久しぶりにサブタイが思いつかない……。何かいいのが浮かんだら後から変えるかもしれません。
あれから感覚のズレを修正し、なんとか連携を取れるようにしようと色々と試してはみたが、結局あまり効果はなく、二回戦当日を迎えていた。
「どうするんだよ、こんな状態で……」
「連携技も使えないんじゃ、点なんて取れないんじゃ……」
鉄壁を誇る相手を前に、今の状態では勝てないのではと弱気になっている者も何人かいる。おい、やめろ。そんな言い方したら……。
「心配するな。点なら俺がいくらでも取ってやる。無限の壁も、全て焼き尽くしてしまえば、後には灰が残るだけだ」
ほら見ろ。こいつが張り切り出すじゃないか。やる気になるのはいいが、最近のこいつは何するか分かんないから怖いんだよ。
「監督、今日のフォメーションなんですけど───」
「まだ、それを決めるのは早い」
「え?」
今日の試合について監督に確認しようとしたら、そんなことを言われる。
「もう一人来る」
「もう一人?」
それって、まさか……。
俺がそう思った瞬間、そいつは姿を現した。
雷門のユニフォームに身を包んだ、帝国のキャプテン、鬼道有人が。
『うそおおお!?』
まさかの登場に、皆が騒然とする。俺も正直、鬼道が雷門に来るとは思っていなかったので、驚いている。
「鬼道、お前……」
「勘違いするな」
鬼道に対して、迷いながらも声を掛けようとしたが、鬼道の発した言葉によってそれは遮られた。
「俺はお前達の仲間になる訳じゃない。雷門のユニフォームを着ても、俺はあくまで帝国の鬼道だ」
「どういうことだ?」
「これは帝国の皆と話し合って決めたこと。俺のプレーには、帝国イレブン全員の魂が篭っている。ならば、その俺が世宇子を倒せばそれは帝国が世宇子を倒したに等しい。その為に、お前達雷門を利用する。それだけだ」
言いたいことは分からないでもないけど、割と無茶苦茶な理屈だなおい。まあ、でも、
「それでも、俺は嬉しいよ。よろしくな、鬼道」
「……ふん」
俺の差し出した手をとる鬼道。すると、豪炎寺も何か言いたいことがあるのか、一歩前に出た。
「鬼道……」
「何だ、豪炎寺」
「たとえお前でも、エースストライカーの座は譲らないぞ」
「……お前、人の話を聞いていなかっただろう」
……いつも通りの平常運転だな。いや、待て、鬼道がいるということは豪炎寺に俺の代わりにツッコミを入れてくれるかもしれん。たまには俺以外の奴がこいつの天然ボケに振り回されてもいいだろう。皆そういう時の豪炎寺がめんどくさいことを知っているから、基本的に俺に押し付けてくるからな。
「心配せずとも、そんなものに興味は無い。俺は帝国のストライカーであって、雷門のストライカーではないからな」
「本当か?そう言っておきながら、内心では虎視眈々とエースの座を狙っているんじゃなかろうな」
「……妙に疑り深いな、お前」
「大事なことだからな」
「………」
表情には出ていないが、呆れているような雰囲気が鬼道からひしひしと伝わってくる。そして、それを向けられている当の本人は全く気づいていないらしく、何故かドヤ顔である。
「はいはい。その話はまた後でな」
「待て、円堂。まだ話は───」
「ちょっと黙ってろ。お前が喋ると話が進まん」
止めないと延々と続きそうだったので、強引に豪炎寺を後ろへ下げる。まだ何か言いたげだったが、無視する。
「何か悪いな、鬼道」
「……いや、お前も大変そうだな」
鬼道が同情するような視線を向けてくる。止めてくれ、あれでも試合中はこの上なく頼りになるんだ。普段がちょっとアレなだけなんだ。
「それはそうと、足は大丈夫なのか、鬼道」
ずっと気になっていたのだ。雷門との試合でも、足を引き摺っていたし、きっと世宇子戦でも相当無茶をしたのだろう。完全には回復していないと思っていたのだが。
「ああ、雷門の時よりは負担は軽かったからな。流石に何度もデススピアーは打てんが、普通にプレーする分には問題ない」
「そうか、よかった」
「まあ、もう一度同じ様な無茶をすれば病院送りになるかもしれんがな」
「……大丈夫なんだよな?」
万全の状態ではないということか。〈デススピアー〉は強力だが、それに頼ることはできないと。それでも鬼道は優秀な選手であることには違いない。チーム力が上がることは確実だ。
「ふん、デススピアーを二、三発打っただけで情けない。鍛え方が足りないんだよ」
「豪炎寺、お前だって前に一試合で爆熱スクリューを打てるのは二発ぐらいが限度だって言ってたじゃないか。鬼道と変わらないだろ」
「円堂、いつの話を言ってるんだ?今の俺なら気合いで十発は打てる」
「気合いってなんだよ……。え、マジ?」
「マジだ」
ええ………。帝国の試合からそんな経ってないんだけど……。
どうなってるのこいつ……。
体にかかる負担とかそんな短期間でどうにかできるもんなのか。成長とかいう次元を超えてるような気がするんだが。こいつ本当に人間か。
「新しくマキシマムファイアも覚えたことだし、やはりエースストライカーは俺しかいないな」
「いや、そのくだりはもういいから………今なんて?」
何か聞き捨てならない言葉が聞こえたような気がするが、気の所為だろうか。
「ん?エースストライカーは──」
「いや、その前」
「マキシマムファイア?」
「………」
聞き間違いじゃなかった、だと……。え、練習してたの〈爆熱ストーム〉じゃなかったのか。
「お前、爆熱ストームはどうしたんだ」
「え?ほぼできてるけど?」
「ええ………」
早い。早過ぎる。何をどうすればそんなにポンポン新技を覚えられるんだ。こいつどんな特訓してるんだ。
「じゃあ爆熱ストームと一緒にマキシマムファイアの特訓もしてたのか」
「いや、してないぞ」
「えっ」
「特訓の合間に気分転換で試してみたらできただけだ」
「うっそだろお前!?」
もうやだよこいつ。何か聞く度にどんどんおかしくなっていくんだけど。俺はどうすればいいんだ。
ふと、鬼道がさっきから静かだなと思い、そちらを見てみると、
「気分転換で新技だと……?それにもう爆熱ストームまで……?お、俺がデススピアーを覚えるまでにどれだけ苦労したと……」
何か、現実に打ちひしがれていた。安心しろよ、鬼道。世間一般からすればお前も十分天才だから。ただ、豪炎寺がおかしいだけだ。間違いない。だから落ち込むの止めろ。この中で一番弱い俺が惨めになるから。
「元気出せよ、鬼道」
「円堂……」
鬼道の肩に手を置く。これぐらいで参ってたらこいつとは付き合っていけない。それに、
「どうせ、俺達はこれからこいつに振り回される運命だ。諦めろ」
「そんな運命認めてたまるか!?」
いや、だってなあ。どうせ豪炎寺はこれからもずっとこんな調子だろうし。精神的ダメージを受けるのも、原作の知識を持ってる俺達だけだろうからなぁ。人間、諦めが肝心だ。ツッコミはするが、止められはしない。
「お前ら、流石にそれは俺に対して失礼じゃないか……?」
「そう思うなら自分の言動を振り返ってみろ」
「……ふむ」
考え込む豪炎寺。こいつだって原作の知識があるんだから、きちんと考えれば、自分がどれだけおかしなことをしてるか気づけるはずだ。
小さく頷いた後、豪炎寺が口を開く。
「すまない。何がおかしいのかさっぱり分からない」
「ちょっと期待した俺が馬鹿だった」
少し考えたぐらいで気づけるなら、もっと自重してるわ。何で少しまともな答えを期待してたんだろうか俺は。
「俺の中の豪炎寺のイメージが崩れていく……」
鬼道が遠い目をしてそう呟く。気持ちは分かるが、そんなものはさっさと壊してしまった方が楽になれるぞ。さあ、お前も早くこっち側に来い。
「お前達、そろそろいいか」
「「「えっ?」」」
その声に振り向けば、他の皆は響木監督の前に集合しており、俺達だけが取り残されていた。
「……お前達、今が試合前なのを忘れているだろう」
「「「あっ……」」」
そんなことはすっかり頭から抜け落ちていた俺達は、揃いも揃って間抜けな声を漏らすのだった。
作者としては転生組とかよりも、雷門の三馬鹿とか呼んだ方がしっくりくる。