原作を壊したくない円堂守の奮闘記   作:雪見ダイフク

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開会式

「「炎の風見鶏!!」」

 

炎の翼をはためかせ、ボールはゴールネットを豪快に揺らす。連日の特訓の成果か、目に見えて精度は上がってきている。

OBとの練習試合のあったあの日こそ、豪炎寺に引きずられるようにして特訓を始めた風丸だが、翌日からは結構乗り気になっていて、自ら特訓に励んでいる。しかし、〈トリプルブースト〉に加え〈炎の風見鶏〉まで習得したとなると、風丸がさらに攻撃的な選手になったな。一応〈スピニングカット〉も使えるようになっているとはいえ、明らかにDFよりもMFやFWの適性の方が高いような気がしてならない。というか今気付いたが、チーム内で唯一風丸だけがシュート、ドリブル、ディフェンス技を全て使えるんだな。万能かあいつ。

原作では陸上部からの助っ人という扱いだったから、陸上部に戻るのかどうかの問題、というか葛藤があったが、この世界線の風丸は最初からサッカー部なのでそんな事も起こらず、全国大会に向けて特に問題もなく、練習に励む日々を送っている。

 

変わったことと言えば、昨日理事長が練習中にやってきて、部室を新しくしないかと提案されたことぐらいか。結論から言うと断った。原作でそうだったから、という理由が全く無い訳ではないが、それ以上に俺自身がこの部室に愛着が湧いているからだ。最初はあまりのボロさに顔を引き攣らせていたというのに、不思議なものだ。他の皆も別に不満はないようだったので、今の部室を使い続けることなった。一年組から反対意見が出なかったのは少し意外だったが、真面目に練習に取り組み、この部室も使ってきた分、多少の愛着はあったらしい。しかし、今以上に部員が増えると狭くなるのも確かなので、今の部室とは別に新しく作ってもらうように頼んでおいた。続編となる十年後には、サッカー棟なんてものが建ってるくらいだからな。これから部員はどんどんと増えることだろう。

 

そんな出来事があった翌日。いつものように練習に励んでいた時。

 

「円堂君!」

 

という木野の切羽詰まったような声に、そちらを向くと、携帯電話を片手に顔面蒼白となった夏未の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺と木野、そして夏未の三人は理事長が事故にあったという連絡を受け、病院へと足を運んでいた。

雷門家の執事であるバトラーさんからの話によると、全国大会の会場であるフロンティアスタジアムの下見に行った帰りに、事故にあったらしい。同乗していた関係者も負傷したが、その中でも最も重症なのが理事長とのこと。

 

「夏未さん……」

「……大丈夫、大丈夫よ」

 

そう言う夏未だが、目に涙を浮かべた弱々しいその姿は、ちっとも大丈夫な風には見えない。

 

「……夏未、部活のことは気にしなくていいから。今はお父さんについててやれよ。その方がいいだろ」

「お父さんが目が覚めた時、一番最初に夏未さんの顔を見せてあげて」

 

今の夏未にマネージャーの仕事をさせても、何も手につかないだろうし今は理事長の傍に居させてやった方がいいだろう。

 

「木野、俺は練習に戻るから、夏未のことを頼んだ」

「うん、分かった」

 

木野に夏未を任せ、病院を後にする。雷門中への道を歩きながら、理事長の事故について考える。全国大会を翌日に控えたこのタイミングでの事故。犯人は、というか仕組んだのは間違いなく影山だろう。原作でもあった出来事だ。

そこまで考えて足を止める。俺が何かしていれば、この事故を防ぐことができたのだろうか。そう考えて、直ぐにそれを否定する。分かっていたからと言って俺がどうこうできることでもない。俺の預かり知らぬ場所で起きた出来事に干渉することはできない。最初から今回のようなことが起きるのは分かっていたはずだ。原作を守るということは、作中に起きる悲劇を許容するということなのだから。エイリア学園によって知らない学校が破壊されても、俺はきっとそこまで怒りを覚えることは無いだろう。なのに、自分に近しい者が関わっている時だけこんな風に悩むのは傲慢だ。俺が今やるべきことは、試合に勝つこと。それだけ考えていればいい。だけど、

 

「……分かっていて何もしようとしない俺は、人でなしなのかもしれないな」

 

父親の凶報に体を震わせ、涙を浮かべる夏未の姿を思い出し、どうしようもなく胸が痛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『全国中学サッカーファンの皆様、遂にこの日を迎えました!今ここ、激闘の殿堂フットボールフロンティアスタジアムは、かつてない激闘の予感に、早くも興奮の坩堝と化しています!フットボールフロンティア、開幕!』

 

今日は全国大会の開会式だ。

実況をしてるのは、いつも雷門の試合の実況を勝手にやってくれてる角馬の親父さんの……駄目だ、名前忘れた。

まあ、とにかく今日からついに全国大会が始まる。俺達はスタジアムの控え室で入場するまで待機している。

 

『各地域より激戦を勝ち抜いてきた強豪チームが、今日より日本一の座をかけて、さらなる激闘に臨みます!一番強いイレブンはどのチームだ!では、ご紹介しましょう!近畿ブロック代表、戦国伊賀島中学────』

 

選手の入場が始まったようなので、皆に一声かけておく。

 

「とうとうここまで来たな。今まで色々あったけど、終わりよければすべてよし!優勝して、雷門中の名前を日本中に知らしめてやろうぜ!」

『おう!』

 

皆からも気合いの入った返事が返ってくる。

 

『続いて関東ブロック代表、雷門中学───』

 

「よし、行ってこい」

『はい!』

 

響木監督の言葉に全員で返事を返し、俺と豪炎寺を先頭にしてスタジアムに入場する。これだけ観客が大勢いると少し緊張するな。

 

『雷門中学は、地区予選大会においてあの帝国学園を降した恐るべきチーム!伝説のイナズマイレブン再びと、注目が集まっています!』

 

チームの説明になってなくないか。帝国を倒したということしかこの説明だと分からないんだが。全チームの紹介しなきゃならないし、こんなもんなのかな。しかし、イナズマイレブンの名前出しても年配の人しか分からないんじゃないか。観客の年齢層の割合が分からないからなんとも言えないけど、知らない人の方が多いだろ。

 

『さらに昨年の優勝校、帝国学園が特別出場枠にて参戦!関東ブロックでの地区予選決勝において、雷門中との死闘を繰り広げながらも惜敗した超名門帝国!特別枠にて王者復活を狙います!』

 

俺達の後に続くのは帝国学園。横に並んだ鬼道に話し掛ける。

 

「もう足はいいのか?」

「問題ない。心配は不要だ。そもそも一回戦には、たとえ足を引きずってでも出場するさ。原作の二の舞にはさせん」

「気合い入ってんな。まあ、相手が相手だし無理もないか。………勝てよ、鬼道」

「ふん、貴様に言われるまでもない」

 

『そして残る最後の一校、推薦招待枠として世宇子中学の参戦が承認されております!』

 

しかし、世宇子中の選手達は姿を見せず。世宇子中のプラカードを持った女の子だけが一人で入場する。……傍から見たら完全に罰ゲームだな。

 

『えー世宇子中学は本日調整中につき、開会式には欠場とのこと』

 

やっぱりこの場に世宇子は出てこないのか。調整中って、いったい何の調整をしてるんだか。しかし、姿を隠しておくメリットって何かあるんだろうか。少なくとも、隣の鬼道が世宇子の名前が出てから、ずっとピリピリしてるから、一応全く効果がないこともないけれど。

 

『以上の強豪達によって、中学サッカーの日本一が決められるのです!』

 

 

────勝つ。この先の原作を守る為にも、まずはこの大会で優勝する。

 

 

────俺は負けない。初戦で世宇子を倒し、決勝で雷門も倒して、もう一度日本一になる。

 

 

────俺が得点王になる為には、何点ぐらい必要だろうか。世宇子の大量得点を計算に入れると、一試合で5得点ぐらい目指した方がいいか。

 

 

それぞれの想いを胸に、フットボールフロンティア全国大会の幕が上がる。

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