原作を壊したくない円堂守の奮闘記   作:雪見ダイフク

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原作開始

豪炎寺と話し合った後、何事もなく家までたどり着いた。

円堂守を主人公としたシリーズの続編に当たる作品の話になるのだが、敵がとある理由から円堂守を襲撃し、サッカーを捨てさせることによる歴史の改変を行うといったエピソードがある。それが起きる可能性も無くはないと思っていたのだが結局何も起きなかった。これはこの世界が原作でいうところの正史の世界線であるということなのか。それとも本来の円堂守よりも俺が未来に及ぼす影響が小さく、歴史の改変などする意味もないということなのか。

リスクこそ大きいが、この出来事が起きれば時空の共鳴現象によって必殺技を手っ取り早く習得出来るのではないかという思いがあったり、また、俺が未来で原作を守れている証明になるのではないかと考えていたのだが、そう甘くはないらしい。

まあ、続編主人公が助けに来なければその時点で俺の物語は終わることになるので何も起こらなければそれに越したことはないのだが。

 

 

それからは大きな問題もなく、サッカー部の活動も順調だ。原作通りに半田と染岡が入部し、それ以外では俺の勧誘に応じてくれた影野と、なんと風丸も入部してくれた。風丸は原作では陸上部だったので大会前に助っ人としてスカウトすることになると思っていたが、これは嬉しい誤算だった。どこでフラグを立てたんだろうか?

原作では円堂、染岡、半田の三人しか一年の時点ではいなかったはずだが、そこからさらに三人増えて六人となり、幸先の良い滑り出しとなった。

出来たばかりで実績もなく、人数も少ないこともあって、雷門中のグラウンドを使っての練習はなかなか出来なかったが、それほど広くないスペースでもリフティングやパス回しなどはやれたし、河川敷のグラウンドで練習したり、他校のサッカー部に頭を下げて一緒に練習させてもらったり、とにかくやれることは何でもやった。

原作のこの時期よりも練習量はかなり多いのではなかろうか。

一年の秋頃には染岡が〈ドラゴンクラッシュ〉を、風丸が〈疾風ダッシュ〉を習得した。この二人は明らかに原作開始時より既に実力は上回っているだろう。頼もしい限りである。

一方俺は未だに〈ゴッドハンド〉を習得出来ていない。何故だ……。

ちなみに何度やっても一向に習得出来る気配が無かったので〈熱血パンチ〉の習得は諦めた。わざわざパンチング技を覚えなくとも、〈熱血パンチ〉で止められる程度のシュートは技なしでも止められるようになればいいだけだ。断じて豪炎寺が呟いた

 

「お前が熱血じゃないからじゃないか?」

 

という言葉に納得してしまった訳では無い。熱血の基準って何だ…。いったい何でそれを判定してるんだ…。

 

二年に進級してからは原作通りに一年が四人入部し、合計で十人。あと一人部員が増えれば試合が出来る人数となった。原作では部員達はすっかりやる気を失ってしまっていたが、この世界線では皆毎日真面目に練習に取り組んでいる。その甲斐あって廃部だとかそういう話は今のところ出ていない。

そんなある日、俺は冬海先生に校長室に呼び出された。

 

 

 

 

 

「練習試合……ですか?」

「ええ」

 

何事かと身構えていた俺だったが、どうやら俺が何かやらかしたとかそういう話ではないらしい。しかし、これはまさか……

 

「相手は帝国学園です」

 

やはりそうか。この時期に突然の練習試合といえば思い浮かぶのは帝国学園しかない。

 

「どうです。凄いでしょう?」

「この四十年間、フットボールフロンティアで優勝し続けている無敵の学園だよ」

 

口ではそう言いつつ、普段と変わりない表情の冬海先生と興奮している様子の火来校長。

 

「帝国のことは俺も知っていますけど……なんでうちに?向こうにメリットがあるとは思えませんが…」

 

原作では雷門に転校して来た豪炎寺が目的で練習試合を申し込んで来たはずだが、この世界線では豪炎寺は無名の選手だ。うちの部に帝国が脅威を感じるような実績を持つ選手はいない。帝国にとって雷門などそこらの有象無象と変わらないはずだ。それがいったい何故……。

 

「それに試合をするには部員も足りませんし……」

「あら、なら試合までに残りの部員を探せばいいのではなくて?」

 

そう言うのは冬海先生、火来校長と共にこの場にいたこの学校の理事長の娘である雷門夏未。この学校の生徒会長を務めている才媛だ。

 

「仮にもこの学校の名前を背負って試合をするのだから、情けない負け方をしないように努力することね」

「……まるで負けるのが前提みたいな言い方だな」

「あら、当然でしょう?貴方達のような弱小サッカー部が勝てると思うの?」

「やってみなきゃ分からないだろ、そんなの」

 

睨み合う俺と雷門。原作におけるヒロインの一人だが、俺はこいつと少々相性が悪い。顔を合わせればだいたいこんな感じで険悪な雰囲気になる。

 

「……分かったわ。そこまで言うのなら、もしも勝てたなら貴方達のフットボールフロンティアへの出場を認めましょう」

 

フットボールフロンティア。中学サッカー日本一を決める大会。この大会の優勝が俺が豪炎寺と決めた第一の目標でもある。

 

「俺達が去年の大会に出場出来なかったのは部員が足りなかったからだ。それはお前に認めてもらうようなことじゃない。だからその代わりに、帝国に勝ったら俺達を弱小と言ったことを撤回しろ」

「……いいでしょう。貴方達が勝てば、先程の発言は取り消します」

 

 

 

 

 

その後に部室へと向かったのだが、呼び出された俺のことを心配していたらしく、何かあったのかと部員達から質問攻めを喰らった。

校長室での話を部員達に伝えると、心配そうな表情が驚愕へと変わった。

 

「帝国と練習試合!?」

「帝国って、あの帝国でやんすか!?」

「マジかよ……」

 

部員達が驚きの言葉を口にする。無理もない。俺も原作を知っているから冷静でいられるが何も知らなければ同じような反応をするだろう。

ふと豪炎寺の方を見ると目を見開き、口を開けて呆然としている。こいつのこんな表情は珍しいな。

 

「円堂、本当なのか……?」

「ああ」

 

自分がこの練習試合のフラグをへし折ったのだと以前に俺から責められたこともあってか、困惑を隠せない様子。実際、試合を申し込んで来た理由は分からないしな。

驚いていた部員達だが、今度は主に一年が不安そうにしている。

 

「む、無理ですよ。帝国なんて……」

「勝てるわけありませんよ……」

「恥かくだけでやんすよ……」

「キャプテン、ホントに試合するんスか……?」

 

………完全に諦めムードになってやがる。まあ、無理もないが…。

 

「おいおい、今からそんなに弱気になってどうするんだ?練習試合なんだから負けたってどうなる訳でもない。それより帝国と、最強のチームと試合が出来るんだぜ?こんな機会そうそうないんだ。絶対いい経験になる。帝国相手にどこまでやれるのか、俺達の全力をぶつけてやろうぜ!」

 

こういうのはあんまり得意じゃないんだけどな…。

うん、まだ不安そうではあるけどさっきまでよりはマシな顔になったな。

帝国との試合まではまだ何日かある。部員ももう一人探さないといけないし、出来ることをやっておかないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《風丸視点》

 

円堂はあの日から少し変わった。あの日、円堂は声を掛けてきたクラスメイトに

 

「ごめん、誰だっけ?」

 

と言い、おいおい、忘れたのかよ?などと茶化していた他のクラスメイト達に対しても同じように問い掛けた。

その不安そうな様子はとても嘘には見えなくて、本当に分からないのかと騒ぎになりかけた瞬間、

 

「じょ、冗談だって。なあ、風丸?」

 

と俺に言ってきた。心配しかけたところにそんなことを言われたのでタチの悪い冗談は止めろと説教してしまった。クラスメイト達はまだ少し心配そうだったが休み時間にボールを蹴る円堂を見て、一応冗談だと納得したらしい。

しかし、俺はその姿を見て違和感を覚えた。傍目にはいつもと変わらないように見えるけど……

 

━━━━━━━円堂はあんな顔でボールを蹴っていただろうか。

 

今までボールを蹴っている時の、サッカーをしている時の円堂はいつだって笑顔だった。今も普段と変わらないように思えるけど、俺にはどこか辛そうに見えた。

何かあったのかと聞いて見たが、少し驚いたような顔をした後、何も無いと言われるだけだった。

俺には相談出来ないことなのか……?

その後、円堂は急に成績が良くなり、普段の言動も大人びたものになった。やっぱり何かあったんじゃないかと聞いてみても返ってくる答えはいつも同じ。

円堂が何処か遠くに行ってしまったような気がした。

何で俺には何も相談してくれないんだろう。そんなに俺は頼りないか。それとも

 

━━━━━━━友達だと思っていたのは、俺だけだったのか…?

 

一度芽生えてしまった疑念は俺の胸の中に残り続けた。

中学に入学したら、陸上部に入ろうかと思っていたが、円堂にサッカー部に入らないかと誘われた。

俺もサッカーをやれば、同じフィールドに立てば、お前は俺を頼ってくれるのか?

 

━━━━━━━円堂、俺達は、友達だよな?

 

 

 




更新遅くてすみません。
キャラの口調とか違和感あったら申し訳ない。
気の赴くままに書いてたら風丸が原作とは違う方向に病みそうになってるんだが、なんでこうなったんだろう。
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