原作を壊したくない円堂守の奮闘記   作:雪見ダイフク

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豪炎寺のエクスカリバーですが、感想欄のコメントを採用してレーヴァテインに改名します。
名前変えるか迷ってたけどいい名前が思いつかなかったから助かる。
作者のネーミングセンスの無さを読者が補う。完璧だな。


雷門の点取り屋

 

一瞬の出来事に両チーム共、何が起きたかを直ぐには理解できなかった。一番早く現実を認識したのは〈トライアングルZ〉を打ち返された張本人である武方三兄弟。

 

「そ、そんな……!?」

「ありえない……!!」

「俺達のトライアングルZが……!?」

 

自分達の必殺技に絶対の自信を持っていたからこそ、動揺も大きい。防がれただけならまだ理解できる。だが、直接打ち返されたという事実が理解を拒む。

他の選手達も何が起きたかを理解し、驚愕する者、慄く者、闘志を燃やす者、それぞれの反応を見せる。

 

「うーん?思ったより手応えがなかったな?」

 

腕を組み、頭を捻る豪炎寺の背後にゆっくりと歩み寄り、思いっきり頭を叩く。スパーンと小気味いい音を立て、豪炎寺が前のめりによろめく。

 

「いってぇ!?何すんだよ円堂!?」

「お前は一度、自重というものを学ぶべきだ。何を考えたらエクスカリバーを覚えようと思うんだ」

「シュートをシュートで打ち返すって考えた時、最初に浮かんだのがエクスカリバーとホワイトハリケーンだったんだからしょうがないだろ。エクスカリバーの方が簡単そうだったんだよ」

 

比べる対象がおかし過ぎるんだが、こいつの頭はどうなっとるんだ。というか簡単そうだからで技を覚えるんじゃない。

 

「エクスカリバーは流石に不味いだろ……。他に何かなかったのか……」

「そんなに駄目か?うーん。………よし、なら名前を変えよう。レーヴァテインってのはどうだ」

「いや、そういう問題じゃ……」

 

待てよ、〈ファイアトルネード〉や〈ダークトルネード〉が別の技として成立してるんなら、こいつの〈エクスカリバー〉はエドガーのものとは明らかに別物だから、名前さえ同じじゃなければ似てるだけの違う技と言い張れるかもしれん。

 

「レーヴァテインって北欧神話のスルトの剣……だったか?………いいんじゃないか、うん」

 

こいつの技は〈レーヴァテイン〉であって〈エクスカリバー〉ではない。誰が何と言おうと違うのだ。うん、そういうことにしておこう。

 

 

 

木戸川ボールで試合再開。武方三兄弟が攻め込んで来るが、動揺からか隙が伺える。

 

「そこだ!」

「っ!?しまった!」

 

今日はFWに入っている風丸が勝からスライディングでボールを奪う。本来はDFの風丸が前線にいることで、より高い位置でボールを奪いやすくなっている。この布陣の利点だな。

 

「染岡!」

「おう!」

 

ボールは風丸から染岡へ。そのままドリブルで木戸川陣内へと切り込む。

 

「俺が……!!俺だってゴールを決めるんだ!!」

「染岡!こっちだ!」

 

半田がパスを要求するが、染岡は自分で持ち込もうとする。不味い、少しボールを持ち過ぎだ。染岡が一人で前に出過ぎてる。

 

「スピニングカットV3!!」

「何っ……ぐぁっ!!」

 

西垣が染岡からボールを奪い取る。V3か、流石に本家本元だけはある。木戸川がパスを回し、中盤の競り合いへと移行する。

 

「クイックドロウ!!」

 

しばらく中盤で膠着状態へと陥っていたが、ここでマックスが抜け出た。風丸へとボールが渡り、〈疾風ダッシュ〉で相手DFを躱してそのままシュートを放つ。しかし、ゴール左隅を狙ったシュートはキーパー軟山にパンチングで弾かれ、ボールはラインを割る。雷門のコーナーキックだ。

流石に単独のシュート技を持たない風丸ではゴールを奪えないか。前線の守備力は上がっているが、やはり得点力は落ちているな。加えて染岡の動きがおかしい。焦りからか、いつものプレーができていない。

こうなってくると豪炎寺が自陣のゴール前にいるのは痛いな。こいつがFWなら簡単に点取ってくれそうだが。というかこいつさっきからゴール前から一歩も動いてないんだが、この位置から動かないつもりなのか。

 

「豪炎寺、DFだからって攻めちゃ駄目な訳じゃないんだぞ?セットプレーだし、上がったらどうだ?」

「いや、そうするとカウンターに対応できない可能性がある。俺は今日はここで相手のシュートを全て打ち返す」

「いや、俺がいるからな?お前いなくてもそんな簡単に点取られるつもりないからな?それにトライアングルZを打ち返すって言ってたのに、いつの間にか増えてないか」

「物足りなかったから、他のシュートでも打ち返す練習がしたい」

「そんな練習お前しかやらないし、試合中にやるものでもねぇよ……」

 

だいたい〈トライアングルZ〉で駄目なら他のシュートはもっと物足りないんじゃないのか。もう世宇子の〈ゴッドノウズ〉ぐらいしか〈トライアングルZ〉より威力の高い技は無いぞ。少なくともこの大会では。

 

そうこう言っているうちに半田がコーナーキックを蹴る。ゴール前の混戦を避け、ボールはやや後方に控えていた少林の元へ。

 

「クンフーヘッド!!」

 

帝国戦以来の少林の必殺シュート。ゴール前の選手達がブラインドになり、キーパーはこのシュートに反応できていない。

 

「スピニングカットV3!!」

 

だが、このシュートを西垣がブロック。さっきからいい動きをしている。原作では〈スピニングカット〉と二期の闇堕ちくらいしか印象に残っていないが、もしかしたら今大会のナンバーワンDFはこいつなのかもしれない。そうなってくると何故、一之瀬と西垣は強化されてるのに土門は据え置きなんだ。帝国のサッカー部がよほど肌に合わなかったんだろうか。

 

とか思ってたら土門が武方三兄弟へのパスをカットした。ボールを奪おうと迫る武方三兄弟を避け、サイドの栗松へパスを出す。栗松は素早く縦にボールを繋ぐ。栗松からのパスを受け取った宍戸が持ち込もうするものの、そこは西垣の守備範囲。あっさりとボールを奪われる。

さっきから攻撃の殆どを西垣に潰されている。まさかこいつにここまで苦戦させられるとは。

 

西垣から努へパスが繋がる。友とのワンツーパスで壁山を抜き去り、雷門ゴールに迫る。だが、ここで豪炎寺が動く。

 

「イグナイトスティール!!」

 

ゴール前からは動かないという自らの宣言を破り、努からボールを奪い去る。もう当然のように〈イグナイトスティール〉を使うんだな……。

そして何を思ったか、西垣へ向かって突っ込んでいく。

 

「何ッ!?」

「さあ、勝負だ!」

 

どうやら西垣の実力を見て、勝負の対象が移ったらしい。強い奴を見つけたら、すぐさま勝負を吹っ掛けに行く。戦闘狂か何かなのかあいつは……。

 

「舐めるな!!スピニングカットV3!!」

 

真正面から自分に向かって真っ直ぐ突っ込んでくる相手に、必殺技を使わない理由など無い。衝撃波の壁が豪炎寺の行く手を阻む。しかし、豪炎寺も黙ってボールを奪われるようなことはしない。炎を纏い、当然のように〈スピニングカット〉を突破する。驚く西垣だが、直ぐに冷静さを取り戻し、炎に巻かれぬように一定の距離を保ちつつ豪炎寺の突破を許さない。まさか豪炎寺が攻めあぐねているのか。

西垣を引き摺るようにして木戸川陣内へと入り込む豪炎寺だったが、少し時間を掛け過ぎたか、女川、光宗の二人のDFが西垣に加勢。三人で豪炎寺の周囲を旋回し始める。これは〈ハリケーンアロー〉か。あれは無印世界編まで高威力を保ち続けた最強クラスのディフェンス技。豪炎寺でもまともに受けたら不味いんじゃ……。

だが、俺の心配とは裏腹に豪炎寺は口元に笑みを浮かべる。

 

「染岡!」

 

自分にDF三人を引き付け、ゴール前の守備を薄くしての染岡へのラストパス。豪炎寺の狙いはこれだったのか。

 

「いけ、染岡!お前がゴールを決めるんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

豪炎寺は凄いやつだ。そんなことはずっと前から分かっていた。同じように練習して、一緒に頑張っているはずなのに、いつだってあいつは俺の前を走っていた。ずっと、その背中に追いつきたくて、手を伸ばし続けてきた。でも、すぐ前を走っていたはずのその背中は、気づけば遥か遠くを走っている。それが、どうしようもなく悔しかった。豪炎寺のことを勝手に、雷門でツートップを組む相棒だと思っていた。鬼道が入って来て、そのポジションまで奪われるのではないかという不安に駆られた。そして、それを心のどこかで仕方ないことだと受け入れようとしている自分がいた。なのに

 

「いけ、染岡!お前がゴールを決めるんだ!」

 

お前は俺にボールを送るのか。自分で突破して、そのままシュートを決めることだって、お前なら簡単なはずなのに、俺にパスを送ってくれるのか。

豪炎寺のパスをトラップする。俺だって馬鹿じゃない。このパスに込められた想いに、気づけないはずがない。信じてくれている。自分よりも遥かに劣っている俺を、それでも、俺が必ずシュートを決めると。

俺は、豪炎寺の相棒だ。なら、その相棒が、俺を信じて出したラストパスを決められなくてどうする。

豪炎寺がDFを引き付けてくれたおかげで、今俺の前にいるのはキーパーだけだ。後はシュートを打つだけ。だが、〈ドラゴンクラッシュ〉は止められてしまう。ならどうする。決まっている。豪炎寺が日々進化し続けるように、この瞬間、俺も今までの自分を超えればいい。イメージするのは、帝国戦でゴールを奪ったあのシュート。あの時は、皆の力があったからゴールを奪えた。だが、今は一人。それでも不安はない。自分を信じろ。今まで積み重ねてきた努力は、必ずそれに応えてくれる。

ボールを空中へと蹴り上げれば、それを追うようにして逞しき翼を携えた青い翼竜が姿を現す。空中のボールに気を送り込み、共に急降下。青白く光り輝くボールを、渾身の力で蹴り込む。

これが俺の─────

 

「ワイバーンクラッシュだあああ!!!!」

 

放たれたシュートはワイバーンと共に、木戸川ゴールへと唸りを上げ襲い掛かる。軟山の繰り出した〈カウンターストライク〉を完璧に打ち破り、ボールは木戸川ゴールへと吸い込まれた。




まさか豪炎寺無双以外の展開がこの試合で生まれるとは思っていなかった。
完全オリジナルの試合展開は文字数がなかなか増やしづらくて困る。もっと豊かな発想力が欲しい。
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