本日二話目です。
ゴールを奪われたことはいい。点を取って逆転すればいいだけのこと。だが、
────右腕が上がらねぇ……!!
今のアフロディのシュートで痛めたか、右腕に激しい痛みが走り、まともに動かせない。ただでさえ新技も完成せず、シュートを止めるのが厳しいというのに、左腕だけでどうやってゴールを守れば……。
「分かったかい?これが、君が愚かにも勝とうとしていた相手の実力だよ」
「くっ…!」
俺にそう言い放ち自陣へと戻っていくアフロディ。ゴールを奪われた俺には言い返す言葉はない。
「円堂!」
「キャプテン!」
ゴール前の俺の元に皆が駆け寄ってくる。
「円堂!大丈夫か!?」
「悪い、止められなかった……」
「円堂!?お前、腕を痛めたのか!?」
俺の様子を見た風丸が声を上げる。流石に腕を押さえてたら気づかれるか。
「ああ、でも大丈夫だ」
「大丈夫じゃないだろ……!!そんな状態でゴールを守るなんて無茶だ!!」
「かもな。でも、無茶でも何でもやるしかないんだ。雷門のキーパーは、俺しかいないんだから」
「円堂……」
風丸の言う通りなのだろう。こんな腕で世宇子からゴールを守り切れるとは到底思えないし、無茶をして怪我が悪化すれば今後にも影響しかねない。だが、後を任せられるキーパーがいない以上は俺がゴールを守るしかない。
「……よし、俺達で円堂をカバーするぞ!奴らにシュートは打たせない!」
「風丸……」
風丸が皆を鼓舞する。しかし、皆の顔は暗い。
「風丸さん……。でも、そんなこと言ったって……」
「今だって、たった一人にゴールされたんですよ?」
「ただでさえ豪炎寺がいないのに、円堂までこんな状態じゃ……」
不味いな……。豪炎寺が不在で不安を抱えていた状態で、俺まで負傷したことでチームが揺らいでいる。このままじゃ、点差よりも先に心が折れる。
「どうしたんだ皆!!試合はまだ始まったばかりだぞ!もう諦めるのか!!」
「止めておけ。やる気のない奴らにいくら言っても無駄だ」
説得を続けようとする風丸にそんな声が掛けられる。そちらを見ると、鬼道がゆっくりと歩み寄ってくる。
「鬼道、お前も大丈夫か?」
「ああ、全く……。相変わらず容赦のない奴らだ」
アフロディによって二度に渡り吹き飛ばされた鬼道だが、プレーに支障が出る程のダメージは負ってはいなさそうだ。
「円堂、たとえ腕が折れようがお前にはゴールを守ってもらうぞ」
「ああ、望むところだ」
俺の返答に小さく笑みを浮かべた後、鬼道が皆に向き直る。
「諦めるのは貴様らの勝手だが、悔しくないのか。このまま負ければ、貴様らは豪炎寺がいなければ何も出来ないと思われたまま終わることになるんだぞ?雷門が豪炎寺のワンマンチームだと言われているのを知らん訳ではあるまい」
『!!』
……鬼道の奴、俺が言いづらかったことを真正面からぶん投げてきたな。とはいえ、その効果は覿面だったようだが。
「豪炎寺がいなくたって、俺が点を取ってやらあ!!」
「俺達は豪炎寺だけのチームじゃない!!」
「俺達もやる時はやるでヤンス!!」
鬼道がこんな役回りを自分から買って出るのは意外だったが、帝国でもキャプテンをしていただけあって選手達をその気にさせるのは上手いな。
「風丸も言ってたように、まだ試合は始まったばかりだ。取られたら取り返せばいい。俺も可能な限りゴールを守ってみせる!」
雷門ボールで試合が再開される。先程は単独で攻め込んだ鬼道だが、今度は一旦後ろにボールを預ける。ボールを受けたマックスは半田へとボールを回す。その間に染岡と鬼道は世宇子陣内深くまで入り込む。しかし、ここで鬼道が世宇子のDF四人に取り囲まれる。
「くっ、またか……!芸のない奴らめ!」
「何とでも言うといい。君さえ抑えておけば、雷門等取るに足らない」
あれでは鬼道にはパスを出せない……。半田も同じように判断したのだろう。染岡にパスを出そうとしたようだったが、
「裁きの鉄槌!!」
「ぐあっ!?」
それよりも早く、ヘルメスが発動した〈裁きの鉄槌〉によってボールを奪われる。素早くチェックに向かったマックスを〈ヘブンズタイム〉で吹き飛ばし、そのままドリブルで攻め上がる。
「キラースライド!!」
「ザ・ウォール!!」
土門と壁山の二人が必殺技でボールを奪おうとする。並の選手ならば突破するのは困難だろう。
「ヘブンズタイム」
「「ぐわあああああ!!」」
だが、世宇子の選手を止めるにはそれでは足りない。〈ヘブンズタイム〉によって二人は抜き去られ、遅れて発生した突風によって空中へと吹き飛ばされる。
「ゴッドノウズ!!」
ゴール前、純白の翼をはためかせ空中へと舞い上がったヘルメスがシュートを放つ。
「ゴッドハンド!!」
そのシュートを左手の〈ゴッドハンド〉で迎え撃つ。先程のアフロディのシュートと比べれば威力は低い。だが、左手での、本来の威力を発揮しきれていない〈ゴッドハンド〉を破るには十分すぎる。神の手が砕け散り、ボールは俺の体ごとゴールネットへ突き刺さる。
「くそっ……!!」
鬼道から聞いてはいたが、本当にアフロディ以外の選手も〈ゴッドノウズ〉や〈ヘブンズタイム〉を使うのか。〈裁きの鉄槌〉まで使ってくることを考えれば、原作同時期のアフロディが強化されて複数人いるようなものだ。おまけにアフロディ当人はそれ以上に強化されているときた。万全の状態であれば、アフロディ以外の選手の放つ〈ゴッドノウズ〉なら止められる自信がある。だが、この腕ではそれすらも難しい。
「取られたら、取り返すだけだ!俺が決めてやる!」
今度は染岡がドリブルで攻め上がる。世宇子の選手はこれを余裕の表情で見送る。まるで止める必要などないと言わんばかりの態度に染岡が怒りを燃やす。
「舐めやがって……!!くらえ!!」
染岡がボールを蹴り上げ、それを追うように地面からワイバーンが出現。空中でボールにパワーを送り込み、青く輝くボールと共に染岡の元に急降下。
「ワイバーンクラッシュ!!」
「ツナミウォールV3!!」
しかし、宙を舞い、世宇子ゴールを狙うワイバーンは、ポセイドンの生み出した津波に飲み込まれ、地に落とされる。
「俺のワイバーンクラッシュが……!!」
染岡の〈ワイバーンクラッシュ〉でも単独ではゴールは奪えないか。〈トリプルブースト〉とのシュートチェインが現状一番可能性があるかもしれない。だが、今のシュートもわざと打たされたものだ。そう易々とシュートチェインを許すとは思えない。こうなると鬼道が封じられているのが痛い。〈デススピアー〉ならゴールを奪えるはずだが、世宇子もそれは分かっている。何としてでもそれだけは阻止してくるはずだ。
ポセイドンがボールを大きく蹴り出す。ボールの落下地点に回り込むアテナだが、このボールをディフェンスラインから上がって来た風丸がカット。
「疾風ダッシュ改!!」
そのままアテナを抜き去り、攻め上がる。そうだ。世宇子はDF全員が鬼道のマークについている。それは裏を返せば、中盤を突破出来さえすればキーパーの前には誰も選手がいないということ。風丸のスピードならシュートチャンスを作り出せるかもしれない。
そんな俺の考えを嘲笑うように、突破されたはずのアテナが一瞬で風丸に追いつき、ボールを奪い取った。
「何っ!?」
完全に躱したつもりだった風丸が驚愕の声を上げる。速い。風丸と同等か、それ以上だ。神のアクアは身体能力増強のドリンク。スピードもここまで引き上げられているのか。
先程とは一転、ボール奪った世宇子は中盤でパスを回す。素早いパス回しに雷門の選手達はついていけない。自分達の身体能力を誇示するかのような、必殺技すら使わないスピードとパワーに任せた強引なプレーでディフェンスを突破される。
「ゴッドノウズ!!」
今度はゴール前でラストパスをデメテルがシュートを放つ。俺は左手に気を集め、〈ゴッドハンド〉でシュートに対抗する。だが、やはり止められない。再び神の手が砕け散る。
「くっそがああああ!!」
一か八か、シュートに向かって全力でヘディングを叩き込む。〈ゴッドハンド〉によって、いくらかシュートの威力は落ちているはずだ。止められると信じて、必死の抵抗を重ねる。
僅かな拮抗の後、大きく体勢を崩されはしたものの、何とかボールを弾き返すことに成功する。
やった、そう思った俺だが、すぐに背筋が凍る。弾き返したボールの先には、シュート体勢に入ったアフロディの姿。そして放たれるシュート。必殺技ですらない、先程まで受け続けた〈ゴッドノウズ〉に比べれば大したことはないただのシュート。だが、体勢が悪過ぎる。まともに踏ん張ることすら出来ずに、体ごとゴールに叩き込まれた。
既に点差は3点。自分達のプレーが何一つ通用しないまま、雷門は絶体絶命の状況に追い込まれた。
バランスブレイカーがいないとめっちゃ書きやすいの草。