原作を壊したくない円堂守の奮闘記   作:雪見ダイフク

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キャラの再現度には目を瞑ってくれ。


舞台の裏側

 

薄暗い、とある一室。いくつものモニターに映る映像を、その男は見つめていた。

 

最初は、中々良い動きをする選手がいる、その程度の認識だった。あの練習試合で、鬼道とまともにやり合い、帝国から1点をもぎ取ったのは、自分にしては珍しく素直に感心したものだ。

だが、それだけ。潜在能力の高さは認めるが、円堂大介の孫の存在を加味しても、所詮帝国に適うはずもない。故に、地区大会の決勝で帝国が敗北したことに驚きを隠せなかった。帝国には鬼道がいる。今まで自分が見てきた中で、最も才能に溢れ、最も敵に回るのを恐れた男が。

鬼道が敗北したのは、周りの雑魚が足を引っ張ったからだと推測した。現に世宇子との試合では帝国の選手達が圧倒される中、鬼道だけが最後まで世宇子の勝利を脅かす存在だった。結果的に見れば1点に抑えてはいるが、ディフェンス全員で対処しなければ止められないということは、客観的に判断して鬼道の能力が世宇子の大多数の選手のそれを上回っているということだ。

 

そして、雷門と千羽山との試合を見て、自分の目を疑った。

 

鬼道が雷門に行ったのは問題視はしていなかった。鬼道一人が加わったところで、チームとして世宇子を超えることはできない。帝国との試合がそれを証明している。

円堂大介の孫が〈マジン・ザ・ハンド〉を習得していたのは予想外だった。だが、亜風炉ならば問題なくゴールを奪えるだろう。たとえ伝説のキーパー技であっても、神のアクアによって強化された奴の敵ではない。

 

しかし、この男だけは別だ。

 

モニターに映る映像では一人の少年が、千羽山を文字通りに蹂躙している。鬼道の得点もあったが、25得点の内、殆どの得点を決めたその男。────豪炎寺修也。

 

この男はあまりにも異質だ。明らかに他の選手とは隔絶した力。世宇子の選手と比較しても、全てにおいてこの男の方が上だろう。日本サッカーのレベルを、完全に逸脱してしまっている。

 

雷門の試合データは全てチェックしたが、地区予選決勝での帝国との試合以降の成長速度が異常過ぎる。木戸川清修との試合でも、千羽山戦から僅かな時間しか経過していないというのに、凄まじい成長を続けている。

 

この男を決勝戦に出場させてはならない。そう考えるのはあまりにも自然なことだった。たとえ世宇子であっても、絶対に勝てない。巷では試合での活躍から天才と言われ始めたらしいが、断じてそんな生温いものではない。鬼道が十年に一人の逸材なら、この男は百年に一人の怪物だ。

 

部下にはこの男を排除するよう命じた。たとえ命を落とすことになっても構わない。不幸な事故として処理されるだけだ。何があっても試合に出場させてはならない、と。

だが、交通事故に巻き込もうとすれば、野性的な勘と驚異的な身体能力で回避される。頭上から看板や鉄骨等を落下させれば、気づいていた様子はないというのに、全て紙一重で当たらない。通り魔に見せかけて直接襲わせれば、偶然近くに居合わせた警官によって取り押さえられた。それ以外にも、ありとあらゆる手段を用いてこの男を始末しようとしたが、尽く失敗に終わる。

 

まるで、この世界の運命に愛されているかの如く、この男を害するもの全てが無に帰す。

 

全く持って不可解なことではあるが、意味のないことにいつまでも拘っていても仕方ない。本人を害することは出来ずとも、親類はその限りではない。家族構成も調べたが、この男には妹がいる。それも部下に調べさせた情報では大層大事にしているらしい。ならば、その妹が決勝戦の日に事故にでも遭えば、試合などしてはいられまい。

 

その男───影山零治は邪悪に笑う。

 

自分が手を出そうとしている物が、決して触れてはならない、龍の逆鱗に等しいことにも気づかずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は富士山麓、広大に広がる樹海を超えた先のとある施設。関係者からは星の使徒研究所と呼ばれている。

その施設の中の一室。暗闇に満たされたその場所に、それぞれ白、赤、青のスポットライトに照らされた三人の少年の姿があった。

 

「わざわざ呼び出して何の用だ、グラン」

 

赤いスポットライトに照らされた、赤い髪と燃え上がる炎のような髪型が特徴的な少年、バーンが口を開く。

 

「私も暇じゃないんだ。余計な時間を取らせないでもらいたいね」

 

続いて青いスポットライトに照らされた、白髪をたなびかせる、どこか冷たい印象を受ける少年、ガゼルが自分達を呼び出した存在に向かって言葉を発する。

 

「二人とも、フットボールフロンティアの試合映像は見たかい?」

 

最後に、白いスポットライトに照らされた、色白の肌に、バーンと似通った赤い髪を逆立てた少年、グランが二人の言葉に応える。

グランのその言葉と共に、グランの背後に試合の映像が映し出される。どうやら雷門と千羽山の試合のようだ。

 

「雷門、豪炎寺修也か……。中々興味深い存在ではあるが……」

「これがなんだってんだよ。さっさと本題に入れ」

 

既に一度見たことのある映像を見せられ、ガゼルとバーンが訝しげな視線をグランへと向ける。

 

「君達は彼のことをどう思う?」

「はあ?」

「何が言いたい?」

 

グランの問いには答えず疑問を返す二人。

 

「彼の実力は現時点でも俺達、マスターランクに匹敵する。このまま成長し続ければ、エイリア学園にとって大きな脅威となるだろう」

「……それで?」

「………」

 

バーンが言葉で、ガゼルが沈黙をもって先を促す。

グランの背後の映像が、木戸川清修との試合のものへと変わる。豪炎寺が試合終了直前、〈スカーレットハリケーン〉によってゴールを奪うシーンが映される。

 

「彼は俺達にとっての最大の障害となり得る。俺達三人も、こうしていがみ合っていては不味いことになるかもしれない」

 

そこで言葉を切り、バーン、ガゼルの顔を順番に見つめ口を開く。

 

「バーン、ガゼル、俺と協力しないか。俺達三人が力を合わせれば、最強のチームができるはずだ」

 

三人の間に沈黙が訪れる。

 

「クッ……ハハハハッ!!」

 

沈黙を破ったのはバーン。心底おかしいと言わんばかりに笑い声を上げた後、グランを見つめる。その視線には嘲りの色が見て取れる。

 

「何を言うかと思えば……。マスターランクチーム、ガイアのキャプテンともあろう者が、そんな奴にビビってるのかよ。協力?ハッ、有り得ないな。それが用件だってんなら、俺は帰らせてもらうぜ。テメェの妄想に付き合ってやる義理はねぇ」

 

そう言った後、赤いスポットライトが消え、バーンがこの場を立ち去る。後にはグランとガゼルの二人が残される。

 

「ガゼル、君はどうだい?」

 

グランの言葉に、瞳を閉じ、沈黙を保っていたガゼルが口を開く。

 

「残念だが、私も君と協力などする気はない。豪炎寺修也は確かに興味深い存在だが、君がそこまで言う程だとは思えない。臆病風に吹かれたのなら、マスターランクの座から降りることを勧めるよ」

 

青いスポットライトが消え、ガゼルもこの場を後にする。室内にはグランだけが残される。

 

 

 

 

「やはりこうなるか……」

 

グランもこの提案に二人が頷いてくれると思っていた訳ではない。自分の考えを二人にも伝えておきたかっただけだ。

豪炎寺修也はエイリア学園にとっての大敵となるだろう。口ではああ言っていたが、二人も気づいていない訳ではない。ただ、認めたくないだけだろう。

 

父さん───エイリア学園のトップである吉良星二郎は、豪炎寺修也をエイリア学園に引き入れようと考えているようだが、グランはその考えには否定的だ。強い者はエイリア学園に入れてもいい。それ自体は別にいいのだ。だが、彼は駄目だ。大き過ぎる力は、やがては自らの身を滅ぼす。彼をエイリア学園に引き入れれば、エイリア学園は内側から喰い破られ、呑み込まれるだろう。

 

グランとしては豪炎寺修也よりも、円堂守を引き入れた方がいいのではないかと思っている。グラン率いるガイア、バーン率いるプロミネンス、ガゼル率いるダイヤモンドダスト。三チーム共に同じマスターランクのチームだが、実力はガイアが頭一つ抜けている。その要因の一つは、キーパーにあるとグランは考えている。三チームのキーパーの実力を比べた時、ガイアのネロと比べて、他の二チームのキーパーは明らかに劣る。マスターランクチームに所属してはいるが、実力的にはファーストランクのデザームとそう変わらない。そこに一石を投じてやれば何か変化が起きるのではと思うのだ。

無論、今の円堂守の実力はマスターランクには遠く及ばないが、高いポテンシャルがあるのは確かだ。今後の成長次第ではその選択肢も十分に考えられる。

もっとも、グランにはそんな決定権はない。決めるのは父だ。

 

 

グランは映像に映る円堂守の姿を見つめる。しかし、先程の打算的な考えは抜きにしても───

 

「君と、サッカーをやってみたいな」

 

 

 

白いスポットライトが消え、室内は暗闇に閉ざされた。




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