久しぶりすぎてあんまちゃんと書けてる自信ないけど許してくだせぇ……
結果的に2対1とリードして前半を終えた雷門だが、ベンチの雰囲気はそうとは思えない程に悪い。
「何か言いたい事があるなら言ってみればどうだ。尤も、私からすればあの程度のパスも受け取れないお前達に問題があると思うがな」
「なんだと……!!」
前半で終始好き勝手し続けた吹雪のその言葉に、元々吹雪をあまり良く思っていない染岡や土門といった面々は怒り心頭である。
斯く言う俺も今回は擁護するつもりはない。前半終了間際のゴールでいくらか気は晴れたが、後半も同じ様なプレーを続けるつもりなら溜まったものではない。
「吹雪」
「何だ、キャプテン?」
俺も吹雪に再度文句を言おうとしたが、それより早く風丸が吹雪に声を掛ける。キャプテンと呼んではいるが、明らかに馬鹿にした態度だ。
「何であんなパスを出すんだ」
「私はちゃんと取れるパスを出しているが?」
白々しいことこの上ない。いったいどの口が言っているのか。
「吹雪、俺達はチームだ」
「だから?」
「俺はお前を信じたいと思う。でも、そうじゃない奴だって居る」
「ほう」
これには俺も含め、周りで聞いていた者達もギョッとしてしまう。これでは皆吹雪の事を信じていないと言ったも同然だ。吹雪とてそんな事は分かってはいるだろうが、わざわざ口に出すとはどういうつもりなのか。
「だけど、お前の実力は皆知ってる。お前という人間を信じられなくても、それだけは信じられる」
まあ、それはそうだろう。逆に言えば、その実力があるからこそ、こうして吹雪も好き勝手できているのだから。吹雪に不満があったとしても、自分の方が強いと言われれば反論は難しい。
「その上で聞く。お前は、ちゃんと取れるパスを出しているんだな?」
「………ああ」
嘘は許さないと言わんばかりの風丸の視線を受けながら、やや間が合ったものの、吹雪も答えを返す。
「……分かった。なら、後半からはあのパスは俺にだけ出せ」
「何?」
「おい、風丸?」
思わず染岡が声を上げるが、吹雪も風丸もそれに反応はせず。吹雪は風丸の意図を探る様にその顔を見つめる。
「………いいだろう。精々頑張る事だな」
「ああ。ありがとう」
「貴方達、あまり勝手な事を言わないでくれるかしら」
ここで監督が話に入って来たが、会話の切れ目を探っていたのが丸分かりだ。悪い人ではないのは分かるが、正直この試合は指揮などなくとも勝てる。あまり役に立たないのは否定できない。
「前半をリードして終われたのは良しとします。でも吹雪君、貴方勝手な事をし過ぎよ。チームの一員だという自覚を持って────」
「黙れ無能」
吹雪に対して苦言を呈する監督だが、吹雪の絶対零度の視線を向けられ口を噤む。まあ、言って聞くなら最初からあんなプレーはしないだろう。
監督の気持ちはも分かるが、言うだけ無駄だ。
「おい吹雪、言い過ぎだぞ!」
「無能を無能と呼んで何が悪い?どうしても私に指図したいのであれば、地に頭を垂れて懇願でもするんだな」
「吹雪!」
風丸が注意するも、吹雪は何処吹く風といった様子だ。くだらないとでも言う様に鼻で笑い、フィールドへ向かう。
「監督、吹雪の肩を持つ訳では無いですが、前半は吹雪が散々好き勝手した状態でもリードできているんです。ちゃんと戦えれば確実に勝てる相手だ。一旦このまま後半は任せてくれませんか。何かまずい状況になれば、その時は指示をください」
俺の言葉に、お前もか、とでも言いたげな視線を向けてくる監督。まあ、言葉を濁してはいるが、何もしなくていいから黙ってベンチに座ってろと言ってる様なものだからな。それを読み取れない程鈍い人ではないか。
「………分かったわ。ただし、その時はきちんと指示に従ってもらうわよ」
「ええ。もちろんです」
後半はイプシロンのボールから試合再開となる。前線の高い位置から俺や染岡がプレスを掛けるが、イプシロンは冷静に細かくパスを繋げてこちらを躱してくる。リードを許しているとはいえ、それでヤケになる様な程度の低い相手では流石にないな。
「ボルケイノカット!!」
「良いぞ、土門!」
だがここで土門がファドラからボールを奪う事に成功する。その前には吹雪と不動が居るが、前半で散々意味不明なプレーを繰り返していたせいか、吹雪にはマークが付いていなかった。
「不動!」
それを見た土門は一瞬迷った様な素振りを見せたが、不動へのパスを選択する。状況だけを見れば吹雪にパスを出した方が良いように見えるが、吹雪への信頼の無さが不動へのパスを選ばせた。まるで原作アニメにおける、ダイヤモンドダスト戦のアフロディの様だな。
「財前!」
「よし!鬼道!」
パスを受け取った不動にはメトロンがマークに付いていたが、持ち前のテクニックでボールをキープし、塔子へとボールを繋ぐ。塔子は不動からのパスをダイレクトで俺に繋げようとしたが、このボールはセンターバックであるタイタンのヘディングによって弾き返されてしまった。
1対1の状況に持ち込めれば負ける気はしないが、パスをカットされてしまってはどうしようもない。俺も何とかパスを受けようとはしたが、相手のポジショニングが良かった。
ただ、問題はこの弾かれたボールの行き先である。
まるでそこに来るのが分かっていたかの如く、走り込んだ吹雪がそのボールを収めた。そしてすぐさま、風丸に向かってパスを出した。
────くそっ!遠い!
自分の前方へと蹴り出されたボールに全力で向かう風丸だったが、思わず内心で愚痴を零してしまう。
前半で吹雪は何度か風丸にもパスを出していたが、風丸は一度もそれをまともに受ける事ができなかった。
無論それを誰かに責められた訳ではないし、自分に非があるとは思っていない。
────でも、だからって今のままで良い訳がない。
吹雪は前半に際どいパスばかり出していたが、逆に言えば常にギリギリのパスを出せるぐらいに、皆の身体能力を把握しているという事でもある。
きっと自分達が思っている以上に、吹雪は周りを見ているのだろう。けれど、今のままでは皆吹雪の事を理解しようとはしないだろう。それでは駄目だ。
プロミネンスとの試合の後、染岡と話し合った風丸は皆を信じる事の大切さに気づいた。同時に、自分は円堂の様なキャプテンになれない事も。
だが、そんな自分でも、率先して吹雪と向き合う事はできる。全力でぶつからなければ、きっと吹雪は心を開いてはくれない。ならばそれは自分の役目だ。
それが、キャプテンとして自分ができる事だから。
「すまん、吹雪!もう一度パスをくれ!」
必死に伸ばした足をすり抜け、ボールがサイドラインを割る。拳を地面に叩きつけたくなる衝動を飲み込み、吹雪に再度パスを出す様に要求する。
吹雪はそんな風丸の姿に何も言わず、しかし要求通りに何度も風丸へとパスを出す。
2度、3度、イプシロンの猛攻を凌ぎつつも、自分がチャンスを駄目にしてしまっている事に焦りを覚え始める風丸。だが挑戦は止めない。
「今度こそ……!?」
風丸の走り出しにタイミングを合わせた吹雪のボールは、先程までよりも更に少し遠く見えた。無理だ。届かない。
そんな弱気な想いが鎌首を擡げ────それを認めつつ、それでも足を動かす。
風丸は同年代のサッカープレイヤーとしては優秀な部類に入る。本業であるディフェンスも上手いし、足の速さを活かしたドリブル突破や、シュート技を決めた事すらある。けれど、その程度では駄目なのだ。
鬼道や吹雪、今この場には居ない豪炎寺の様な、飛び抜けた力を持つ面子を纏め上げるには、それでは足りない。それこそ円堂の様な、実力とは別に言葉では言い表せない"何か"が必要だ。
風丸にはそんなものは無い。風丸が胸を張って誇れるのは、己の脚くらいなのだ。
「おおおお……!!」
白恋中との試合で吹雪を抜き去った時の事を思い返す。あの時、確かに風丸は今の限界を超えたスピードを出す事ができていた。
けれど、それと同時に、限界を超えるなんていうのは、ほんのひと握りの選ばれた人間だけができる事だとも思う。そして、自分はきっとそんな人間ではない。
ならば、あの時のスピードをもう一度出す事は、決して不可能ではない筈なのだ。
自分が思っていたよりも、自分の限界はもう少し先にあるだけ。
そこに届くように、一歩、二歩、前へ、前へ────。
「あぁぁぁぁ!!!!」
勢いのまま、無我夢中で身体を投げ出した先で、ボールと風丸の距離はゼロになった。
吹雪の無茶振りパスに食らいついた風丸が、ダイビングヘッドに近い形で中央の不動へボールを折り返す。
散々失敗に終わっていたパスが通るとは思っておらず、虚を突かれる形となったイプシロンの陣形が崩れているのを見て、不動はすぐさま高くボールを蹴り上げた。前半の得点から、鬼道なら多少距離があろうとゴールを奪えるという判断だ。
その鬼道は風丸がボールに追いついた瞬間から、いち早く動き出してタイタンのマークを振り切っていたものの、下がって来ていたファドラとクリプトが迫って来ている。
それに構わず鬼道はボールに向かって跳躍するが、ファドラとクリプトも一瞬遅れて跳ぶ。
「確か……こんな感じ、だったか!」
「「なっ!?」」
吹雪が原作アニメで、競り合いになったイプシロンの選手を踏み台にした光景を脳裏に浮かべながら、2人の背中を足場にして、蹴り落としながら再度跳躍する鬼道。
「デス……スピアァーー!!」
イプシロンのゴールへと放たれたこの試合2度目となる死の槍は、デザームが繰り出した〈ドリルスマッシャー〉を再度打ち砕き、見事にゴールネットを揺らした。
リードを2点に広げ、歓喜に湧く雷門。中でもゴールを決めた鬼道と、吹雪のパスに追いつき、ボールを繋いだ風丸は仲間達からの祝福を受けていた。
「ナイスゴール、鬼道クン」
「お前も良いボールだったぞ、不動」
「よく追いつけたなぁ、風丸!」
「流石ッス、風丸さん!」
「痛っ、お前ら背中叩くなって」
チームメイトから揉みくちゃにされている風丸に、吹雪が近寄っていく。それに気づいて風丸の背中をバシバシと叩いていた染岡や、壁山や栗松といった群がっていた面々も空気を読み、一歩下がる。
「吹雪」
「………」
向かい合う吹雪と風丸。吹雪は相変わらず無表情ではあるが、その眼はしっかりと風丸を見据えている。
「ギリギリ及第点と言ったところか。多少使える駒である事は認めてやろう。これからも精々励むんだな。凡人」
それだけ言って自陣へと戻って行く吹雪。その態度に染岡が一言物申そうとするが、それは風丸が制する。
「良いんだ。今はこれで」
それはちっぽけな事かもしれない。けれど確かに、それは和解への第一歩になるのだ。小さな歩みでも、それを止めなければいつかは辿り着ける。
その時、きっと吹雪と分かり合える。風丸はそう信じていた。
試合の流れは完全に雷門に傾いている。このままならば、雷門の勝利は間違いないだろう。
このままならば。
「審判……ポジションチェンジだ」
本当は100話記念で何かしようかと思ってたけど、期間開きすぎてそんな感じじゃなくなっちゃったんで、次話から四馬鹿共のキャラ紹介でもしようかと思います。………そんな書く事あるか分からんけど。