原作を壊したくない円堂守の奮闘記   作:雪見ダイフク

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並び立つ天才

 

俺達も監督の前に集合し、監督からこの試合のスターティングメンバーが言い渡される。

 

「FWは豪炎寺と鬼道のツートップ。後はいつも通りだ」

「え?」

 

染岡をスタメンから外すのか。守備力の高い千羽山を相手にするなら染岡も含めたスリートップの方がいいんじゃ……。

 

「俺が監督に言ったんだ」

「染岡?」

「監督は宍戸をベンチに下げるって言ったんだけどよ、全員が鬼道のことを信用しきれてる訳でもないだろ。そんな状態で宍戸を鬼道が入るから下げるって言っても、納得できない奴もいる。だから俺が代わりに下がることにしたんだ。俺がFWとして鬼道より劣ってるのは、俺自身が一番よく分かってる。ベンチから、鬼道や豪炎寺のプレーを一度じっくり観察したいって言ってな」

 

そんなやり取りがあったのか。でも、染岡だって活躍してるんだし、鬼道や豪炎寺と比べることないと思うけどな。言っちゃ悪いが、こいつらは特別だし。

 

「って訳だ。雷門のストライカーとして、情けねえプレーしたらタダじゃ置かねぇぞ、鬼道」

「ふん、誰にものを言っている」

 

この二人のツートップも、俺は見てみたいな。勿論、豪炎寺を含めたスリートップも。

 

「よし、無限の壁、攻略してやろうぜ!」

『おお!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鬼道」

 

整列を終え、ポジションにつこうとする鬼道を呼び止める。

 

「何だ、円堂」

「鬼道、お前、俺達の問題については知ってるよな?」

「問題?何かあるのか?」

「覚えてないか?千羽山戦で原作では鬼道が修正したあれだよ」

「……ああ、あれか」

 

俺の言葉で、原作でのことを思い出した様子。鬼道が感覚のズレを修正できるかで色々と変わってくるだろうからな。

 

「あれ、なんとかできそうか?」

「俺がか?」

「ああ」

「知らん」

「………」

 

いや、豪炎寺じゃないんだから、もっとこう、何かないのかよ。

 

「原作の鬼道がやっていたことを俺に求められても困る。第一俺はゲームメイカーでもないしな。そんなことができるとも思えん」

「そっかぁ……」

 

まあ、こればっかりは仕方ないか。鬼道が言うように、原作とは別人な訳だしな。

 

「多少連携が覚束なくなった程度で苦戦するようなら、所詮その程度だということだ。なに、心配はいらん。俺と豪炎寺が無限の壁如きに止められるものか」

「はは、すげえ自信だな」

「自信?違うな。俺は事実を述べているだけだ」

「……頼もしいよ、本当に」

 

豪炎寺とはまた違った安心感。不安なんてどこかにいってしまった。

どんなプレーを見せてくれるのか、楽しみだ。

 

ゴール前、キーパーのポジションにつき、前を見る。センターサークルの中には、ツートップとして並び立つ豪炎寺と鬼道の姿。原作でも、負傷退場とかで試合の途中から鬼道がFWをやってる時はあったかもしれないけど、最初からは多分無かったよな。こうして二人の姿を見ていると感慨深い気持ちになる。

 

もうすぐ、雷門ボールでキックオフだ。さあ、今日も勝つぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「豪炎寺、まず俺達で点を取るぞ」

「ん?」

「無限の壁を破るのに、俺達二人いれば十分だということだ。無失点記録など、相手が弱かったからできたのだと教えてやる」

「……面白い。やるか」

 

審判の笛が吹かれ、キックオフと同時に、ボールを後ろに預けることはせず、豪炎寺と鬼道の二人が飛び出す。

ボールを奪おうとする千羽山のFWをあっさりとワンツーパスで抜き去り、そのまま千羽山陣内に突進する。

たった二人だけの攻撃。それもカウンターでも何でもなく、選手全員が自陣にいる試合開始直後の特攻。そんなものは、ここまで鉄壁と謳われる守備力で勝ち上がって来た千羽山にとって、止めることは簡単。そのはずだった。

 

止まらない。たった二人の攻撃を、千羽山が止めることができない。シュートと見紛う程の高速のパスワークを駆使し、豪炎寺と鬼道が千羽山のディフェンスを切り崩していく。あっという間にゴール前に到達し、豪炎寺がボールを空中へ蹴り上げる。

 

「合わせろ鬼道!」

「足を引っ張るなよ、豪炎寺!」

 

二人が同時に、回転しながら跳躍する。そのまま豪炎寺が〈ファイアトルネード〉を、鬼道が〈ダークトルネード〉を発動。豪炎寺の左足と鬼道の右足が、同時にボールを蹴り込む。

鮮やかな橙色の炎と、闇を孕む漆黒の炎。相反する二つの炎を纏うシュートが、千羽山のゴールに向けて打ち出される。

 

対するはここまでの対戦相手全てのシュートを封殺してきた〈無限の壁〉。

仁王立ちの構えを取る千羽山のキーパー、綾野の両横に牧谷、塩谷がポジショニングを取り、そそり立つ巨大な壁を出現させる。

 

〈無限の壁〉にシュートが激突する。しかし、シュートの威力は全く衰えることはなく、ボールの纏う二つの炎が反発し合い、その威力が増幅されていく。壁に亀裂が走り、〈無限の壁〉が崩壊していく。やがて、壁は完全に崩れ去り、ボールは千羽山のゴールに突き刺さった。

 

試合開始から僅か一分。千羽山の無失点記録がいとも容易く破られた。

 

 

「そ、そんな!?」

「オラ達の無限の壁が……!!」

 

ここまで自分達を勝利に導いて来た、チームの象徴たる〈無限の壁〉が、試合開始早々に破られた。千羽山の選手達の動揺は計り知れない。

 

 

「ファイアトルネードとダークトルネードの合体技………さしずめデュアルトルネードってところか」

「えっ、ファイアトルネードDDじゃないのか?」

「……片方はダークトルネードだろうが」

「同じようなもんだろ」

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すっげぇ………。いや、マジで凄いなあいつら。まさかこんなにあっさりと〈無限の壁〉を破るとは。それも〈爆熱スクリュー〉や〈デススピアー〉も使わずに。今の技、即興で合わせたのか。よく息が合ったな。その前のパスワークも見事の一言に尽きる。物凄い速さのパスを出しあってたけど、あれ俺から見たらお互いに向かってシュート打ち合ってるようにしか見えなかったんだが。なんであれで正確なボールコントロールができるんだろう。

敵は滅茶苦茶動揺してるし、味方は全員唖然としている。

ふと、豪炎寺と鬼道のプレーを観察すると言っていた染岡を見ると、盛大に顔を引き攣らせていた。まあ、あんなの参考になんぞならんわな。そして、当の本人達はというと、

 

「なあ、やっぱりファイアトルネードDDだって」

「しつこいぞ豪炎寺」

「だってさあ……」

「……ファイアトルネードDDは、二人同時にファイアトルネードを放つ技だろう。俺が使ったのがダークトルネードである以上、本質的に別の技だ」

「じゃあお前もファイアトルネード使えよ」

「俺はファイアトルネードは使えん」

「なら今覚えろ」

「できるか!!」

 

何を言い合ってるんだあいつらは……。なんとなくどういう流れかは分かるけども。とりあえず続きは試合が終わってからやれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千羽山ボールで試合再開。しかし、〈無限の壁〉を破られた動揺から千羽山は未だ立ち直れておらず、動きが鈍い。その隙を、その男が見逃すはずもない。

 

「スピニングカットV2!!」

 

鬼道が必殺技でボールを奪い、豪炎寺にパスを出す。また二人で攻め上がるのかと思ったが、何を思ったか豪炎寺はその場でボールに覆い被さるように深く上体を倒し、左足を高く振り上げる。

 

「グランドファイアァァァァ!!!」

 

────ちょっと待て。

 

俺の内心の混乱をよそに、放たれたシュートは〈ファイアトルネード〉とは比較にならない程の極大の炎を纏い、地面を抉り、溶解させながら千羽山ゴールへと突き進む。

 

「無限の壁!!」

 

千羽山も〈無限の壁〉を発動するも、シュートが壁に触れると、瞬く間に炎が〈無限の壁〉を焼き尽くし、ボールはゴールへと突き刺さる。ゴールネットが焦げ臭い匂いを放ち、敵味方問わず畏怖の視線が豪炎寺へと寄せられる。

 

「……なんか威力が足りない気がするな。分身の仕方は分からんし、とりあえず三人分の力を込めて蹴ればできるかと思ったが、流石に無理か」

 

いや、ゴールしてますけど。十分過ぎる程に威力あるように見えましたけど。というか何を試そうとしてらっしゃるんですか豪炎寺さん。なんですかそのとんでも理論は。

 

「鬼道、次はお前も一緒に蹴れ。二人でならもう少し威力が出るだろう」

「お前が自重する気がないのは分かったが、そこに俺を巻き込もうとするな」

「?何の話だ」

 

 

ああ、今日も平和だ。




先のことは知らん。今が楽しければそれで良い。
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