遊戯王Ruine des Spiels   作:シャイガイ

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第一話 壊す獣と破滅させるもの

あたりが燃え盛っている。まるで今の私の心境を表現しているかのようだ。

弟が私の手の中で眠っている。この大きな事故で頭から血を流した程度であったのは不幸中の幸いかもしれない。

しかし私はもうだめだ。医者が100人診れば、100人が助からないというだろう。

 

―――許さない、私をここまで追い詰めたあいつらも……この世界も。『破壊』してやる……全てを!!

 

 

俺は、自らのエネルギー全てを足に詰め込んで走っていた。今日は待ちに待ったデュエル・アカデミアの実技試験日である。

デュエル・アカデミアには、俺のあこがれの人の母校である。何でもその人は、その実技試験に遅れていき、その当時

教員の中でもトップの実力を持つクロノス・デ・メディチを破ったという。その偉大なる先人を見習い、俺自身も

今回の試験日に遅れていくことにした。

 

 

「……あれ?」

 

 

試験場所に着いたはいいものの、なぜか周囲に人っ子一人としていない。おかしい、場所は確かにあっているはずなのに・・・・・

ふと気になり、腕時計の数字を覗き込んだ。……まさか、まさかとは思うが……

 

 

「「早く来過ぎたーー!!……ん?」」

 

 

声が重なった。どうやらだれかもう一人いるらしい。その方向へ顔を向けてみると、一人の少女が立っていた。凛とした佇まいに

よく言えば切れ長の美しい目、悪く言えば性格のきつそうな眼をしている。

 

 

「……貴様も時間を間違えたのか」

 

 

「あ、ああ……」

 

 

この人も俺が遅れて行こうとしていたということは夢にも思わないだろう。

 

 

「そうだ、なあ、ここであったのも何かの縁だ。俺とデュエルしないか?ほら、これからお互い実技試験なわけだしさ」

 

 

「……」

 

 

彼女は無言でスマホを起動し、時間を確認すると、二~三度首肯すると、顔をあげた。

この人、スマホ持ってるなら何で時間を間違えたんだろう。

 

 

「よかろう、暇つぶしぐらいにはなってくれよ」

 

 

「よし、決まりだな」

 

 

ともにデュエルディスクを取り出し、デッキをセットする。

 

 

「時に、まだ貴様の名を聞いていなかったな。答えてみよ」

 

 

「え?ああ、雙見だ。雙見・遊代だ。よろしくな!」

 

 

「雙見……」

 

 

少しだけ、彼女の顔が曇ったが、即座に元の仏頂面に戻る。

 

 

「私の名は桃園・朱音だ。心根に刻むがいい」

 

 

「あ、ああ、よろしく」

 

 

何だか、変わったやつだな。

 

 

「「決闘!!」」

 

 

雙見・遊代 LP8000 手札5枚

 

  vs

 

桃園・朱音 LP8000 手札5枚

 

 

「私の先攻。まずは下準備だ。行ってこい、『ドラゴンメイド・ラドリー』!」

 

 

デュエルディスクにカードを置くと、青い髪とメイド服を着こんだ少女がはじかれたように召喚された。

その勢いでデュエルディスクの上のデッキにぶつかってカードが3枚墓地に落ちる。

 

 

『ドラゴンメイド・ラドリー』 ATK500 レベル2 水属性 ドラゴン族

 

 

「攻撃力500を攻撃表示……?」

 

 

「効果でデッキの上から3枚を墓地に送る」

 

 

彼女はおろおろしている立体映像のラドリーにチョップを食らわせ、前を向かせると

 

 

「そして魔法カード、ドラゴンメイドのお心づくしを発動。手札・墓地よりドラゴンメイドを守備表示で特殊召喚する。

 現れよ、『ドラゴンメイド・ナサリ―』!!」

 

 

地面に魔導陣が描かれ、その中心よりメイド服とは違う、看護服を身にまとった龍の尾を生やしたモンスターが召喚される。

 

 

『ドラゴンメイド・ナサリ―』 DEF1600 レベル2 地属性 ドラゴン族

 

 

「ナサリ―の効果により、墓地からレベル4以下のドラゴンメイドを特殊召喚する。

 現れよ、『ドラゴンメイド・チェイム』!!守備表示だ」

 

閉じかけた自分が召喚された魔導陣にナサリ―が手を入れると、その中からもう一人、黒いドラゴンメイドが吐き出される。

 

 

『ドラゴンメイド・チェイム』 DEF1800 レベル4 闇属性 ドラゴン族

 

 

「チェイムの効果により、デッキから『ドラゴンメイド』魔法・罠カードを手札に加える。

 そしてドラゴンメイドのお心づくしの効果によりデッキから同属性でレベルの異なる『ドラゴンメイド』を墓地に送る。」

 

 

そう言い、デッキから『ドラゴンメイド・エルデ』を墓地に送った。

 

 

「カードを3枚伏せ、ターンエンド」

 

 

ターン1

 

桃園・朱音 LP8000 手札1枚

 

ー■■■ー

ー□□□ー

 - -

ーーーーー

ーーーーー

 

雙見・遊代 LP8000 手札5枚

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 

たった二枚のカードでモンスターを3体展開し、墓地肥しとサーチをしてきたか。しかし、いずれも低級モンスター、

内一体は500の攻撃表示。狙い目はそこだが……

 

 

「じゃあ行くぜ、フィールド魔法、KYOUTOUウォーターフロント発動!!」

 

 

先ほどまで殺風景だった景色を、高々と生える摩天楼が埋め尽くしていく。

 

 

「そして永続魔法、壊獣の出現記録を発動。そして、魔法カード無の煉獄を発動!デッキから二枚をドローする。

 さらに、もう一枚無の煉獄、2枚ドロー!!」

 

 

「壊獣……」

 

 

「さあ準備は整った!暴れるぜ、俺の壊獣たち!俺はお前の『ドラゴンメイド・チェイム』をリリースし、

 『海亀壊獣ガメシエル』を召喚!!」

 

 

突如、どこからともなくフィールドを飲み込む大波が押し寄せる。その荒れ狂う流水の中から巨大な甲羅をのぞかせる。

がメランが一鳴きすると、今までフィールドを飲み込んでいた水を吹き飛ばした。すでにその時、チェイムは立っていなかった。

 

 

『海亀壊獣ガメシエル』 ATK2200 レベル8 水属性 水族

 

 

KYOUTOUウォーターフロント 壊獣カウンター 0→1

壊獣の出現記録 壊獣カウンター 0→1

 

 

「フィールドからカードが墓地に送られたことにより、ウォーターフロントに壊獣カウンターが一つ乗る。

 そして、壊獣が召喚されたため、壊獣の出現記録にもカウンターが一つ乗る。そして相手フィールドに

 壊獣がいるため、こいつを召喚できる。来い、『怒炎壊獣ドゴラン』!!」

 

デュエルディスクにそのカードを置くと、真下の地面から巨大な地震が二人を襲った。その地震に耐えきれなくなったのか、

地が裂け、炎を吹き出す。その炎の中から恐竜然とした巨大なモンスターが這い上がる。

 

 

『怒炎壊獣ドゴラン』 ATK3000 レベル8 炎属性 恐竜族

 

 

壊獣の出現記録 壊獣カウンター 1→2

 

 

「これにより、壊獣の出現記録にまた一つ壊獣カウンターが一つ乗る。よーし、これでカウンターが3個揃った。

 暴れるぜ、ドゴラン!!効果……」

 

 

「その前に、リバースカードオープン。永続罠、ドラゴンメイド・リラクゼーションを発動。

 ラドリーを手札に戻し、貴様の壊獣の出現記録を手札に戻す」

 

 

「……え?」

 

 

「え?じゃない。戻せ」

 

 

渋々壊獣の出現記録を手札に戻す。せっかく貯めた壊獣カウンターをまた一からため直さなければならない。

 

 

「もう一回壊獣の出現記録を発動。こっちがまた一からなら、ウォーターフロントの方を貯めてやる。

 行くぜ、『破械童子ラキア』!!」

 

 

四肢と顔にちぎれた枷をつけられた人型のモンスターが現れた。憎悪と憤怒を湛えた雰囲気を身にまとっている。

 

『破械童子ラキア』 ATK1500 レベル3 水属性 悪魔族

 

 

「破械まで……貴様、雙見と言ったな。親族に遊都というプロデュエリストが居なかったか」

 

 

「お、兄貴のこと知ってんのか?嬉しいなあ、天国の兄貴も喜ぶよ」

 

 

「ならば尚のこと手加減はできんな。全力で臨ませてもらおう」

 

 

「おう!!さらに俺は手札から、『破械童子アルハ』の効果を発動。自分フィールドのカードを破壊し、

 手札から特殊召喚できる。俺が破壊するのは、『破械童子ラキア』!!」

 

 

天上から現れた赤黒い瘴気をまとったモンスターが、ラキアを踏み潰し場に現れた。

 

 

『破械童子アルハ』 ATK1500 レベル3 炎属性 悪魔族

 

 

「ラキアが破壊されたことにより、効果発動!!自分の手札・デッキから破械モンスターを特殊召喚できる。

 デッキから破械神の禍霊を特殊召喚。守備表示!!」

 

 

『破械神の禍霊』 DEF3000 レベル8 闇属性 悪魔族

 

 

鎖につながれた狂犬の魂が場に召喚された。

 

 

「さらに、カードがフィールドから墓地に送られたことにより、壊獣カウンターを追加するぜ」

 

 

KYOUTOUウォーターフロント 壊獣カウンター 1→2

 

 

「そして『破械神の禍霊』の効果発動!相手の表側表示のモンスター一体と、リンク召喚が可能!!」

 

 

「相手モンスターとリンク召喚……厄介だな」

 

 

「俺は『海亀壊獣ガメシエル』を指定。行っくぜえ!!激痛呑み込むサーキット!!アローヘッド確認、

 召喚条件は「破械神」モンスターを含むモンスター2体!!ガメシエルと禍霊をリンクマーカにセット、

サーキットコンバイン!!」

 

 

二体のモンスターがサーキットに吸い込まれ、青黒い光が場を包み込む。

 

 

「輪廻の苦痛より舞い降りよ、リンク召喚!!全てを飲み込む青き暴獣、リンク2、『破械神ラギア』!!」

 

                      

『破械神ラギア』 ATK1800 LINK2 闇属性 悪魔族 【リンクマーカー:上/下】

 

 

サーキットの光を潜り抜け、禍霊に似た青き獣が地に降り立つ。その獣は目に憎しみを湛え、目の前の

少女を睨みつけた。

 

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!』

 

 

「さらに、カードが墓地に送られたので、壊獣カウンターが乗るぜ」

 

 

KYOUTOUウォーターフロント 壊獣カウンター 2→4

 

 

「ドゴランの効果を発動する気か。させぬ!!罠発動!!ドラゴンメイドのお片付け!!

 ナサリ―を手札に戻し、相手の墓地・フィールドのカードを手札に戻すことができる。

 私が選択するのは、無論、ドゴランだ!!」

 

 

ナサリ―が地を蹴り、華麗に朱音の手札に戻る。そしてこちらも、ドゴランがまねして地を蹴って見たものの、

絵面が完全にバランス崩してこけた壊獣にしか見えない。

 

 

「チッ、このターンは特殊召喚はできそうにないか……だが、もうお前のフィールドにはモンスターが存在しない。

 バトルフェイズに移行し、アルハでダイレクトアタックを行う!滅流炎掌破!!」

 

 

アルハがゆっくりとその顔を標的へと向けると、勢いよく走り始めた。

 

 

「無駄だ、速攻魔法、クリボーを呼ぶ笛を発動。デッキから『クリボー』もしくは『ハネクリボー』を

 手札に加えるか、特殊召喚できる。ハネクリボーを守備表示で特殊召喚」

 

 

『クリクリ~♪』

 

 

『ハネクリボー』 DEF200 レベル1 光属性 天使族

 

 

「ハネクリボーが召喚されたので、攻撃対象を変更し、バトル続行!!」

 

 

突如として目の前に現れた羽の生えた毛玉のモンスターを、アルハは一瞥すると、すぐさま足蹴にして踏み潰した。

 

 

「『ハネクリボー』の効果発動。このターン、自分が受ける戦闘ダメージは0になる」

 

 

「凌がれたか、俺はカードを二枚セットし、ターンエンド。この時、無の煉獄の効果により、手札を

 墓地に捨てる」

 

 

折角、久々のかっこいい壊獣軍団の力が見せられると思ったのに、効果が一度たりとも使えずに終わった……

 

ターン2

桃園・朱音 LP8000 手札3枚

 

 ーーーーー

 ーーーーー

◇ - -

 ー□ーーー

 ー■■◇ー

 

雙見・遊代 LP8000 手札0枚

 

 

 

「(随分見事に踏み荒らされたものだ)」

 

 

朱音は何一つなくなった自分のフィールドを見てそう思った。3体揃えたモンスター、三枚伏せた

魔法・罠。根こそぎ壊され、根こそぎ使わされた。

 

「(……だがまあ、どうということはない)」

 

 

「私のターン、ドロー。まずは、強欲で貪欲な壷を発動。デッキの上から10枚を除外し、2枚ドローする。

 さらに強欲で金満な壷を発動。EXデッキからランダムに6枚除外し、2枚ドローする」

 

 

「6枚!?そんなに除外したら召喚できるやつ居なくなるんじゃ……」

 

 

 「……いや、大丈夫らしいな。手札からドラゴンメイドのお召し替えを発動。

 手札及びフィールドから素材を墓地に送ることにより、

 EXデッキからドラゴン族モンスターを特殊召喚できる」

 

 

「ドラゴンメイドの融合モンスターか。次はどんなメイドさんが出てきてくれるんだ?」

 

 

「残念ながら貴様が思うほど可愛らしいモンスターではない。さあ、手札にあるナサリ―とラドリーを墓地に送り、

 融合召喚!!我が忠実なる僕よ、龍神の力を身に宿し、今ここに顕現せよ。『ドラゴンメイド・ハスキー』!」

 

 

二体のメイドが混ざり合い、黒い翼が広がった。黒ぶち眼鏡をかけ、他のメイドたちとは一味違う威圧感を持つ

侍女が降臨する。

 

 

『ドラゴンメイド・ハスキー』 ATK3000 レベル9 光属性 ドラゴン族 融合

 

 

「攻撃力3000!?」

 

 

「そして『ドラゴンメイド・ティルル』を通常召喚。効果により、ドラゴンメイドモンスターを1枚手札に加え、

 1枚墓地に送る」

 

炎の柱が上がり、その中から赤い龍の尾を持つ侍女がフィールドに召喚された。

 

 

『ドラゴンメイド・ティルル』 ATK500 レベル3 炎属性 ドラゴン族

 

 

「さらに墓地のドラゴンメイドのお召し替えの効果を発動。ティルルを手札に戻し、このカードを手札に加える。

 ドラゴンメイドが手札に戻ったので、ハスキーの効果を発動。相手モンスターを一体破壊する。

 対象は無論、そのリンクモンスター!!」

 

 

「させるか!!罠発動、破械昌導!!『破械神ラギア』を破壊することにより、相手カードを一枚破壊できる。

 対象はハスキー!!」

 

 

「速攻魔法、融合解除!!ハスキーを分離し、『ドラゴンメイド・ナサリ―』、『ドラゴンメイド・ラドリー』

 の二体を墓地から特殊召喚できる。さらにナサリ―の効果でレベル4以下の『ドラゴンメイド・チェイム』

 を特殊召喚し、ラドリーの効果でデッキから3枚墓地に送り、デッキから『ドラゴンメイド』カードを手札に加える」

 

 

『ドラゴンメイド・ラドリー』 DEF1600 レベル2 水属性 ドラゴン族

 

 

『ドラゴンメイド・ナサリ―』 DEF1600 レベル2 地属性 ドラゴン族

 

 

『ドラゴンメイド・チェイム』 DEF1800 レベル4 闇属性 ドラゴン族

 

 

「うわあ、また展開してきたか。ならこっちも負けてられねえな。破壊されたラギアの効果、

 墓地の悪魔族を手札に加える。そしてカードが墓地に送られたことにより、

 壊獣カウンターが乗る。つっても、5個以上は乗っけられねえけどな」

 

 

KYOUTOUウォーターフロント 壊獣カウンター 4→5

 

 

「手札より、再度ドラゴンメイドのお召し替えを発動!!」

 

 

「クッ、またハスキーか」

 

 

「いいや、我が忠実なる僕はさらにその上を行く。手札の『ドラゴンメイド・ティルル』と『ドラゴンメイド・フランメ』を

 素材とし、融合召喚!!黒の衣裳を見に包み、絶対なる力で我が覇道を阻む塵を払うがいい。

『ドラゴンメイド・シュトラール』!!」

 

 

天が裂けた。そう表現するにふさわしい巨大な溝が天上に現れた。その中から、かすかながらはばたく音が聞こえる。

その音は徐々に近づき、その音の主が見えた。圧倒的な威圧感を放つ黒き龍が、遊代を睨みつけた。

 

 

『グオオオオオオオオオオオ!!!!』

 

 

『ドラゴンメイド・シュトラール』 ATK3500 レベル10 光属性 ドラゴン族 融合

 

 

「すげえ……これがお前のエースか!!」

 

 

「何を寝ぼけたことを」

 

 

「え?」

 

 

「バトルフェイズ!!ここで、ナサリ―、ラドリー、チェイムの効果を発動。ナサリ―とラドリーはレベル7、

 チェイムはレベル7以上のドラゴンメイドを、こいつらを手札に戻して、手札もしくは墓地から特殊召喚する!

 私が召喚するのは、墓地から『ドラゴンメイド・エルデ』、『ドラゴンメイド・フルス』、『ドラゴンメイド・フランメ』!!」

 

 

3体の侍女の姿が変貌してゆく。龍の力を解放し、それぞれが対応する龍の姿となった。

 

 

『ドラゴンメイド・エルデ』 ATK2600 レベル7 地属性 ドラゴン族 

 

 

『ドラゴンメイド・フルス』 ATK2600 レベル7 水属性 ドラゴン族

 

 

『ドラゴンメイド・フランメ』 ATK2700 レベル8 炎属性 ドラゴン族

 

 

「攻撃力2600以上のモンスターが3体……」

 

 

「行け、我が忠実なる僕よ!!『ドラゴンメイド・シュトラール』の攻撃、バニッシュインフェルノ!!」

 

 

「クッ、行け、アルハ!!滅流炎掌破!!」

 

 

赤い枷のつけられた悪魔でさえ、絶大な力を持つ龍の前には無力だった。シュトラールの振るう圧倒的速度の

拳をもろに受け、文字通り塵一つ残すことなく消し飛んだ。

 

 

LP8000→LP6000

 

 

「ぐっ、だがここで、罠、リビングデッドの呼び声を発動!!蘇れ、『破械神の禍霊』!!」

 

 

「無駄だ、シュトラールの効果発動。貴様のその罠の効果を無効にし、破壊する。そして、シュトラールをデッキに戻し、

 『ドラゴンメイド・ハスキー』を特殊召喚する!!」

 

 

「何!?」

 

 

「再び現れよ、我が忠実なる僕よ!!『ドラゴンメイド・ハスキー』!!」

 

 

再び現れたその侍女は、遊代に受かって慇懃に礼をして見せた。

 

 

『ドラゴンメイド・ハスキー』 ATK3000 レベル9 光属性 ドラゴン族 融合

 

 

「特殊召喚されたハスキーには攻撃権が残っている。行け、ハスキー!バニッシュメントウィップ!!」

 

 

「……」

 

 

「……どうした、ハスキー。なぜ攻撃しない」

 

 

おもむろに遊代のフィールドに目を向けると、振り子時計のように鐘を鳴らす悪魔の姿が目に付いた。

 

 

『バトルフェーダー』 DEF0 レベル1 闇属性 悪魔族

 

 

「このモンスターは、相手の直接攻撃宣言時、手札から特殊召喚することで攻撃を無効にし、バトルフェイズを強制終了させる」

 

 

「手札誘発効果か……しかし無の煉獄で手札を0にした貴様がいつそんなカードを……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『破壊されたラギアの効果、墓地から悪魔族モンスターを手札に加えるぜ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの時……」

 

 

「これでもうお前は追撃することはできない。……あっぶねー、このターンでやられるかと思った」

 

 

「私はこのターンで倒し切るつもりだったんだがな。バトルフェイズ終了時、上級ドラゴンメイドモンスターたちは

 手札に戻り、下級ドラゴンメイドモンスターたちを特殊召喚する」

 

 

 

『ドラゴンメイド・ラドリー』 DEF1600 レベル2 水属性 ドラゴン族

 

 

『ドラゴンメイド・ナサリ―』 DEF1600 レベル2 地属性 ドラゴン族

 

 

『ドラゴンメイド・チェイム』 DEF1800 レベル4 闇属性 ドラゴン族

 

 

「さらに、ドラゴンメイドモンスターが手札に戻ったことにより、ハスキーの効果発動。『バトルフェーダー』を破壊する」

 

 

ハスキーの尾の一振りで、せっかくバトルフェイズを生き残ったたった一体のモンスターさえ破壊された。

 

 

「たかが1ターン凌ぎ切っただけだ。貴様が不利なことは何も変わらない。ターンエンド」

 

 

ターン3

桃園・朱音 LP8000 手札3枚

 

 ーー◇ーー

 ー□□□ー

◇ - □

 ーー□ーー

 ーーー◇ー

 

雙見・遊代 LP6000 手札0枚

 

 

「……確かにその通りだ。手札は0だし、LPは6000あるとはいえ、そっちのモンスターたちなら一瞬で削り切れる」

 

 

「よく分かっているじゃないか」

 

 

「でもさ、ここで逆転のカードを引けたら面白いと思わないか?」

 

 

「……そんな都合のいいことが起こるとは思えんな」

 

 

「そうか?俺は思ってる。俺のデッキ……力を貸してくれ、ドロー!!!」

 

 

その時少しだけ、遊代の顔が曇ったが、すぐさま表情を戻した。

 

 

「相手ターンのスタンバイフェイズにハスキーの効果発動。このカード以外のモンスターのレベルの1つ上か

 1つ下のレベルを持つモンスターを墓地から特殊召喚できる。私はチェイムの1つ下を指定。

 来い、『ドラゴンメイド・パルラ』」

 

 

『ドラゴンメイド・パルラ』 DEF1700 レベル3 風属性 ドラゴン族

 

 

寄り集まってできた空気の層を振り払い、中から緑髪のメイドモンスターが登場した。

 

 

「こいつの効果で、墓地にドラゴンメイドカードを墓地に送る。『ドラゴンメイド・ルフト』を墓地へ」

 

 

「気を取り直して、俺は手札から、無の煉獄発動!!デッキから2枚ドローする!!……」

 

 

「どうだ、逆転のカードを引けたか?」

 

 

彼はその問いに答えることなく、手札から魔法ゾーンにカードを示した。

 

 

「手札から、貪欲な壷発動。デッキに5枚モンスターを戻し、二枚ドロー。さらに!!強欲で貪欲な壷発動!!

 デッキの上から10枚除外し、二枚ドローする!!」

 

 

「ここにきて連続ドローか」

 

 

「よし、準備は整った!!行くぜ、壊獣たち!!手札から、妨げられし壊獣の効果発動!!

 お互いのフィールドのモンスターすべて破壊する!!」

 

 

「何だと!?」

 

 

フィールドに再び巨大な地震が襲う。地が割れ、火が噴出し、雷が天から振り下ろされる。

メイドたちが地に飲まれ、火に焼かれ、雷に打たれ、全滅した。

 

 

「その後、デッキからお互いのフィールドに壊獣を1体ずつ特殊召喚できる。あんたのフィールドには

 『多次元壊獣ラディアン』、俺のフィールドには、『雷撃壊獣サンダー・ザ・キング』を特殊召喚!!」

 

 

地割れの中から這い上がり、悪魔のような巨大怪獣がフィールドを自身の巨体で埋める。

そして、先ほどまでの暗雲が突如として晴れた。雲が大きく割れ、三つ首の帯電した龍が現れる。

 

 

『怒炎壊獣ドゴラン』 ATK2800 レベル7 闇属性 恐竜族

 

 

『雷撃壊獣サンダー・ザ・キング』 ATK3300 レベル9 光属性 雷族

 

 

「そして手札から、熱き決闘者たちを発動!!」

 

 

「熱き決闘者たち……ッ!!」

 

 

「兄貴を知ってるなら、兄貴の必殺コンボは知ってるよな。壊獣の出現により、壊獣の出現記録にカウンターが二つ乗る」

 

 

壊獣の出現記録 壊獣カウンター 0→2

 

 

「そして、サンダー・ザ・キングの効果発動!!KYOUTOUウォーターフロントのカウンターを3つ取り除き、

 このカードは相手モンスターに三回攻撃ができ、このターン、お前はモンスター、罠、魔法カードを使うことができない」

 

 

KYOUTOUウォーターフロント 壊獣カウンター 5→2

 

 

「そして速攻魔法、ハーフシャットを発動。攻撃力を半分に下げ、戦闘では破壊されなくする。対象はもちろん、

 『多次元壊獣ラディアン』!!」

 

 

『多次元壊獣ラディアン』 ATK2800→1400

 

 

「バトルだ!!行け、サンダー・ザ・キング!!雷鳴のサンダーバースト!!一撃目!!」

 

 

桃園・朱音 LP8000→6100

 

 

「二連打!!」

 

 

桃園・朱音 LP6100→4200

 

 

「……」

 

 

「三連打!!この時、熱き決闘者たちの効果発動!!この攻撃を無効とし、相手の魔法・罠カードを破壊する。

 対象は、ドラゴンメイド・リラクゼーション!!そして手札から速攻魔法、ダブル・アップチャンスを発動。

 攻撃を無効とする効果が発動したときに発動でき、攻撃力を倍にして再度攻撃可能!!」

 

 

『雷撃壊獣サンダー・ザ・キング』 ATK3300→6600

 

 

「止めだ!!サンダー・ザ・キングの攻撃、雷鳴のサンダーバースト!!4連打!!」

 

 

桃園・朱音 LP4200→0

 

 

立体映像が消えていく。聳え立っていた摩天楼も、巨大な二対の壊獣たちも。

 

 

「(いつぶりだろう、ここまで見事に消し飛ばされたのは)」

 

 

「楽しい決闘だったぜ、朱音」

 

 

そう言って彼は右手を差し出した。その右手に、こちらも手を重ね合わせる。

 

 

「!!……これ」

 

 

「私に勝った餞別代りだ。受け取っておくがいい。そら、そろそろ試験が始まるぞ」

 

 

「お、本当だ。んじゃあまたな。お互い受かるといいな!!」

 

 

そう手を振りながら試験会場の方へと走ってゆく。途中でこちらのほうばかり見ていたせいか、電柱に気づくことなく

顔面を強打していた。

 

 

「……似らぬものだな、兄弟とは」

 

 

『お疲れ様でした、お嬢様。しかしお嬢様、何故あの場面で手をお抜かれになられたのでしょう』

 

 

半透明の龍の尾が生えた黒ぶち眼鏡をかけた侍女が仏頂面でそう問うた。感情があるのか、それとも隠すことがうまいのか。

疑問を投げかける時でさえ、眉一つとさえ上げることはない。

 

 

『あの時、手札に龍の鏡がございました。あれで≪ご主人様≫を呼べたはず。そうすれば6000LPなど跡形もなく消し飛ばせたはず』

 

 

「……貴様にそんな詮索癖があったとはな。『ドラゴンメイド・ハスキー』」

 

 

いつからだったか、私にはデュエルモンスターズの精霊なるものが見えていた。私以外にこの侍女どもが見えたやつには

まだ会えていない。しかしながらこの精霊というもの、中々どうして面倒なものだ。

一匹いれば百匹いるというゴキブリ理論が適用されているようで、精霊が一匹見え始めると、何匹も見え始める。

 

 

『それはともかくとして、何故あのカードをあの少年に?あのカードは遊都様からの……』

 

 

「だからこそだ。アイツには、あのカードが必要だろう。死者の想いを伝える――――」

 

 

『う、うわあああああああ!!やっちゃったああ!!!」

 

 

「またかラドリー!!貴様というやつはいつもいつも!!」

 

 

『ごめんなさあああああああああい!!!』

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