原作を壊したくない円堂守の奮闘記   作:雪見ダイフク

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豪炎寺被害者の会、会長に千羽山が就任しました。


蹂躙

試合が再開し、千羽山はまずディフェンスラインまでボールを下げ、そこからサイドへとボールを展開していく。露骨なまでに豪炎寺と鬼道の二人にボールを触らせないようにする為のパス回し。千羽山が精神的ダメージから立ち直り、対応してきた訳ではない。あの二人、特に豪炎寺にボールを渡してはまずいと、千羽山の選手全員が本能的に悟ったが故の行動。ただし、その行動は本質的には逃げているだけであり、動きは未だ精彩を欠いている。今の千羽山は、圧倒的な強者による狩りから逃げ惑う獲物でしかない。

 

「クイックドロウ!!」

 

当然、そんな状態ではまともなプレーができるはずもなく、あっさりとマックスがボールを奪い取る。

 

「豪炎寺!」

 

そしてすかさず豪炎寺へとパスを出す。先のプレーによって、豪炎寺が単独で〈無限の壁〉を破れることは証明された。ならば彼にボールが集まるのは必然だ。しかし、雷門の選手達の感覚のズレは未だ修正されてはいない。マックスが出したパスは短く、これは千羽山の選手にカットされる。誰もがそう判断した。そこには円堂や鬼道も含まれる。だが、いつだって、周りの予想を遥かに上回っていくのが豪炎寺クオリティである。

豪炎寺は自分へのパスが短いと判断するや否や、地面を強く踏みしめ、前へ進む体を力づくで押さえつけ、後方へと跳躍。空中で強引に体を捻り、無理矢理ボールを確保する。驚異的なボディバランスでそのままシュート体勢へと移行し、左足に纏った炎が剣の形状を象っていく。

 

「マキシマムファイア!!」

 

振り抜かれた炎剣による一撃が、先程の〈グランドファイア〉と同様に、地面を抉りながら千羽山ゴールを襲う。

 

「無限の壁!!」

 

千羽山が再び〈無限の壁〉を作り上げる。既に二度も破られてしまった自分達の最高の技。だが、今度こそは止めてみせる。そんな想いで繰り出された千羽山の誇る鉄壁は、シュートの持つ熱量によって溶解し、剣の形に抉り抜かれ、ボールはゴールへと突き刺さった。

 

 

前半5分、豪炎寺修也、ハットトリック達成。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あいつ今凄い動きしなかったか。え、人間ってあんな空中で自在に体勢を変えれるもんなの。ボール取った時完全に頭下向いてたけど、なんであそこから一度も地面に足をつけずに〈マキシマムファイア〉の体勢に入れるんだ。重力が仕事して無いんだけど。

 

そしてまだ始まったばかりなのに、もう3点差である。見ろ、千羽山の選手達の顔を。完全に戦意を喪失しているじゃないか。ディフェンスに特化した千羽山にとってこの点差は死刑宣告みたいなもんだろ。というかこのペースだと後何点入るか分からんぞ。嫌な予感しかしないんだが。

 

そして俺の予感は残念ながら的中する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

力の差を悟り、戦意を喪失した千羽山を豪炎寺と鬼道が激しく攻め立てる。

豪炎寺との連携からゴール前でDF三人を抜き去り鬼道がシュートを決めれば、それに対抗心を燃やした豪炎寺がFWからDF、果てはGKまでをも抜き去り無人のゴールへとシュートを叩き込む。

豪炎寺がいい練習台だと言わんばかりに、恐らく未完成と思われるえげつない威力のシュートを何度も放ち、それが面白いように千羽山のゴールネットを尽く揺らす。

 

気づけば、前半終了時点で点差は10-0である。

……どっかで見たことのある点差だな。

 

素晴らしく上機嫌でベンチへと戻っていく豪炎寺とは対照的に、千羽山の選手達の足取りは見るからに遅く、その姿はさながらゾンビのようである。惨い。

 

「お前が容赦なさ過ぎて流石に引くわ」

「俺も同意見だ」

「何言ってるんだ。まだまだ攻めるぞ」

「「マジかよこいつ……」」

 

鬼道すらも付いて行けないゴールへの執着。ちなみに、連携技での得点込みで豪炎寺は前半8得点である。どれだけ点を取れば満足するのだこいつは。

 

「何か、思ってたよりも弱い……のか?」

「いや、豪炎寺や鬼道が強すぎるんじゃないか?よく分かんないけど」

 

豪炎寺と鬼道が殆どのボールをカットし、そのまま攻め上がっていく為、それ以外の皆は何もすることがなく、拍子抜けしてしまっている。俺もゴールを守っている意味があるのかは甚だ疑問である。

 

「鬼道、後半は───」

「………分かった」

 

豪炎寺が鬼道に何やら話しているが、まだ何か試すつもりなのか。貪欲というか何というか……。

 

「円堂、お前も上がってこい。キーパーなんぞこの点差ならいらん」

 

言ったよこいつ。俺が薄々思ってたけど言っちゃいかんと思ってたことを言いやがったよ。でも俺が上がって何するんだ。〈イナズマブレイク〉でもやるのか。ぶっつけ本番で成功させる自信無いんだけど。

 

「俺とファイアトルネードDDをやるぞ」

「ファイアトルネード使えねぇけど」

「何っ!?」

「何故そこで驚く!?」

 

俺が〈ファイアトルネード〉を使える訳ないだろうが。一度も練習したことないぞ。なんでできると思ったんだよ。

 

「練習中に何度も見てるだろ!?」

「それで習得できたら誰も苦労せんわ!!」

 

見ただけで必殺技が使えるようになってたまるか。あれ、でも原作の立向居も〈ゴッドハンド〉を映像で見ただけで覚えてたような……。もしかしてこの世界の天才は皆見ただけで技を習得できるのか。

 

「……円堂、何を考えてるかは知らんが多分違うと思うぞ」

「そ、そうだよな、ありがとう鬼道……」

 

危ない。何か間違った認識を持つところだった。

 

「くそっ、じゃあファイアトルネードDDは無理か……。仕方ない、イナズマブレイクをやろう」

「お前どんだけファイアトルネードDDやりたいんだよ……」

「だってカッコイイだろ」

 

そうかもしれんけど〈イナズマブレイク〉だってカッコイイだろ。元祖最強技だぞ。ロマンに溢れてるじゃないか。

 

「イナズマブレイクは鬼道が主体の技じゃん……」

「自分の技使いたいだけじゃねぇか」

 

あれか、自分主導じゃないと嫌なのか。どんだけ俺様思考なんだよ。

 

「とにかく円堂も上がってこい。無いと思うけどシュート打ってきたら壁山と風丸でなんとかしろ」

「「ええ……」」

 

突然名指しされた二人も困惑の声を上げる。流石に無茶苦茶じゃないのかと思い、監督に聞いてみたが、

 

「好きにしろ」

 

まさかのGOサインである。視界の端で豪炎寺が「言質はとった」などと呟いているが、まさか前半のあれで自重しているつもりだったのか。嘘やん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハーフタイムが終わり後半が始まる。正直、この点差で棄権したりしない千羽山には敬意を表する。後半も地獄が続くことは明らかだろうに。

 

「イグナイトスティール!!」

 

後半開始早々に豪炎寺がボールを奪い取る。何かさらっと新技使ったけど、それお前の技じゃないんだが。炎使ってる技なら何でも使っていいと思ってるんじゃないだろうなお前。

 

「来い円堂!」

「ああもう!なるようになれ!」

 

ゴールを飛び出し前線へと駆け上がる。豪炎寺は鬼道にボールを渡す。

 

「鬼道、やるぞ!」

「お前ら、俺が主導の技なのに何故、俺には一切確認を取らないんだ……」

「何ブツブツ言ってんだ!さっさとやれ!」

「ちょっと待て!まだ俺が上がってない!」

「理不尽な……」

 

俺が十分な位置まで上がったのを確認してから、鬼道がボールを蹴り上げる。闇の力が込められたボールが落雷に撃たれたかのように、稲妻を纏い急降下。そのボールを俺、豪炎寺、鬼道の三人が同時に蹴り込む。

 

「「「イナズマブレイク!!」」」

 

激しい稲妻を帯びたボールが、〈無限の壁〉を突き崩し、ゴールネットに突き刺さる。しかし、

 

「なんか……」

「うん……」

「はあ……」

 

成功したのは嬉しいが、今日既に十回見た光景に感動なんてものは微塵も湧かない。

 

「威力も思った程出てないな」

「お前の中で無限の壁を破れるのが最低条件みたいになってないか……?」

「イナズマブレイクの扱い、こんなのでよかったのか……?もっと相応しい場面があったんじゃ……」

 

何故か三人揃うとぐだぐだになる俺達だった。

 

 

その後も雷門、というか豪炎寺と鬼道の二人と、時々俺も加わった猛攻が続く。

 

「「ツインブーストF!!」」

 

原作で世宇子からゴールを奪った〈ファイアトルネード〉と〈ツインブースト〉の連携でゴールを奪う。

 

「「イナズマ1号!!」

「ダークトルネード!!」

 

新たな連携を編み出し、さらに追加点を奪う。

 

「爆熱ストーム!!」

 

まだ未完成の炎の魔神の一撃が、ゴールネットを揺らす。

 

「ラストリゾート!!」

 

放たれた未完の最終兵器が、ゴールに突き刺さる。

 

「グランドファイア!!」

 

何故か前半に打った時よりも威力が上昇した極大の炎が、ゴールネットを焼く。

 

 

そんな調子で点を取り続け、試合終了のホイッスルがなった時には、得点は25-0となっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

圧倒的な大差での敗北による屈辱か、それともこの地獄が終わりを告げたことへの安堵か。千羽山の選手達がフィールドに崩れ落ち、嗚咽を漏らす。

その姿を見て、今さら罪悪感が襲ってくる。途中からは攻撃参加することに抵抗を覚えなくなっていたが、どう考えてもやり過ぎである。観客も、あまりに一方的な惨劇に静まり返っている。当然、雷門メンバーも皆気まずそうな表情を浮かべている。そんな中、豪炎寺と鬼道の二人だけが他とは違った反応を見せる。

鬼道は帝国時代に似たような試合をした経験があることもあり、泣き崩れる選手達を一瞥しただけで無関心である。

そして、豪炎寺はというと。

 

満面の笑みを浮かべていた。

 

この試合に余程満足したのだろう。当たり前だ。この試合における豪炎寺の得点は、連携技を抜きにした単独でのゴールだけを見ても18点。連携技も含めれば25得点の内、23得点に絡んでいる。これで満足できなければお手上げというものだ。

 

単独のゴールだけでも二試合で20得点という頭のおかしい成績により、当然ながら他の一切の追随を許さず、ゴールランキングのトップを独走している。

 

 

ディフェンスに特化した千羽山でこれなら、どちらかというとオフェンスの方が優れている木戸川相手だとどんな結果になるのだろう。今から体の震えが止まらない。




おかしいな、こいつらを苦戦させる為に世宇子を強化したのに、まだ全然足りてない気がする。
作者は千羽山が嫌いな訳じゃないんやで……。
何も考えずに書いてたら、犠牲になっただけなんや……。
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