原作を壊したくない円堂守の奮闘記   作:雪見ダイフク

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ちょい短いです。


独白

「何なんだよ……こいつら……」

 

漫遊寺中で繰り広げられる雷門とイプシロンの試合。その一部始終を見ていた木暮夕弥の口から、思わずそんな言葉が漏れ出た。

 

雷門中サッカー部。今年のフットボールフロンティアで優勝した、日本一のチーム。曲がりなりにもサッカー部員として、木暮もその名前を聞いた事はあった。しかし、自身が所属する漫遊寺のサッカー部は対外試合を行わない。大会で対戦する機会もなければ、それ以前に自分はまともに練習すら参加させてもらえない控え選手でしかない。そんな木暮にとって、日本一に上り詰めた存在など、決して手が届かぬであろう遠い存在でしかなかった。

そして、そんな雷門中サッカー部と同じく、各地を襲っているという宇宙人の事も、木暮は自分とは関係ない遠い世界の出来事の様に思っていた。

 

そんな存在達が目の前で繰り広げるサッカーから、目を離すことができない。

 

初めて見た時は、自分が仕掛けた悪戯に簡単に引っ掛かる間抜けな奴らだと思った。日本一なんて言ったところで、こんなものかと馬鹿にしていた。

この分なら、こいつらが戦っているという宇宙人だって、大した事ない奴らなんだろうと、そう、思っていたのに。

 

フィールドの外から見ているというのに、そのスピードは目で追うだけで疲れてしまう程で、そのシュートは信じられない程に強烈で、その必殺技の迫力に実際に食らったわけでもないのに圧倒された。

 

漫遊寺のサッカーは、あくまで心を鍛える為のものだ。練習は常日頃から欠かさず行うし、その中で試合形式の練習をすることだってある。部員の誰もが、真剣にサッカーに打ち込んでいる。

けれど、それはどこまでいっても勝つ為のものではないのだ。自らの心を律し、精神を鍛える。その為のもの。

そんなものが何になるのかと馬鹿にしながらも、木暮はサッカーというものをそれしか知らなかった。

もちろんテレビでプロの試合を見たりしたことはあったが、実際に目の前で繰り広げられる、勝利を目指してお互いの全力をぶつけ合うサッカーは、そんなものよりもずっと、木暮の心を強く打った。

 

『サッカーに自信が無いから、こんなことしてるんでしょ!?』

 

音無、だったか。昨日の夜、道場に悪戯を仕掛けている最中に出くわした、雷門中のマネージャーと口論になって言われた言葉が頭を過ぎる。

 

それはどうしようもない程に、木暮の痛い所を衝いていた。本当は分かってる。雑用をさせる意味も、原因が俺にあるのも。

でも、どうしても信じられなかった。自分を置いて居なくなった母親の様に、他人なんて内心では何を考えているのか知れたもんじゃない。

裏切られて傷付くくらいなら、最初から近づかなければいいんだ。

 

自分に実力が足りないからだと分かっていても、わざと取れないパスを出したのだと相手に言い掛かりをつけた。過剰な仕返しを行い、馴れ合いを拒んだ。周りは全て敵だと、そう思い込んだ。

そして、それは上手くいっていた。漫遊寺の連中は木暮の事を問題児として扱い、思惑通り木暮は一人になった。

それで、良かったはずだったのに。

 

それをあの女は、木暮の事なんて何も知らないくせに、ずけずけと言いたい事を言ってきて、木暮が何を言っても痛い反論を返して来た。垣田達よりも遥かにしつこく言い募ってくるその姿に苛立ちを覚えた。何より、木暮と正面から向き合おうとするその姿に、淡い期待の様なものを抱いた自分を嫌悪した。

 

『見せてみなさいよ!貴方の本気のサッカーを!』

 

好都合だと思った。どれだけ綺麗事を並べたところで、相手は日本一のチームのマネージャーだ。長い間まともにボールを蹴っていない木暮の実力を見れば、落胆して勝手に離れていくに決まっている。

そう思っていたのに、あの女も、あの女の兄だという男も、木暮がどれだけ情けない姿を見せても、そんな様子は微塵も見せなかった。

 

楽しかった。全く歯が立たず、ボールを奪える気は最後まで湧かなかったが、それでも、何も考えずただボールに向かうのは、楽しかった。

 

木暮はサッカーが好きだ。どんなに居心地が悪くても、回りくどい事をして孤立を選んでも、それでもサッカー部を辞めないのはそんな単純な理由でしかない。

 

「俺も……あんな風に……」

 

今はまだ、余りにも遠い世界。けれど、いつかは───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「監督!何か手を打たないとこのままじゃ……!」

 

デザームがFWにポジションを変えて以降、明らかな劣勢に追い込まれている現状に、雷門ベンチの木野が瞳子を見やる。

だが、瞳子はそんな木野に何も言わない。否、言えない。

 

瞳子はとても歯痒い思いをしていた。策があるのなら疾うに打っている。勝手な事をし続けているとはいえ、吹雪を下げるのは論外だ。控え選手は目金しか居らず、交代させたところで弱点を増やすだけだろう。

加えて吹雪は相変わらずデザームを止めるつもりは無いようだが、決定的なパスは幾度も潰しており、この状況に陥っているのが吹雪のせいだとするなら、この状況を保てているのも吹雪のおかげだと言える。

どうにか追加点を奪おうにも、確実な得点源である鬼道は複数人でマークされており、パスを通すのも難しい。

かと言ってディフェンス面で何か手を打とうにも、ほぼ全員が下がって守備に徹しているこの状況で、多少フォーメーションを変えたところで効果は薄いだろう。むしろそれが原因で守備のリズムを崩す事に繋がりかねない。

 

瞳子は考える。吹雪を下げるのは論外。だがそれは、この試合に勝つ為の話。これからのことを考えれば、今日この試合に敗北するとしても、吹雪を下げることにもきっと意味はある。

このまま吹雪の好き勝手にさせていては、いつか手痛いしっぺ返しを食らう。瞳子の指導者としての直感がそう訴え掛けている。どんな罵詈雑言を浴びせられるのだとしても、全てが自分の思い通りにいくわけではないのだと教えなければならない。本来であれば、人が成長していく過程で自然と教えられる当たり前のことを、教える必要があるのなら、それはチームの引率者である瞳子の役目だ。しかし───。

 

「それでも……私は……」

 

頭ではどうするべきかは分かっている。だが、瞳子の立場が、目的がそれを躊躇わせる。

 

「私の使命は……エイリア学園を倒すこと」

 

瞳子はとある事情からエイリア学園の内情については誰よりも詳しい。無論、全てを知るわけではないが、警察やマスコミなどよりも遥かに詳細な情報を持っている。

故に、何を差し置いてもエイリア学園を倒すことが先決だという意識を捨てることができない。

今ここでイプシロンを倒すことができれば、瞳子の目的に大きく近づく。逆に負けてしまえば、その道は遥かに遠のいてしまうだろう。

イプシロンよりも強大なプロミネンスが後ろに控えているし、バーンにグランと呼ばれていたあの少年のこともある。あれは間違いなく、瞳子が弟の様に接していた()()()だ。口ぶりからして、恐らくはプロミネンスと同格か、それ以上のチームの一員か、或いは率いているのだろう。

一刻も早く、止めなければならない。間違った道に進もうとしている彼等を。他でもない瞳子の手で。

 

指導者としての責務と私情を天秤に掛け、後者を選ぶ。

責められるべき行いだという自覚はある。全てが終われば、どんな非難も甘んじて受けよう。だから、今は───。

 

 

そんな瞳子の視線の先で、再び放たれたデザームの〈グングニル〉が源田の〈ハイビーストファング〉を打ち破り、遂に試合は振り出しへと戻るのだった。





キャラ紹介②
【豪炎寺修也】
作者公認チート。世界のバグ。生まれてくる世界を間違えた男。シスコン1号。
例によって初期設定は原作よりちょっと天然入ってることくらいだったはずなのだが、暴走に暴走を重ねて今に至る。どこから間違えたかは分かるが、何故こうなったかは作者にも分からない。
作中で影山が100年に1人の怪物と称しているが、読者からは100年に1人もこんな奴がいてたまるかというツッコミを受ける。尤もである。
現在はヌルゲー化を避ける為、作者によってあの手この手でチームを追い出された。が、今度は帰って来た時にどんな化け物になってるのかと頭を抱える羽目になっている。解せぬ。
並行世界線の未来では自力で時空を超えたりしており、本当に人間かも疑わしくなってきている。
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