原作を壊したくない円堂守の奮闘記   作:雪見ダイフク

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お気に入り登録して下さる方が思ったより多くて、感想までもらえたのでテンション上がって書き上げました。


偽物の決意

「豪……炎寺…?」

 

今俺の前に立っているのは間違いなく豪炎寺修也だ。主に炎の必殺技を使う中学サッカー界における伝説のストライカー。原作では彼のシュートによって数多くの勝利をチームに齎した。しかし、彼は一年の時は木戸川清修中の生徒のはずだ。二年の時に彼が雷門中に転校して来て、円堂と出会いそこから物語が動き出す……はずなんだけど……。

あまりの驚きに呆けていると豪炎寺が訝しな表情を浮かべる。

 

「……何処かで会ったことがあったか?」

「えっ?」

「……何故俺の名前を知っている?」

 

そう言われて気付く。確かに今まで一度も会ったこともない人間に名前を知られているのは不自然だろう。何故此処に豪炎寺がいるのかは分からないが、彼に不信な感情を抱かれるのは非常に不味い。内心激しく困惑しながらもなんとかこう切返す。

 

「お前、サッカーやってるだろ?試合を観たことがあったからさ」

 

豪炎寺が何処のチームに所属していたかなど、小学生時代の情報は何一つとして知りはしないがサッカーをやっていたことだけは確実だろう。咄嗟に考えたにしては筋が通っていると内心で自画自賛する。しかし、どうしたことか豪炎寺は先程よりも顔を顰める。

 

────えっ?なんで?

 

豪炎寺の表情からは困惑や疑念といった感情が見て取れる。

 

「「………………」」

 

豪炎寺は何も返答せず、俺達のあいだに沈黙が訪れる。そこに

 

「円堂くん、私先に帰ってるね」

 

俺達の気まずい雰囲気に何かを察したのか木野がそう声を掛けてくる。

 

「あ、ああ。掃除、手伝ってくれてありがとな木野」

「うん。また明日ね」

 

そう言って立ち去っていく木野の姿を見送り、再び豪炎寺に向き直る。

 

「「………………」」

 

再び訪れる沈黙。こうしていてもどうにもならない。俺は豪炎寺に向かって口を開こうとして

 

「この学校に、サッカー部があったのか?」

 

と先んじて豪炎寺に問いかけられる。

 

「ああ、随分前に廃部になって以来、ずっとそのままだったらしいんだけど、俺、どうしてもサッカーがやりたくてさ。サッカー部つくることにしたんだ。」

 

会話を再開できたことに安堵しながら、豪炎寺の問いに答え、こちらも問う。

 

「ところでお前、サッカー部に入ってくれるのか?」

「俺は……」

 

豪炎寺は少し考え込んでいたようだったが、

 

「俺は、サッカー部に入るよ」

 

と言ってくれた。会話中に雲行きが大分と怪しくなっていたがなんとかなったな……。

 

「だが、少し聞きたいことがある。」

「ん?何だ?」

 

すっかり安心していたところにそう言われたので、俺も聞き返す。

 

「俺が試合をしているところを観たことがあると言っていたな。なら俺の必殺技についても知っているのか。」

 

言葉が詰まる。豪炎寺の代表的な必殺技と言えば〈ファイアトルネード〉だが、その技を習得したのがいつ頃なのかは知らない。もし、まだ習得していないなら、この技を答えた瞬間、俺が嘘を吐いたことが露見し、豪炎寺は俺を疑いの目で見ることだろう。なら、知らないと言いたくなるが試合を観ていたとこちらから言ってしまった手前、必殺技のことだけ知らないのも不自然だ。よって俺の答えは一つしかない。

 

「あ、ああ。ファイアトルネードだろう?凄い必殺技だよな」

 

どうか合っていてくれと祈りながら答える。果たして……

 

「……………」

 

豪炎寺は何も答えない。まさか、間違っているのか?胸中が不安に覆い尽くされる。立ち尽くす俺にようやく豪炎寺が口を開いた。

 

「………これが最後の質問だ」

 

思わず息を呑む。俺の答えは合っていたのか?何を聞かれる?

 

「お前は誰だ」

 

……………………えっ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は誰だ」

 

豪炎寺の睨みつけるような視線が俺を射抜く。

 

「あ、ああ。そういえばまだ自己紹介もしてなかったな。俺は……」

「その必要は無い」

 

俺の言葉を遮り豪炎寺がそう断言する。

強い語調にやや気圧される。鋭い目付きと相俟ってある種の威圧感のようなものを豪炎寺から感じる。

 

「円堂守のことは俺もよく知っている」

「なっ………!?」

 

俺のことを知っている?何故?いったい何処で豪炎寺は俺のことを知ったんだ。接点は何もないはず……。いや、だがその言い方はまるで……

 

「俺は今まで何処のチームにも所属していなかった」

 

混乱する俺に豪炎寺はさらに畳み掛けるようにそう言った。

は?どういうことだ。チームに所属していない……、サッカーをしていなかったってことか!?なんで!?

 

「だから人前で試合に出たことも、ましてや必殺技なんてものを誰かに見せたことも無い。なのに、お前はさっきから何を言っている」

 

頭が真っ白になる。いったい何が起こってるんだ。どういうことなんだ。

 

「世宇子中、エイリア学園、FFI」

 

さらに衝撃が身体中を駆け巡る。何故、今そんな単語が出てくる。知っているはずがない。ありえない。

 

「お前も、俺と同じなんじゃないのか」

 

俺と……同じ?それは、どういうことだ。いや、待て、そんなまさか…

 

「お、お前も!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言えば、豪炎寺は俺と限りなく似た境遇だと分かった。彼も俺と同じように気付いたら豪炎寺になっていたらしい。原作では豪炎寺の妹は兄の全国大会決勝の応援に向かう途中で事故に遭い、意識不明の状態となる。それを阻止したかった彼は、本来進学するはずだった木戸川清修中に行かなければいいという結論に至ったらしい。しかし、クラブで活躍してスカウトされた場合、断ると遺恨を残すことになるかもしれないと考え、何処のクラブにも入らなかったそうだ。

自分が活躍することを前提としての考えであり、聞いている時に少しイラッとしてしまった。

しかし聞けば既に独力で〈ファイアトルネード〉を習得しているらしい。マジかよ、こちとら〈ゴッドハンド〉どころか〈熱血パンチ〉すら習得出来てないってのに……。俺、才能ないのかな…。

事故を回避するだけなら他にもどうとでも出来たはずの彼がわざわざ雷門に入学したのは原作主人公である円堂と共に居れば、自分が原作から多少外れた行動をしたとしても主人公補正的なものでどうにかなるだろうと考えたからとのこと。

しかし、肝心の円堂は自分と同じように中身が別物になっていた。現在進行形で目の前で頭を抱えているが、俺からすれば頭を抱えたいのはこっちだ。

こいつの行動は多少どころか原作から大きく逸脱してしまっている。小学生時代に有名になったりもしていないので、物語序盤の最重要イベントである帝国学園との練習試合のフラグが完全にへし折られている。

ちなみに俺が危惧していた原作の展開を変えることで将来起こりうるかもしれない事態については聞いて見たところそこまで深く考えてなかったらしく、顔が真っ青になっている。

さっきから薄々そんな気はしていたがこいつ実はアホなんじゃないのか。

こいつの妹が事故に遭わずに済んだのはいいが、それからどうするかもっと考えろよ。ここからどうやって原作の展開に軌道修正すればいいんだ。

 

それからしばらく話し合い、俺達は一つの結論を出した。

それは全国大会で優勝すること。ひとまずはそこを目標として定めた。

もう既に原作の展開をそのままなぞることは不可能に近い。だが、全国大会の優勝などの大きな節目となる、所謂歴史の分岐点となりうる事柄を原作と同じように保つことで、なんとか原作の大まかな流れを守ると共に、歴史に与える影響を少しでも抑えることが出来るのではないかと考えた。

たとえ偽物であったとしても、曲がりなりにも円堂守と豪炎寺修也が揃っているのだ。大会を勝ち抜いていくのは決して不可能ではないはず。

 

 

目指すべきものは変わらない。俺は、可能な限り原作を守ってみせる!!

 

 

 




自分で文章考えるのって思ったより難しいですよね。
あと、サブタイトルがなかなか決められねぇ。もっといいタイトルが思いついたら後から変更するかも。

完全に見切り発車で書き始めてストックもないので更新頻度がどれくらいになるかはまだはっきり言えませんが、なるべく間隔を開けないようには努力いたします。

長々と失礼しました。
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