レベルアップで世界最強   作:奈落兎

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プレイヤーVSバグ兎

 シア・ハウリアと名乗った兎人族の戦士。どうやらフェアベルゲン最強らしい。

 まあそれはそうか。こんなのが何人も居れば亜人が奴隷の立場になるはずが無い。亜人族と人間族の確執は、知っていたつもりだが所詮つもりだった。まさかいきなり殺しにかかってくるとは。

 奴隷など遠い過去の日本に生きてたハジメからすれば理解しにくい。

 

(そういえば、緊急クエストが発生しないな。亜人は『システム』的には戦闘になっても当然の存在なのか?)

 

 と、考え込んでいる間にシアが接近し殴りかかってくる。狙いは顔面。上半身を倒しながら体全体の力を乗せた拳。

 上体をそらし回避すれば腕をふるった勢いのまま飛び上がり回転しながら蹴りを放つ。

 

「んな!?」

「軽い……」

 

 が、ハジメはあっさり受け止める。その衝撃で背後の砕けた木の欠片が吹き飛んでいく。

 

「こん、の!」

 

 シアは地面に指を食い込ませると体を捻る。むりやり拘束から逃れようとするが、無意味。

 

「乙女の足を気安く触るんじゃねーです!」

 

 拘束から抜け出るのは不可能と判断し、自由な脚でハジメを蹴りつけるシア。だがろくに力も入れられない蹴り。ハジメに通用するはず無く、シアはまるで山でも蹴るかのような錯覚に陥る。

 

「気安く触るなか、そいつは悪かった。すぐ離してやる!」

「!?」

 

 グン、と足を引っ張られ、体を襲う強烈なG。そのまま投げ飛ばされた。木々を幾つも圧し折り道中の岩を破壊し不運なことに池に落ちた。群生していた魔物達が肉片になる。

 

「〜〜〜っ! こんの、馬鹿力めえ!」

 

 ザバァ! と池から飛び出してくるシア。後ろからシアを狙い口を開け迫る角の生えた蛇の首を掴むとハジメの居る方向にぶん投げる。

 

「お前が言うか」

「ぬわっひゃ!?」

 

 木々の影を利用し影渡りをしながら池の辺りに移動したハジメに、まさか返事が帰ってくるとは思っていなかったのかシアは慌てて池から飛び出る。

 

「………貴方、何者です? 帝国の聖人じゃありませんよね? エリーゼさんが約束を違えるとは思えません。まさか、教会?」

「エリーゼ?」

 

 聞いたことがない、誰だ? 聖人は、確か魔力操作持ちだったか?

 エリーゼという帝国の、恐らく兵士達に命令出来る立場と何らかの約束をしたようだが………と、シアから魔力が溢れ出る。シアの足元がミシリと沈んだ。

 

「どっちでも良いです。とりあえず、ぶっ飛ばす! ですぅ」

 

 亜人族にとって、人間とは自分達を脅かす敵だ。交渉するには、まずは向こうが攻撃に移れないようにする必要がある。すなわち、最強の戦士とやらを倒す。

 

「どっ、せい!」

「!?」

 

 シアが接近し、拳を振るう。その踏み込みで地面が陥没し驚愕するハジメに拳を叩き込む。

 

(───重い!)

 

 強烈な一撃だ。少なくとも先程より、ずっと。

 驚愕するハジメの前でシアは更に拳を振るう。

 

「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃっ!!」

 

 一撃一撃が必殺の一撃。大気を揺さぶる豪腕。純粋な魔力操作による身体強化だけではない。他に何か要因がある筈。

 

「図に、乗るなぁ!」

「っ!!」

 

 まともに喰らい続けるのは危険だ。ガードしながら隙を伺い、シアの腹を蹴りつける。吹き飛ばされたシアは、しかし途中で勢いが減速しフワリと地面に降り立つ。

 

「……………お前、重さを変えてやがるのか」

「………正解です」

 

 その不自然な動きを見てシアの攻撃の重さの秘密を見抜く。体重操作。それも、体重移動なんて技術では無く文字どおり体重が増えたり減ったりしているのだ。

 殴る瞬間に体重を重くして攻撃力を増し、吹き飛ばそれそうになれば空気と同じぐらいの重さになり風船のように吹き飛ばされるのを防ぐ。

 

「神代魔法の一つですぅ。本当なら色んなものの重さを変えられるらしいですが、私は自分の重さを変えるのが精一杯」

「あっさり教えるんだな?」

「純粋な力は、知ったところでどうにかできるもんじゃねーんです」

 

 ドゴォ! と片足を地面に叩きつけるシア。大地が割れ、ハジメの左右で捲れ上がった地面が即席の壁となる。逃げ場を失ったハジメに向かって、シアが()()()()()。壁となった地面を蹴りながら、自らを砲弾とし、空気を押しのけ、衝撃波が発生する。退くのが間に合わなかった空気が他の空気とぶつかり圧縮され赤く燃え上がる。

 

「破王脚!」

 

 兎人族の優れた脚力、魔獣の持つ魔力操作に、シアが持つ特別な魔法。その全てを使い放たれる必殺技。

 シアの持つもう一つの特別な魔法は戦闘に置いて回避に使用される。仮に同じ魔法を持つ者が現れても、勝てると判断した技だ。当たればでかいし当たらなくてもでかい。

 轟音が樹海を揺さぶる。周囲一帯の木々が地面ごと消し飛び巨大なクレーターが生まれる。だが────

 

「つぅ………今のは、それなりに効いたぞ」

「………う、うそ」

 

 ハジメは健在。

 能力を知られようと力技で押し潰せるだけの必殺技。師である()()をして、発動させる前に止めるしか手段はないと言わしめたその技を、よりによってハジメは耐えて見せた。

 

「俺の勝ちだ。眠れ、最強」

 

 

 

 

 

 聞こえてきた大地を揺らす轟音に、恵里達は振り返る。周囲には文字どおり頭から花を咲かせ虚ろな目をした兎人族達と、そんな彼等に取り押さえられる兎人族。恵里の背後には人と植物の中間のような存在、アルラウネとでも形容できるモンスターの死体が控えていた。花を咲かせていない兎人族の一人はおお、と感嘆の声を上げる。

 

「間違いねえ。シア姐御の破王脚だ……」

 

 確か、必滅のバルトフェルドとか名乗ってた少年だ。

 

「あの技を出させるなんてあの野郎も強いって事だ。だが、終わりだ。あの技を受けて無事だった奴は───」

「戻った」

 

 と、恵里の影からズルリと黒い靄が這い出たかと、思うと気絶したシアを抱えたハジメが現れた。

 

「んな!?」

「うきゅ〜………」

 

 目を回し気絶したシア。ハジメはゲフ、と血を吐くとポーションを飲み込み、傷を癒やすと兎人族達に向き直る。最強であるシアがやられた以上、フェアベルゲンに彼に勝てる存在はいない。悔しげに俯く彼等に対してハジメはふぅ、と息を吐く。白い霧が溢れ、頭に咲いた花に触れると花は凍りつき、砕ける。

 はっと正気に戻った兎人族達は慌てて距離を取り、気絶したシアを見てありえないと驚愕を顕にする。

 

「お前達の最強は落ちた。抗う術を失い、それでも闘うというのならそれもよし。だが、俺は争う気はない」

「…………何だと?」

「俺は迷宮攻略者。この世界の裏側の一端を知る者。フェアベルゲンと交渉がしたい」




破王脚

地面を割り壁を作り、壁を蹴りながら加速しつつ重力魔法で落ちながら最大威力の蹴りを放つ技。地形を隕石衝突したが如き有様に変える威力を持ち直接当たればその比ではないダメージを与える



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