原作を壊したくない円堂守の奮闘記   作:雪見ダイフク

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連続投稿は諦めたが、帝国戦はなるべく早く更新します。
本日2話目。


怯える心

「───堂、円堂!!」

 

その声で、目を覚ます。俺、どうしたんだっけ。

 

「円堂!しっかりしろ!」

「風丸……?」

 

俺、確か……。そうだ、帝国との試合が始まって、それで……。

 

「ぐっ……!?」

 

体の痛みで目が覚める。鬼道の〈デススピアー〉を受けて気を失っていたのか。

劇場版イナズマイレブン、最強軍団オーガ襲来に登場するオーガのキャプテン、バダップが使う必殺技、〈デススピアー〉。ゲームでは世界編に実装されている。

豪炎寺といい鬼道といい、どうなってんだよ。なんでお前ら揃いも揃って段階をすっ飛ばしていくんだ。俺も混ぜて欲しいぜ、全く。

 

「円堂!大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だ」

 

風丸だけじゃなく皆もゴール前に集まってきている。フィールドの外に出されてないってことは、直ぐに目覚めたんだろうけど、気絶してたしな。皆が心配するのも無理はない。

 

「物凄いシュートだったな、今の」

「あんなのどうすればいいんだよ……」

 

鬼道の〈デススピアー〉の威力を見て、萎縮してしまっている。どっからどう見てもヤバいシュートだったからな。だけど、

 

「いや、恐らくあのシュートはそう何度もノーリスクで打てるものじゃない。少なくとも前半にもう一度打ってくることはない、と思う」

 

俺の予想が間違っていなければ後半にはまた打ってくる可能性はあるが、前半は大丈夫だと思う。

今の俺では〈デススピアー〉を止めることは正直言って難しい。最低でもあと1失点は覚悟しておいたほうがいい。

 

「まだ始まったばかりだ。前半のうちに逆転してやろう!」

 

リードを許した状態で〈デススピアー〉を打たれて突き放されたら、逆転するのは難しい。理想は2点リードすることだが、そう帝国は甘くない。前半で何とか最低でも同点まで持って行ければいいんだが……。

 

 

試合再開後、染岡と豪炎寺が帝国陣内へ攻め上がっていく。

 

「直ぐに同点にしてやるぜ!いくぞ豪炎寺!ドラゴン───」

「トルネード!!」

 

一度は源田からゴールを奪った染岡と豪炎寺の連携。赤く染まった竜が帝国ゴールに襲い掛かる。

 

「パワーシールド……V2!!」

 

しかし、源田の進化した衝撃波の壁によって弾き返される。鬼道だけじゃない、他の選手も原作よりも強化されているのか。

 

「クロスドライブ!!」

「ふっ!」

 

こぼれ球を押さえたマックスがシュートを放つが、源田はこのシュートを必殺技も使わず軽々とキャッチ。やはりFWの二人以外のシュートではパワーが足りないか。

 

ボールは源田から佐久間へ。王者の名に恥じぬ素晴らしいパス回しで、雷門イレブンを翻弄。誰一人ボールに触れられないまま、ゴール前へと運ばれる。

 

「百裂ショット!!」

 

寺門の必殺シュート。だが、この技はそこまで威力は高くない。止められる。

しかし、その瞬間、先程の〈デススピアー〉がゴールに迫ってくる光景が頭を過ぎる。

 

「………!!」

 

パンチングで弾こうとしたが、ボールの中心から僅かにズレたか、ボールは弾かれることなく、軌道は逸れたものの雷門ゴールへ。そのままゴールするかと思われたが、ボールはクロスバーを叩き、ゴールラインを割り帝国のコーナーキックとなる。

俺は自分の右手に視線を落とす。何かに怯えるように震える右手。

 

────何だ、これ。

 

帝国の佐久間のコーナーキック。

 

「ダークトルネード!!」

 

ゴール前に蹴りこまれたボールに鬼道が反応し、シュートを放つ。そのシュートを止める為、〈ゴッドハンド〉を発動しようとする。

しかし、今度はかつての練習試合で〈ダークトルネード〉によってゴールを奪われた場面がフラッシュバックする。

 

────またかよ………!!

 

〈ゴッドハンド〉の発動は何とか間に合ったものの、充分な気が込められておらず、〈ダークトルネード〉を止めきることができずに、神の手が砕け散る。だが、またしてもボールはクロスバーに弾かれ、このボールを風丸が大きくクリア。何とか危機を逃れる。

 

────どうしちまったんだ……!!俺の体……!!

 

右手だけでは無い。全身に微かだが震えが走っている。

こんな、大事な試合で、何がどうなってるんだ。

 

 

クリアされたボールは中盤の半田へ。帝国の選手が素早くチェックに行くがその前に染岡にパスを出す。

 

「ドラゴンクラッシュ!!」

「パワーシールドV2!!」

 

染岡のシュートは〈パワーシールド〉によって阻まれる。だが、

 

「ファイアトルネード!!」

 

衝撃波にぶつかったシュートに、豪炎寺が〈ファイアトルネード〉を叩き込む。原作でも帝国からゴールを奪った攻めだ。これなら。

衝撃波の壁がひび割れ、砕け散る。豪炎寺のシュートは体勢が整っていない源田の横を抜けゴールへ向かう。しかし、そのシュートコースに帝国DF五条が回り込んでいる。

 

「何っ!?」

「ククッ、予想通りですよ……スピニングカット!!」

 

ボールは弾かれ、ゴールにはならず。弱点は分かってるから、そこのカバーは完璧って訳か。鬼道の入れ知恵か。何にせよ、今ので得点できなかったのは痛いな。

 

ボールは帝国が押さえ、再び始まるパス回し。練習試合の時よりも遥かに早く、正確なプレー。こいつら、元から強かったのに、更に動きが洗練され磨きがかかってやがる。

 

「イリュージョンボール!!」

 

持ち前のスピードで風丸が何とか追い縋るが、必殺技によってあっさり突破され、ボールは佐久間へと渡る。ボールを持った佐久間の前方に、鬼道と寺門の二人が走り込む。

 

佐久間が指笛を吹くと、地面から5羽のペンギンが現れる。

 

「皇帝ペンギン!!」

 

佐久間が前方の二人に向かってボールを蹴り出す。それと同時にペンギンが宙を舞う。

 

「2号!!」

 

そのボールを鬼道と寺門の二人がツインシュート。ペンギンが複雑な軌道を描きながらボールと共にゴールへと襲い掛かる。

 

「ゴッドハンド!!」

 

俺の繰り出した〈ゴッドハンド〉の五指にペンギンの嘴が突き刺さる。シュートの威力によってゴールへ押し込まれていく俺の耳に、鬼道から言われた言葉が蘇る。

 

『紛い物』

『人はそう簡単には変われない』

 

「…………ッ!!」

 

神の手が打ち砕かれ、ボールは俺の体ごと、雷門ゴールに突き刺さった。

 

「………俺はッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追加点を奪い、勢いに乗る帝国の猛攻が続く。不調の俺をカバーする為に、ディフェンス陣は全員がゴール前に結集し、帝国のシュートの嵐を何とか防いでいる。今も壁山が体を張ったディフェンスで、帝国のシュートを弾き返した。

 

情けない。俺が一人でゴールを守れないばかりに、皆に負担を掛けている。俺が、チームの足を引っ張ってしまっている。何が今の俺はあの時とは違う、だ。これじゃあの時と何も変わらない。鬼道の言った通りじゃないか。

 

「ツインブースト!!」

 

ディフェンスの隙間を通し、鬼道と佐久間がシュートを放つ。〈メタリックハンド〉で迎え撃つものの、またしてもかつて同じ技でゴールを奪われた記憶が頭を過ぎる。

 

「…………ッ!!」

 

シュートを止めることはできず、ボールは弾かれる。そのボールを辺見が再びシュート。体勢が崩れている俺はこのシュートを止められない。しかし、影野が飛び出し、体でこのシュートをブロック。ボールは空中へと弾かれる。

 

「陣形が崩れたぞ!今だ!」

 

俺と影野の二人が体勢を崩したことで、守備に穴が空いた。その隙を逃さず、鬼道の号令によって放たれる〈デスゾーン〉。

 

「うぉぉおおおお!!」

 

ディフェンスの隙間を抜けていくボールに、今度こそゴールを奪われたかと思ったが、土門がなんと顔面でこのシュートをブロック。ボールはラインを割り、ここで前半終了のホイッスルが吹かれる。

 

「土門!大丈夫か土門!なんて無茶を……!しっかりしろ!」

「デスゾーンは……これぐらいしなきゃ、止められない……」

「円堂……俺も、雷門イレブンに……なれたかな…」

「!!……ッ 、当たり前だ!お前は俺達の仲間だ!何回も同じこと言わせんな!」

「そっか……」

 

俺の言葉を聞いた聞いた後、気を失った土門が担架で医務室へと運ばれる。

 

俺のせいだ。俺が一人でちゃんとゴールを守れてさえいれば、土門にあそこまでさせずに済んだのに。

 

「円堂!!」

 

俯き、歯を食いしばる俺の耳に聞こえたその言葉に反応して、顔を上げた瞬間、炎を纏ったボールが俺の顔面に直撃した。




意識していなくとも、体はその苦痛を、恐怖を覚えている。
その記憶がデススピアーを切っ掛けに蘇る。
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