レベルアップで世界最強   作:奈落兎

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第ニ章
ライセン大峡谷と残念美少女


 祈りが聞こえる。願いが聞こえる。

 救いを求める。平和を求める。敵の死を求め、己の正義の肯定を求める。

 知らぬ知らぬ知らぬ。黙っていろ。我が興味あるのは一人だけ。我の心を動かすのは一人だけだ。

 神の言葉などなくても勝手に納得するだろう貴様等は。

 訪れた幸福に神の祝福という名を与え己こそ善とし、降りかかる不幸を神の仕業だと我こそ悪とする。

 もう飽いた。貴様等の相手はうんざりだ。

 

 

 

 

 場所は移り、ライセン大峡谷という処刑地。

 

「……………?」

「どうしたの、ハジメ」

「いや………気のせいだ」

 

 ハジメは誰かに見られたような気がして周囲の気配を探るがモンスターか自分達以外何もいない。あくまで僅かな違和感を感じただけだったし、気のせいだったかと首を傾げるハジメは改めてオスカーに鎖で雁字搦めにされている銀髪の美少女を見る。

 

「あいだだだ!? オー君ちょっと、この鎖微妙に棘生えてない!? フェアちゃんそういうプレイはちょっと! リューちゃんじゃないんだから!」

『黙れポンコツ! 勝手に人で変な夢を見るな!』

 

 涙目で抗議する銀髪の美少女。フェアというのだろうか? オスカーの知り合いらしい。数千の時を過ごしたオスカーの………人では無いのか、オスカー同様特殊な方法で生き延びているのか。

 

「オスカー、そいつは?」

『おっと、すまない………』

 

 ハジメの言葉にはっとし鎖を解く。銀髪の美少女はふへ〜、ため息を吐きハジメを見て親指をグッと立ててきた。ウザい。

 

『彼女は………』

「おっと、自己紹介ならフェアちゃんがするぜ? はっじめまして! フェアちゃんはフェアレーター! フェアたんって気軽に呼んでね♪」

 

 神が作ったが如き美貌で満面の笑みを浮かべ、片手を腰に、片手をピースサインを作り目元に添えるフェアレーターと名乗った少女。

 完璧なポーズだ。完璧すぎてイラッと来た。

 

「…………オスカー、こいつは?」

『元神の使徒………』

 

 オスカー曰く、エヒトは己の部下として魅了能力を持った使徒を世界各地に散りばめていたらしい。

 神の使徒は数字持ち(ツイファー)と言う数字を与えられた個体から、数が不明の量産個体まで居るらしい。この量産個体は情報共有能力があり、そこから神の使徒全てを奪えないかと解放者達が魂に干渉する魂魄魔法、生命に干渉する変成魔法、境界に干渉する空間魔法、それら全てを強化する昇華魔法を行い当時の解放者リーダーミレディの思考パターンを植え付けた。

 

「その結果が、これか………」

「イェ〜イ!」

 

 きゃぴるるん、と擬音が聞こえてきそうなポーズを取るフェアレーターを見ながら呟くハジメに、オスカーは疲れたように黒仮面の額を押さえる。

 

「でもでもまさかオー君に会えるとは思ってなかったよ」

『僕も、君が残されていたとはね………』

 

 結果的に一体の乗っ取りには成功したが、直ぐに切り離された。そのまま解放者の仲間として行動していたのだが、解放者敗北後破壊されたか初期化されたかと思っていた。

 

「フェアちゃんも彼奴が何考えてるかさっぱりだね〜。300年くらい前に器候補が見つかったって喜んでたけど、その後もっと楽しい事が起きたのかその話題はすぐ終わったけど」

「器?」

「エヒトは体を持たないんだよ。なまじ魂としての格が高い分世界の修正力というか抵抗力をもろに受けちゃうの。だから器が必要なんだ」

「………300年前…………まさかそれって、吸血鬼か?」

「………え」

「あー、確かにそんな話もしてたような?」

 

 その間はずっと封印されていて情報は疎らに入ってくるばかり。詳しくは知らぬというフェアレーターだが、ユエが生まれた300年前、神の真実を知り姪を殺す手段がありながら殺さなかった叔父、偶然にしては出来すぎている。

 ユエもその事に気付いたのか顔を青く、むしろ真っ白にしている。

 

「なら、叔父様は? 私は、どうして………」

「因みにフェアちゃん達も本来は器として作られたんだよね〜」

「ん? てことはエヒトって女神なのか?」

 

 ユエの身体を狙い、器候補の使徒を女として創る。性別など長く体もなく存在していればどうでも良くなりそうだが、使徒を創ったばかりの時点では肉体を失ったばかりだろうし。

 

「もしくは………オカマ?」

「その可能性もあるか」

 

 オスカーは思う。この世界を何万年と苦しめている奴がオカマとか絶対嫌だと。

 

「所でオー君、この人達は?」

『「プレイヤー」と、その仲間達だ』

「『プレイヤー』!?」

 

 オスカーの言葉にフェアレーターは目を見開きハジメに詰め寄る。

 

「その『プレイヤー』がオー君といるってことは」

「まあ、神殺しが目的だな」

「〜〜〜っ! ありがとう!」

「「────っ!?」」

 

 涙を浮かべハジメに抱きつくフェアレーターに恵里とユエが反応する。そんな二人の様子に気付かないフェアレーターは「よ〜しおばあちゃんがキスしたる」と口を近づけたがハジメの膂力に剥がされた。

 

「それでオスカー、こいつ使えるのか?」

『まあ、元神の使徒だからね。僕とナイズの合わせ技で隕石もどきをやったけど戦闘続行可能だったし、初めての勝利は強化した当時のミレディが魔力使い切るレベルで行った魔法だったから………』

 

 通常兵器では刃が立ちそうにない。銃弾一つ一つに貫通系の魔法を付与したほうが良い気がしてきた。

 

「更に言えば強化されてるからね〜。オー君達もあの時よりずっと強いとはいえ、最近じゃオー君達をどう皮肉ったのか知らないけど『開放者』なんてのを作ったらしいし」

「? どう皮肉ったって………ああ」

 

 ハジメ達からすれば解りやすい皮肉だったが、考えて見ればここでは言語が異なる。『解放』と『開放』は自動的に翻訳されるハジメには同じ音に聞こえただけだ。改めて単語単語を詳しく聞けば聞き覚えがないはずなのに意味がわかる全く別の言葉が聞こえる。

 

「………ん?」

 

 つまり、エヒトはわざわざ日本語に合わせてきた?

 

「因みに何を開放されたんだ?」

「フェアちゃん達って反逆を起こさないように脳に情動抑制というか、一定以上の感情の高ぶりを脳が認識しないように出来てるんだよ」

 

 それこそ感情という流れを塞き止めるように、と己の頭を指差すフェアレーター。

 

「その情動抑制機能の蓋を外されたのが『開放者』………詳しいことは、フェアちゃんも分かんない」

 

 封印されてたしね〜、と肩をすくめるフェアレーター。そもそも何が目的で封印が解かれたのかも謎なようだ。

 

(タイミングや日本語に合わせた事を考えるに、俺達異世界組が関わってんだろう。なら、()が……まあ、俺だろうなぁ)

 

 解放者に『プレイヤー』が居たのなら当然エヒトも知っているはず。つまりエヒトはハジメを意識しているということ。いずれ何らかの接触があるかもしれない。

 

「まあ良いさ。とにかく各迷宮巡って神代魔法を手に入れる。それが優先事項だ」

「お〜………ところでオー君、試練の内容とか迷宮に入る条件とか教えるのはありかな?」

『そういうのは、きちんと自分でやるべきだと思う。彼が「プレイヤー」とはいえ、()()()()()()は、間違いなく恩恵を与える何者かの領域に近い』

「確かに。ヒーちゃんも()()()()()()持ってなかったのにあれだったしね………試練はきちんとやったほうが良いか」

「………………………」

 

 もちろん全部聞こえている。話からして迷宮に入るには条件があるものもあるらしい。

 

「ところでオー君なんでマスクの上から眼鏡をかけてるの?」

『僕のトレードマークだからね』




フェアレーター
所属∶解放者(元神の使徒)

量産型神の使徒の内一体で情報共有能力を通して神の使徒を乗っ取る予定だったが先に対応され結果として一体だけになった反逆の使徒。
ミレディの精神がモデルになっておりテンションが高い。情動抑制機能が壊れている
過去昇華魔法で何度も強化されており隕石にぶつかってもびくともしない


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