レベルアップで世界最強   作:奈落兎

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フェアベルゲン

 フェアベルゲン滞在中。弟子にしてくれと迫るハウリア達から逃げるハジメ。ああいう手合いは相手していたくない。

 

「ふぅ、なんとか巻けたか変態共め」

「ふう、なんとか巻けましたか変態めぇ、ですぅ」

「「………………」」

 

 森のこかげに隠れ、自分同様何かから逃げるように気配を消しながら高速で移動していた気配の正体、シア・ハウリアと意図せず同じ場所に隠れたハジメ。

 とっさに隠れる原因になった近くにいたハウリアと、シアが逃げていたアルテナが叫びながらかける音が聞こえてくる。

 

「「───!」」

 

 ガシッと互いの手を取るハジメとシア。ここに、新たなる友情が生まれた。

 

 

 

「はぇ〜、異世界。異世界の人達はみぃんなハジメさん達みたいに強いんですか?」

 

 シアの秘密の隠れ家だという洞窟に移動したハジメとシア。ここに誰かを呼ぶのはエリーゼ以来だという。

 友達なのかと聞けば師弟関係なだけとの事だ。

 

「どうぞ、蜂蜜水です」

「サンキュ」

 

 洞窟の奥には小さな池があった。澄んでいて、冷たい。

 

「すいません、うちの家族が……」

「気にするな。お前も苦労してんだろ」

「ええ、それはもう。なぁんでああなっちゃったんですかねぇ………私が戦士に選ばれる前は、それはもうお花を踏むのすら嫌がる温厚すぎてちょっとイラッと来る集団でしたのに」

 

 遠い目をして乾いた笑みを浮かべるシア。というか昔の集団にもイラッとしてたのか。

 彼女曰く、温厚だが家族思いのハウリア達は幼い娘が戦士として危険を冒すのを良しとせず、さりとて国の決定を止めることも出来ず、ならば自分達もと鍛え始めたそうだ。

 魔力持ち自体は全体の1割にも満たない。大半の戦士は魔力無し。だから戦士になること自体は可能だが、兎人族は元来弱い種族。シアも魔力持ちでも所詮兎人族だろぉ? とからかってくる奴等を何人も埋めた。

 そんなバカにされる兎人族だが、ハウリア達は頑張った。

 

「頑張った。頑張ったんです、その結果があれなんですよ!」

 

 ドン! とテーブルを叩くシア。テーブルが粉々に砕け散った。あの結果と聞きハジメの脳内にヒャッハーと高笑いするハウリア(通称ヒャッハウリア)達の姿が脳内に浮かぶ。

 

「…………その、元気だせ」

「うぅ。もう家族から距離置きたい。エリーゼさんのところに厄介になりたい」

 

 目尻に涙をためるシアの頭をヨシヨシと撫でてやる。家族は変人になるし、変態のストーカーは出来るし彼女も大変のようだ。

 

「いっそ、私もハジメさんの旅についていくとか」

「あ? やめろやめろ。俺にゃ恋人がいるんだよ」

「そういう意味じゃないですよ〜。私の好みのタイプはもっと優しくて、包容力が高い人です。あれ、ハジメさん該当します? でも、彼女持ちですしねえ」

「お前の親父と同じぐらいだが、優しくて包容力がある男なら心当たりがあるぞ」

「あ、おじさんはNGです」

 

 ハジメの脳裏に浮かんだのは何かと世話になっていた騎士団長だが、シアの琴線に触れなかったらしい。

 

 

 

 

「ふぅ〜………」

 

 フェアベルゲンは霧を遮る結界で覆われている。恵里はその境界で、片手を霧に突っ込んでいた。

 この霧自体が持つ特性は闇魔法に近いが、特殊な性質は魂魄魔法の粋に達している。

 効果を及ぼす対象の選択。狙って当てるのではなく、狙ったものだけに当たる防御不能の攻撃。

 

「…………いけ」

 

 放たれた炎が霧の中を真っ直ぐ突き進む。岩の中で眠っていた魔物を焼いた。

 木々は燃えず、岩の温度は少しも上がらず、肉の焼ける匂いに誘われやってきた他の魔物達にも一切影響を及ばさない。

 

「こんなもんか………」

 

 感覚はつかめた。ありえない話だが仲間の誰かが人質になっても敵だけ狙うことも可能。

 後、魂を直接攻撃する魔法でも生み出そうか?

 他には………例えば、記憶や想いを焼く魔法。

 

「…………………はぁ」

「どうした」

「ひゃ!?」

 

 思いついた魔法の使用方法に思わずため息を吐くと、後ろから声がかかる。振り返ればハジメが立っていた。

 

「何か考え事か?」

「…………自分の薄汚さを改めて自覚した」

「その使い方が間違ってると思えた時点で、マシだろうよ」

「……………」

 

 グシャグシャ乱暴に頭を撫でられ、顔を赤くする恵里。見透かしたようなその態度が、最初は嫌いだった。今では、それがとても安心する。

 

「ところでさ、この霧って、ハジメには何の効果もないよね?」

「ああ、だから一人で行ってくる」

「なんで滞在したの?」

「お前を休ませたかったから」

 

 それだけ言い残すとハジメは霧の奥へと消えていった。

 

 

 

 

 ハルツィナの『大樹』。そこで使える鍵を使用し入ったダンジョンで、森の中襲いかかってくる獣よりの獣人系のモンスター。

 ハジメはスッと短剣を構えた。

 

 

 

 

 

「こんなもんか」

 

 死屍累々。数多の死体が転がり地面を赤く染める。

 なるほど確かに強かった。が、今のハジメにとっては相手にならない。ダンジョンランクもAだったし。

 ダンジョンの外へ出ると、門が閉じていく。何時も通りの光景。だから、ここからは何時もとは違う光景。

 

「これが『プレイヤー』の潜るダンジョンですか。この世界に隣接しながら独立した世界。なんとも興味深い…………あ。すいません、もう一度出してもらって良いでしょうか?」

「誰だ、お前?」

 

 消えていくゲートを興味深そうに見つめる銀色の髪の美少女。その容姿はどことなくフェアレーターに似ている。なら、おそらくは

 

「はじめまして南雲ハジメ様。私の名はラウム。精神抑制を解除された、開放者の一人です。どうでしょう、ここで殺し合いをしてみませんか?」

 

 その言葉と同時に、大樹周辺の一角で木々が吹き飛んだ。




ラウム

開放者の一人
糸目の物腰が丁寧な女性。
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