

「しかしなるほど。その人は貴女を良く知っていたからこそ、貴女にあった剣………刀、でしたか? 刀を打てたと」

 

 となれば全く他人の自分の刀を打ってもらうのは難しいだろうか?

 

「まずは私を良く知ってもらわなくては」

「…………」

 

 この人は天然なのだろうか。

 何となく毒気も抜かれ、他愛ない会話をする3人。それを、遠くから眺める者がいた。

 

 

 

「雫ってば、あんな顔もするのねえ」

 

 魔力で強化された視界や聴覚で3人の会話を覗くのはマリィ。負けて落ち込んだ雫を慰めようと探していたのだがまさかエリーゼと普通に話しているとは。

 しかし、南雲ハジメについて話す時の雫の表情。自分は見たことがない。自分の前ではしたことが無い。

 

「……………」

 

 クルクルと髪を指に絡めるマリィは、気づけば半眼になっており、そんな自分の行動に気づき少し驚く。

 

「妬いてるのかしら? 私ったら。やだやだ、らしくない………何時だって強欲に、好き勝手。それが私でしょうに………でも、南雲ハジメ、かぁ」

 

 ベヒモス程度………否、()()()()()()なら七罪誰もが踏破可能だ。100層より先には6つの文様がある扉があり、その先は進めなかった。

 七罪の威信を示す事の出来る情報ではあるが、教会は敢えて発表しなかった。あれは恐らく扉を知られる事を嫌ったのだろう。

 

「あの扉の向こう、何があるのかしらね?」

 

 オルクスの階層ごとの魔物の強さの変化を考えれば、彼処から先はベヒモスクラスのモンスターがうじゃうじゃといるだろう。そこを超えた人間は、少なくとも聖人の中でもトップクラスの実力を持つ者と並ぶ。

 

「良いわ、良いわ。興味湧いてきちゃった。雫には悪いけど、私が先に見つけて、摘み食いしちゃおうかしら?」

 

 ペロリと赤い舌が唇を舐め、獰猛な笑みを浮かべるマリィ。人類最強の一角達が、南雲ハジメに目を付けた。

 

 

 

 

 帝国の使者達が帰る日。

 エリーゼとの確執もなくなり調子を取り戻した雫は、城仕えの錬成師達の作品であるムラクモを振るう。

 

「ほ〜う………」

 

 そんな雫を見て興味深そうに声を出す者がいた。

 

「………どうも、ガハルド陛下」

「おう。加減してるとはいえエリーゼと互角に戦う女が剣を振ってるからな、ちょいと見学させてもらったぜ」

 

 気配を消し見ていた事を悪びれる様子もなく軽快に笑うガハルド。

 

「うちに来ねえか? エリーゼにお前の剣を教えてやってくれよ」

「彼女なら、私から見た技を直ぐにものにするでしょう」

 

 勇者一行に対する勧誘。教会に喧嘩を売りかねない行為を、雫はあっさり流す。

 

「そのような事をして、『傲慢』は動かないのですか?」

「ああ、動かねえよ。言っちゃ悪いが、彼奴からしたら帝国がお前程度を引き入れたって、興味も持たねえ。虫の巣に虫が一匹増えたところで気にする奴なんていねえだろ?」

 

 この男は、プライドが高いのだと思っていた。少なくとも光輝に救うなどと言われキれる程度には己の実力を下に見られるのを嫌っていた。その彼が、虫扱いを認める『傲慢』………一体、どれほどの実力者なのか。

 

「雫! ここに居たのか………皇帝陛下?」

 

 と、雫を探していたのか光輝がやってくる。大方早朝訓練に付き合うよ、とでも言う気だったのだろう。ガハルドの姿を見て少しだけ驚く。

 

「……………」

 

 そんな光輝の様子から雫とはそれなりに付き合いが長いのだろうと判断したガハルドは、あることを提案する。

 

「雫、俺の愛人にならねえか?」

「はい?」

「なっ!?」

 

 ガハルドの言葉に雫は首を傾げ、そういえばエリーゼからガハルドが自分を気に入っていると聞いていたことを思い出す。

 

「ガハルド皇帝陛下。それは流石に冗談が過ぎると思います」

「ああ? 冗談? 俺は本気だぜ。エリーゼと彼処まで戦えて、その上美人で聖人と来た。これで誘わなきゃ皇族の名折れだ。そもそもだ、なんで小僧が口を挟む?」

「雫は俺の大切な仲間で幼馴染です、口を挟むのは当然の事かと」

「は、幼馴染ぃ? 要は付き合いが長いだけの他人だろうが。そんな奴が雫の未来を決めると?」

 

 ふん、と鼻を鳴らすガハルド。

 その反応に光輝はムッと顔をしかめる。なまじ顔が良い分、ああ、まるでか弱い乙女を守る騎士のようだ。姫のほうが騎士より強いし迷惑そうな顔をしているが。

 しかし、気に入らない。自分がこうして間に割って入ったんだからとっとと失せるのが当たり前だと言わんばかりの顔。自分が何かすればそれだけで解決すると思っているのか? 雑魚のくせに傲慢な。

 『傲慢』はいい。ムカつくがそれだけの実力を持つ。目の前のこいつは違う。

 

「光輝、良いわ」

「だけど雫………!」

 

 雫は光輝の横を通り抜け前に出る。

 

「折角のお誘いですが、お断りいたします」

 

 雫の言葉に光輝は安堵の表情を浮かべる。

 

「…………そうか、まぁ、焦らんさ」

 

 ガハルドはふっ、と不敵に笑うと、去り際に光輝を見る。弱いくせに守っているつもりの騎士気取り。ふん、とガハルドが鼻で笑うと、光輝は顔を顰める。

 光輝はこの男とは絶対に馬が合わないと感じ、しばらく不機嫌だった。




おまけ

帰国中のエリーゼ

(そういえば、家族以外で呼び捨てで呼び合うのは初めてでしたね)

 何せ皇族であり聖人であり歴代最強。そんな彼女に気軽に話しかける者など今まで居なかった。
 だが、今回姫と勇者一行という、身分が近い二人の知り合いができた。

「っ………まさか、これは…………私に友人が出来た?」

 エリーゼ・D・ヘルシャー。これまで友人と呼べる人数、0。



エリーゼ・D・へルシャー

帝国第3皇女。
固有魔法《鑑定眼》 派生元∶昇華、魂魄の複合

 他人の思考や肉体情報、過去の経歴まで全て見える特殊な目を持っているがゆえに普段は目を閉じている。
 その性質から魔人、亜人を問わず人間であると見ており樹海から亜人を攫えなくなったのを幸いとし亜人の数を減らすだけの現状を改善。奴隷である事は変わらないが無闇な暴力や理不尽な遊びをやめさせた。
 剣の重さで斬るのではなく斬れ味を活かした戦い方を好み、自身の戦闘スタイルの理想系と言える刀に興味を持ち製作者であるハジメを探す。実は友達がいない。

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