レベルアップで世界最強 作:奈落兎
あの後、ハジメは光輝が納得していないようなのでつっかかってくるだろうと思い訓練をさぼった。適当な場所で片手逆立ち腕立て左右それぞれ50回(計100回)、丁度良い木にぶら下がりながらの腹筋100回、ランニング10キロは、ダンジョンから出た朝の内に済ませた。と………
「あ、南雲様!」
「ん、ああ………」
ここ数日で顔見知りになったメイド達が声をかけてきた。ハジメは木に引っ掛けていた足を離すとスルリと地面に降りる。
「もう、またサボりですか?」
「はいはい、仕事手伝うから黙っててくれ」
「仕方ないですね〜」
「今日は庭師の手伝いでもあるので、重いですよ〜?」
事の発端は、訓練2日目。訓練をさぼったハジメが、パーティーの片付けであろうか、山積みのカーテンやテーブルクロスが入った籠を運ぶ侍女の手伝いをした事に起因する。
勇者の仲間に恐れ多いと畏まっていたメイド達だが、訓練をサボったのを黙っていてくれという口実をハジメが口にすればその時は仕方なく。5日目ぐらいからは彼女達も頼んでくるようになった。後、仕事が早く終わって暇ができたからと茶に誘われたが、そちらは恋人が(メイド達に)怒るからと断った。
その日の夕方。ハジメが与えられた部屋で瞑想しているとドアがノックされる。扉を開けると恵里と鈴が居た。
「やっほ〜、ハジメン!」
「やあ、今いいかな?」
「おう………まあ上がれ」
部屋に通すとハジメは背もたれに腕を乗せるように椅子に座る。女の子二人はベッドに腰掛けた。
「わざわざ二人でなんのようだ?」
「僕だって愛しい恋人には二人きりで会いたかったさ。けどねえ、今は女子は一人にならないように言われてるんだ」
『なにせ強姦魔が現れたからねえ』と笑う恵里。要するに恵里が訓練中にあの音声を流して女子達が檜山達を警戒するようにしたのだろう。その結果、一人にならないようにとなったのだろう。因みに優花の側には女子最強の雫がついたらしい。
「それで要件だけどね、まあメルドさんからの連絡さ。明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征だってさ」
「ハジメンはそもそも参加してないけど、今までの魔物より強いんだって」
オルクス大迷宮………とある理由から向かうつもりだったが思いの外早く機会が来た。もちろんハジメは参加するつもりだ。
オルクス大迷宮は地下に伸びた巨大な迷宮で、階層は100階層まであるとされている。とはいえ誰もそこまで行ってないからあくまでも噂だが。
中に住まう魔物は下に行くほど強くなるから強さが計りやすく、良質な魔石が出るから人が集まる。人が集まり生まれた街の名はホルアド。
冒険者の宿場町だが、国の騎士達も訓練に使用するので専用の宿もある。ハジメ達が泊まる宿はそこだ。
ハジメは部屋で休まず中庭で月を眺める。と、新たな人影が現れる。
「よお………」
「っ………なぐ……ハジメ?」
現れたのは雫だ。アーティファクトの剣を持っている。素振りにでも来たのだろう。
雫はハジメの師の孫娘だ。それなりの付き合いがあり、二人きりの時はハジメと呼ぶ。
「な、なんでここに……」
「これからまぁた生き物を殺しに行くからなあ。それも、危険度が増すと来た。少しでも気を強く持とうと素振りに来るなと予想してたんだよ」
「そう、お見通しってわけ………皆には内緒でお願いね?」
「素直に怖い、戦いたくねえって言やぁ良いのによお」
呆れたように肩をすくめるハジメに、雫は出来ないわよ、と返す。
「皆、光輝だけじゃなくて私も頼りにしてる。私が折れるわけには行かないでしょう?」
「それがどうしたよ。お前は責任感が強すぎる。支えるばっかで誰にも寄りかからねえとその内折れるぞ」
「………………」
八重樫雫は、頼られる側の人間だ。雫本人がそれを受け入れているのは過去、嫉妬に狂った醜い餓鬼共に受けたいじめによるトラウマによりハブられる事を恐れているというのもあるだろうが、何よりも本人の責任感の強さが大きな一因だろう。
「強い奴に責任を求めるのは群れて強者より力を持ったくせに己が傷つくのを恐れる弱者の戯言だが、強者が責任を果たすと決めりゃ本人の責任。別に止めやしねえが、お前はそこまで強くもねえだろ」
「私を強くないって言うのは、貴方ぐらいよ」
「そりゃそうだ。周りの連中はお前に憧れるだけ…………理解なんざこれっぽっちもしねえ。大方お前が戦うのが怖いと言えば天之河なら君らしくない、最近増えてるお前の妹達ならお姉さまらしくない、そう言って元に戻るように己の理想を押し付けるだろうよ」
「そんな意地悪言いに来たの?」
むぅ、と拗ねたように膨れる雫に、忘れるところだったとハジメはインベントリから一本の刀を取り出す。
「無銘『冥雲』………その剣だと使いにくいだろ? 造ってやった。使えよ」
「日本刀………?」
「目に見えない程度に薄くだが魔法陣が刀身や鞘内部に刻まれていて、魔力を通すことで風の刃をまとったり伸ばしたりできる。切れ味や強度を落とさぬように、そして本来平面に丸く描く魔法陣の形を崩しても発動するように整理するのがまた大変で。参考にしたのは───」
「ア、ハイ………」
ペラペラ話し始めたが聞き流す事にした雫。鞘から抜いた刀は月明かりが反射し思わず息を呑むほど美しい。
「…………ハジメ」
「───ん?」
「ありがとう。これがあれば、私は、もう少しだけ、頑張れる」
「そうか………まあ、頼りたきゃ言えよ。お前の家には世話になってっからなあ」
雫と別れ、部屋に戻ろうとするハジメだったが固まる。扉の前にネグリジェ姿の香織が居た。
「なんでやねん」
「え? あ、南雲君!」
どうやらハジメを待っていたらしい。
仕方なく部屋に入れてやる。どうやらハジメが居なくなる夢を見て、不安になってきたらしい。
安心させようと色々言うと変わらないね、と言ってきた。
どうやら香織はハジメにとっても始まりと言える土下座事件を目撃したらしい。強い人が力で解決するのはよくある事だが、弱い人が解決しようとするのは中々いない。だから、香織の中で一番強いのは、ハジメなのだとか。
優花の件もあるので香織を部屋まで送ってやる。その際、2つの視線が向けられていたことをハジメだけが気づいていた。
改めて言おう。恵里は病んでいるのは変わらないと
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