レベルアップで世界最強 作:奈落兎
オルクスの真なる迷宮はラストダンジョンとして設定されている。故に、ライセンの……それも表向きの大迷宮の魔物など雑魚でしかない。
わざわざ死体を操る価値もないが、素材は売れるので指輪の宝物庫に入れていく。冥王の宝物庫にはゾンビ兵やオスカー製の魔剣を入れている。
「ここの魔物、特殊な力とか無いんだね」
「魔法が分解される地だからな。特殊な魔法より、身体強化に魔力を割ける魔物の方が生き残るんだろ」
なるほど、確かにそうだ。魔法が使えない場所で、魔力を体外に出して使う魔物が蔓延れる筈がない。
「それにしてもこのハンマー、中々手に馴染みますねぇ。名前とかあるんですか?」
『ふふ。良く聞いてくれたね!』
と、オスカーが得意げに言う。特に名前をつけた覚えのないハジメはオスカーは名付けてたのかと耳を傾け、フェアレーターは何故かアチャー、と頭を押さえる。
『なんでもミンチ君一号!』
「却下で」
『え!?』
仮面ごしだし仮面の下は骨だし、表情のわからぬオスカーだがどうやら驚愕しているようだ。逆にそのネーミングが受け入れられると思ってる事に驚きだ。
「………ドリュッケンだ。錬成を組み込んでるから、アックスモードと叫べば殺傷能力重視の斧になる。シールドモードで盾だ」
「ドリュッケン………意味は分かりませんけど、いいですね!」
『ま、待ってくれ! なら三段階変化君は!』
「オスカーさんは、名付け親にはならないでくださいね」
新たな名を考えようとするオスカーだったが、シアはやんわり断った。
「あ、つきました! ここです、ここここ!」
そこには、巨大な一枚岩が谷の壁面にもたれ掛かるように倒れおり、壁面と一枚岩との間に隙間が空いている場所があった。シアは、その隙間を指差す。
「では、私はここで待ちます。絶対に入りませんからねぇ!」
「頑張ってくださいねえ。フェアちゃんはふかふかベッドが恋しいので街に帰りますね〜」
「え? あれぇ………」
「そもそも出口ってここなんですか?」
「…………あ」
シアとフェアレーターのやり取りにハジメははぁ、とため息を吐く。
「シアはフェアと一緒に街に戻れ。迷宮を攻略したら、俺等も戻る」
「でも………いえ、はい。失礼します」
そう言うとシアはフェアレーターと共に歩き出す。
『じゃ、僕もこの辺で………』
「何言ってるんだい? オスカーは僕達と来るんだよ」
オスカーも帰ろうとするが恵里の魂魄魔法により動きがギシリと止まる。
『………僕は手伝わない約束じゃ』
「うん。僕が操って魔法を使わせる………君が手伝うわけじゃない」
とはいえ、いくら死者でも解放者の魂。長時間操る事は今の恵里では難しいので恵里の影に仕舞う。
影の中は繋がっているので、恵里とハジメはもし離れても『冥王の宝物庫』を使い何時でも合流可能だ。
「んじゃ行くぞ……入り口は文字の近くらしいが………」
岩の隙間に入ると、壁面側が奥へと窪んでおり、意外なほど広い空間が存在した。
「………あれじゃない?」
ユエが指差した方向に視線を向ける恵里とハジメ。
其処には、壁を直接削って作ったのであろう見事な装飾の長方形型の看板があり、それに反して妙に女の子らしい丸っこい字でこう掘られていた。
『おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪』
《!》や《♪》のマークが妙に凝っている所が何とも腹立たしい。
「……なんじゃこりゃ」
「……なにだろうね」
恵里とハジメがポカンと文字を見つめる。シアが案内した以上、間違いなくここがライセンの迷宮なのだろうが、本当になんだコレ。
シアは精神攻撃してくる迷宮だと言っていたがなるほど、いきなり硬直させられた。
「ま、まあいい………入るぞ」
と、ハジメが壁をドン、と叩き振動を確認する。
「ここだな……」
隠し扉を見つけ、押す。壁がぐるりと回転し、ハジメを暗闇へと誘うが暗視があるので問題ない。闇に紛れ飛んできた漆黒の矢を全て掴み取る。
《入って来ていいぞ》
『念話』を使い恵里に呼びかけるの恵里達も入ってくる。やはり矢が飛んで来たが、これも全てハジメが受け止める。恵里は構えていた銃をおろした。
周囲の壁がぼんやりと光りだし辺りを照らし出す。ハジメ達のいる場所は、十メートル四方の部屋で、奥へと真っ直ぐに整備された通路が伸びていた。そして部屋の中央には石版があり、看板と同じ丸っこい女の子文字でとある言葉が掘られていた。
『ビビった? ねぇ、ビビっちゃった? チビってたりして、ニヤニヤ』
『それとも怪我した? もしかして誰か死んじゃった? ……ぶふっ』
「………そういや、フェアの人格のベースだってな、ここの迷宮主」
「ああ……」
「納得」